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[ サスペンス ] 通り魔 |
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フレドリック・ブラウン | 出版月: 1963年03月 | 平均: 8.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 東京創元社 1963年03月 |
No.1 | 8点 | クリスティ再読 | 2025/06/30 13:27 |
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Wikipedia の執筆者が妙に本作を推しているので、読んでみたよ。
...いやブラウン舐めてた。すまぬ。 もちろん短編の名手だとは重々承知しているのだけど、ミステリ長編は仕掛け先行で解決は竜頭蛇尾、小洒落てはいても小説としての本来の趣きには欠ける...というイメージを持っていた。が本作はそんな先入観を十分覆す力量のある名作。知名度が低いのが本当にもったいない。 アル中気味のシカゴの新聞記者スイーニーは、ブロンド女性だけを狙って刃物で腹部を斬る「通り魔」事件の直後に遭遇する。しかし通り魔を猛犬が阻んだため今回の被害者ヨランダは軽傷で助かった。スイーニーはヨランダに一目惚れをし、ヨランダを手に入れようとアル中から立ち直り「通り魔」の追求に乗り出す。最初の事件の際の小道具として登場した「悲鳴をあげるミミ」と題された彫像が暗示するものとは? で原題は「悲鳴をあげるミミ」でこの彫像がなかなかサイコホラーな役割を果たす。ブルブル、である。スイーニーが遭遇した「通り魔」直後の現場では、倒れている白衣の女とその背後で唸る猛犬、女は意識を取り戻して立ち上がるがその腹部にはべったりの血が...その時猛犬は伸び上がり、女の背ファスナーを一気に引き下ろして....という印象的な場面あり。ヨランダは事実上ストリップというべきショーのダンサーで、猛犬はまさにショーの相棒。お色気サービスと言わば言え、この場面のイマジネーションが素晴らしい。 比較的キャラ造形の印象が薄めのブラウンだが、本作はなかなか印象に残る人物も多い。ヨランダのマネージャーで、スイーニーは第一の容疑者として念頭におきつつも「共闘」みたいになるドク・グリーン、ミミの作者の変人彫刻家、なかなかのナイスガイであるブライン警部など、キャラもよく描けている。 そして...結末はある程度読者の予想を引っ張りながら、絶妙のひっくり返しがある。「こう、ちゃう?」と思い込みで読んでいくと、まさに引っかかるタイプのもの。純ミステリとして上出来。ガチ真っ向勝負のサイコスリラー。 ブラウンって力量のある作家だよ。マジで。 (けどシカゴの酔っ払いというとマローン弁護士なんだよなあ。そんなにシカゴはアル中が多いのかww。真夏のシカゴで公園で野宿するルンペン親父とスイーニーは昵懇で、このオヤジが見事にオチを締めてくれる。ここらへんは短編作家ブラウンの安定の切れ味) |