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軍旗はためく下に
結城昌治 出版月: 1970年07月 平均: 6.00点 書評数: 2件

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中央公論社
1970年07月

朝日新聞社
1973年01月

中央公論新社
1973年09月

講談社
1975年01月

中央公論新社
2006年07月

No.2 7点 クリスティ再読 2018/05/04 23:44
直木賞というと、一時期ミステリの受賞が不当にも拒まれていた頃があって、ミステリ系の作家でも「非ミステリ」な作品で受賞していたことがあった...大実力派だった結城昌治でも、直木賞受賞は本作。ミステリ仕立てもある戦記に取材した反戦小説である。
5つの短編がそれぞれ、「敵前逃亡・奔敵」「従軍免脱」「司令官逃避」「敵前党与逃亡」「上官殺害」と軍法上の罪状がタイトルになり、それぞれの罪状を犯した経緯が語られる。もちろん結城昌治の油が乗っていた時期なので、巧妙な語り口もそれぞれ変えてつつも、それぞれ狙いがことなる短編になっている。
・「敵前逃亡・奔敵」は臆病でグズという評判の下士官が失踪したが、数カ月後に出頭してきた...その理由は?という一種のホワイダニット。
・「従軍免脱」は上層部にはびこる不正を告発した兵士を無理矢理に罪に落とす組織的な腐敗の告発。
・「司令官逃避」は捨て駒に指名された中隊を恫喝する口実でしかない。
・「敵前党与逃亡」は事情不明のまま判決だけが記載された戦没者連名簿の事情を巡る「藪の中」。
・「上官殺害」は横暴な小隊長を小隊ぐるみで殺害したという、軍隊でも究極の犯罪。
と中支・フィリピン・インパールなどを舞台に、大戦末期の統制が崩壊した軍隊の中での悲惨な出来事を、戦後の「生き延びた人々」の視点で描いている。語り手たちはみな後ろめさを抱え込んでいるのが印象に残る。みな悲惨な出来事を思い出したくもないのだが、心に焼き付いて離れないのだ。最後の「上官殺害」は生きて帰ったが失明して温泉で按摩をして生きている男と、上官殺害の話を聞きに来た男との会話と、本音の独白とをカットバックした構成で、小説的には評者はこれが好きだ。
結城昌治のベスト、というわけではもちろんないのだが、それでも実力の堪能できる広義のミステリ、くらいの作品である。

No.1 5点 蟷螂の斧 2018/03/13 18:09
(再読)紹介文より~『陸軍刑法の裁きのもと、祖国を遠く離れた戦場に処刑された帝国軍人たちの知られざる真実と非情を追求した力作。直木賞受賞作。』~
本サイトに登録されていたので再読してみましたが、ミステリーとは言えないと思います。5編の短編で構成されていますが、「敵前党与逃亡」が唯一ミステリーっぽい。不名誉な罪で軍人恩給を受けられない遺族関係者が、真相を探って当時の関係者を訪ね歩くというもの。終戦まじか、食料難での人肉食などのエピソードが描かれています。


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結城昌治
1996年09月
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