皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 法廷・リーガル ] 消えた看護婦 ペリイ・メイスン |
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E・S・ガードナー | 出版月: 1956年11月 | 平均: 5.67点 | 書評数: 3件 |
早川書房 1956年11月 |
No.3 | 6点 | 人並由真 | 2023/08/15 19:57 |
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(ネタバレなし)
メイスンの今回の依頼人は、世界的に有名な外科医サマーフィールド・モールデン医学博士、その若くて美しい三人目の妻ステファニイだった。実は彼女の主人で52歳のサマーフィールドは、この一両日の間に飛行機事故で死亡と報道され、27歳の奥方は未亡人になったばかりである。ステファニイの依頼内容は、優秀な医者ながら金勘定にはズボラな夫に多大な収入の申告漏れがあり、徴税の役人が動いているので、対策を願いたいというものだ。経理の実体を知るのは、ステファニイと同じ年の美人で、サマーフィールドの片腕と言える看護婦兼事務職のグラディス・フォスだが、彼女は行方不明だ? ステファニイは、グラディスが実は夫の愛人だと確信しているらしく、秘密の密会用の? アパートに多額の現金が隠されているという。早速、当該のアパートに向かったメイスンだが、壁の中の隠し金庫は空っぽだった。ステファニイは、メイスンが独自の判断で彼女の税金対策のために10万ドルの現金を一時的に隠してくれたのだと解釈~主張し、落ち着いたらその金を返してほしいとうそぶく。メイスンは悪女にハメられたのだと気づくが、やがて事態は思いもよらぬ殺人事件へと発展していく。 1954年のアメリカ作品。メイスンシリーズの長編作品・第43弾。 メイスンに横領の咎を着せ、金をせしめようとするガメつい、そして妙な胆力のあるメインゲストヒロインのステファニイが印象的。 今回の殺人事件はなかなか表面に出てこないものの、それでも、思わずハメられた窮地のなかで、あの手この手で冷静に対処するメイスンの駆け引きぶりが、十分にエンターテインメントとして面白い。 中盤~後半から、事件というか物語の方向が別の向きに転調する感じで、たしかにややこしいといえばややこしい。 ちゃんと人物メモを作りながら読み進めたから何とかついていけた(?)が、話の焦点が変わってしまう一方、ポケミス巻頭の人物一覧表にも載っていないキャラクターがソクゾクと登場。ああ、やっぱり、これはちょっとシンドいね(笑)。 ただし犯罪というか事件の概要はなかなか面白く(ここではあまり書けないが)、終盤までテンションを下げずに楽しめるのは確か。 ラストがちょっと放り投げた感じでまとめられ、クロージングにはもう少し気を使ってほしかった気もする。 あと、個人的な感慨だけど、本当に久々にハミルトン・バーガーに再会したかも? この数年、手にとったメイスンものの中では、たしかあんまり出てこなかったような気もするので。 最後に余談ながら、本書の邦訳は昭和32年(1957年)で、ポケミス21頁ほかに、写真の複写という意味で「コッピイ」という表記が出て来る。 個人的には大昔に『パーマン』(1967年)のコピーロボットで「コピー」という言葉を覚えた世代なので、それより十年も早く日本語になっていたのも軽く驚いた。この辺は、外来語のカタカナ表記に詳しい人に聞けば、なんか面白い話を教えてもらえるかもしれん? |
No.2 | 5点 | nukkam | 2023/05/06 00:15 |
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(ネタバレなしです) 1954年発表のペリイ・メイスンシリーズ第43作の本書は本格派推理小説としてはかなりの異色作です。飛行機事故で死んだと思われる男が殺されたらしいという事件に発展するのですがその正体を巡って二転三転、犯人探しだけでなく被害者探しでもあります。しかしこの大胆な真相、自力で謎解きしようとする読者はアンフェアに過ぎる謎解きだと納得できないかもしれません。色々な人たちが逃げたたままで終わる結末のすっきり感のなさも好き嫌いが分かれそうな気がします。 |
No.1 | 6点 | 弾十六 | 2019/08/18 22:35 |
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ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第43話。1954年2月出版。Saturday Evening Post連載(1953-9-19〜11-7) HPBで読了。(なお、以下はAmazon書評の転載です。ちょっと変更。いずれ再読したらあらためて書きます。) 実は前作(1953年11月出版)より前に発表されています。ポスト誌連載は「そそっかしい子猫」(1942年)以来ですが、本作から1962年まで毎年メイスンものをポスト誌に連載(10年間に14作)、人気の高さがうかがえます。(単純計算で、この期間中は1/5くらいの高確率でメイスンものがポスト誌に掲載されてます。) 見え透いた罠に飛び込むメイスン、冒険癖が抜けません。バーガーと地方検事局で立ち回りを演じ、危ない冒険も辞さない行動派メイスンです。予審で地方検事をきりきり舞いさせ、被告を隠したメイスンにバーガーが襲いかかります。法廷侮辱罪は初めてか。武闘派バーガーとお間抜けホルコムを翻弄し、解決に至りますが、結末はちょっと複雑です。 (2017年4月23日記載) |