皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
多々良島ふたたび ウルトラ怪獣アンソロジー 山本弘、小林泰三他 |
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アンソロジー(出版社編) | 出版月: 2015年07月 | 平均: 6.33点 | 書評数: 3件 |
早川書房 2015年07月 |
早川書房 2018年06月 |
No.3 | 6点 | レッドキング | 2020/06/22 17:26 |
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「タタラじま!」「怪獣無法地帯!」 その二単語あるだけで満足 |
No.2 | 6点 | 人並由真 | 2020/06/21 23:07 |
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(ネタバレなし)
しばらく前に帯つきのかなり状態の良い古本(元版の方)を購入。先に家人に読ませていたが、そろそろその気になって自分も読もうと思ったら、ちょうどそのタイミングでメルカトルさんのレビューが投稿されて、ちょっとびっくり(!)。 それでチビチビゆっくり少しずつ読んで、ようやっと完読したので、自分も感想をば。 ・山本弘「多々良島ふたたび」 「怪獣無法地帯」の真相を、想像力と推理で解明! (ここ↑まではAmazonなどでのハヤカワ文庫JA版の各編の内容紹介。以下同) ……直球で原典世界に向かいあい、『ウルトラQ』『初代マン』の劇中情報を自由に組み合わせて織りなした、トリッキィかつ正統派のパスティーシュ。ここで語られた情報の大半は、ひとつの並行世界の公式設定にしてもいいよね。これ一本で元は取れた。しかし文庫版の表紙はネタバレでは?(もしかしたら、単行本版の方では最後のオチが意味不明という読者が多かったのだろうか?) ・北野勇作「宇宙からの贈りものたち」 巨大生物の退治に挑む青年の想いは虚実を彷徨う……。 ……正編世界の物語を放棄。自分のイマジネーションで組み立て直した『Q』ワールドだけれど、狙いをとりあえず了解した上でマアマア。 ・小林泰三「マウンテンピーナッツ」 ウルトライブした女子高生は、苦悩する正義の化身となる。 ……比較的、近作のテレビシリーズ『ウルトラマンギンガS』の外伝? という設定だそうだが、あえてそのくくりは不要だったかも(ちなみに評者は『ギンガ』二部作はちゃんと全部観ている)。良くも悪くも厨二的な発想の数々が、いかにもこの作者っぽい。 ・三津田信三「影が来る」 江戸川由利子が出会う不可解な事件。偽の自分は現か幻か!? ……すみません。かなりダメでした。悪い意味で、三津田版「悪魔っ子」からビジョンが広がらない。 ・藤崎慎吾「変身障害」 ウルトラセブンに変身できなくなった男の数奇な運命とは? ……『セブン』世界の某ゲストキャラにして、ある意味で作品世界の基幹の一端となるあのキャラの後日? 譚。それなりに愛せる作品。 ・田中啓文「怪獣ルクスビグラの足型を取った男」 決死の覚悟で怪獣の足型を採取する男たちの熱いドラマ。 ……冗談オチはいいのだが、オリジナルのウルトラ怪獣に魅力がないのが残念。実はこのアンソロジーのなかで意外なほど、オリジナルのウルトラ怪獣(正編世界にいそうな)、または原典世界の怪獣の派生種とかはあんまり登場してないので、もっと大事にしてほしかった。 ・酉島伝法「痕の祀り」 街に転がる巨大な死体を始末する特殊清掃業者たちの矜持。 ……いかにも「ウルトラというエスエフ」を「SF」に組み換えてやるぜというアレな印象の作品なんだけど、作者の方は存外に悪意も他意もなく、むしろ読むこっちの構えの方がワルイのかもしれない。作中の怪しい造語を原典世界の名称にひとつひとつ置換していく作業は、それなりに楽しかった。 もう一冊くらいこういうアンソロジー出してほしいとは思う。でもってこっちは山本作品みたいばっかなの読みたい気もあるんだけれど、そういうものばっか取り揃えて、居心地のよいもの専科じゃイカンのだろうな? たぶん、こーゆー企画は。 |
No.1 | 7点 | メルカトル | 2020/06/10 22:59 |
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レッドキング、チャンドラー、そしてマグラーが相争った「怪獣無法地帯」の真相に迫る―山本弘の表題作「多々良島ふたたび」。希少生物としての怪獣の保護を図る戦闘的環境団体とウルトラマンが対峙する―小林泰三「マウンテンピーナッツ」。生命の危険を顧みない、怪獣類足型採取士の死闘―田中啓文「怪獣ルクスビグラの足型を取った男」など、SF的想像力でウルトラ怪獣とウルトラマンの世界を生き生きと描く7篇。
『BOOK』データベースより。 SF、ホラー作家が真面目にウルトラ怪獣を描いた短編集。幼い頃、ウルトラQ、ウルトラマン、ウルトラセブンが再放送される度に観たという人は楽しめるはず。 作家陣は山本弘、北野勇作、小林泰三、三津田信三、藤崎真悟、田中啓文、酉島伝法の七人。これは錚々たる顔ぶれですね。ほとんどが変化球で、まともにウルトラマンと怪獣が対決するのは小林泰三の『マウンテンピーナッツ』くらいです。山本弘は多々良島のあの雰囲気を壊すことなく、新たな試みに挑戦しています。ピグモンとガラモンの意外な関係も創造していたりします。最も好感度が高かったのは未読作家の藤崎真悟で、メトロン星人を始め、チブル星人、イカルス星人などを登場させ、ウルトラセブンの世界観を見事に再現し、それでいてオリジナリティを持った逸品に仕上げていています。 田中啓文は結局ダジャレかよって感じ。三津田信三は己のスタイルを貫き、別にウルトラじゃなくてもよかったと思います。まあらしいと言えばそうなんですが。酉島伝法はいらなかったかな。怪獣が死んだ後始末を描いていますが、読みづらく、どう頑張っても情景が浮かんできませんでした。 |