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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
ゴメスの名はゴメス
結城昌治 出版月: 1962年01月 平均: 6.33点 書評数: 6件

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早川書房
1962年01月

朝日新聞社
1973年01月

KADOKAWA
1974年03月

KADOKAWA
1974年03月

中央公論新社
1996年06月

中央公論社
1996年06月

光文社
2008年04月

No.6 6点 2021/03/22 13:47
本編自体ももちろんよかったが、光文社文庫版の解説やあとがきなどのオマケもよかった。
著者の「ノート」は、スパイ小説を書くに至る経緯や、舞台をサイゴンとして書き始めた苦労話など、わずか4ページだが、普段あまり目にしない作家ノートを興味深く読むことができた。

肝心の本編についてだが、以下、少しネタバレ。

巻き込まれ型スパイ小説というジャンルか。
舞台を1960年代のベトナムとしたわりに、意外に現代風なのがよい。
ストーリー運びもよい。というかプロットの単純さが読みやすくしているのかも。
たしかにミステリー性はある。でも、ご都合主義的に事件の関係者となりそうな人物が次々に登場するのは、ミステリー小説としてはいただけない。
スパイ小説としては、スパイの非情な日常の中に、わずかな男の友情や恋愛が心地よく描いてあればいいが、中途半端な感があり、B級好きには物足りない。
ラストがあっさりとしすぎているところも拍子抜け。そこがいいところなのかもしれないが、この点もB級好きには物足りない。
みなさんがおっしゃるようなハードボイルドっぽさは、とてもよかった。

No.5 5点 ボナンザ 2017/11/28 19:47
和風スパイ小説のはしり。一応本格要素もあるが、どちらかというと主人公の心理描写の方がメインだろうか。

No.4 6点 斎藤警部 2016/05/31 19:30
詰めは甘いが面白い、読みやすい。往時の南北ベトナム情勢、サイゴン周辺の不穏ながら何処か緩い空気を皮膚感覚で記録に留めた(と想像される)のは立派。しかし小説としては粗や隙も目立ち、結城先生には誠に恐縮だが滲み出るB級感が否めず、そのへん何ともアンバランス。思い出した頃に唐突なユーモアが快調に炸裂してはすぐ止まる。急に友情や感傷が現れたり、惹かれた女はすぐ忘れたり、どうにもストーリーのテクスチュアが凸凹し過ぎて落ち着かない。ハードボイルド風の比喩や言い回しにも取って付けたような脆さが。。時の試練にいささか参っちゃってるかな、ナウな感覚で読めばこりゃ最早一種のパスティーシュではないかと苦笑する格好付けシーンも多々。。でも、繰り返すけど読みやすいし面白えのよ、このスペエ小説は。

No.3 6点 E-BANKER 2013/03/01 22:53
1962年に発表された日本のスパイ小説の嚆矢とも言える作品。
当時、早川書房編集長だった小泉太郎(「生島治郎」の本名)氏の推挙で本作が生まれたとのことだが・・・

~失踪した前任者・香取の行方を探すために、内戦下の南ヴェトナム・サイゴンに赴任した「わたし」こと坂本の周囲に起きる不可解な事件。自分を尾行していた男が、「ゴメスの名は・・・」という言葉を残して殺されたとき、坂本は熾烈なスパイ合戦の渦中に投げ出されていた。香取の安否は? そして、ゴメスの正体とは? 「不安な時代」を象徴するものとして、スパイの孤独と裏切りを描いた迫真のサスペンス!~

雰囲気のいい作品、という感じ。
何より舞台設定が秀逸。
今でもサイゴン(ホーチミン)というのは、フランス占領下の影響が残り、アジアにあってヨーロッパの香りが漂う街だが、内線下のサイゴンという不穏で剣呑、かつ無国籍な雰囲気がよく出ている。

「スパイ小説」とはいえ、時代性もあり、それ程複雑なプロットがある訳ではない。
最後になってみれば、怪しい奴はやっぱり怪しかったし、謎の人物にはやはりそれなりの背景を抱えていたことが分かる。
それでも、それが不満を誘発するものではなく、何とも言えない読後感、風合いを残すところが作者の技量ということなのだろう。
「ゴメス」というダイイング・メッセージも、それ自体にそれ程の仕掛けはないが、終盤に明らかになる二人の男の背負った罪や影に混ざり合い、後を引く。

まぁさすがに名作と呼ばれるほどの雰囲気を持った作品。
ミステリー的なギミックを期待する方にはどうかと思うが、サスペンスというよりはハードボイルド好きにはウケる作品ではないかと思う。
(ヴェトナムの女性っていいよねぇ・・・。アオザイも・・・。)

No.2 7点 kanamori 2010/07/30 18:42
ベトナム戦争前夜・60年代初頭のサイゴンを時代背景とした国産スパイ小説の嚆矢といえる作品。
商社員として赴任した主人公が前任者の失踪に絡む謀略に巻き込まれる・・・スパイものといっても全編にわたって荒唐無稽さのないリアリズムに貫かれており、一人称で語られる内容は迫真性充分で、ミステリ的趣向もあります。
タイトルに繋がるダイイングメッセージ風のエピソードは、作者らしいスマートさを感じる。

No.1 8点 2010/05/17 22:18
1962年に発表された、日本製スパイ小説の嚆矢であり、また代表作ともされる作品。
舞台が1960年頃のベトナムというところからして、なるほどと納得。まあこれは現在だから特にそう思うのかもしれません。当時は身近な問題だったわけですから。
結城昌治は様々なタイプの作品を書き分けていますが、作中にも名前が挙げられるアンブラー等につながるシリアス・スパイものとして、完成度の高いものとなっています。サイゴン(ホーチミン)に赴任した「わたし」の周りで起こる不可解な出来事、謎が最後になってすべて収まるべき所に収束していくところは、パズラーも書く作者らしい手際ですし、リアリティも十分です。
会話を中心とした文章は、ハードボイルドっぽいところが感じられました。これは後に書かれる『暗い落日』に始まる真木シリーズとつながってくる感じです。


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結城昌治
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