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[ 本格/新本格 ]
碆霊の如き祀るもの
刀城言耶シリーズ
三津田信三 出版月: 2018年06月 平均: 6.36点 書評数: 14件

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原書房
2018年06月

講談社
2021年06月

No.14 7点 E-BANKER 2024/11/03 13:50
刀城言耶シリーズの第七弾。比類なき(?)人気シリーズとなった感もある本シリーズ。
相変わらずの「分厚さ」に心が折れそうになる、かと思いきや、スイスイ読まされるところも本シリーズらしい。
単行本は2018年の発表。

~碆霊様を祀る、海と断崖に閉ざされた強羅地方の村々。この地を訪れた刀城言耶は、村に伝わる怪談をなぞるように起きた連続殺人事件に遭遇する。死体に残された笹舟。事件の現場となった「開かれた密室」の謎。碆霊様が遣わすという「唐食船(からたぶね)」とは何なのか。言耶が真相にたどり着いたとき、驚愕の結末が訪れる!~

久し振りの「刀城言耶シリーズ」となった。他の方の書評を見ると、過去作(「首無」や「山魔」かな)と比べるとやや不満・・・的な意見が多そう。
うん。確かに頷けるところもある。でも、まあ充分だろう。作中に仕掛けられた滅茶苦茶な数の伏線を考えると、作者のスゴさを改めて感じることができた。
そして何より、本シリーズ名物(?)。真相解明前の「数多くの謎の列記」。今回はなんと、合計70個もの謎が提示される!(殺人事件だけでなく怪談の謎も含まれるが)
果たして刀城言耶は70個もの謎をすべて解明できるのか?ページ数も少なくなってきたぞ、とつまらない心配をしたりしながら読み進める私。
で、今回はいつもよりまして「行ったり来たり」が多い印象。真犯人が示されたと思いきや、「いや、やはり・・・」と言っては否定され、今度こそと思いきや「いや・・・」と否定される。
これを繰り返すこと数回。ついにたどり着いた真相! 多分、これが先の「不満」のひとつの原因なのかも。
要は、割と「陳腐」なのである。こういうプロットは他作品でも幾度かお目にかかってるし、割と「何でもあり」「トリック軽視」という感覚をもたらしやすいように思える。

例えば紹介文にある「開かれた密室」の謎。つまりは人の目ある状態の「密室」=「準密室」のことなのだけど、これは捨て筋の方が数倍魅力的に思えた(特に滝と洞窟なんて、なんて魅力的!)。
最終的にやや現実的な真相にもってきたのは何故なのかな?
で、問題の「終章」。もちろん「驚愕」といって差し支えないのだけど、なんとも「寓話」的な印象ではある。明かされなかった真相はいかに?

というわけで、読書としては充分な満足感を覚えた。確かに「トリック」や全体的な「謎の構成の妙」では「首無」や「山魔」には敵わないけれど、ここまでの大作を遺漏なく作り上げる作者にはやはり敬意を表したい。
今回は殺人事件とともに、過去の怪談やその舞台となった村々そのものの謎についてもかなりの分量を割かれていた。賛否あるかもしれないけど、個人的には本シリーズの特徴として良かったのではと思う。
(なんか上から目線的でスミマセン・・・)

No.13 6点 makomako 2023/10/08 15:48
ずい分久しぶりにこのシリーズを読みました。
まず難しい漢字だらけで、弱くなった頭では覚えるのが大変。極めて読みにくい。
それでも何とか読み進めると、このシリーズ独特の雰囲気が味わえるようになり、長いお話も途中まではすらすら読めました。なかなか良いではないか。
ところが怪奇な連続殺人事件がおこり始めると、はたしてこんな不可解なことがすっきり説明されるのであろうかと心配になってくる。さらに終盤に差し掛かって、大量の謎が提示される。こんなの全部解決なんて無理だよと思ていると、探偵が試行錯誤を繰り返しながらひとつづつ謎を解いていく。こりゃ無理な解決だと思って読んでいると解決案はあっさりと撤収。こんな感じが続いて最終的には解決案が提示されることとなります。
これですっきりしたかというとなんだかもやもやが残ります。
解決案では登場人物のキャラクターからちょっとこんなの無理というものから、実際のトリックがまず困難なものまで混じっていると思われるからです。
途中まではかなりよかったが、残念。

No.12 9点 密室とアリバイ 2023/06/07 21:59
刀城言耶シリーズの中ではちょっと満足度に欠ける

No.11 6点 名探偵ジャパン 2022/07/06 08:50
「刀城言耶シリーズ」の集大成、いや、完結していないのですから、別の言い方をすれば「最大公約数」的な、手堅くまとめた佳作という印象でした。
 ミステリとしてよく出来ているのは間違いないのですが、何かひとつ足らんのですよ。各事件のトリックを分割して短編集にしたほうが印象に残ったかも。
 シリーズもそろそろ息切れを起こしてきたかな? と余計な心配をしてしまいました。次作長編『忌名の如き贄るもの』を読むまでは……。

No.10 6点 雪の日 2022/03/30 18:47
やはりこのシリーズは長編ですね。
これといって印象に残るものではありませんが、十分楽しめます。

No.9 6点 八二一 2021/12/18 20:53
冒頭四編の怪談で恐怖を味わい、解決編で衝撃を受ける。終盤明らかになる謎の数に、刀城言耶は本当に解けるのかと呆然。

No.8 6点 ボナンザ 2021/12/12 23:28
長くてもすらすら読めてしまうリーダビリティと前半の怪談は良かった。
最後とんでもないオチで思わず笑った。

No.7 6点 レッドキング 2021/08/31 13:08
「~の如き~もの」シリーズ長編第七弾。陸の孤島の様な極貧漁村に伝わる怪談伝承。四つの怪談発祥場所で起きる四つの事件・・不可思議な餓死、目撃による密室事件、足跡なき密室殺人、そして完全な密室内の死。怪談と連続事件の関係は何なのか。四つの怪談語りの冒頭と、伝承に隠された村の秘密解明は実に魅力的だが、事件の方は・・うーん、第一事件のHowが面白いかなあ。第四の完全な密室事件の真相には逆の意味で驚いたが(それをやんのか)・・

No.6 6点 じきる 2021/07/24 23:30
四つの怪談と四つの密室殺人が登場する、豪華な造りの力作です。でも、ホラー要素が薄まっているからか、どうも緊張感に欠ける気がします。
多重解決の末に明かされる真相は、悪くはないのですが想定の範囲内です。全体的に見て、素晴らしい過去作たちのレベルには達していないのではないでしょうか。

No.5 6点 好兵衛 2019/10/27 15:55
私にとっては特別な言耶さんシリーズ、毎回新作を楽しみにしています。

今回は密室4連発!最初に怪談もついており色々とボリューミーです。(評価が分かれるところかと)
1~4につれてどんどん面白さが減っていく感じ。
一番最初の密室が状況も斬新でなかなか面白かったです。
どうやったかが一番ですが、犯人当てとしても機能しているかな?

2番目は、状況がフワッとしていて緩いと言いますか。
誰がやってもできそうですし、どうやったかが重要で面白いんですが。
そのどうやったかを考えるまでの土台が緩いというか、推理するには
もう少しヒントなり、選択肢を絞れる状態まで持って行ってほしかったです。

3、4は目新しい感じはなかったです。

事件以外にも、怪談にまつわる謎や碆霊様にまつわる謎なんかもありますが。これは毎度のことで、こうじゃないかなと想像するのが楽しい程度でしっかり推理するのは事件だけかな?と思いながら楽しんでいます。それに対する言耶さんの推理ももう少し沢山見たかったです。
いつも、落ちみたいにある怪奇ですが…今回は少し投げやりでは?

それでも、この雰囲気と三津田氏の読みやすさに毎度楽しませてもらっています。

No.4 6点 HORNET 2019/03/10 10:22
 周囲を断崖に囲まれ、孤立化している4つの海辺の村。いつものように怪異譚の収集に地元民と共に訪れた言耶だったが、その地に伝わる伝説をたどるように密室状況での殺人事件が連続する。

 冒頭の4つの怪談はやや長すぎて気疲れしたが、本編に入ってからは期待通りの雰囲気。密集した竹林の中での餓死、物見櫓の張り出し板からの転落、洞窟中での刺殺…と、現代とは隔絶した世界とも言えるムラ社会ならではの、独特の三津田ワールドが今回も全開だった。

 ただ、自分に免疫ができてきてしまっているのか、過度に期待しているからなのか分からないが、本シリーズを読み始めた当初のゾクゾク感には至らなかった。祭りや伝説(唐喰舟など)の意味をどう解釈するのかとか、そこから殺人の見立ての意味をどう解釈するのかとかいった話は、理屈っぽい割には論理的ではない気がして、あまり好ましくなかった。
 連続殺人の真相も、こういうからくりは飛び道具のような印象を受けるし、最後の事件の真相に至っては肩透かしの感も否めなかった。個人的には第一の「竹林中での餓死」が一番すっきりした。

No.3 6点 ミステリ初心者 2018/11/03 18:04
ネタバレをしています。

 このシリーズは好きです。雰囲気がとても良く、すいすいページが進みます。また、今回は密室4連発であり、豪華です! いつもの多重解決→どんでん返しもあり、いままでの流れが踏襲されています。

 竹林宮の密室による餓死は好きです。偲との会話でヒント(もはや答え?)で気づきましたが、面白いですね。しかし、腕に縛り後など残らないものでしょうか?
 物見櫓のトリックも、自分は好きでした。人形的なものを使ったとばかり思っていたのですが、死後硬直は盲点でした。過去に、死後硬直を利用した作品を見ていたのに・・・ 死体が無いのもミスリードですかね。

以下、好みで無かった部分
・結局、四つの怪談に、何かしらの解決がなかったのは少し残念。竹林は途中会話にあった狼か何かかと思いましたw 
・リレーの様な殺人で、笹舟の理由も納得ですが、一人による犯行のほうが好み。
・絶海洞のトリックはいまいち・・・。
・他殺に見せかけた自殺→密室は嫌い。
・ラストのお決まりのホラー要素は、なぜか怖さを感じなかった。ラストの展開によって、ゲンヤの推理が破綻するようなものを期待していた。過去作品のように。

 同シリーズの過去作品に比べ、ホラー要素や意外な犯人や大どんでん返しの面でスケールダウン感は否めません。ただ、大掛かりな仕掛けがないため、逆に本格度が上がっている気もします。

No.2 6点 虫暮部 2018/09/25 11:55
 餓死の現場に於いて、排泄物に関する言及が無い。食べなくても出るんですよ。少なくとも絶食一日目には前日の分が腹の中にある。然るべき描写が為されていれば、被害者の状態ひいてはトリックを推測する手掛かりになったはず。私は、排泄の痕跡が無いのだから被害者は別の場所で死んで発見現場に運び込まれたのでは、とずっと考えていた。尾籠な話なので割愛、では済まないアンフェアな描写(の無さ)である。人間が排泄をしないパラレル・ワールドが舞台、と割り切って読むが吉?

No.1 7点 mozart 2018/08/03 10:07
久々の刀城言耶シリーズ長編で、大いに期待して読みました。過去作と比べて迫力不足の感は否めませんが、ページが残り少なくなってからの七十項目におよぶ謎の羅列とか、くどいほど謎解きを試行錯誤で繰り返しながら真相に迫っていくシーンなどは、本シリーズの「伝統」はしっかり守られていると思います。
祖父江偲については、好みが分かれるところでしょうが(世の中には偲ファンもいるのでしょうが)、今作では本筋での絡みが(一点を除けば)言耶との「掛け合い」のみだったので自分としてはまぁ許容範囲内でした。


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