皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 本格/新本格 ] 模倣の殺意 元題『新人賞殺人事件』/別題『新人文学賞殺人事件』 |
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中町信 | 出版月: 1973年06月 | 平均: 6.09点 | 書評数: 22件 |
双葉社 1973年06月 |
徳間書店 1987年02月 |
東京創元社 2004年08月 |
No.22 | 5点 | 虫暮部 | 2024/04/21 12:28 |
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やられたっ!
とは確かに思った。 しかし一方で、ネタバレするけれどアリバイについて。まず、あまりにもわざとらしい。あんな行動はそれ自体、心証的には真っ黒だ。 第二に、結果として本当にアリバイが成立しているのに、それを主張すると自分の悪意を明かすことになるので言えない、と言うジレンマはとても面白い。にもかかわらずその点が目立っておらず勿体無い。強調しないなら不要などんでん返しではないか。 他者にどう思われようと気にしない、キャラクター的な整合性はまぁあるけどね。 |
No.21 | 8点 | バード | 2023/01/18 21:43 |
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(軽いネタバレあり)
基本をおさえた叙述物で勘の悪い人でもどこかで違和感に気付けそうな塩梅。比較的ミステリ歴の浅い内に読むと頭に突き刺さるだろう。 万人が賞賛するレベルではないが、私個人としては上手く書いたと褒めたい一作。点数はデビュー長編作とのことなので1点おまけ。 |
No.20 | 5点 | パメル | 2021/07/17 08:21 |
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新進作家、坂井正夫が青酸カリの服毒死を遂げた。遺書はなく、世間的には自殺として処理された事件に疑問を抱いた二人の男女が、それぞれ事件の真相を解明すべく調査を始める。
服毒死の現場は完全なる密室で、それを素人探偵の二人が謎を追求していくというシンプルなストーリーで、章タイトルは中田秋子、津久見伸助になっており二人の視点が繰り返される構成。読者への挑戦状もついている。 探偵が推理する密室とアリバイに目がいってしまうなど、巧妙なミスリードで大きな仕掛けに気付かず読み進めてしまう。(途中である人物像に違和感があったが)ただこの手の作品を読み慣れている人は、叙述トリックを見破れるかもしれない。ネタバレになるので多くは語れないが、真相が事件の前提までをも覆されてしまったような気がして「そんなのあり?」というのが正直な感想。 とはいえ、叙述トリックの先駆けであり、日本推理小説にとって記念碑的作品ということは認める。 |
No.19 | 8点 | モグラの対義語はモゲラ | 2021/05/20 18:39 |
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読んだのは文庫本版。所々引っかかる点がちゃんと回収されて心地よかった。今となっては割とベタなタイプの作品なのだが、それでもフーダニットが読み切れなかったので最後まで楽しめた。分かる人はちゃんと推測っていうか推理できるんだろうけどなあ。自分もまだまだ。
割と複雑な構成なので、断続的に読むと頭の中でぐちゃぐちゃになるかもしれない。というかなった。そこは人によってはウィークポイントに映るだろうか。まあそもそもそういう不自然さとその昇華が醍醐味の作品なので当たり前っちゃあ当たり前か。 細やかなトリックから大胆なアイデアまでふんだんに盛り込みながらこの短さ、もっと知名度があっても良い、隠れた良作だと思う。 |
No.18 | 7点 | 人並由真 | 2020/04/11 04:03 |
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(ネタバレなし)
本作は1987年の徳間文庫版が刊行される以前に、まだ当時のミステリマニアの間で希覯本だった元版の双葉社版『新人賞殺人事件』を入手。そのうちにじっくり楽しもうと思いながらついつ読むのがもったいなくなり、家のなかでウン十年も眠らせつづけていたのだった。 そしてその間に新世紀になり、現在の世の中に浸透している創元文庫版も刊行。かたやもはや希覯本でもなくなった本作への評者の興味はいきおい減退していたのだが、当たり前ながらミステリ作品そのものの価値や魅力は、その本がレアか否かとは関係ないのだと改めて自覚。このたび部屋の中から見つかったその元版を初めて読んでみた。 だから読了後に本サイトの皆さんのレビューに触れてビックリ! 創元文庫版では<ある部分>が改訂・割愛されていることも初めて知った!! ところで評者はミステリ読者としての個人的な信条として、もし同一の作品に長短のバリエーションが公刊されているのなら、一番、情報量の豊富な(つまり最も紙幅=字数の多い)バージョンを読みたい、と基本的には思っているので(送り手が作品の完成度を高めようとして行う、ディレクターズカット的な改訂を100%否定するわけではないが)、その意味では初読がノーカットの元版だったのは良かったと、ごく私的に実感している。 というわけで元版ではフェアプレイゆえの伏線があまりにもあからさまだったためか? アタマが変な風に回り(単に油断しただけという声もある)、まんまと騙された(笑・汗)。 しかしながらこの作品に関しては、おおざっぱに言って ①元版をリアルタイムかそれに近いタイミングで同時代的に読んだ人 ②改訂された創元文庫版を21世紀に読んだ人 ③(中略)トリックが幅を効かした21世紀の現在にわざわざ元版を読んだ人 と3タイプの読者がいるわけで、自分は正にその③番目なのだが、やはり一番幸福だったのは①のタイプの読者だったと思う。本サイトの先人のレビューでいえば、蟷螂の斧さんと空さんの感想を拝見しながら、特にその思いを強くする。 あと書いておくこととすれば、津久見が偽証アリバイを見破るくだりが好ましい。社名の(中略)のあたり。 しかし本作内でアリバイトリックに使われた技術の大半は、今の若い人たちにはどれもほとんど実感のないものになってしまっているだろうな。ものの見事に昭和文化を覗き込む一冊であった。 評点は測量ボ-イさんに倣い、1点プラス。 |
No.17 | 8点 | 測量ボ-イ | 2018/10/21 19:53 |
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ふとしたきっかけで知った作品ですが、これは良かったです。
今となってはよくある〇〇トリックですが、この作品、40年以上前みたい ですからね。 この手のトリックでこの作品より古い作品というと、小〇氏の〇〇〇の証人 くらいしか思いつきません。 しかも、その作品より個人的には高評価です。 ネタを知った上で、また読んでみたい作品です。 本格不遇の時代に書かれたこの作品に拍手! 採点が7点(基礎点)+1点(この時代の貴重な作品) (余談) 僕が読んだのは、2004年頃に出版された復刻版です。 初版の1973年版では、真相が判るもっとわかりやすいヒントがあったの ですが、今となっては露骨すぎるので削除されているみたいですね。 解説にそのあたりが記載されていますが、なるほどと思わせる内容です。 (当然作品を先に読むべきですが) |
No.16 | 7点 | 名探偵ジャパン | 2017/06/11 01:21 |
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名前だけは知っていましたが、世に出回っている作品をなかなか目にする機会がなかった、私にとっての幻のミステリ作家、中町信。その存在も忘れかけていた頃、偶然本書と出会い、早速読んでみました。
私は読前に出来るだけ情報を遮断して読む派なので、解説やあとがきは元より、表紙をめくってすぐにあるあらすじも、意識して視界から外して読み始めます。知っていたのは、本作が相当昔に書かれたものである、ということだけ。本作の初登場は昭和四十七年、西暦にして1972年だそうではありませんか。 読了してまず、「その時代にこれをやった作品があったのか」と驚きました。未だに多くの作家が書き続けている、あの仕掛けに対して、「それは中町信が四十年前に通った道だっ!」と言いたくなります。 「あれ」がアクロイドパターン。「あれ」がオリエント急行パターン、「あれ」がABCパターン(おお、全部クリスティだ)と、トリックの系譜にオリジン作品の名前が冠せられるのであれば、「これ」は「模倣の殺意パターン」と呼ばれるようになっても良いのではないでしょうか? どうしてこれだけのものを書ける作家が「幻」扱いされているのでしょうか? 本作だけの一発屋だったのでしょうか? それを確かめるためにも、これからも中町信の作品を積極的に探して読んでいきたいと思います。 |
No.15 | 7点 | 斎藤警部 | 2015/10/19 11:47 |
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推理作家の卵による盗作を巡る紛糾と犯罪のストーリーは面白くて読みやすい。登場人物の絡み合いも適度に複雑で興味を唆る。 そして「あの」メイントリックが明かされた瞬間、驚き! に半拍遅れてしゅうぅ~と空気が抜けて物語の体積がしぼんでしまう感覚。振り返れば意外にも浅い内容。。しかしその内容を実際以上に膨らまして見せること自体に本作の勝負トリックが掛かっているのだから一種のアンチクライマックスも当然の帰結。やっぱり推理小説として豊かな作品と私には思える。ましてこのトリックをビートルズ解散からさして間もない日本で世に問うたってんだから(私の採点には影響しませんが)。
鮎川氏の書評「じっくり腰を据えて読みすすんでいくと、やがて、どうみても中町氏の書き誤りではないかと考えざるを得ない結論に達するのだが云々」は唆られますね。氏がこの傾向のトリックを自分でキメてくれてたらなあ(たとえば幻の「白樺荘」で、とか)と妄想せずにいられないじゃないですか。 忘れられていた作家「中町信」が再び脚光を浴びられたのは本当に良かった。 創元推理文庫の表紙、秀逸と思います。レジでびっくりする人も続出したとかしないとか。 |
No.14 | 5点 | ボンボン | 2015/02/15 13:42 |
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(ネタバレ気味?)
大きな箱に、謎解きの小箱がたくさん入ってるが、終盤で大きな箱のほうが見えてくると面白くなる。 最終的な犯人について、登場人物が推理小説のあり方について議論する何気ない会話の中で示されていたのが愉快だった。 全体にほとんど深みは無いが、二人の素人探偵については、好意的に見ることができた。 |
No.13 | 7点 | ボナンザ | 2014/04/08 01:18 |
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タイトルがかっこよくなった。
トリックはともかく、その演出がすごい。 |
No.12 | 5点 | アイス・コーヒー | 2013/06/06 18:38 |
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最初にある男が死に、二人の人物が男の死を追う、という話。某書店で売れ残っていた中町氏のデビュー長編の本書を店頭でプッシュしたところ、その意外なトリックが人気を呼び再び幻の名作として話題になっている。
勿論良くできた話で個人的には満足。この本が最初に発表された当時を考えると偉大だし、かなり論理的に作られていると思う。 ただし、これらのトリックは乱発されすぎて現代においては印象が薄れる。人物がかけていないのも致命的だ。着想はよく出来ているのだが、その点が少し残念。 |
No.11 | 5点 | メルカトル | 2013/05/02 22:23 |
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約40年前に書かれた事実を考慮すれば、確かにこのトリックは驚嘆すべきものかもしれない、いやきっとそうなのだろう。
もし当時に読んだのなら素直に驚けたであろうが、やはり今日ではややありふれたトリックとして認識されてしまっているため、ああ、そうだったのか、くらいにしか感じなかった。 現在、非常に話題になっている上、意外なほど売れ行きが好調なので読んでみる気になったのだが、期待が大きかったのも手伝って、残念ながら思ったほどの出来栄えではなかったように思える。 こうした構造にしては、緊迫感やサスペンス性が不足しているのも減点の対象となってしまいそうである。 辛辣かもしれないが、私に言わせれば、この作品を喜んで読める読者は幸せ者だと思う。 さて、私はまた再読に戻るとしよう・・・。 |
No.10 | 6点 | haruka | 2013/04/12 23:17 |
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トリックは現在となっては目新しいものではないが、発表された時代を考えると称賛に値すると思う。途中でアリバイ崩し等の小ネタも挟みつつ、すべての謎を明らかにしてゆくプロットが見事。 |
No.9 | 5点 | いけお | 2012/08/29 16:50 |
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叙述ものであると謳われていたが、それでもだまされた。
しかしトリックのみの作品だし、被害者と同姓同名はちょっと強引だと思う。 |
No.8 | 5点 | 臣 | 2012/07/07 14:08 |
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まったく予想していなかった、かなり意外性のある真相とトリックなのだが、さして驚くことはなかったし、興奮することもなかった。分析するに、真相がわかれば、こんな話はまずないだろうとの考えのほうが、驚愕度に勝っていたということなのでしょう。
かといって、つまらないかというとそうでもなく、二人の素人探偵が並行して地道に謎を解きほぐしていく過程は、ほどほどに楽しめた。 |
No.7 | 4点 | 蟷螂の斧 | 2012/05/28 15:29 |
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<復旧再登録>創元推理文庫版。本作品のあとに類似のトリックが多く発表されたため、双葉社版(当初)のプロローグを変更したとのこと。双葉社版のプロローグは完全にネタばれになっているので、本書では、その部分をカットしたのですが、その結果、「被害者は○○○○であった」が唐突であり、意外性を感じられず、まったく面白くありませんでした。「それはないでしょう」といった感じです。プロローグで謎を残すような記載があれば評価はかなりアップしたと思います。残念です。 |
No.6 | 6点 | 3880403 | 2011/05/18 18:47 |
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(文庫版読了)
衝撃はさほどなかったし、ありがちだったが、まぁやられた。 文章は読み易い。 |
No.5 | 7点 | 空 | 2010/03/06 14:58 |
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創元版が出る以前、『新人賞殺人事件』として出版されていたのを借りて読んだ作品です。
創元版の解説にも書かれているとおり、当時は各章の最初に載せられていたのは日付だけではなく、それが明白な伏線になっていたのです。その伏線には早い段階で気づいたのですが、それでもカットバックを最終的にどうまとめるのか気になり、おもしろく読めました。また、その伏線自体に作者が目をつけたところにも感心したものです。鮎川哲也による書評で、「書き誤りではないかと考えざるを得ない」ところがあるとされていたのも、この点でしょう。創元版で削除されたのは、現在では露骨過ぎるからでしょうね。 しかし、たとえ全体的な仕掛けを考慮に入れなくても、アリバイや思い違いによる手がかりだけでも、それなりのミステリのアイディアと言っていいぐらいではないでしょうか。 |
No.4 | 6点 | こもと | 2009/11/28 21:51 |
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長編ではあるが、印象としては小品であり、同時に良品であるとも思う。 こぢんまりと品よくまとまった作品。
正直、先は読める。 どこかで読んだ気がするなぁ、というような。 でもそれは、今の時代であるからこそ、だとも思う。 逆に言えば、40年近く前に書かれたこの作品に、現在巷にあふれかえっている多くのトリックの方が、似ているのだと思うから。 ただ、メイントリックに、ちょっとばかりご都合主義が垣間見えてしまったのは、否めない。 |
No.3 | 6点 | E-BANKER | 2009/11/23 14:24 |
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旧作名「新人賞殺人事件」を創元推理文庫にて復刻させた作品。
いわゆる「叙述トリックもの」です。 まずは構成が面白いですね。冒頭1つの事件(殺人または自殺)が起こり、それを被害者の関係者である2人が別々に捜査していき真相に近づいていきますが、導かれる結論はなぜか食い違う・・・という展開。 当然そこに「仕掛け」があります。 ただ、この「仕掛け」はどうですかねぇ・・・一応伏線は張られていて、読み手が気づくことも可能ですし、確かに被害者に対する形容詞が引っ掛かり続けるんですけど・・・ 叙述トリックに慣れた身にとっては、どうしてもサプライズは小さめですね。 |