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[ 時代・捕物帳/歴史ミステリ ]
くらやみ砂絵
なめくじ長屋捕物さわぎ
都筑道夫 出版月: 1970年07月 平均: 6.67点 書評数: 6件

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桃源社
1970年07月

桃源社
1978年08月

角川書店
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光文社
1997年03月

光文社
2010年10月

No.6 7点 レッドキング 2021/10/10 18:29
砂絵師はじめ江戸の異形非人達が探偵役のミステリ短編集第二弾。
・「不動坊火焔」 大店旦那と道楽息子、妾、祈禱師、賭場胴元に主役たちが入乱れての殺し合い騙し合い。4点
・「天狗起し」 通夜の「密室」の遺体が刺殺死体と入代り屋根上で見つかる。ダミーを挟んで捻り解決。8点
・「やれ突けそれ突け」 曲芸とエログロ、二つの見世物小屋を繋ぐ転落死事件の真相。4点。
・「南蛮大魔術」 大旦那衆を前に催された女奇術師の魔術。二重三重に捻ったホワイダニット。6点。 
・「雪もよい明神下」 火の見櫓から落下した刺殺死体と犯人消失トリック。ハウよりもホワットダニット。7点
・「春狂言役者づくし」 羽子板押絵の首が裂かれ、押絵モデルの役者が殺される連続事件の驚愕ホワイ。7点
・「地口行灯」 大店に押し込んだ二人組の強盗は前日に既に死体になっていた事件のホワットダニット。6点
平均6点だが、まるで鼠の様なあの連中が好きなので、1点オマケ付けちゃう。

No.5 7点 2020/07/09 07:13
 なめくじ長屋捕物さわぎシリーズ第二弾。昭和四十四(1969)年七月号から翌昭和四十五(1970)年二月号まで、前集に引き続き雑誌「推理界」に掲載された七篇を纏めたもの。「南蛮大魔術」と「やれ突けそれ突け」が入れ替わっているほかは、ほぼ連載通りの並び。目先を変える工夫なのか、関係者同士の思惑の変化や便乗行為など、複線化により事件を込み入らせるケースが目立ちますが、あまり効果は上がっていません。
 それでも通夜の晩、弔問客のひとりが刺し殺されて棺桶に入れられ、中に入っていた死体が母屋の屋根にかつぎ上げられる「天狗起し」と、殺されていたはずの二人の死人が押しこみに入る謎に絡めて、独創的なダイイング・メッセージを創出した「地口行灯」の出来は圧巻。特に北村薫氏がシリーズ・ベストに推す前者の解答は鮮やかです。
 「天狗起し」は第三集『からくり砂絵』収録の「小梅富士」と同じく、〈解決のことなど、まったく考えずに〉従兄が提出したシチュエーションに、都筑氏が必然性のある解決を捻り出しパズラーに仕立てたもの。本質的にはハウダニットで、動機が分かれば自然に不可能状況も解けるのがよく出来ています。三津田信三『首無の如き祟るもの』の、十三夜参りの密室を思わせるコロンブスの卵的解法。なお同趣向の長編には、物部太郎シリーズ『朱漆の壁に血がしたたる』があります。
 「地口行灯」の方はそれとは異なり一点突破ではなく、種々のアイデアを盛り込んだバランス型。加害者自身に己を告発させる発想もズバ抜けた物ですが、それを置いても事件がキッチリ作られています。第二の事件の脱出法なぞ、ここで使い捨てるには惜しいもの。かなり贅沢な短編と言えるでしょう。独創的なトリックは単品で出すよりも、カーター・ディクスン『ユダの窓』のように副次的に扱った方がよりゴージャスに感じられるようです。
 残りの作品で面白いのは、細工物の羽子板が破られそこに描かれた押絵の役者が次々に殺される「春狂言役者づくし」。価値観の逆転に加え手掛かりもさり気なく配置され、なかなかに読ませます。

No.4 6点 2018/04/06 23:36
なめくじ長屋捕物さわぎシリーズ2冊目の7作の中では、やはり第二席『天狗起し』が不可解な状況を一刀両断にするシンプルなロジックで一番鮮やかです。ただ死体を苦労して屋根の上に置く必要があったとは思えませんが、駄右衛門天狗ねぇ、うまいネーミングです。第七席『地口行灯』のダイイング・メッセージもいいですけど、その他にはオヤマの立ち聞きした会話から始まる第一席『不動坊火焔』、英国古典短編を無謀にした第六席『春狂言役者づくし』が気に入りました。第二席『やれ突けそれ突け』は小味。第四席『南蛮大魔術』は後の泡坂妻夫をも思わせる話ですが、最後のひねりの部分の論理は想像に過ぎない上、「役どころを教えておいたほうが、うまくいく」のはその場合でも同じでしょう。第五席『雪もよい明神下』は複雑にし過ぎと思えました。
第一席では悪役だったイブクロがその後の作品ではなめくじ長屋の仲間になります。

No.3 6点 ボナンザ 2014/04/08 01:05
このシリーズの中では出来はいい方。

No.2 6点 TON2 2012/12/10 17:48
光文社
 なめくじ長屋の住人、砂絵のセンセー、ユータ、アラクマ、オヤマ、カッパらが江戸の謎解きに挑むシリーズの1冊です。
 江戸の最下層の庶民の生活や、芝居小屋、見世物小屋などの娯楽が描かれていて、この時代の人たちの生活が感じられます。

No.1 8点 kanamori 2010/05/11 21:16
なめくじ長屋捕物さわぎシリーズの第2弾。
準レギュラーである岡っ引きの下駄常への助太刀の体裁を取りながら、ダミーの解決を提示する多重解決がパターン化しています。
棺桶の中の死体の入れ替りトリック「天狗起し」と、死人が泥棒に入るという謎の「地口行灯」が不可解性で双璧の秀作だと思います。後者は江戸時代の文盲があたりまえという常識を活かしたダイイングメッセージも唸りました。


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都筑道夫
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