皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ] 猟奇の果 明智小五郎シリーズ |
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| 江戸川乱歩 | 出版月: 1972年07月 | 平均: 4.50点 | 書評数: 4件 |
![]() 春陽堂書店 1972年07月 |
![]() 春陽堂書店 1987年08月 |
![]() 講談社 1988年10月 |
![]() 沖積舎 2007年10月 |
![]() 集英社 2016年08月 |
| No.4 | 6点 | クリスティ再読 | 2026/01/21 13:54 |
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| 「一寸法師」の猟奇というテーゼを改めて見直したのと、佐藤春夫が自分が猟奇という言葉の発明者だといった話の続きで、タイトルに「猟奇」が含まれる本作を取り上げてみた。明智小五郎登場作であるにも関わらず、ポプラ社少年向けで唯一リライトから外れた長編である(苦笑)駄作、ということでもあるんだが。
大きく二部に分かれていて、「前編 猟奇の果」がまさにド直球の「猟奇」がテーマ。「後編 白コウモリ」から明智が登場するファンタジックなスリラーで、この両者が木に竹を継いだような、と言われて仕方のない不整合。世間での評価の低さはこれが影響している。メインは整形手術によって全く同じ顔の人物が...というネタで、それに乱歩らしい変身願望が顕れてもいる。 なんだけどもね、前半後半を全然無関係にそれぞれで見ることにして、それぞれにヘンな面白さがある、というのが評者の結論。前半については事実上、都市の「奇」をハンティングする「猟奇」の冒険譚。だから具体的な地名をベースに、実際の風俗を織り交ぜつつリアルな1930年の東京を冒険する話なのだ。そしてポオの「ウィリアム・ウィルソン」かエーヴェルスの「プラークの大学生」みたいな「悪のそっくりさん」が都市の雑踏に紛れつつ怪しい犯罪を犯すのを追跡する話。本作で過剰なほど頻繁に言及されるさまざまな小説たち、村山槐多の「悪魔の舌」、「地下鉄サム」、ルパン、「自殺クラブ」、「こじき王子」、「ジキル博士とハイド氏」、「サロメ」、黒岩涙香「片手美人」などなどの文学テキストを、昭和の東京というモダン都市の上にオーバーラップさせて「解読」していく小説なんだ。まさに戦前の「路上観察学会」というべきモダン小説なのだよ。「些末なことを詮索して追っていく」ことがまさに「猟奇 curiosity hunting」の本来の意味なのだ。その過程で立ち現れる「幻想の文学都市」が、前半の主人公だと言っていい。 一転して後半は明智クン登場のファンタジックなスリラー。警視総監も総理大臣もそっくりさんのニセモノにスリ替わるという荒唐無稽な面白さがある。もちろん名探偵明智小五郎も例外じゃない!この発想が後の怪人二十面相に繋がるわけだけども、本作ではずっと社会背景に肉薄しているのが興味深い。 この小説の連載終了(1930年12月)すぐに、2.26事件(1931年)が起きているわけだよ。本作に登場する「白コウモリ団」が入れ替えのターゲットして列挙している首相、内相、警視総監、警保局長などのリストが、まさに2.26の襲撃対象リストにしか見えないんだ。だからこそ、これは恐るべきファンタジーでもある。 荒唐無稽のファンタジーのただ中に、社会からの問わず語りな声が潜んでいないといえようか? 白コウモリ団の陰謀ではストライキ中の労働者の要求を全部飲めとか、無産党員とかの社会主義な話が少し出てきたりもするくらい(苦笑) しかしいつの間にか政治家たちがそっくりのニセモノに入れ替わっている、というのも評者が今この文章を書いている瞬間にも起きているような気がしないでもないわけだ(笑)まさにそういう小説だと読めば、意外なアクチュアリティが潜んでもいる。 |
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| No.3 | 4点 | 斎藤警部 | 2025/05/03 11:13 |
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| 「ぼくはその口止めをするために、あの人に殺されることにしたのです」
拭いきれぬ疑いは或る人物の胸元へと注がれた。 だが、その人物とは誰だ? 主人公は猟奇に飢える有閑青年(だがナイスガイ)。 彼は或る日、友人の雑誌出版社社長(こちらも良い人)が、祭に賑わう神社にて玄人技のスリを働く現場に出くわす。 友人は覚えが無いと言う。 その後もドッペルゲンガー的事象が立て続けに起こり、有閑青年は愉し怖ろしの不可解猟奇世界にぐいぐいと吸い込まれて行く。 美しい妻をも巻き添えにして。 いつの間にか話は大きく膨らんで行き、その裂け目から光が漏れる様に、●●を揺るがす予想外の兇悪事件が連発する。 「快楽っていったいなんだとおききなさるのですか。 それはいまにわかります ・・・・・・ 」 うむゥ、前編|後編と分けた構造(後編からアケチコ登場)はなかなか唆るものがあったのだがなあ。 表題からだんだん離れて行くよなストーリーを、最終盤でギュッと表題側に引き寄せる展開にはちょっと感心もしたのだがなあ。 結局、ある意味そのまんま? 壮大な大風呂敷も風に煽られグダグダに?? なんかそんな風。 犯人(●)●●には何気に結構な意外性がありましたが、それを以てして、このバランス崩れた平板さを覆す事は出来ませんでした。 乱歩さん、しっかりやりましょう。 |
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| No.2 | 4点 | ボナンザ | 2022/10/18 21:57 |
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| 前半わくわくさせるが、後半いつものになってしまうあたりが微妙な評価の理由か。 | |||
| No.1 | 4点 | 虫暮部 | 2022/08/25 13:26 |
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| “人間改造術” は、今読むと珍しくも恐ろしくもない。作者自ら “夢物語でよいのだ” と語る本作は、“寛政以前に飛行機を製作した岡山の表具師幸吉” そのものであり一種の予言の書?
しかし、前半は停滞気味、後半は辻褄合わせに終始。物語としての楽しめるポイントはちょっと見当たらないなぁ。 イチャモン:自分の顔ってそんなに見慣れている? スクリーンに一瞬間だけ映った顔を、自分そっくりだと自覚出来るかなぁ? |
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