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[ 短編集(分類不能) ]
さあ、気ちがいになりなさい
異色作家短編集
フレドリック・ブラウン 出版月: 1962年09月 平均: 6.20点 書評数: 5件

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早川書房
1962年09月

早川書房
2005年10月

早川書房
2016年10月

No.5 6点 クリスティ再読 2023/12/03 20:06
「異色作家短編集」の1冊で出た本。何よりのウリは、星新一訳。
日本のアイデア・ストーリーの第一人者が、アメリカのアイデア・ストーリーの教祖の名作集をやるわけだ。
確かに星新一っぽい言葉の使い方もあるが、こうしてみると意外なくらいに資質の差が出ているようのも感じる。ストイックなペシミストである星新一と、楽天性を恥ずかしがって意地悪なイタズラをを好むブラウン、といった構図で評者は読んでいたなあ。だから「シリウス・ゼロ」とか文明批判というよりも、「真面目さゼロ」な話として読んだ方がいいと思ってる。アホみたいな話が書ける、というのがブラウンの一番の強みじゃないのかしら。

そうしてみると表題作も、ナポレオン狂という誇大妄想をいかに変な風に着地させるか、を巡って(わざと)こねくり回した話のような気がするよ。こういう無意味なくらいに叙述でややこしくして煙に巻くのがブラウンらしいあたり。「ノック」なんてそうでしょう。「地球最後の男が聞いたノックの主」というテーマで、いろいろ思考実験する話じゃないのかな。
そういう意味だと、ブラウンの体質として、ミステリの多重解決みたいなノリがある。多くの作品にリドル・ストーリーな面があり、この二重性を一番ミステリらしくオチにしたのが「沈黙と叫び」だと思う。

No.4 7点 蟷螂の斧 2021/04/23 17:29
異色作家短篇集の一冊
①みどりの星へ 8点 地球への帰還欲求が高じて・・・ラストの狂気は哀れ
②ぶっそうなやつら 7点 脱獄犯の報に駅にいる二人はお互い疑心暗鬼に・・・笑える
③おそるべき坊や 6点 何も知らないいたずら坊やが世界を救う???発想が面白い
④電獣ヴァヴェリ 7点 電波を喰う侵略者が地球にやってきた・・・ノスタルジック
⑤ノック 7点 地球上にたった一人残された男の部屋にノックの音が・・・・・誰??ニヤリ
⑥ユーディの原理 5点 暗示をすると実現する装置。小説を書きたい。すると・・・
⑦シリウス・ゼロ 6点 異星人は地球人の思いや考えから絶世の美人を作り出したが・・・ほっこり
⑧町を求む 4点 ヤクザが町を支配したい。その町とは・・・皮肉
⑨帽子の手品 7点 帽子からねずみを取り出した青年は宇宙人? ユーモアorSF?
⑩不死鳥への手紙 5点 18万年も生きてきた男のメッセージ。まとも過ぎるかも
⑪沈黙と叫び 5点 駅長はベンチに座る男に対し人殺しと叫ぶが、男は耳が聞こえない振り?。不条理
⑫さあ、気ちがいになりなさい 8点 記憶喪失の男。実は記憶はあるのだ。自分がナポレオンであるという・・・SF的解釈をしないと混乱必須

No.3 6点 メルカトル 2021/02/11 22:18
記憶喪失のふりをしていた男の意外な正体と驚異の顛末が衝撃的な表題作、遠い惑星に不時着した宇宙飛行士の真の望みを描く「みどりの星へ」、手品ショーで出会った少年と悪魔の身に起こる奇跡が世界を救う「おそるべき坊や」、ある事件を境に激変した世界の風景が静かな余韻を残す「電獣ヴァヴェリ」など、意外性と洒脱なオチを追求した奇想短篇の名手による傑作12篇を、ショートショートの神様・星新一の軽妙な訳で贈る。
『BOOK』データベースより。

もっと奇想天外で荒唐無稽な話を期待していましたが、それ程でもなく大人し目な感じでした。『みどりの星へ』の興味深い仕掛けや『おそるべき坊や』の偶然が奇跡を呼ぶ二つの出来事、『不死鳥への手紙』のスケールの大きさなどは印象に残りました。一方で最初の一行でオチが読めてしまう『ノック』や結局どうなったのか理解できなかった、読者を煙に巻く表題作などはあまり共感できなかったですね。

こうした奇想が発揮される短編集は幾つも読んで来ましたが、そこまで常識を打ち破る作品が並んだ佳作揃いとは言い難いと思います。表題作のタイトルに上手く騙された感じもしましたね。多分私の想像の上を行く無茶な試みに挑戦したものであろうとのワクワク感はあえなく裏切られました。それでも発刊当時にしてみれば十分常識外れな作品集だったのではないかとは思いますが。

No.2 7点 斎藤警部 2017/01/04 12:20
SFとミステリとSFミステリと、おちゃらけとシリアスと渾然一体と、カラフルに寄せ集めたその昔の早川ハードカバーシリーズ「異色作家短篇集」からの一冊。訳者は星新一(流石に相性が良い!)。

軽いやつ小粋なやつが目立ちますが、わたし的には重みある異色作『不死鳥への手紙』がピカイチ。なかなかのセンスオヴワンダーをなかなかの感動が追撃する形でズシンと応えます。こんな限られたページ数でよくもまあ。人気を集めそうなこってり目の表題作も、主人公の心の目線が行ったり来たりで(そのくせ呼称は「彼」)そこへ随分と大上段に構えた大真相が襲い掛かって最後は謎の○○○○エンド(?)というジェットコースターだが『不死鳥』には及ぶまい。。非ミステリSFの『電獣ヴァヴェリ』や『ユーディの原理』は面白たのしいな! 中には、別にいいや、ってなのも混じる。 色々あって均すと7点。

みどりの星へ/ぶっそうなやつら/おそるべき坊や/電獣ヴァヴェリ/ノック/ユーディの原理/シリウス・ゼロ/町を求む/帽子の手品/不死鳥への手紙/沈黙と叫び/さあ、気ちがいになりなさい

No.1 5点 mini 2010/01/16 10:22
異色短篇作家フレドリック・ブラウンは、SFファンだと普通にSF作家の認識だろうし、ミステリーファンにとっては短編集「まっ白な嘘」などの短篇作家か、長編「シカゴ・ブルース」などのエド・ハンター・シリーズのイメージが半々と言ったところか
特に得意なのが文明批評的な哲学的なテーマを軽い口調で語る話で、とかくF・ブラウンと言うとサプライズのある軽妙なオチの短篇作家というイメージで語られがちだが、案外とテーマ性が強いという点を指摘した書評は少ない
しかし、言葉尻だけの底の浅いオチの短篇作家と言うなら、ロバート・ブロックあたりの方が当てはまる感じである
切れ味ではR・ブロックの方が上だが、F・ブラウンの場合はオチ重視な短篇でさえも文明論的な深みが感じられるのである
この短編集はいくつかの個別短編集から集めた傑作選的な意味合いを持ち、ブラウン入門には最も適したものであろう
でもこうして異色作家短篇集という早川書房の全集の1巻としてあらためて読んでみると、他の異色短篇作家に比べて特別に優れているとも思えなく感じてくるのであった
F・ブラウンということで期待し過ぎてしまうせいなのか
それにしても翻訳者が星新一て狙ったな早川(苦笑)


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