皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ クライム/倒叙 ] 白昼堂々 |
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結城昌治 | 出版月: 1966年01月 | 平均: 6.40点 | 書評数: 5件 |
朝日新聞社 1966年01月 |
報知新聞社 1968年01月 |
KADOKAWA 1971年02月 |
朝日新聞社 1974年01月 |
講談社 1996年03月 |
光文社 2008年06月 |
No.5 | 7点 | 八二一 | 2024/08/02 20:48 |
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全国をまたにかけた集団窃盗団と刑事たちとの駆け引きを実にユーモラスに、時にはハラハラさせながら描き、ラストで思わず爆笑してしまう。軽ハードボイルドの傑作。 |
No.4 | 6点 | 斎藤警部 | 2023/07/14 23:53 |
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本気で読者を噴き出させに掛かるユーモアの切っ先は鋭く、勢い余って物語のスリルまで少なからず削ってしまっている。だが問題無い。人情に溢れどうにも憎めない持たざる者達(男女多数)が入り乱れる犯罪ドタバタ群像劇。昭和中期の話だが『百貨店』という現代では様変わりしてしまった商業施設がメインの舞台だけに、何とも時代がかった、ほとんど時代小説と呼んで構わない様なムーゥドに満ち満ちた作品である。
福岡の筑豊炭田廃坑を背景に、失業の余波でスリの道に追いやられた、通称 "泥棒村" の住人たち。一人更生し東京の百貨店で保安係として働いていた往時のスリ仲間が、彼等と再会し、、、 より利幅が大きく、更に良心の痛みも少なかろう仕事、すなわち百貨店での万引きビジネスを持ち掛ける。。。。というお話。 何だか呆気ない、ユーモアよりペーソスが勝(まさ)っちまったラストシーンは、人並由真さん、tider-tigerさんも仰る様に、ちょっとバランス崩してますかね。色んなものが萎んじゃったね。 といま、今でも読んでみる価値は充分ある面白本と言えましょう。 |
No.3 | 7点 | tider-tiger | 2022/11/03 23:26 |
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高木彬光に『白昼の死角』あれば結城昌治には『白昼堂々』あり。どちらの作品も死角を突いて堂々と犯罪が実行されていくが、読み味は随分と異なる。
愉しいエンタメ作品という基準なら結城作品の中でも上位にくる。 炭坑が閉鎖されて村人の大半が失業、そんな村で二人のスリ師が集団万引きで生計を立てられるよう村人を指導、監督するというとんでもない話だが、緩い時代背景やキャラの明るさもあって、どうにもこの連中は憎めない。 弱者が生きるために犯罪に手を染めていく話で、けっこう重たいテーマを内包しているようにも思えるのだが、それがコメディタッチに描かれている。 思わず膝を打つような巧妙な犯罪というわけではなく、大きな展開もあまりないが、小さな仕掛を積み重ね、少しずつ泥棒軍団の状況が変化し、小さいながらにもそちこちにヤマもあるので飽きさせない。 週刊誌に掲載されていた連載小説ということもあってか、簡潔な文体でテンポ良く話が進んでいく。昭和三十年代が舞台なのでもちろん古臭さはあるが、文章のスタイルは現代的といってもよいくらいで非常に読みやすい。 現代風に言えばジワる作品で『泥棒村』というネーミングなどあまりにも直球過ぎておかしくなってしまう。 二人の刑事が親分肌のスリ師について「俺はあの男が好きだった」「俺だって好きでしたよ」みたいなことを言い合うシーンが印象的だった。冷静に考えるとこれもなんだかおかしい。 炭坑の不況と泥棒団の発生を結び付けて白昼堂々の世界を作りあげることに懸命だったと作者はあとがきに書いていた。 世界を作るということはいろいろな設定を盛り込んで精緻に作り込んでいくことばかりではない。物語に相応しいリアリティの置き所と適切な文体の選択が基調にあるべきだと思う。もちろん本作は二つともクリアしている。 が、人並さんのオチについての御指摘にはまったく同意。あのラストは物語的には違和感ないのだが、リアリティの置き所という意味では少しズレていて、いささかの気持ち悪さがある。 ただ、あのラストは嫌いじゃない。 |
No.2 | 7点 | 人並由真 | 2019/05/31 02:18 |
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(ネタバレなし)
昭和30年代の半ば。前科7犯の元スリで、今は堅気になってデパートの保安係として働く富田銀三は、生まれ故郷の九州は筑豊の村に帰参する。かつては炭鉱として賑わっていた村は、今では石炭が不要になった時勢につれて過疎化。そこは、銀三の旧友で前科6犯の「ワタ勝」こと渡辺勝次ほか、スリを生業とする人々の温床になっていた。勝次に再会した銀三は、スリではなくもっと安全で効率がよく、そして人様を泣かすことも少ない仕事、つまりデパートの万引きを集団でやらないかと申し出た。こうして結成された万引き団は各地に飛ぶが、かつて銀三の更正を応援した警視庁のスリ係の刑事・寺井、そしてその上司でスリ係24年の古参刑事・森沢が銀三や勝次たちの前に立ちはだかった。 1965年6月4日から12月31日まで「週刊朝日」に連載された、昭和クライム・コメディの名作。以前から面白そうという評判は聞いており、読むのを楽しみにしていたが実際に頗る快い一冊であった。物語の背景には、炭鉱の町の衰退などをひとつの事例に掲げた昭和の不景気事情があるが、それでも生きるためにスリや万引き稼業に乗りだしていく登場人物達のバイタリティが陽性のギャグユーモアに転化されている。特に、個人から財布や現金をスリ取るのは被害者の人生に多大な迷惑をかけてしまうおそれもあるが、大企業で(この昭和30年代当時)上り調子で繁盛しているデパートから万引きするなら罪が軽い、と実に手前勝手なことを真顔で語る主人公・銀三の物言いなど笑わせる。世の中の経済感覚が変った21世紀の今なら、とても通用しない思惟だが、良くも悪くも昭和という時代の緩みのなかで生まれた作品である(高度成長の時代の中で振り落とされていく人がいて、その事実に盤石の対応がされていないことへの社会風刺的なスパイスも感じられる)。 作品の前半は、万引き団の面々それぞれの素描とチーム結成の経緯、さらには万引きの実働に出てからの現場を語り、途中からは警察側の動きも交えたさらなる群像劇になる。加えてそこに、小悪党たちを弁護して金を稼ごうとする年季の入ったしたたかな爺さん弁護士などもからんできて、さらに人間関係の機微がスリルと笑い、そして相応のペーソスに変る。 万引き犯罪と故買の流通、さらには逮捕された際の泣き落とし作戦など、それぞれのデティルの積み重ねが実に面白い。 謎解きミステリ味などはほぼ皆無だし、読者の予見を利用したどんでん返しの類などもほとんどないと思うが、それでも最後まで丸々一冊面白く読めた。こんなのミステリじゃない、という人ももしかしたらいるかもしれないが、ストライクゾーンの広いつもりの評者などは、たまにはこういうのも良いという前提の上で多いに楽しんだ。(ただしラストだけはマンガチックな演出が過ぎる気もしたが、まあその辺は、作者がノリのなかで物語を振り切ってまとめた気分が覗えるようで悪くはない。) ちなみに渥美清主演・野村芳太郎監督で映画になっているらしいが、さもありなん。この原作の時点から映像にしたら面白そうなシーンが山積みで、もし自分が昭和30年代当時の映画人で企画に関われる立場だったら、すぐさま映画化の企画書を書いていたろう。そのうち当の映画も観てみよう。 |
No.1 | 5点 | 江守森江 | 2009/05/30 04:59 |
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掏摸から集団万引きにシノギを変えた小悪党達の話。
ユーモラスな中にスリリングさもあり一気に読ませる。 今となっては時代背景が古いのが難点。 |