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[ 短編集(分類不能) ]
屋根裏の散歩者
明智小五郎シリーズ(ノンシリーズ編をふくむ短編集の評もあり)
江戸川乱歩 出版月: 1969年01月 平均: 6.11点 書評数: 9件

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講談社
1969年01月

角川書店
1974年01月

講談社
1987年11月

新潮社
1996年03月

光文社
2004年07月

角川グループパブリッシング
2008年09月

No.9 5点 虫暮部 2020/04/02 11:50
 光文社文庫版は乱歩最初期作品集。大乱歩のネームヴァリューも相俟って、粗筋やイメージが独り歩きしてしまい、実際に読むとちょっとがっかり、な作品が散見される。
 しかし、作者本人は評価していないようだが「恐ろしき錯誤」の“誤解させることによる復讐”と言うコンセプトは面白いと思った。
 そして「疑惑」はクリスティのアレの変奏じゃないか。しかも発表が同じ年!

No.8 6点 アイス・コーヒー 2014/08/25 18:54
※乱歩の項目は各社から傑作選、全集が刊行されている影響で主に短編集の分類が混沌としていますが、私は便宜的に光文社文庫の江戸川乱歩全集第一巻「屋根裏の散歩者」の書評を書かせて頂きます。尚、「二銭銅貨」の書評だけは「二銭銅貨」の項目に入れさせていただきました。

独特な幻想的で奇怪な設定と、推理小説らしい論理的な結末が用意された初期短編22編を集めた全集第一巻。中でも気になったのは「恐ろしき錯誤」「赤い部屋」「人間椅子」あたり。どれも奇妙な展開を最後で見事にまとめ上げる力作だ。
「一枚の切符」は純粋な探偵小説となっていて、結末も印象的だが、その面白さは「二銭銅貨」にやや劣る。「恐ろしき錯誤」はプロバビリティの犯罪を登場させたものだが、そのブラックな展開は思いのほか面白かった。
「二廢人」は夢遊病を扱ったトリックで、これをさらに反転させた「夢遊病者の死」とともに楽しめる。「双生児」はその皮肉な結末が見どころだろう。
「D坂の殺人事件」は日本家屋使った密室殺人トリックにして、名探偵明智小五郎の初登場話だ。随所に興味深い謎が配置されている構図はよく出来ているが、そのトリックは割とお粗末。
「心理試験」は犯人を心理学上の実験によって追いつめるという斬新なアイデアだが、結末にさほど驚きがなく残念。「黒手組」も引き続いて明智小五郎が活躍するものの著者自身が語るように確かに内容は地味だ。
「赤い部屋」は作品の狂気を見事に乗りこなして独自の世界観を作り上げた力作で、古典的名作の名にふさわしい一作だろう。
「日記帳」と「算盤が恋を語る話」は純愛ものでほのぼのとしている(嘘)が、それだけにパンチが弱い。「幽霊」や「疑惑」は人間の心理を付いた傑作だが、それだけに尻すぼみの結末がやや残念ではある。
「白昼夢」はほとんど一つのアイデアだけで書かれた作品で、同じ系統のものでも「人間椅子」の方がよっぽど完成度は高い。(「人間椅子」の驚くべき点はメタ的な視点が用意されている点にある。)
「盗難」や「百面相役者」、「指環」などはトリックありきの短編だが、どれも一読の価値はあるだろう。中でも逆説的な「盗難」のトリックは古典的なものだが興味深い。
「屋根裏の散歩者」はその発想が素晴らしく、秀逸だがそれ以上の何かはない。こんな変態がいたら明智じゃなくても分かるよ。。。
「一人二役」や「接吻」も恋愛を題材にしているが全く違った結末を迎えるところに乱歩のあざとさを感じた。

これはほとんどの作品に云えることだが、乱歩の作風の一つである「最後の一撃」の独特な演出がよく出来ている。本格ミステリとしてフェアかフェアでないかは微妙なところではあるが、真相が明かされたあとの驚愕は本物だ。
また、プロバビリティの犯罪が頻出するのも興味深い点だ。完全犯罪という発想に乱歩が強く心を惹かれたようだが…。

No.7 6点 ボナンザ 2014/04/07 22:12
タイトルからしてぶっ飛んでいる。内容もだが、乱歩の幻想趣味がうまく出た名作である。

No.6 6点 バード 2014/02/24 22:40
とても有名な古典ミステリなのではや読んでおきたかったので少しハードルが上がっていたかもしれない。まぁ犯人の動機はだいぶ適当だと思ったけど乱歩さんの作品はこのくらい動機に対してドライでもあまり気にならない文体なのがいい。探偵が証拠をでっち上げて自白させるのは今現在ではいい手とはいえないが当時としては斬新だったのだろうか。

No.5 6点 haruka 2013/11/17 17:19
初期の明智の名探偵ぶりが味わえる作品。

No.4 5点 E-BANKER 2012/01/05 22:51
乱歩を代表する短編とも言える本作。角川文庫の「江戸川乱歩セレクション」で読了。
表題作のほか、「暗黒星」を併録。両作とも明智小五郎登場作品。

①「屋根裏の散歩者」=世の中のすべてに興味を失った男・郷田三郎は、探偵・明智小五郎と知り合ったことで「犯罪」への多大な興味を持つ。彼が見つけた密かな楽しみは、下宿の屋根裏を歩き回り、他人の醜態を覗き見ることだった。そんなある日、屋根裏でふと思い付いた完全犯罪とは・・・

実は初読なのだが、こんなにシンプルな作品だったんだねぇ。
郷田が残した1点の瑕疵から明智が彼の犯罪を暴くわけだが、他の乱歩作品と比べても、クドさや変態的趣味といった雰囲気は薄く、ラストも割とあっさり終わる。
この作品がこんなにも後世に影響を残したのは、屋根裏を這いまわり、他人の醜態を上から覗き見るという、そのビジュアルや想像力をかきたてる点にあるのだろう。

②「暗黒星」=とある洋館で次々起こる謎の殺人事件と常に現場に登場する「黒マントの男」・・・

本作は実に「乱歩らしい」作品。文庫あとがきによると、乱歩自身こういう作品を「探偵活劇」と自嘲的に呼んでいたとのことだが、確かにプロットが似通った作品がいくつもある。
少しでも乱歩に親しんだ読者であれば、恐らく20ページ程度読んだところで、真犯人や本作のプロットには予想がつくはず。そして、ラストは「やっぱりねぇ」という感想に・・・。
でも、これこそ「乱歩」作品というテイストを味わいたければ、手頃な分量だし、こんな作品こそという気にはさせられた。

No.3 7点 H.T 2009/04/05 10:47
倒叙ものの作品です。犯人が犯行に及んで、それを明智探偵が推理する。犯人を追い詰める、といったストーリーですね。
結構楽しめました。

No.2 6点 白い風 2008/03/30 16:57
犯罪者の一種アブノーマルな精神状態を描いた作品。
これも50頁位の短編ですが、後の「人間椅子」「パノラマ島奇談」へ続く一種独特な乱歩らしい作品です。
大正時代の作品だが今でも違和感なく読めるのもスゴイと思う。

No.1 8点 あい 2008/03/25 15:21
純粋に物語として楽しめた。乱歩独特の雰囲気と殺人に結びつく犯人の心理描写がうまくかけていて、短編ながら著者を代表する作品となっている。


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