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[ 短編集(分類不能) ] 女が死んでいる |
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貫井徳郎 | 出版月: 2015年03月 | 平均: 6.83点 | 書評数: 6件 |
KADOKAWA/メディアファクトリー 2015年03月 |
KADOKAWA 2018年08月 |
No.6 | 7点 | まさむね | 2023/12/12 23:07 |
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文庫版の解説でも触れられていたのですが、実は貫井さんの短編集って少ないのですよねぇ。実際、私は「被害者は誰?」しか読んだことがないし。短編も巧い作家なのに勿体ない…ということで、現時点での最新短編集(実は四半世紀前の短編も多く収録されているのだけれどね)を手にした次第。
作者らしい反転系が中心なのですが、短編自体のバラエティは豊かで、次の短編はどうなんだろう…と期待しながら読むことができます。「殺意のかたち」や「憎悪」、「母性という名の狂気」あたりで作者の技巧を堪能しつつも、個人的には「レッツゴー」の軽み&深みも好み。この短編、好きだな。 ちなみに、「殺人は難しい」の答えは、多くの方が気づくのではないかな。 |
No.5 | 7点 | パメル | 2023/10/24 07:21 |
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ライトなミステリからサスペンス、社会派ミステリまで様々な味わいが楽しめる、どんでん返しが鮮やかな8編からなる短編集。
「女が死んでいる」お酒を飲んで酔った翌日、目が覚めたら部屋に見知らぬ女性が死んでいた。女が死んでいた理由には唖然とさせられた。 「殺意のかたち」公園のベンチで発見された男の遺体。その男が生前、お金を送っていた相手はすでに死んでいた。どういう関係だったのか。シンプルな中に意外性がある。途中で気付いたが、それまでは上手くミスリードさせられた。 「二十露出」ホームレスの臭いに悩まされる飲食店の店主二人が、ホームレスを殺そうとする。オチはあっと言わされた。 「憎悪」愛人契約を結んだ男の正体を探ろうとする女の話。主人公のラストに、ただただ哀れ。背筋が寒くなった。 「殺人は難しい」大好きな夫の浮気相手を憎み、今の生活を守ろうとして殺すことを決意する。NHKドラマ企画でコラボした作品。ネタは見抜くことが出来る人が多いのでは。 「病んだ水」浄水場を作ろうとしている会社の社長令嬢が誘拐された。犯人の指名で秘書が身代金を運ぶことになったが、その金額はたったの30万円だった。動機に繋がるある問題は、他人事ではないと思わされた。 「母という名の狂気」幼い娘に手をあげてしまう母親、それを疑い確信していく父親。最後に祖母の見た光景は、衝撃的なものだった。虐待者の狂気にゾッとし、やりきれない気持ちになる。読後感は相当悪い。 「レッツゴー」恋に奔放で、一喜一憂する姉を冷めた目で見ていた妹が、初めての恋に四苦八苦する。ほろ苦い青春の一ページという感じの心温まる物語。ミステリとしては薄味な恋愛小説。 |
No.4 | 8点 | ミステリーオタク | 2020/04/01 19:10 |
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かなり前に『崩れる』を読んで「もうヌックの短編を読むのはやめよう」と思っていたが、ふとしたキッカケで本書を読むことになり、「食わず嫌いしなくてよかった」と感じさせてくれた一冊。
『女が死んでいる』 無理があるが設定が香ばしいし、とにかくグイグイ読ませてくれる。 身に摘まされる話でもある・・・「酒」の方だよ。(暴力沙汰は起こさないけどね) 『殺意のかたち』 いかにもヌッキーなツイストが小気味よく効いている。 『二重露出』 これもちょっとムリがあり、また既視感もあるが30ページ強に纏められていて貫井ミステリのエッセンスの一面をサラっと味わえる。 『憎悪』 貫井作品の特徴の一つに「主要人物のそれまでの人生を叙情的に生々しく描き出す」というのがあるが、本編ではそれが少々食傷気味・・・と思っていたら・・ 『殺人は難しい』 これはチョットねぇ~、まぁお遊びということで。 タイトルはクリスティ作品の捩りだろうね。 『病んだ水』 トリックだけ切り取って言及すれば「え~~~」って感じだが、一応それを納得させるところまで掘り下げて書かれているのは流石。身代金の安さの理由にも舌を巻いた。(だが当たった刑事が鋭敏だったら、「それでも」違和感を抱くのではないだろうか) 『母性という名の狂気』 今度はその手か。その手はあまり好きではないが、それ以外のヒネリもあるから許せる。 平成9年の作品だが、前半の描写はいやが応でも野田の事件を彷彿させる。 『レッツゴー』 貫井のライトタッチも好きではないし、終盤まで「これはホントにミステリーになるのか」という気分で読まされるが、そこはヌック、しっかり騙してくれる。しかし平成15年頃の女子高生ってこんな感じだったっけ? それに最後のページは今では絶対書けないよね。 先述したとおり、少しムリ目な話が多い(いつものことか)が、全編貫井らしい企みが仕掛けられているハズレのない好短編集。 |
No.3 | 6点 | HORNET | 2018/12/15 10:04 |
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「女が死んでいる」…酔いつぶれて眠った次の日の朝、見覚えのない女の死体が部屋にあった。
「殺意のかたち」…公園で毒物によって死んでいた男。男は少し前に、クモ膜下出血で亡くなった別の男性に30万円という少なからぬ香典を送っていた。 「二重露出」…脱サラして開業した店の前の公園に居ついたホームレス。その悪臭により経営に支障をきたしていることに業を煮やした二人の店主。 「憎悪」…女性が契約的に付き合っているのはプライベートを一切明かさない男。その素性を探ると、有名ファッションデザイナーに結び付く。 「殺人は難しい」…夫はどうやら「ミホ」という女と不倫しているらしい。その殺害を決意した妻だったが― 「病んだ水」…産廃処分場の建設を進める社長の娘が誘拐された。だが、身代金の要求額は「30万円」。場違いに少額な身代金の意味は? 「母性という名の狂気」…いけないとわかっていながら娘への虐待をやめられない。その胸の内が語られている日記の真相。 「レッツゴー」…絶えず男に恋しては振られている姉を呆れたように見ていた妹。そんな妹がついに、自身の恋愛に目覚めた。 叙述的な仕掛けにより、すべての話にいわゆる「どんでん返し」が仕組まれている。ああなるほど、と思えるものから突飛なもの、強引なもの、よく分からないものまでいろいろだが、平均的に楽しませてくれる一冊ではある。 「病んだ水」は様態的にはクリスティの某有名作に似ているが、トリックとして一番頷けた。「殺人は難しい」は、笑ってしまうようなネタだが、発想として面白かった。 |
No.2 | 6点 | E-BANKER | 2018/09/29 16:13 |
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表題作は2015年の発表だが、主に1990年代に各誌に発表された作品を集めた作品集。
「ミハスの落日」以来、作者にとっても久々の短篇集。 ①「女が死んでいる」=二日酔いの朝目覚めたら、何と女の死体が転がっていた!? っていう巻き込まれ型ミステリーによくある展開。で、この真相もなぁー、旨いとは思うが、拍子抜けもするという感じ。 ②「殺意のかたち」=いわゆるダブル不倫なんかが流行っていたご時世の作品。「独白」のパートがうまい具合にミスリード誘っているけど、大方の読者は途中で察してしまう気が・・・ ③「二重露出」=これは単純だけど旨いと思った。途中で「えっ?」と思う読者をあざ笑うかのように決まるオチが秀逸。タバコ屋の老婆が鍵を握っていると考えてたけど、そういう役割だったのね・・・ ④「憎悪」=愛人契約を結んだ謎の男から「義理の息子に殺される!」と相談を受けた女。男の謎を探っていく女にも異変が・・・という展開。仕掛けそのものはワンアイデアなのだが、見せ方がさすが。 ⑤「殺人は難しい」=「問題編」と「解答編」に分かれた、いわゆる推理クイズのような一編。で、トリックもクイズレベルのもの。 ⑥「病んだ水」=身代金がわずか30万円という誘拐事件が発端となる作品。当然そこには作者の仕掛けが潜んでいるわけだが、なるほど・・・玄人受けしそうな作品。 ⑦「母性という名の狂気」=これこそまさに「どんでん返し」が光る一編だろう。でも、これって伏線があったのかな? 読み直してみよう。 ⑧「レッツゴー」=これは・・・ミステリーじゃないよね。まさかラブストーリー?って思いながら読み進めたけど、軽~い仕掛けのあるラブストーリーだろうな。 以上8編。 作品集未収録の短篇を集めましたという感じの作品集。 ②~⑧は90年代から2000年代前半までに発表されたもので、何となく昭和っていうか古臭さを感じる作品が並んでいる。 それはあくまで悪く言えばということなので、普通に評価すれば、さすがに旨い作家だなという評価に落ち着く。 文庫版の帯には「必ずあなたも騙される-どんでん返し8連発」とは書かれているけど、それほどサプライズ感が高いわけではないので、そこらへんを期待しすぎない方がいいかもしれない。 (個人的には③⑦辺りがベスト。④や⑥もまずまず) |
No.1 | 7点 | メルカトル | 2018/09/19 22:24 |
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二日酔いで目覚めた朝、寝室の床に見覚えのない女の死体があった。玄関には鍵がかかっている。まさか、俺が!?手帳に書かれた住所と名前を頼りに、女の正体と犯人の手掛かりを探すが―。(「女が死んでいる」)恋人に振られた日、声をかけられた男と愛人契約を結んだ麻紗美。偽名で接する彼の正体を暴いたが、逆に「義理の息子に殺される」と相談され―。(「憎悪」)表題作他7篇を収録した、どんでん返しの鮮やかな短篇集。
『BOOK』デーベースより。 同名の初版はお笑いコンビ『ライセンス』の藤原をモデルに、グラビアと小説を合体させた単行本。 私が読んだのは同じ角川から8月に出版された文庫本で、『女が死んでいる』以外内容は全くの別物の短編集になっています。 貫井徳郎、流石だなあと思いました。一々面白く、切れ味鋭く、いずれ甲乙つけがたい秀作短編がズラリと並びます。本格度が高くなる程、トリックに関しては腑に落ちるというか、着地すべきところに着地している感じです。逆に本格から遠ざかるにつれ、意外性を発揮します。どちらが良いとも言えません、つまりはどれを取っても一級品なのではないかと。 本作のウリであるどんでん返しについては、これは凄いというのもあれば、まあそうなるだろうなというものもありますが、フェアプレイを貫いている姿勢は立派だと思います。 ミステリファンだけでなく一般読者にも広く読まれることを祈ります。 |