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[ 本格/新本格 ] 五浦海岸殺人事件 |
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中町信 | 出版月: 1995年07月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 1件 |
徳間書店 1995年07月 |
No.1 | 5点 | 人並由真 | 2022/09/15 05:37 |
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(ネタバレなし)
マイナーな本格ミステリ作家で34歳の人妻・三城雅子は、夫の久男をゴルフ旅行に送り出す。高校時代からの旧友ふたりとゴルフを楽しむ予定の久男の目的地は、茨城県の五浦(いづら)海岸の周辺だ。同地には雅子の一歳年上の友人で、人気ミステリ作家・柿沼千左子のマンションもあった。その地には千佐子の義父で、大会社社長の柿沼徳次郎も顔を見せるという。そんな五浦で、徳次郎を襲った強盗事件が発生。その関連で殺人事件が発生したらしく、夫の久男も容疑者の一人になっていると雅子は知る。 書き下ろし長編。 強盗事件とほぼ同時に殺人事件が発生。そこで盗まれた二千万円の現金の行方や、主犯と思われる人物のほかにさらに共犯がいたのかなど、錯綜する事件を叙述。やがて中盤には、この作者らしく密室殺人まで登場するサスペンススリラー風のパズラー。 文章そのものはこの時期の中町信らしく読みやすいが、一方で例によって叙述がところどころ雑で、こちらの読み落としでなければメインキャラの一人であるダンナの久男の職業すら触れられてない? ほかにも、いや、そーゆーコトはさっさと発想するだろ? という要点に主人公の雅子が気づいていなかったり、全体的にやや残念な出来。 中盤、『白雪姫』のビデオ(フツーにディズニーのアニメ映画らしい?)をネタにした、ダイイングメッセージ? とかのくだりはちょっと気を惹かれたんだけれど。 それでも量産体制に近い創作シフトに入った時期の作者の作品としては、それなり、そこそこの歯ごたえを感じさせる部分も……正直、あるようなないような。 ただまあ、出来がいいとか特化した賞賛ポイントがあるとかはとても言えないが、なんか嫌いになれない一冊ではあった。 (あとから事象を整理すると、偶然が多すぎるということになると思うが。) 評点は、正に「まあ楽しめた」なので、この点数で。 |