皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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微笑む人 |
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貫井徳郎 | 出版月: 2012年08月 | 平均: 5.40点 | 書評数: 5件 |
実業之日本社 2012年08月 |
実業之日本社 2015年10月 |
No.5 | 6点 | パメル | 2022/07/08 07:47 |
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エリート銀行員の仁藤俊実が、蔵書を置く場所を確保するために妻と娘を殺害した。異様な動機で世間の注目を集めた仁藤に興味を持った小説家の「私」は、事件をノンフィクションにまとめたる関係者を訪ね、証言を集めていく。やがて「私」は、仁藤の同僚や大学の同級生が不可解な死を遂げていた事実を知る。
常識では理解できない猟奇事件が発生すると、マスコミではすぐに幼少期のトラウマや、不況が生み出す閉塞感といった分かりやすい動機を探し出そうとする。ところが本書は、物語が進めば進むほど、仁藤の人物像や動機が見えにくくなる迷宮のような構造になっている。 作者が、実際に起きた事件をモデルにしたようなエピソードや、仁藤を取材する「私」に、知人が「あんな良い人」と答えるなど、どこかで見たことのある場面を並べながらも、ラストに意表を突くどんでん返しを用意したのは、週刊誌やワイドショーが報じる分かりやすい動機は、犯人や社会の闇に到達していないとの想いがあったからではないだろうか。 本書は、一般的なミステリとは異なる展開をたどるため、モヤモヤが溜まるかもしれない。だがミステリのお約束を拒否したことが、逆に現代の不条理な犯罪をどのように向き合うべきかを考えるきっかけになっている。 この作品は、いわゆるミステリ的な解決がない。人は誰も不可解なものに無理やり理屈をつけ、納得しようとする。それが事実かどうかは、誰にも分らない。作者は、そうした人の心の闇に目を向けようと訴えかけいるかのようだ。 |
No.4 | 6点 | メルカトル | 2020/12/05 23:04 |
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エリート銀行員の仁藤俊実が、「本が増えて家が手狭になった」という理由で妻子を殺害。小説家の「私」は事件をノンフィクションにまとめるべく取材を始めた。「いい人」と評される仁藤だが、過去に遡るとその周辺で、不審死を遂げた人物が他にもいることが判明し…。戦慄のラストに驚愕必至!ミステリーの常識を超えた衝撃作、待望の文庫化。
『BOOK』データベースより。 久しぶりの貫井徳郎、相変わらずどんよりしてますね。しかし読み始めてからの吸引力は流石で、思わず物語に入り込んでしまいました。ノンフィクション小説風に纏め上げられて、仁藤という人物の過去を遡ることによって、その性格、人格を掘り下げようとしますが、調査すればするほどその人物像が浮き彫りになるどころか、曖昧になっていきます。一体どこに真実があるのか最後まではっきりしません。よって読後感は決してスッキリした物にはならず、結局仁藤俊実という人間を把握することが出来ないため、読者は結構なフラストレーションを抱えることになりそうです。 ストーリーとしては平坦ではなく、それなりに起伏もありミステリ的趣向も盛り込まれていたりして、読む者を飽きさせないような工夫は見られます。実際最後まで退屈することはありませんでした。だからと言ってこれが傑作であるとか問題作だとかは思いません。ミステリなのかサスペンスなのか社会派なのかすら判然としません。しかし、読後に何かが引っ掛かり何かを心に残す、嫌らしい作品だとは思います。それがこの人の持ち味でもあるでしょうしね。 それにしても本の置き場が無くなったから妻子を殺した、というのは果たして本当だったのか、そこだけははっきりして欲しかったと思いますよ。多分事実だったんでしょうけど。 |
No.3 | 5点 | HORNET | 2020/06/27 12:31 |
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これまでの評者の方と同じような感想。
誰からも評判が良く、いつも微笑んでいる男・仁藤俊美が、「本の置き場所が欲しかった」という理由で妻と子を殺害。その事の起こりが面白く、興味を駆られて読み進めるのだが… 結局、仁藤の過去の犯罪が暴かれることで物語が終わってしまい、微笑みをたたえ続ける仁藤の人間性を暴くことには至っていないため、消化不良の感が残るなぁ。 |
No.2 | 5点 | E-BANKER | 2016/06/19 18:01 |
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2012年発表。ノンシリーズの長編。
個人的に久々に作者の作品を手に取った・・・ということで、どうでしょうか?(何が?) ~エリート銀行員の仁藤俊実が、「本が増えて家が手狭になった」という理由で妻子を殺害。小説家の「私」は、事件をノンフィクションにまとめるべく取材を始めた。「いい人」と評される仁藤だが、過去に遡るとその周辺で不審死を遂げた人物が他にもいることが判明し・・・。戦慄のラストに驚愕必至! ミステリーの常識を超えた衝撃作!~ 作者の“狙い”は結局何だったんだろうか? ラストまで読了し、そう思わずにはいられなかった。 ネタバレみたいになるけど、本作にはいわゆる「解決編」はない。 紹介文のとおり、序盤から読者には魅力的な謎が提示されるのだが、最後まで明確な回答は示されず、あろうことか終盤になってさらに謎が積み重ねられて、そのまま終了してしまうのだ! 確かに「ミステリーの常識を超えた」作品なのかもしれないが、やっぱり何とも言えない残尿感は残ってしまった(汚い表現で申し訳ない!)。 プロットとしては特に目新しいものではない。 ノンフィクションライターがサイコっぽい犯罪者の跡を追いかけていくうちに更なる犯罪の影が・・・なんていうと、個人的には折原の「~者シリーズ」を思い出してしまう。 叙述的な仕掛けを企図するともろに被りそうだし、ホワイダニットをメインにするほど面白いネタではないし・・・ というわけで出てきたのが本作なのだろうか? こういう系統のプロットは嫌いでないだけに、もう少しやり方があったんじゃないかと思ってしまう。 ミステリーファンの哀しい性(さが)で、ドンデン返しを期待しすぎるのもいけないのかもしれない。 これはこれで余韻というか、何とも言えない残尿感を楽しむべきなのだろう。 でもあまり高い評価にはならないな。 |
No.1 | 5点 | シーマスター | 2012/09/02 17:57 |
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この作品は・・・絶賛されている向きもあるようだが、特に文学通とかミステリー通とかいうわけではない普通に娯楽を求める読者にとっては「えぇ?これで終わり?」と未完成作にしか思えないのが一般的な感覚というものではないだろうか。
自分も、作者の本作を連載執筆中のブログで以下のコメントを目にしていなければ「傑作と言われれば傑作なのかなー」と思ってしまったかもしれない。 『かなり凝った話にしてしまったので、長く書くのはしんどいから、短めの長編になると思います。今は第三回の原稿を書こうとしているんだけど、早くも行き詰って辛いです』 やっぱりそういう経過でこのような作品になってしまったのか、と納得できてしまう読後感。いくら何でも回収しなさすぎだろう。マリー・ロジェじゃあるまいし。 何とか一つの理念らしきものを浮き彫らせて小説としての体裁を整えたようにも思えるが、そんなものを読みたくて貫井ミステリーを手にするわけじゃない。 前作「新月譚」を読んだ時、「あれ、貫井さんどうしちゃったの。純文学系にシフト?」と懸念したが、今回は不可解な殺人を題材にした究極のホワイダニットかと思わせながら本作のような作品を出してしまった貫井さん・・・・・・マジで今後が心配。 |