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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
幽霊塔
江戸川乱歩 出版月: 1979年02月 平均: 4.60点 書評数: 5件

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講談社
1979年02月

春陽堂書店
1988年01月

東京創元社
1997年09月

沖積舎
2008年10月

岩波書店
2015年06月

春陽堂書店
2018年10月

No.5 5点 2021/04/28 13:46
 長崎県の山に包まれた片田舎に建つ寂れた西洋館には、幽霊が出ると噂される時計塔が聳えている。大正四年の四月、このいわくつきの場所を買い取った叔父の名代で館を訪れた北川光雄は、神秘のベールをまとった世にも美しい女人に出逢い、次第に彼女の虜になっていくのだったが・・・・・・。埋蔵金伝説の塔と妖かしの美女を巡る謎また謎。手に汗握る波瀾万丈の翻案大ロマン。
 雑誌「講談倶楽部」昭和十二年一月号より翌十三年四月号まで掲載された、乱歩の翻案長篇。同じく翻案ものの『緑衣の鬼』から間を置かぬ連載で、ジュブナイル二作目『少年探偵団』とも一部時期が被る。先に翻案を手掛けた黒岩涙香により原作者名は長らく秘匿されていたが、研究者・伊藤秀雄の手によって英作家アリス・マリエル・ウィリアムソン作『灰色の女』 "A Woman in Grey" (1898)と判明した。ただし原書はラブロマンスの趣が強く、面白さでは涙香のものに劣るらしい。本作はその涙香版を作者が独自にリライトしたものである。
 何度も換骨脱脂された作品だけにリーダビリティは高いが、首無し死体関連その他、ミステリ部分の謎解きは結構ぞんざい。その分乱歩が絶大な興味を持っていた、人間改造術の描写に力が注がれている。筋運び優先のジュブナイル版とは異なり、このあたり作者の選別は露骨。原作がどうなのか分からないが、いきなり曲馬団から脱走した虎と対峙したり、中盤では座敷牢に閉じ込められた主人公が壁を突き崩して逃げるなど、ストーリー優先とは言えご都合主義の嵐。更に豪商・渡海屋市郎兵衛が残した聖書の謎も食い足りない。本書の継続する人気はやはり時計塔の機械仕掛けと、財宝探しとの組み合わせの妙にあるのだろう。『ルパン三世 カリオストロの城』等の、各種作品懐かしの元ネタとして堪能したい。

No.4 3点 レッドキング 2020/02/16 17:43
おおおお懐かしい! こんなのあったなあ「幽霊塔」。子供の頃、ラジオドラマでもやってた。痺れた。

No.3 3点 蟷螂の斧 2020/02/16 16:59
翻案ものの評価は難しいが、一応、原作の評価-オリジナリティ±αとしてみた。原作(7点)-オリジナリティ(4点)+乱歩らしい作品(1点)-重要部分がカット(1点)=3点 
乱歩は中学生の時、黒岩涙香の「幽霊塔」(「灰色の女」の翻案)に出会い心酔したようだ。この涙香版をさらにリライトしたものが本作品。乱歩の特徴であるおどろおどろらしさは出ているが、ミステリーとしての重要項目がカットされてしまっているのが残念な点。
翻案ものに関し、乱歩自身は「緑衣の鬼」について「赤毛のレドメイン家」(フィルボッツ)を更に通俗化したような筋で、「踊る一寸法師」は「跳び蛙」(ポー)の翻案とか真似というには、少し離れすぎていると語っており、両者とも翻案ではないという認識である。しかし、現在では「緑衣の鬼」は紹介文などで翻案とされている。では、「踊る一寸法師」はどうなんだろうという疑問が湧いてくる。この辺は研究者にお任せするしかないのだが・・・難しいところ。(敬称略)

No.2 4点 ボナンザ 2014/04/07 22:25
比較的原作にちかい。比較的だが。それでも乱歩らしいギミックに満ちている。

No.1 8点 シュウ 2008/10/22 20:16
海外作品の翻案のわりにはびっくりするほど乱歩らしい作品です。養虫園や時計塔での冒険の面白さは忘れられません。
映画「ルパン3世カリオストロの城」の下敷きの一つでもあるらしいです。
原作の灰色の女もいつか読んでみたいな。


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