皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格 ] 乙女の悲劇 ウェクスフォード警部 |
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| ルース・レンデル | 出版月: 1983年03月 | 平均: 6.25点 | 書評数: 4件 |
![]() KADOKAWA 1983年03月 |
| No.4 | 4点 | ことは | 2026/04/29 18:42 |
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| かなり退屈な読書だった。
メインの趣向は、途中からばればれだし、この趣向は先見性も評価できない。読後に少し考えただけで、日本作家の有名短編や、ホームズのある短編に、類似趣向があることを思いついた。 趣向以外にも、文章面でいろいろと引っかかった。ひとつひとつは些細な点だが、読書の流れがたびたび止まるため、全体としてはかなり減点。思ったことを列挙してみる。 まず、情景描写が少ないため、場面が絵として浮かばない。そのせいか、登場人物がいつどこにいるのかを読み逃してしまい、戸惑うことが何度もあった。たとえば、ウェクスフォードが急に家にいるように受け取ってしまったりする。ウェクスフォードについても、思考は描かれるが、感情はあまり描かれないので、キャラクターが立ってこない。捜査についても、物的証拠を検討することは少なく、関係者の状況や関係性を探るだけに終始している印象だ。そのため、犯人の特定も根拠薄弱に感じる。例えば、途中の家宅捜索も根拠薄弱で、それは「ウェクスフォードもダメ出しされるでしょ」と思う。発想の飛躍もあまりないので、ミステリ的カタルシスを感じない。 「ロウフィールド館の惨劇」につづき、今回もあまり好みに合わなかったので、これはもうレンデルは読まないかな。 |
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| No.3 | 7点 | Tetchy | 2017/06/04 12:27 |
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| ウェクスフォード警部シリーズ10作目は謎めいた一人の年輩の独身女性を巡る物語だ。
本書でも語られているように変死体で見つかった彼女はもはやただの無名の存在ではなくなる。彼女を殺害した人物を探るために過去を一つ一つほじくり返され、人間関係がその為人が暴かれ、好むと好まざるとに関わらず、1人の人間の伝記が出来上がっていく。しかしこの被害者の女性ローダ・コンフリーは調べども調べども住所さえも明らかになっていかない。彼の父親や叔母にでさえ自分の住所を教えなかった女性。 やがて捜査線上に一人の男性が浮かび上がる。作家のグレンヴィル・ウェスト。最初は年増女が勘違いして熱を挙げただけの存在かと思われたが、たまたま手に取った彼の著作の献辞にローダの名前を発見して、その関係性に太い繋がりが見えてくる。ウェクスフォードの捜査の手は彼の方に伸びていくが、フランス旅行中というのは大きな嘘でイギリス国内に留まり、行方を転々としているのだ。ウェクスフォードは今度はグレンヴィル・ウェストという謎めいた男に囚われてしまう。 しかしそれはある一つの言葉でこれら1人の女性と1人の男性の謎めいた人生が氷解する。 このように一人の女性の死が人生という名の迷宮に誘う。私や貴方が普通に言葉を交わすご近所相手、もしくは会社で一緒に働く相手は彼ら彼女らの多数ある生活の側面の一面に過ぎない。いつも見せる顔の裏側には数奇な人生の道程が隠されているのだ。 また本書ではこの50代の独身女性の謎めいた死を巡る謎と並行してもう1つの物語が語られる。それはウェクスフォードの長女シルヴィアの夫婦不仲の問題だ。本書が発表された70年代後半は折しもイギリスではウーマン・リブ旋風が吹き荒れていたらしく、シルヴィアもその風に当てられて、家庭に籠って一生を終える人生に異を唱え、女性の自由を高らかに叫び、家庭に閉じ込めようとする夫に反発する。 そしてこのサブテーマが本書の核を成す事件と密接に結びつくのがこのシリーズの、いやレンデルの構成の妙だ。 今や自立する女性が当たり前になり、結婚適齢期が20代の前半から後半、そして30歳でも独身で社会の一線で活躍する女性が普通である昨今を鑑みると、現代の風潮が生まれる黎明期の時代に本書が書かれたことが判る。男が働き、女が家を守る。当たり前とされていた価値観が変革しようとしつつある時代においてレンデルは昔ながらの夫婦であるウェクスフォード夫妻と現代的な考えに拘泥する彼の長女夫婦の軋轢を通じて時代を活写する。未だに解決しないこの男女雇用、機会均等の問題を上手くミステリに絡めるレンデルの手腕に感嘆せざるを得ない。 しかし『乙女の悲劇』とはよく名付けたものだ。この一見何の衒いもないシンプルな題名こそ本書の本質を突いているといっていいだろう。報われない若い時代を過ごした女性の悲劇。愛した相手によって人生を狂わされた女性の悲劇。図らずも産んだ子が不具だったために毎晩酒を飲むことで紛らせている女性の悲劇。さらに自立した女性を目指すも結局家庭に収まることを選んだシルヴィアもまた一種の悲劇となるのだろうか。私はそれもまた幸せの一つの形だといいたいのだが。 50歳の無器量な女性の変死体から濃厚な人生の皮肉を描いてみせ、更には女性の社会進出という普遍的なテーマを見事に1人の女性の悲劇へと結び付けたレンデルの筆の冴えを今回も堪能した。 |
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| No.2 | 6点 | mini | 2014/02/25 09:59 |
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| 本日25日発売の早川ミステリマガジン4月号の特集は、”乙女ミステリのススメ”
乙女ミステリってなんじゃそりゃ?、オトメチック漫画風なやつって事か?、誌面を見ないとよく分からないので、便乗企画は単なる題名繋がりで(苦しい) ウェクスフォード警部シリーズの「乙女の悲劇」は、シリーズ中では代表作の1つ「指に傷のある女」と発表年も近く割と作者がノッていた時期の作である その為かかなり仕掛けのあるプロットで、リアリティに不満を感じる読者も居るかも知れないが、本格としてはよく出来ていると思う 私としてはへ~レンデルってこういうことも仕掛けてくるんだ、と感じた それとレンデルはやはり文章とくに会話文が良い、人物描写も上手く、こってりしてないんだけど見事に描写している この辺は濃厚な人物描写を試みながらあまり人物を描き分けられていない同期のP・D・ジェイムズとは対照的だ nukkamさんの御書評にもありますが、ラストで警部から語られる、犯人は誰かという問題とは別のある真相には驚いた 成る程これはたしかに”乙女”の悲劇だ |
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| No.1 | 8点 | nukkam | 2011/01/25 12:52 |
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| (ネタバレなしです) 1978年に発表されたウェクスフォード警部シリーズ第10作の本格派推理小説です。犯人の正体にはそれほど驚きませんでしたが(でも私は当てられませんでした)、逮捕後にウェクスフォードが酒場で語る真相には驚きました。実際にあった事例まで紹介しての推理は個人的には十分納得できるものでした。「罪人のおののき」(1970年)と「偽りと死のバラッド」(1973年)で私が感じた不満点を解消しており、お気に入りのシリーズ作品です。 | |||