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[ 本格/新本格 ]
化人幻戯
明智小五郎シリーズ
江戸川乱歩 出版月: 1970年01月 平均: 5.86点 書評数: 7件

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講談社
1970年01月

講談社
1979年10月

講談社
1987年11月

光文社
2005年04月

沖積舎
2009年07月

春陽堂書店
2015年11月

No.7 7点 斎藤警部 2017/10/21 10:47
まさか、痛恨の出落ちネタバレかと浅はかにも疑えば疑える、このタイトルと第一の事件との相関関係。。へっへっへっ、いゃあ流石に奥行きある物語の全体像。一方で、真犯人を隠匿しようとしてんのかしてないのか、特にナウなヤングにとっては犯人バレバレもいいとこであろう上に「おぃおぃもうバラすのかよ」ってなストーリー配分の唐突感もあるかも知れませんが、このエログロに走らない短い戦後長篇には読者を徐々に酩酊へと誘う落ち着いた妖力があります。またトリックの都合上(!)空間的拡がりと豊かな空気感の終始漂うのが素敵。 ‘ひとたまりもない。。。’ 「抑えつけ」のシーン、アンフォゲッタブルだね(実はこれ、ある部分での●●●ィ●●●●ンになってるわけか)。。
そして、犯人最後のセリフとそれに続く最後の二文、素晴らしく心に刻印される。 「犯人像」ってやつですか。。。。。

No.6 6点 初老人 2015/08/23 12:24
江戸川乱歩全集第17巻(光文社文庫)にて読了。
今まで読んできた乱歩の作品の中ではトリック、物語の骨格共中々しっかりとした出来に仕上がっていると思う。
残念なのは、真犯人の造形が動機も含めて容易く(表層的には)見通せてしまう点だろうか。カマキリの例えも事前に知識として持っていたので新味が感じられなかった。犯人が暴かれる過程も乱歩にしては珍しくややおとなしめで、凄みを感じるに至らなかった。

No.5 5点 ボナンザ 2014/04/07 22:28
中々におもしろい。ドイルのアイディアを取り入れたりと、乱歩が老いていないことがわかる。できれば主人公と明智の棲み分けをしっかりしてほしかった。

No.4 6点 E-BANKER 2011/02/18 20:54
明智小五郎登場の著名作。
稀代の名探偵も50歳を過ぎ、トレードマークのモジャモジャ頭にも白髪が増えて・・・ということで作者後期の作品になります。
~庄司武彦は元公爵大河原義明の秘書役を務めることになった。大河原家に出入りする2人の青年、姫田と村越の間には険悪な空気が流れていた。熱海にある別荘に出掛けた大河原夫妻と武彦は、断崖から転落する姫田の姿を目撃。姫田は果たして殺されたのだろうか?~

戦前の通俗小説、スリラーと呼ばれた作品に比べると、「密室」や「アリバイ」など、本作は完全に「本格ミステリー」の体裁をとっています。
アリバイトリックは「見せ方」に老練さを感じました。読者の前に「完全なアリバイ(不在証明)」が呈示されるわけですから、なかなか挑戦的だとも言えますね。
ただ、その解法はちょっといただけない・・・特に、第2の殺人の方はどうですかねぇ? 時代が時代だとは言え、かなり偶然性に頼った危なっかしいトリックとしか思えません。
他の方の書評と同じですが、ハウダニットとしてもちょっと喰い足りない・・・
逆に言えば、それだけ真犯人のキャラが強烈ということで、こういうキャラクターを書かせたらさすがに「うまい」ですよねぇ。
この作品は最後に明かされる「ホワイダニット」だけが見所といってもいいかもしれません。
(「カマキリ」の例えがなかなかグロい。本書のタイトルも実に意味深です)

No.3 5点 2010/04/23 23:42
ミステリー三昧さんの言われるように最後はさすがに乱歩らしさ炸裂ですが、以前の通俗長編の八方破れなおもしろさに比べると、全体的に見てずいぶんおとなしくまとまっています。なにしろ地味派代表のクロフツの名前が挙げられたりしているくらいです。
密室についてはトリックがどうというより、ただ密室状況の概略が説明されただけの段階で、明智の解説が始まってしまうのが物足りません。それこそクロフツのように綿密な部屋の調査と、発見された事実からの推理、検証を書いていけば、それなりのものになると思うのですが。まあ、それでは明智ものにはならないでしょうね。明智にあっさり解かせるための密室という感じもします。
その明智と大河原夫妻とは面識があるのかどうかという点で、これは伏線かなと思ったところがあるのですが、どうやら作者の単なるうっかりミスだったようで。

No.2 6点 ミステリー三昧 2009/10/31 02:04
<江戸川乱歩全集14>明智小五郎シリーズです。
確かに「動機」は衝撃的ですね。最後の最後で江戸川乱歩氏の悪い持ち癖が露呈しちゃっています。これは考え付かないですが、妙に説得力は高めです。特に「カマキリ」を動機と結び付けるあたりが秀逸。クライマックスだけでも読む価値はありそうです。
ただ、本格推理物として評価するなら駄作です。まずフーダニットが陳腐です。明智小五郎が疑いを持ったきっかけや決定的な証拠など細かな指摘まで丁寧に描かれていましたが、納得できなかった。展開も見え透いていてミスリードされない。
ハウダニットも魅力がない。二つのアリバイトリックに関してですが、特に時間差トリックが強引過ぎます。賢いやり方とは言えず、凄さが伝わらない。実行した犯人がバカに思えます。
他にも暗号や密室トリックなど本格的な素材をふんだんに取り入れているが、巧く生かせてない。さりげなく海外古典のトリックを種明かしするのもやめてほしい。

No.1 6点 nukkam 2009/04/23 11:33
(ネタバレなしです) 乱歩の還暦記念的に書かれた1955年発表の明智小五郎シリーズ作品で、戦前の作品のような通俗スリラーでなく(途中に色っぽい場面がありますが)長編本格派推理小説に属する作品です。明智小五郎は既に50歳代になっていますが、小林少年は相変わらず少年です(笑)。長編作品に苦手意識を持つ作者は失敗作と評価していますが、確かに本格派推理小説としてはミスディレクションが見え透いていて犯人は容易に当てられますし密室に暗号にアリバイと謎は豊富ながらもトリックは大したことがありません。しかし犯人もトリックも見抜いた明智をして「僕はわからない」と言わせしめた秘密が明かされる結末は現代の読者にも十分衝撃を与えると思います。意味深なタイトルも秀逸です。


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