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[ 本格 ]
ユダの窓
HM卿シリーズ
カーター・ディクスン 出版月: 1978年03月 平均: 7.94点 書評数: 32件

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早川書房
1978年03月

早川書房
1978年03月

東京創元社
2015年07月

No.32 9点 愚か者 2024/09/19 14:08
法廷ものでありながら、十八番の密室殺人も扱われている。
裁判という枠組みの中で、ここぞといいうタイミングで証言証拠を持ち出している。中でも矢羽については多面的な扱いが見事。

10点満点で採点し直しました。4点→9点

No.31 6点 クリスティ再読 2021/11/06 12:52
さて懸案の大名作。低評価失礼...とまず、謝ります。

いや小説としてはわりと面白いんだよ。カーと言うとハッタリがウルサいことも多いけど、法廷場面中心でハッタリを仕掛けてないから、読みやすいしカーの素のストーリーテラーぶりを楽しむことができる、というのはイイ面。「この人誰あれ?」というような人物を証人に呼ぶと結構なクセ者で面白いとかね、そういう楽しさがある。

なので、問題、と思うのは主としてミステリ面。この作品の構成的な狙い、というのは、無実の罪を着せられた被告をHMが弁論で無実を証明して無罪を獲得したあとで、その裁判で顕われた証拠を軸にフーダニットして見せる、という二段構成なんだと感じたんだけど....いや、これが趣向として押しきれてないのが残念。まあだし、HM最初から真相・真犯人大体わかってて弁護しているんだもの。探偵が最初から真相分かっているのって、評者は好きじゃないな...小説が始まる前に決着しているようなものなんだもの。

であと、もちろんこれ指摘する人が多い、真犯人がどうやって矢を入手したのか納得いかないこと。被害者は罠にかける相手のピストルを手にいれているのだから、被害者のプランでわざわざ矢が登場する意味がよく分からない...「ピストルの消失」が謎になる密室トリックでもこれは成立したと思うんだけどねえ。それから、タイムスケジュールがタイトすぎて「できるの?」と心配するくらいだとか、これは都筑道夫氏も指摘しているけども、密室に不可欠なある現象を目撃した被害者の反応を読み切れない面とかね...

というわけで、フィージビリティとか言挙げするのは趣味じゃないけども、本作はいまひとつ「おかしい」面が目立ちすぎるし、構成面でも意図が分かるぶん、もう少し工夫もあるかな、とも感じる。もちろんタイトル「ユダの窓」が実にステキなことは称賛したい。偽証を指摘される人物も「窓」で裏切られるから、こっちももう一つの「ユダの窓」かも。

(あと今の創元文庫は、ダグラス・G・グリーンの「序」とか、瀬戸川猛資、鏡明他の座談会がオマケについていて、これが実に読み応えあり。これをプラス1点したい。カーのオカルトはあまりマジメじゃなくて「キャンプ趣味」だというのは同感)

No.30 8点 SU 2020/10/04 09:22
密室トリックは、ある予備知識を持っているかどうかで、解明に意外性が伴うか否かが分かれるトリック。個人的には感心しない。しかし、ストーリー・テリングは巧み。

No.29 10点 バード 2020/08/03 21:56
カーの既読数はたかだか10冊なので、本作を代表作と言い張るつもりはありません。しかし、私基準で本作は文句なく傑作でした。これまで、200冊以上書評を書きましたが、読み始めからオーラを感じたのは本作が初めてで、自分のカー評価を躍進させた一作です。

本作は、問題の階層構造が明確で、優れた学術論文のような上手さを感じた。階層構造が分かりやすいのは、リアルタイムで事件を追う形式ではなく、裁判で振り返る形にしたことで、事件を再構成できたからだろう。読者は作中の陪審員に近い立ち位置で事件を眺めることになる。

本作で最重要の謎は
「被告人が被害者を殺したか、否か?」
であり、殺害方法や、アリバイはそれに付随する謎という位置付けである。H・Mの問題意識は最初から最後まで、「被告人の無罪の証明」であり、読者もこの点に集中すれば良い。上記の証明のために膨大で細やかな証言と証拠が積み重ねられるが、問題意識がはっきりしているので、くどさや分かりにくさは感じなかった。

もし、本事件をリアルタイムで語る形式にしたら、
「犯人は誰か?」、「どう殺したか?」
などのいくつかの謎が並列に扱われ、凡ミステリになってしまっていただろう。
(ユダの窓の利用はともかく、部屋の外部から殺害というのは、カーの以前の作品でも使われた方法である。また、犯人についても、鉄壁のアリバイがあるわけでもないので、サプライズ性は弱い。
しかし、本作ではこれらの問題を小さい問題としたので、弱点となっていない。)
この事件でこれだけ面白くなる裁判形式のチョイス、お見事です。

No.28 9点 HORNET 2020/02/29 15:47
 密室のトリックは時代を感じさせる古めかしいものだったが、法廷を舞台としたHM卿の推理・弁論の展開が見ものだった。
 矢羽根の切れ端に注目して、そこから糸をつむぐように真相を明らかにしていく過程が非常に読み応えがあったし、人を食ったようなHM卿の弁論ぶりがその興趣に拍車をかけている。裁判後半の、レジナンド大尉の虚偽証言をあしらう様などは痛快だった。ストーム法務長官は敵陣でありながら公正な人物として描かれており、そうした作風も好ましい。
 さらに、法廷ではジェームズ・アンズウェルの無罪が評決された時点で決着がつくのだが、そこでは「真犯人」は明らかになっていない。エピローグ「本当に起こったこと」でHM卿が真犯人を名指しする。そうした構成の妙も本作を名作たらしめている大きな要素だと感じた。
 読んだのは2015年の新訳版だったので、きっとずいぶん読み易くなっていたのだろうとも思う。

No.27 7点 okutetsu 2019/08/20 20:24
トリックはまぁそこそこという感じですが
法廷モノとしてかなり楽しめました。
まぁあんだけ新証言がバンバンでてきたら検察側はキツイよねと同情してしまう。

No.26 7点 ミステリ初心者 2019/02/09 01:52
ネタバレをしています。読んだのは新訳版です。

 HM卿のキャラクターが好みです。そのため、苦労なく読むことが出来ました。180pくらいのHM卿が、キレかけて(?)「シッ、シッー!」と言っていたシーンが好きです。
 作品の始まりから不可思議な状況で、一気に惹きこまれました。物語中盤らへんで、ジミーの災難はエイヴォリーの勘違いから発生したものと明かされますが、密室の謎は解けません。物語終盤で密室の謎が明かされますが、犯人はまだわかりません。何が起こったのか?どうやったのか?誰がやったのか?よくばり3点セットで満足度が高い本格推理小説でした。

 私は、密室の謎はさっぱりわかりませんでした。ただ、犯人とその行動はだいたい見当がつきました(というか、犯人はややわかりきった感じか)。
 途中、アメリアとスペンサーの共犯を疑っていました。動機は遺産ほしさに。アメリアが実行犯。ジャケットの下にゴルフ服を着ていて、犯行時にジャケットを脱ぎ、エイヴォリー視点では"ユダの窓"からは服しか見えず、エイヴォリーはスペンサーだと勘違いする・・・というとんでも推理をしていました(笑)。それだと、クロスボウで狙いがつけられないし、エイヴォリーがダイアーにアメリアの車を取りに行かせるのは矛盾してしまいますね。

 以下、難癖ポイント。
 密室ものとしては、あまり好みではありませんでした・・・。
 エイヴォリーはなぜ書斎から矢を出すことを容認したんでしょうか? HM卿も言及していましたが、レジナルドに傷害偽装の罠を仕掛けるならば、矢は書斎になくては変です。これについて、私は結構悩んでいたんですが、結局なんやかんやで片付けられたのはガッカリです。
 事件当時、霧が濃かったようです。ジミーは少し遅刻し、ダイアーも車を取りに行ったときは少々遅れてました。HM卿のメモでは、アメリアがスペンサーを迎えに行くのが"すごいスピードだ"とかいう記述がありましたが、結局関係なかったんですね。これ、いろいろ考えちゃいました(笑)。

No.25 6点 レッドキング 2019/02/04 12:26
トリックそれ自体を箇条書きされたら小学生向けレベルだろうに かくも面白い法廷サスペンスに仕上がっている。

No.24 7点 弾十六 2018/11/10 06:21
JDC/CDファン評価★★★★☆
H.M.第7作。1938年出版。ハヤカワ文庫で読了。
メモのへんな合いの手「ガブリ ガブリ わあい」(Gobble gobble. Phooey.) 一体なんですかね?
まともな人がこんな殺害方法や密室トリックを思いつくかな?というのが最大の難点ですが、作中に引用される「犯人はどうでもいい、どうやった?」というセリフに共感してしまうのがJDC/CDファン気質。
強烈な状況設定から始まり、中盤の小ネタが素晴らしい。大ネタは何故か皆さんクイズで知ってて(私もそうなんですが)その妙なポピュラリティが面白いと思います。
英語をよく知らないのですがjudas windowは普通に使われる言葉なのでは?「(独房の戸などの)覗き穴」という通常の意味を、ジムはユダの窓が大嫌い、のくだりで割注などを使って示すべきだと思いました。(ジムの発言がイミフになっちゃいます)
銃は(私の大好きな)ウェブリー&スコット自動拳銃38口径が登場、M1910ですね。ポケットに気軽に入れて持ち運ぶには、ちょっと大きめです。(大きさ203x173mm、重さ1kg)

No.23 8点 makomako 2017/07/02 10:38
 はじめの設定に驚かされました。
 こんな密室、解くのは無理でしょう。
 登場人物も少なく読みやすい。かなりの迫力があり、基本的には一発トリックの小説なのにここまで読者を引っ張り続けるのは、作者の力量なのでしょう。
 精緻な検証とまあ納得のいく結論でしたので、すごいなと思います。
 ただ精緻に傾くあまり、いろいろな考察が入り乱れてごちゃごちゃと長たらしいのは否めません。もう少しすっきりとさせた方が私にはよいのです。
 あくまでも細部までこだわって作り上げた美学なのでしょう。
でもとてもすごい作品であることには変わりありません。

No.22 7点 いいちこ 2017/04/21 21:54
ビジュアル映えするものの、小粒でフィージビリティに難のあるトリックを「ユダの窓」というキャッチーなネーミングで演出したアイデア、犯人たり得る人物が限定されたなかで、サプライズを演出した人物造形・ストーリーテリングを評価

No.21 6点 sophia 2016/05/17 22:44
去年出た創元推理文庫を読みました。訳が読み易くてよかったです。
内容については、「三つの棺」と同じく大きな瑕疵がありますね。間違えますかねえ・・・二人いること、同じところに住んでいることは分かっていたはずなのに。この作者の作品は偶然によって事態が複雑になることが多いですね。H・M卿の言葉を借りれば「この世の出来事のとんでもない行き違い」ですか。
密室に関しても取り立てることもない物理トリックでしたし、法廷闘争を楽しむ作品と考えた方がよさそうです。しかし評価高いんですね。

No.20 6点 take5 2016/05/14 22:43
400ページ休憩入れて4時間弱
ドンデン返しよりも楽しめたのは
法廷のやりとりです。
80年の作品としては、
というよりカーの作品としては
私にはとっつき易いです。
しかしHM卿がとってもとっつき易いかと言えば
そうでもない、完全に個人の嗜好ですが。
余りにもトリックの説明がもったいぶっていて、
私は文中で苦悩しながらも
落ち着いて歩むキャラクターの方が好きです。
完全に個人の志向ですが。
全く関係ない話ですが、
創元社、文庫で1000円の時代です。2015年版

No.19 10点 nukkam 2016/05/08 04:21
(ネタバレなしです) ドアも窓も施錠された部屋で被害者と一緒だった唯一人の容疑者。普通ならこの人が犯人でしょうが、そうでないならこれは密室殺人事件ということになるという、1938年発表のH・M卿シリーズ第7作です。物語のかなりの部分を裁判シーンが占める異色の本格派推理小説ですが、実に見事な出来映えです。H・M卿が弁護士の資格を持っていることは過去の作品でも紹介されていますが、実際に法廷で活躍しているのは本書ぐらいです。密室トリックはトリック紹介本などでネタバラシされるぐらい有名ですが決してトリックだけに頼った作品でなく、法廷シーンがとにかくスリリングで面白いです。法廷で次々に出てくる爆弾証言にある時はハラハラし、ある時は思わず喝采したくなります。密室の謎解きだけでなく、アリバイ表を使った分析などもあってこれぞまさに本格派の謎解きの見本と言える作品です。

No.18 9点 E-BANKER 2016/02/14 11:42
本サイトでの書評もついに区切りの1,200冊目に到達!!
(いやぁーめでたい、メデタイ、目出度い・・・)
ということで何を記念の書評にしようかちょっと前から悩んでいましたが、結果として本作をチョイスすることに。
(コレともうひとつで悩んだのだが・・・)
「三つの棺」や「火刑法廷」とならび、カーの最高傑作と名高い作品なのはもちろんだが、黄金期の本格ミステリーを代表する作品でもある。1938年発表。
最近創元文庫で刊行された新訳版で読了。

~1月4日の夕刻、J.アンズウェルは結婚の許しを乞うため恋人メアリの父親E.ヒュームを訪ね書斎に通された。話の途中で気を失ったアンズウェルが目を覚ましたとき、密室内にいたのは胸に矢を突き立てられてこと切れていたヒュームと自分だけだった・・・。殺人の容疑者となったアンズウェルは中央刑事裁判所で裁かれることになり、HM卿が弁護に当たる。被告人の立場は圧倒的に不利、十数年ぶりに法廷に立つHM卿に勝算はあるのか?~

今さら評するまでもない傑作。
ということで書評を終えてもよいのではないかと思えたほどの出来栄え。
他の多くの方も評価しているが、これほど秀逸なプロットはお目にかかったことがないほど。
当初は比類ないほど堅牢に立ち塞がっていた密室がHMの頭脳によりガラガラと崩れ去るカタルシス!
意外性溢れるフーダニットなど、まさに本格ミステリーのひとつの完成形だと思う。
(ちょっと褒めすぎかも?)

本作を有名にしたのはもちろん例の密室トリックなのだが、実現性云々は置いといて、とにかくそのインパクトがすごい。
「ユダの窓」というタイトルで読者の興味を惹きつけつつ、ここまでビジュアル的にも見事なトリックはないだろう。
ただ、本作のプロットの妙はそこではない。
目の前に見えている表の事件の裏側に、二重三重に仕掛けられた「作為」と、それをひとつひとつ解きほぐすHM卿の推理過程、それこそが真のメインテーマ。
終盤、HMの推理過程に沿った形で当日の時間経過表が挿入されているのだが、そこに作者の欺瞞の数々が込められているのだ。

いやいや、やはり名作に相応しい内容だし、香気すら漂っているかのような作品。
本作が後年の作家に及ぼした影響は計り知れないように思える。
これほど美しいミステリーは今後お目にかかれないかもしれない・・・そんなことを感じさせられた。
高評価なのは当然。
(巻末の四名のカーマニアによる座談会も読みどころ。)

No.17 9点 青い車 2016/01/31 20:15
トリックだけ取り出せば、あまり感心できるものではありません。この方法でどれだけ確実に相手を殺害できるのかは、大いに疑問。しかし、ストーリーの面白さはディクスン名義では屈指のものです。言い逃れできない状況で恋人の父親殺しの容疑をかけられた男、彼を救うためH・M卿が繰り広げる白熱した法廷シーン、意外な真犯人と動機と、実によく練られた構成です。トリックの弱さを補ってあまりあるストーリー・テリングの巧みさはまさに傑作と呼ぶに相応しいものと思います。また、けして褒めてはいないトリックではありますが、それを暗示するタイトルの付け方はなかなか洒落ています。

No.16 9点 ロマン 2015/10/20 11:24
不可能犯罪の巨匠カーター・ディクスンの傑作。二人のいる密室で片方が死体で発見された。その人は飲み物に薬を混ぜられたと主張するも、デカンターは減っておらず、グラスも濡れていない。あらゆる状況証拠が彼が犯人だと示すなかでヘンリ・メリヴェール卿が弁護する。犯人が使ったという「ユダの窓」。続きが気になり、ページを捲る手が止まらなかった。ストーリーが進むにつれて見事に筆者の手の上で踊らされていた。

No.15 8点 mini 2015/07/28 09:58
明日29日に「ユダの窓」が刊行される、流石にこれは書評済だったが新刊に合わせて一旦削除して再登録
いやー、「ユダの窓」の新刊と聞いて、「火刑法廷」「三つの棺」に続く加賀山氏による新訳か、と思っていたらさぁ、ちょと待てちょと待てお兄さん!版元が創元文庫だったのでビックリ
これまでカーの3大名作「火刑」「棺」「ユダ」は早川独占というイメージだったが、創元が一角を崩した格好になったわけだな、今後もしかして「火刑」「棺」にも手を伸ばす可能性も有るのだろうか、ただ早川も「火刑」「棺」の新訳を出して間もないしなぁ、そうなったら完全に競合だな

さて私は、”代表作”、”最高傑作”、”入門向き”という称号をはっきり区別する主義である
どういう定義かと言うと、最高傑作というのは文字通りの意味で説明の用無し
問題は代表作という用語で、最高作と混同して使う人が多いが、この両者には明確な差異が有る
最高作は出来が一番なら異色作でもいいのだが、その作家にとっての異色作は絶対に代表作とは呼べない
代表作とは出来栄えではその作家内で仮に3~4番目位の出来でもかまわない、もちろん出来の悪いものでは駄目だけど
代表作と言うのは、その1作を読んだだけで、その作家が”あぁこんな作風なのね”、と理解出来る作の事である、つまり”その作家らしさ”が出ている必要が有り、だから異色作では駄目なのだ
そして代表的な作がいくつか有る中で、比較的に初心者が読んでもとっつき易いのが”入門向き”である

ではカーの場合はどうか
私が選ぶカーの最高傑作は「三つの棺」である、しかしこれは入門には全く向かないし、代表作と呼べる要素もあるが異論も出るだろう
「火刑法廷」も入門向きではない、理由は皆様お分かりでしょう
私だったら入門書には「魔女の隠れ家」を選ぶが、代表作選定についてはカーの場合難しい、ちょっと1作に決められない
さてそこでだ、「ユダの窓」である
「ユダ」は代表作とは呼べない、何故ならカーらしさの重要な要素の1つであるオカルティズムが無いからだ
さらには「火刑法廷」がその題名に反して法廷ものでは全然無いのに対して、「ユダ」は法廷ものに特化している異色性も有って、異色作は代表作に非ずの原則に反する
そうなると「棺」とは別のもう1つの別格最高傑作みたいな位置付けだろうか、最高って言うのだから1作に絞らなきゃ駄目、とか言われたら苦しいが(笑)
しかしだ、カーという作家に入門するには不適だが、一般的なミステリー入門には相応しい
つまりカーの中では、という縛りを解き、単にミステリー全般での入門書としてなら通用する、「ユダの窓」とはそんな作である

短編レベルの小粒なトリックだし、これを事件が起きて捜査陣が来て調査し、そこへ徐に探偵役が登場し、といったような普通の書き方をしたらせいぜい水準作位にしかならなかったろう
一方で、不可能状況抜きの平凡な事件性で法廷場面に終始したら、カーの筆力をもってしても普通の法廷もの以上には成り得なかったと思う
トリック小説と法廷ものとの、プリウス並みのハイブリッド感覚、これこそがこの作の傑作となった理由だ

No.14 8点 斎藤警部 2015/07/23 13:33
相当に若かりし頃、不埒な推理クイズか何かでトリック完全ネタバレだったんですが、そんなんお構いなしに最後までハイテンション読破してしまいました。 誰かに嵌められ窮地に落とされた若き主人公がHM卿に救われる迄のジェットコースター・ストーリーはその大半が裁判所の中!!

それにしても、この密室殺人のメイントリックこそ「心理的物理トリック」と呼ぶに相応しい代物ですよね、小説の題名付けも含めて。 ただ、どうもやる事がせせこましい(?)のと、やはり「被害者さんは、バカだったんですか?」と犯人さんに聞きたくなる例の大前提があるせいか、個人的にこの殺人方法にはさして賞賛を与えたくない。それでもなお歴史的密室トリックだと思う。

まトリック云々はともかく、物語自体とても良かったですよ。 構成美にもやられた。

No.13 8点 ボナンザ 2014/04/08 21:14
法廷ミステリとしても秀逸だが、ユダの窓の正体も実にうまい。


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カーター・ディクスン
2001年09月
第三の銃弾<完全版>
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かくして殺人へ
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孔雀の羽根
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赤い鎧戸のかげで
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パンチとジュディ
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時計の中の骸骨
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墓場貸します
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読者よ欺かるるなかれ
平均:6.61 / 書評数:18
1951年01月
白い僧院の殺人
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