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[ 本格/新本格 ]
やぶにらみの時計
都筑道夫 出版月: 1961年01月 平均: 5.00点 書評数: 6件

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中央公論社
1961年01月

三一書房
1968年01月

中央公論新社
1975年07月

徳間書店
2021年11月

No.6 3点 ボナンザ 2023/04/15 21:27
都築らしい独創性だが、読みにくく話もあまり面白くはない。

No.5 3点 人並由真 2020/06/10 19:17
(ネタバレなし)
 大昔に購入したままだった中公文庫版で読了。

 少年時代に最初に手にした際は、冒頭からの二人称記述で鼻白み「なんじゃこりゃ、こんな気味の悪い小説、カナワンヨ」と放り出したような、そんなような記憶がある。
 そしたら日本語版EQMMのバックナンバーを集めていくうちに、レイ・ブラッドベリの短編にこれと似たような二人称記述の作品があり、ああ、当時の編集長だったツヅキはこれにインスパイアされたのだなとひとり勝手に納得していた。
(といいつつ、中公文庫巻末の海渡英祐による解説では、本作を執筆時の都筑は別のフランス作品に影響されたのだと記述してある。ただまあ、くだんのブラッドベリの短編も、頭の片隅ぐらいには残っていたものと思うけれど?)

 刊行から半世紀以上を経ても普遍的にショッキングなシチュエーションだが、真相に関しては結局は無理筋だよね。単純に一言で言えば、ここまでうまくことが進む訳がない。ただしその難しい部分を、物語の向こうの事情を曖昧にすることでなんとなく読み手に納得させてしまった手際はうまいとは思うけれど。

 フランスミステリ風の小粋な作品ではあるし、作中のミステリマニアたちのお喋りも基本的には楽しいが、まだ未読だったクリストファー・ブッシュの『完全殺人事件』の大ネタをさほどの必然もなくバラされたのには立腹した。

 それ以上に腹が立ったのはキチガイ男による子猫の虐待、惨殺描写で、物語の筋立ての上で特に意味があるものとも思えない。作者の陰惨な実体験を読者に追体験させようとかその手の下らない叙述か?
 
 上の二項で大幅に減点してこの評点。感情的には1点でもいいかとも思ったが、そこまで振り切れない自分にちょっと自己嫌悪。

No.4 6点 虫暮部 2018/09/14 12:51
 9割までは面白かったが、種明かしでがっかり。
 ネタバレしつつ書いてしまうが、どの道だまして最終目的を伏せたまま死地へ赴かせるなら、複数人のエキストラで芝居をするより、本人に直接“詳しい事情は言えないがしばらく誰それのふりをしてこのように行動してくれ”と頼む方が簡単かつ確実ではないのか。首謀者が妙に凝った手を使う心理的な裏打ちに欠けると思う。
 と書いていて気付いたが、その問題点を解消した“複数人が結託して、或る人に自分は他の誰かだと信じ込ませ、その上で自発的に過激な行動に走らせる”という話は、S氏のアレではないか。

No.3 6点 nukkam 2015/11/03 23:59
(ネタバレなしです) 本格派推理小説、ホラー、SF、ハードボイルド、時代小説と様々なジャンルの作品を書き、海外ミステリーの翻訳や評論まで手がけた都筑道夫(1929-2003)は器用さだけでなくモダンなセンスを持っていたと評価されています。1940年代後半から数多くの短編を書いていたそうですが長編作品は1961年発表の本書が第1作となります。国内ミステリーで初めて2人称形式を採用した実験性で知られています。前半は主人公(きみ)の記憶喪失(正確には主人公の記憶が人々から次々に否定される)を扱ったスリラー小説風なプロットですが、中盤での海外ミステリーを引用しながらの推理場面は本格派推理小説らしさを感じさせます。起こった犯罪の謎解きではなく犯罪を阻止できるかに物語の興味は移り、最後はハードボイルド的な虚しさを漂わせる結末を迎えるなど多面的な要素を持った独創性が光ります。作者の才覚を十分に示しています。

No.2 6点 kanamori 2010/07/03 20:38
著者が初めて書いた長編ミステリ。
泥酔して目覚めると周りから別人扱いされる主人公の自分探し、という設定自体はありふれていますが、全篇にわたって主人公の行動を二人称の「きみ」で押し通す語り口が洒落ている。
結末にサプライズを用意している訳でもなく、あくまでも軽妙なプロットを楽しむタイプのミステリ。

No.1 6点 こう 2009/02/07 23:44
 おそらく国内初の二人称小説でしょう。都筑道夫の実験精神あふれる作品の一つです。後年法月氏の「二の悲劇」を読んだときは全く意識せず気がつきませんでしたがこの作品を意識して作ったのだと思います。
 いわゆる「別人テーマ」の作品で朝起きたら隣に見も知らぬ女が寝ていて他人の名前を呼び自分が妻だという。自分の家に戻ると内縁の妻や隣人は彼のことを覚えていない、という発端から「自分探し」のストーリーが始まります。
 魅力的な書き出しからすると真相はかなりしりすぼみですしラストはとってつけたような感じですが趣向は現代でも通用すると思います。
 都筑氏の作品はミステリとして現代で通用するかはともかく面白い実験精神あふれる作品が目白押しなので一読をお勧めします。


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都筑道夫
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