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[ 本格/新本格 ]
髑髏島殺人事件
滝沢紅子シリーズ
都筑道夫 出版月: 1987年09月 平均: 5.00点 書評数: 1件

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光文社
1987年09月

No.1 5点 人並由真 2020/04/13 03:27
(ネタバレなし)
 中央線沿線の多摩由良駅西口にあるマンション「メゾン多摩由良」。そこの主任警備員の娘・滝沢紅子(通称コーコ)は、元学友の男女3人と結成する「今谷(いまだに)少年探偵団」、そしてプロの推理小説作家・浜荻たちとともに、これまで何回もアマチュア探偵として事件を解決してきた。そんな紅子の自宅の中に、ある日、見も知らぬ男の死体が転がっている。しかし警察に通報して戻ると、死体の傍にあったはずの新刊ミステリ『髑髏島殺人事件』がなくなっていた? 紅子たちは、少し前にメゾン多摩由良に転居してきた新鋭推理作家で『髑髏島殺人事件』の作者でもある風折圭一に接触。一方で死体が遺した? ダイイング・メッセージの謎に迫る。だがそんな一同の周囲でさらなる事件が……。

 当時の都筑道夫が15年ぶりに書き下ろした作品で「退職刑事シリーズ」と世界観を共有する(紅子は退職刑事の実の娘)滝沢紅子シリーズの長編第一弾。ちなみに作者の著作(書籍)としては初めて「殺人事件」の四文字が入った一冊だそうである。
 かねてから読みたいと思いながらいつものように本が見つからず、昨晩、蔵書の山をひっかきまわしたらようやく出てきた(笑・汗)。

 ちなみにいかにもクロ-ズドサークルの絶海の孤島ものっぽいタイトルだが、事件は都内の大都会で全編が進行。タイトルは作中に登場する架空のミステリ作品の書名だ。キーティングの『パーフェクト殺人』と同方向の趣向(?)だが、なぜかこっちはあまり面白い感じがしない。作者はウケると思っていたのであろうか?

 ダイイング・メッセージへの執着そのものは悪くないけれど、例によってツヅキ流のルサンチマンいっぱいのトリヴィアを迂回するので推理の余地はあまりなく、最後の真相もああ、そんなものですか、であった。しかし三人目の被害者の叙述は、客観的な情報が読者目線で与えられない上、紅子たち自身の捜査も限りなくテキトーで、いいのか、これ? という思い。犯人の正体も犯罪の実態もなんだかなあ……という感じである。

 よかったのは、紅子の仲間でミステリ翻訳家の「タミィ」こと平岡民雄がマイケル・アヴァロンのエド・ヌーンシリーズを翻訳中だという描写。もちろんこの作品のなかだけでの話題で、1980年代の後半にエド・ヌーンものを翻訳刊行してくれる出版社と翻訳家がもし現実にあったら&いたら、オレは出版された本を家の神棚に置いて、一週間は拝むだろう(笑・涙)。
「いい夢を見せてもらったぜ……」と、トッド・ギネス風に言って、この感想はおしまい(笑)。


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