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[ 本格/新本格 ]
山魔の如き嗤うもの
刀城言耶シリーズ
三津田信三 出版月: 2008年04月 平均: 7.20点 書評数: 35件

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原書房
2008年04月

講談社
2011年05月

No.35 10点 密室とアリバイ 2023/05/03 22:24
この辺から作者の手の内も見えやすくなってくるが見事に引っかかってしまった

No.34 6点 いいちこ 2023/02/27 12:55
導入部をはじめ、著者の確かな力量を感じさせる力作ではあるが、アラも相当に目に付いた。
まず、舞台装置としての超常現象があまりにも多すぎる。
それらの一つひとつをことごとく、極度の恐慌状態に陥っていた登場人物の誤認と認定していくのだが、かなり無理も感じられ、読者の納得感は得にくい。
ここまで丁寧に説明するアプローチをとるのであれば、これほど大量に設定する必要はなく、却って逆効果になっている。
また、最終盤に二転三転の展開にもっていくのであれば、ここまで皆殺しにするのは得策ではなかったように感じる。
残された容疑者が非常に少なくなり、いずれの真相も予測の範囲を出ないうえ、真相解明プロセスに論理性が乏しく、説得力にも欠けた。
以上、世評が高い点も理解できるものの、やや批判的な立場から6点の下位

No.33 7点 みりん 2023/01/17 01:25
毎度人間には不可能(に見える)状況を作り出すのがとても上手いです。

No.32 7点 斎藤警部 2022/09/09 12:40
「警部、どうやら刀城先生のことが気に入ったみたいですね」
「そ、そうかなぁ……」


やたらコージーな空気感で怖さのコの字も無いけど、複数レベルの真相が壮観な地層を成して迫る解決篇はなかなか凄い。 何しろ「連続見立て殺人」に「一家消失事件」が派手にぶつかったわけだ。 「はじめに」で補完説明される、(一覧表の)登場人物を絞る趣向の意趣返しめいたアレがまた、効いてるね。

んでこれはやはり、某有名古典の大応用編ですかな。ディヴァインをも思わせる真犯人隠匿には見事やられました。或る人物が中盤まで相当に怪しい存在として引っ張られるのも、後に来る反動も、実に巧みな大細工。或る属性の者が二人いるってのも何気に有効な目眩し。

屍体の顔を焼いた理由、服を脱がした理由、半周りの逆説には感心しました。悪意を悪意で乗っ取るとかね。。バラバラ屍体にした理由は、いくら何重もの意味合い云々とは言え、ちょいとカックンでしたが。怪異体験の真相、随分とギャフンだったな。。 あまりにペラくて涙も出やしねえ多重解決気取りはちょいとアンタ、鼻白んじまうじゃないのさ。でも前述の通り、真相はやっぱり、厚みがあって、凄かった。

にもかかわらず、この拭いきれない、憎みきれない安っぽさは本当に。。 ロジックも各所でしっかり構築されてるんだけど、何というか、建材の一つ一つが安いんだよな。 俺も好きな福◯◯が、まさかの致命的手掛かりに。。 


「地元の警察と揉めるようなことがあれば……まぁ、連絡しろ」
「えっ……」
「じゃあな、私は忙しいんだ」

No.31 7点 ALFA 2022/03/21 11:39
前作に比べて文章は格段に読みやすくなっている。
ネタバレします。




数多い目撃証言が、語る人物によってあいまいだったり恣意的だったりするのは当然で、それを裏読みしながら謎を解くのがミステリーの醍醐味だから問題はない。ただ冒頭に置かれた刀城言耶の「はじめに」にアンフェアぎりぎりの記述があるのはあまりにセコいミスリードで好ましくない。

まずは一家消失の大トリックが痛快。これにもダミーの解釈がつくのは楽しい。
一方、真犯人については、お約束の反転そのものは意外性があっていいが、動機が「金鉱狙い」から「個人的仕返し」へと卑小になってしまうのは残念。何より犯行の幇助者(消極的な共犯)を必要とすることで、ミステリーとして弱くなってしまう。

登場人物のキャラ立ちや、メタ部分を含めた反転の衝撃度は前作「首無の如き祟るもの」ほどではないが、読み応えのある長編です。

No.30 8点 mediocrity 2021/01/08 00:04
良くも悪くも出来すぎていると感じた。圧巻のストーリー展開だが、あまりにもうまく物事が運びすぎる。想定外の出来事が起こっても、とっさの機転をきかせて、計画段階以上にうまくいったとか。
あと、この時期の作品にやたら多いが、最後のどんでん返しがくどすぎる。自分の一番嫌いな「途中の解決の方が良かった」パターンではなかったのでまあ許容できるが。
もう1つ。前書きのとある部分、自分はあの人も含まれていると解釈していたので最後?となった。

No.29 6点 パメル 2020/10/27 19:22
刀城言耶シリーズ第四弾。忌み山で続発する無気味な謎の現象、正体不明の山魔、奇怪な一軒家からの人間消失、刀城言耶に送られてきた原稿には、山村の風習初戸の成人参りで恐るべき禁忌の地に迷い込んだ人物の怪異と恐怖の体験が綴られていた。
不可解な密室からの人間消失、地蔵歌の見立て殺人、アリバイトリックなど、いかにも本格らしい趣向で、その醍醐味を満喫させてくれる。
土俗、怪奇、因習、オカルト趣味、閉塞感を独特の恐怖の演出で禍々しさも迫力満点。
舞台設定の醸し出す雰囲気は好みだし、息もつかせぬ展開に複雑で魅惑的な謎解きに多重のどんでん返しに強く惹かれる。横溝正史氏のある作品を想起させる仕組みがあり、知っている人ほど誤った方向に誘導されるかもしれない。前作に比べ、随分と読みやすくなったし精緻な構図と構成の妙を堪能できる。
ただ、前作に比べ切れ味がなく、手法にやや物足りなさを感じた。また、前作でも思ったが現場となった土地や屋敷内などの位置関係を示す地図が欲しいと思った。

No.28 7点 じきる 2020/10/11 12:32
刀城シリーズならではのキレの良い力技を楽しめる一家消失トリック。それを補足する伏線が丁寧なのがこの作者の良い所ですね。
見立ての理由がこじつけ臭いのが気になったが、リーダビリティは初期よりも向上しています

No.27 8点 ボナンザ 2020/08/03 22:08
冒頭の魅力的な謎の提示から、ラストまで一気に畳みかける様が圧巻。首無は別格にしてもシリーズ中でも上位の出来だと思う。

No.26 8点 雪の日 2020/04/15 15:17
前作に比べてトリックは劣るが、読みやすくなっていた。

No.25 7点 レッドキング 2020/03/29 22:50
これ大好きだ。わが生涯で愛する(「優れてる」ではなく「面白い」でもなく)「愛する」ミステリベスト10に入る。
  第一位:「翼ある闇」 
  第二位:「赤い右手」 
  第三位:「孤島の鬼」 
  第四位:「囁く影」 
  第五位:「夏と冬の奏鳴曲」 
  第六位:「グリーン家殺人事件」 
  第七位:「Yの悲劇」 
  第八位:「山魔の如き嗤うもの」 
  第九位:「八つ墓村」
  ・・・うーん、順位はかなり気まぐれだ

No.24 8点 新世紀ミステリー 2019/06/23 05:25
2008年発表。小説としてはシリーズ中で一番面白いと思いました。一家族まるごとの入れ代わりトリックと怪奇幻想光景の解明が魅力的で、和風小道具を使った密室トリックも何気に好きです。

No.23 8点 monica 2019/03/06 22:48
割りとすんなり読めました。
実家が山地なので靖美さんの恐怖体験にすぐ入り込めました。

一家消失はかなり面白かったです。
途中でこの一家って…と想像がついてしまいましたが、更に思わぬ一面がありました。

刀城言耶のお決まりの推理二転三転シリーズも
楽しめました。が、最後の結末はあまり惹かれなかったです。前作の踏襲っぽいし、犯人のストーリーが薄かった気がします。
とは言え、充実した読書タイムでした。

No.22 4点 ねここねこ男爵 2018/01/30 23:14
この作者の本はいつもそうなのですが、

「目 撃 証 言 が 全 く 信 用 で き な い」

ので読むのにかなりの忍耐力が必要。作者の繰り出す茶番に付き合わなければなりません。
犯人が捜査陣に対して隠蔽工作をするならともかく、作者が読者に対して偽の記述をし「これは事実」「これは見間違い」など解決編で根拠なく仕分けして「衝撃の真実!!」と言われても…

「目撃者のSAN値が低すぎ!すぐに冷静さを失う」「冷静じゃないので何でもないものをとてつもない怪奇現象だと思ってしまう」「さらにビクビクしてるくせに(作者の都合で)突然勇敢になり(作者にとって)とても都合の良いものを目撃したりする」「子供が各種有能すぎる。ステルス性能高すぎ。伝説の幼兵かよ」
他作品でもコレばっかりで本作も例外ではありません。ホラーだからと言っても全然怖くないし、せめてビクビク描写がもうちょっと簡潔だったらねぇ…。読んでて『あーはいはい怖い怖い。見間違いでしょ。んで見たらバレる部分だけは怖くて目を閉じてるんだよね〜』と冷める。とにかく怯えすぎ&都合よく見間違えすぎです。「て、天狗だぁ!」「見間違え」「化物だぁ!!」「見間違え」「誰もいない!」「子供は小さいから見えない」ってねぇ。いくらなんでもキモメンとイケメンは見間違えないし、鳥はどう見ても鳥だってば。こんなの許したら「恐怖のあまりAさんをB君と見間違えました」とか何でもありになってしまう。
普通理解し難いものを見たら、妖怪に結びつけるよりまずごく常識的な解釈をすると思うし、家の鍵が全部締まってたらなかに誰かいると思うのが普通でしょうに…。

ミステリ黎明期の、未成熟故に様々な実験試行錯誤が許されていた時代ならともかく、現代で安易にこういう手法に頼るのはどうかと思ってしまいます。あと現場見取り図はつけてください…トリック露見の危険性があったとしても。

No.21 9点 青い車 2016/02/05 19:52
最高点を付けた前作には及ばないものの、ホラー・ミステリーとして充実した力作と思います。死体の顔を焼いた理由、消失した一家の謎、なぜお地蔵様の前掛けを一度に盗まなかったのかなど、すべてを意外でありながら説得力も両立させ解決した手際が見事です。もはや恒例となった刀城言耶の多重推理によるどんでん返しの連続も楽しめ、めまぐるしく入れ替わる犯人および真相には驚きの連続でした。冒頭の何気ない記述が伏線として活きてくるテクニックにも円熟味を感じます。怪奇現象の説明として拍子抜けな部分がありますが、これまでの三作よりリーダビリティは確実に上がっており、ほぼ不満のない出来です。

No.20 7点 名探偵ジャパン 2014/09/02 22:39
相変わらず骨太でド本格な作品を読ませてくれる。
無個性だったシリーズ探偵の刀城言耶も、山道を歩いている途中でビビる、親しくしていた関係者が殺され義憤にかられるなど、ちょっとヘタれだが心優しい青年というキャラが付いてきた。
これもシリーズ恒例となった多重推理については、最初の謎解き段階で、「どうせこれは間違った推理なんだろ」と思ってしまい、なおざりな読み方になってしまいがち。ただでさえ長い小説なのだから、今後何とかしてほしい。なぜわざわざ自分で間違った推理を最初に披露するのか、という疑問も。
とはいえ、よく作られた物語であり、犯人が猟奇的な行為をする意味も考えられているなど、ミステリとしては申し分ない。
刀城言耶のキャラが固まりつつあり、担当編集者との漫才のようなやりとりなど、コミカルな部分も出てきて、今後も目が離せない。

No.19 7点 simo10 2013/09/16 22:45
--ネタばれ含みます--

刀城言耶シリーズ第四弾。「首無」を読んだ勢いで次の作品にもチャレンジ。
「首無」程の衝撃はないにしろ、この作品も数多くの謎をたった一つの事象で鮮やかに紐解いてくれます。最後の最後まで真相が解らないのもこのシリーズの良いとこですね。
個人的に疑問が残ったのは、最終的な真相の場合、顔焼きの理由はどうなるんだっけ?というもの。読みづらいのは相変わらずだから再読はきついんだよね。

No.18 7点 kanamori 2013/02/11 12:27
怪異譚蒐集家・刀城言耶シリーズの第4長編を再読。

解説によると、意外なことに作者は横溝正史へのオマージュ的な意識は全くないとのことですが、わらべ唄の見立て連続殺人、顔のない死体、旅芸人一座など、どう見ても「悪魔の手毬唄」を想起せざるをえませんw (復員服の男は「犬神家」ですが)。
メインの謎である”一家全員の突然の消失”のカラクリに関しては、初読時たまたま直前に梶龍雄の某作を読んでいたため、その類似性が気になったのですが、今回再読してみると伏線の張り具合や見せ方に違いがあり、こちらのほうが巧妙だと感じました。
ホラー部分は比較的弱いかなと思いますが、恒例の”一人多重解決”や蝦蟇油壺のロジックなど、本格ミステリ部分が充実していると思います。
(文庫版には、舞台となる山村の略図イラストがあって位置関係が分かりやすい)

No.17 6点 HORNET 2012/06/03 18:40
忌み山と言われる金山をめぐる揖取(かじとり)家と鍛炭(かすみ)家の対立がもとで、六地蔵の童謡に見立てた連続殺人が起こる、という本シリーズらしい雰囲気は期待に応えるもの。ラスト前に、消去される推理も全て丁寧に論じられ二転三転するのもお決まりのパターン。その、どんでん返しにつぐどんでん返しも十分に楽しめた。
 ただ、本作は特にあまりにもご都合主義的なきらいがあった。犯人のたどった道筋も、あまりにも危なすぎるのではないか(逆に言えば偶然に助けられすぎではないか)とも感じる。トリックや仕掛けの面で現実離れしているのは、こうした探偵小説的な本格ミステリではむしろ歓迎だが、偶然要素が現実離れしているのは、読者に対してある意味アンフェアな気がしないでもない。

No.16 8点 ミステリ初心者 2012/05/28 15:51
 ネタバレがあります。


 厭魅と首無にも引けをとらないです。手記が作中作的な役割があり、ある作品を思い出します。が、そこに嘘が無く、まったく別です(たぶん)。手記を書く人間がそのあと何の犯罪も犯さないわけは無いですしフェアです。
 厭魅と首無よりロジックが強化された印象で、蝦蟇油?らへんのロジックはぐっときます。厭魅と首無の唯一の欠点を補われた気がします。
 ホラー部分も好きです。狂った人間は一番怖いですね。

 嫌いな点は、犯人に協力してしまっている人間がいること。


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