皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 本格 ] 赤後家の殺人 HM卿シリーズ |
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カーター・ディクスン | 出版月: 1958年01月 | 平均: 6.38点 | 書評数: 16件 |
東京創元社 1958年01月 |
東京創元社 1960年01月 |
東京創元社 1960年01月 |
No.16 | 3点 | レッドキング | 2019/09/20 12:29 |
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魅惑的なオカルト冒頭から十八番の密室殺人展開に広がり、フランス革命にまで辿る歴史浪漫溢るる物語を経て、竜頭蛇尾な尻つぼみ感たっぷりな結末で終わる。まあ、あんだけ毎度毎度「密室」「不可能」やってんだから、たまにはこんな「脱力感」あふれる「スカ」なトリックもあるだろう。 |
No.15 | 6点 | クリスティ再読 | 2019/08/04 23:45 |
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本書の冒頭がスティーヴンソンの「新アラビアンナイト」なことは憶えていたんだけども、改めて読むとホントに「新アラビアンナイト」になぞらえて設定してたんだなあ。でこの冒頭とか中盤のサンソン一家の話(15年くらい前に新書でベストセラーがあったね)とか、カーの厄介なところは元ネタのある話に生彩が出るあたり...この人結構「本から本を作る」タイプの作家だからねえ。
皆さん結構評価が割れてる作品になるようだ。評者一番?なのは、細部細部は結構辻褄が合っているのだけど、全体で見ると事件の全体像が掴みづらいあたりかな。犯人の全体的な狙いが分かりづらいものだし、プランの途中変更がいろいろあって、結果的に迷彩がかかったようというか、何がどうなっている?が本当に掴みづらい。読了直後でも他人に真相を説明して!と要求されたとして、説明しきれる自信がないや。凝りすぎて全体的な構成に失敗しているような印象がある。 それでも導入から殺人に至る流れとか、フランス革命下のパリでのロマンスとか、印象に残る場面が多い作品であることも確かである。良い部分もある失敗作、くらいの位置が相応だろう。 |
No.14 | 5点 | 弾十六 | 2018/10/31 23:07 |
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JDC/CDファン評価★★★☆☆
H.M.第3作 1935年出版 創元文庫(1960)で読みました。 弓弦城を再読してないのですが、冒頭から判断すると続編的な感じ。まー誰が誰でも全然関係ないので気にする必要はありません。 発端にはゾクゾクさせられますが新アラビア夜話(スティーブンソン)を先に読んでたほうが良いかも。(本編とは関係なし。雰囲気作りですね) いつもの通り人物描写が下手なのでごたつく序盤、なかなかスリリングな中盤を経て、全員集合、謎解きが始まるよ!という流れ。(最後は大勢で押しあいへし合いという変な場面) 小ネタはまあまあ、でも大ネタが残念。警察の見落としを期待してはいけません。それにあのトリック(p387)はないでしょう。 フランス革命ネタは作者の趣味全開ですがいささか退屈。興味深かったのはロイヤル スカーレット事件(p312)これ書かれざる事件なのかなぁ。 全体的にバラバラなネタのごった煮な感じです。インスピレーションと飽きっぽさが同居するJDC/CDらしい作品ですね。 以下トリヴィア、原文は参照出来てません。 p124 タラッタラッ、大きな悪狼が…(H.M.の鼻歌): 「三匹の子豚」(ディズニー1933)のWho's Afraid of the Big Bad Wolfかな?{★R3/10/16追記}原文“Ta-ta, big bad wolf; who's afraid of—” 「バイバイ、悪狼」だったのね。 p172 ラ マルセイエーズ: 歌詞は結構血なまぐさいです。 p306 海の妖女たちはどんな歌を歌ったか…: Sir Thomas Browne, "Urn-Burial"(壷葬論)ですね。モルグ街のエピグラフで有名。 p344 ルール ブリタニア(支配せよ、大英帝国)Rule, Britannia: イギリス国歌、スチュアート党が愛好、と宇野先生が注釈しています。詞James Thomson、曲Thomas Arne(1740) 名言が一つ: イリュージョンは真理よりよっぽど貴重ではるかに美しい(p366) JDC/CDのモットーですね…{★R3/10/16追記}原文the illusion is much more valuable and fine a kind of thing than the ass who wants to upset it |
No.13 | 5点 | 蟷螂の斧 | 2018/09/08 20:13 |
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全体に冗長で、単純なものを、わざと複雑化したような印象を受けてしまいました。よって、ごった煮のようでスマートさが感じられなかった。ハウダニット(毒殺)は好印象です。ただし、謎の声は拍子抜け…(苦笑)。 |
No.12 | 9点 | nukkam | 2016/05/17 19:19 |
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(ネタバレなしです) 1935年発表のH・M卿シリーズ第3作の本格派推理小説です。ちなみに「赤後家」(The Red Widow)というのはギロチン(断頭台)の意味だそうです。この作者得意の不可能犯罪を扱っていますが、単に密閉された部屋での殺人というだけでなく死んでいるはずの被害者が部屋の外からの呼びかけに答えていたという状況設定は絶妙な謎づくりです。第9章で語られる、部屋にまつわる伝説も物語の雰囲気を盛り上げて効果抜群だし中盤では過去の事件のトリックがH・M卿によって明らかになりますが、しかしそのトリックは現在の殺人では使えないという展開もまた謎を更に深めていきます。無茶な点、不自然な点、都合よすぎる点など問題点もないわけではありませんが、冒頭の「いったい部屋が人を殺せるもんかね」というせりふだけで私はもう十分に「ごちそうさま」でした(笑)。 |
No.11 | 7点 | 青い車 | 2016/01/28 23:50 |
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細部は忘れていて、メインの毒殺トリックを評価の対象としますが、これが実によくできていてシンプルながらユニークです。H・M卿シリーズの中では出色といっていいでしょう。作品の雰囲気もオカルト趣味な彩りという作者の持ち味が存分に発揮されていて高水準です。でも、最初に述べたとおり物語の細部は失念しており、本作に限らず僕にとってカーの作品はトリックのイメージだけは鮮烈に覚えていても動機などは記憶に残らないものが多く、最悪の場合誰が犯人だったのかすら忘れてしまうものさえあります。アガサやクイーンならそんなことはまずないのですが、そのあたりで僕のカーへの思い入れは他の大家たちに比べて一枚劣ります。 |
No.10 | 8点 | ロマン | 2015/10/20 12:14 |
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第一の殺人のトリックは秀逸。毒の性質、毒殺方法のヒントが散りばめられているが、カーらしいオカルト趣味が、うまくそこから注意を逸らしている。第二の殺人及び真犯人の心理や目的については、人によって評価が分かれるかもしれない。個人的には、犯人の特定は十分にできるので、動機は後からついてくるものとして捉えても良いように思えた(まあ、部屋からの返事とか、冗長な要素は多いのだが)。総じて言えば、非常に面白い一冊。H・Mはややおとなしめだが、マスターズはよく頑張った。 |
No.9 | 5点 | 斎藤警部 | 2015/05/25 15:18 |
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舞台の雰囲気は素晴らしく良いですよね。。 謎は魅力少なし。 トリックは凡庸。 結末は忘れた。 だけどあの屋敷と部屋の本格ミステリにお誂え向きの華やいで不気味なムードは、今でも鮮やかな記憶として留まっています。 |
No.8 | 8点 | ボナンザ | 2014/12/03 22:06 |
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味わいは魔女の隠れ家に近いが、トリックや真相は更に一枚上手で、ディクスン名義初期の名作と呼ぶにふさわしいですね。
白い僧院と並び必読。 |
No.7 | 6点 | 文生 | 2012/04/09 12:56 |
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得意の怪奇性と不可能犯罪の要素を存分に盛り込み、知名度もそれなりに高い作品だが、やはり毒殺による密室というのが不可能性を薄め、トリックについても見当がつきやすいのが難点。 |
No.6 | 6点 | りゅう | 2011/04/17 07:37 |
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読後の感想を単刀直入に言えば、複雑でわかりにくく、すっきりしていないということです。私の読んだカー作品の中でも、「三つの棺」に次ぐ読みにくい作品でした。「三つの棺」は翻訳に問題があると思いますが、この作品はカーの表現や設定のわかりにくさに問題があると思います。この作品の不可能状況も、相変わらず、多くの偶然の積み重ねに助けられて成立しているのですが、このような魅力的な不可能状況を創造する作者の手腕にはいつも感心します。フーダニットとしても、犯人の必然性は納得できるものです。ミステリとして面白い要素が詰め込まれていると思う反面、瑕疵も多い作品だと思います。
(完全にネタバレをしています。要注意!) ・ 設定上でいくつか理解できない、不自然と思われる箇所があります。アーノルドは家族の中に狂人がいないかどうかを調べることを依頼され、調査するためにベンダーを潜入させているのですが、こんなことをするとは思えず、取って付けたような設定に感じました。また、後家部屋での実験の際に、ベンダーは自分が選ばれるように細工をするのですが、選ばれようとした理由が釈然としません。 ・ 2つの事件で使われているトリックは、それぞれ面白いものですが、問題点もあります。毒殺トリックに関しては、検視で本来調べられ、発覚するはずの事項だと思います。催眠術による偽証トリックに関しては、それを行いうる人物が選ばれており、個人的には納得できるのですが、人によってはアンフェアと感じるのではないでしょうか。 ・ 第1の事件で、アーノルドは第一発見者となって、酒壜等を回収することが出来ましたが、アーノルドは現場の後家部屋を見たことがないし、第一発見者となって、酒壜等を回収出来るかどうか確信が持てなかったはずです。それにも拘らず、アーノルドは無用心にも酒壜をベンダーに渡した際の話をガイに聞かれています。そのおかげで、ガイは後家部屋での実験時に死人に代わって返事をすることになった....。かなりのご都合主義だと思います。 |
No.5 | 8点 | E-BANKER | 2010/12/11 20:34 |
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H.M物の第4作目。
創元文庫版では不気味な表紙が印象的・・・ ~その部屋で眠れば必ず毒死するという、血を吸う後家ギロチンの間で、またもや新しい犠牲者が出た。フランス革命当時の首斬り人一家の財宝を狙う企てに、H・M卿独特の推理が縦横にはたらく!~ 堅牢な密室や容疑者たちの完璧なアリバイ、血塗られた歴史に彩られた一家、怪奇趣味など、まさに「これぞカー!」と言うべきガジェット満載の作品です。 H.Mを悩ませることになる第1の殺人の毒殺方法については、推理のための材料に伏せられている部分があるため(被害者が○○へ行っていた)、やや不親切かなぁという気がします。 本作については、やはりフーダニットの解法の見事さを味わうべきだろうと思います。 手帳の件や動機についてなど、真犯人を特定できる伏線はきちんと張られてるので、ラストのH.Mの推理に十分なカタルシスを感じました。 途中、フランス革命時代に死刑執行役を務めた一家の歴史(ギロチンですね)などはドロドロした怪奇性も十分に味わえ、乱歩が本作を高く評価していたというのも何となく分かる気がします。 (後家部屋ってそもそも何?) |
No.4 | 6点 | kanamori | 2010/06/25 20:56 |
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「人を殺す部屋」テーマを扱った、H・M卿もの第3作。
怪奇趣向はまずまずですが、密室内の毒殺という設定は不可能性を薄めているため、あまり効果的な手段でないように思います。 密室トリックの色々なヴァージョンを書きたかったのでしょうか。 |
No.3 | 9点 | ミステリー三昧 | 2009/11/26 20:20 |
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※ネタばれあり<創元推理文庫>H・M郷シリーズの3作目(長編)です。
シリーズ初期の代表作『プレーグコートの殺人』『白い僧院の殺人』を読んできましたが『赤後家の殺人』が一番好きです。読めば読むほどに増していく不可能状況の数々は本格ファンを唸らせること間違いなしです。「部屋が人を殺す」という伝説が醸し出す怪奇な雰囲気も好きです。 第一の殺人は密室状況かつ全員に鉄壁のアリバイがある時点で、毒を利用した〇〇殺人であることが簡単に予想付きそうです。なのでメインは密室トリックではなく「毒殺の方法」になりますが、私的には盲点を突かれた真相だったので高評価です。伏線もフェアに張られ(翻訳文にもよりますが・・・)説得力も高めです。この抜け道を察することさえできれば、犯人も分かるという点も素晴らしい。もちろん意外性に徹したフーダニットだけあって納得し難い部分もありますが「この人」でしかありえないという「状況作り」が秀逸です。 私的には「怪奇性」+「不可能犯罪」+「謎の合理的解決(フーダニットあり、ハウダニットあり)」の融合を見事に成功させた初期の傑作と呼べそうです。 |
No.2 | 6点 | 空 | 2009/05/14 21:32 |
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実は、この殺人トリックについては、毒の特性についての説明があったところでなんとなく思いついてしまいました。あと、すり替え用も用意していたという言い訳があるとはいえ、証拠品回収がうまくいかない可能性も充分あったと思われるところが気になりました。第1の殺人の動機が弱いのも不満な点です。
しかし、全体としては部屋の伝説にまつわる雰囲気もいいですし、途中の嘘の解決もそれなりに説得力があって読者を迷わせてくれます。乱歩等が言うほどの傑作とは思えませんが、この時期のディクスン名義作に共通する堅牢な構成を持った、なかなか読みごたえのある作品ではあります。 |
No.1 | 5点 | Tetchy | 2008/08/24 13:54 |
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人を殺す部屋とか昔の毒針仕掛け箱の話などガジェットは非常に面白いのだが、いかんせん冗長すぎた。シンプルなのに、犯人が意外なために犯行方法が複雑すぎて、犯人を犯人にするがためにこじつけが過ぎるような印象を受けた。
第1の殺人ベンダーの毒殺方法は非常に面白く、これぞカー!といった感じだが、やはり犯人の協力者であるベンダーがトリックを労してまで「後家の部屋」に入ろうとした根拠が強引であるという思いが拭えない。過去に過ごした4人が全て絶命しているという部屋にいくら友人の頼みとはいえ、自ら進んで入ろうとするだろうか? 拍子抜けしたのが、H・M卿が最後に真相を話すにいたって、どの辺で犯人がアーノルドであると解ったという問いに、初めて会った時にと答えた事。それだったら第2の殺人を食い止められただろう!! |