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[ サスペンス ] 遠い悲鳴 |
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フレドリック・ブラウン | 出版月: 1965年01月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1965年01月 |
No.1 | 7点 | 人並由真 | 2017/06/23 09:47 |
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(ネタバレなし)
不動産屋で失敗し、同時に仕事で心身をすり減らした三十代後半のジョージ・ウィーヴァ。一度、店を畳んだ彼はサナトリウム生活を経てニュー・メキシコ州の田舎町アロセ・ヨーコで、再出発の準備を図る。愛する2人の娘エレンとベティ、それに愛情がさめていく太った知性の足りない妻ヴィを自宅に遺して現地に来た彼は、旧友の文筆家でこれからハリウッドに向かうリューク・アシュレーと再会。彼からある依頼を受けた。それは今度、ウィーヴァが借りることになった郊外の一軒家に関するもので、そこでは8年前に若い女性ジェニー・エームズが当時の同家の家主だった素人画家の青年チャールス・ネルソンに殺害されたという。ジェニーの婚約者とおぼしきネルソンはそのまま逃亡。今もその行方は不明である。リュークは今後の創作のネタのため、ウィーヴァが滞在予定の夏期の三か月の間、彼に改めてこの事件の真実を再調査してほしいと願うが……。 1961年に原書が刊行された作者のノンシリーズ編。邦訳は、この作者としては珍しくポケミスに収録された数少ないものの一つ。 場面転換の早く、流れるように進むストーリーテリングの妙、さらには半世紀を経た翻訳者・川口正吉の訳文もおおむね平明かつハイテンポで、あっという間に読んでしまった。まあ総ページ数も220弱と、そんなに多くはない一冊だが。 主人公ウィーヴァが健在な証人を訪ねてまわるうちに当時の事件の概要が少しずつ見えてくる一方、殺される直前に初めて現地に来たらしい肝心のジェニーの素性はなかなか明らかにならない。その意味では<被害者もの>のジャンルにも分類される内容だが、その煽り方はブラウンの筆が冴えた感じで実に面白かった。 さらに終盤数十ページの話のまとめ方、クロージングの衝撃などは同じ作者のあの力技ミステリ『3、1、2とノックせよ』を彷彿させる鮮烈な印象度(もちろんミステリとしてはまったく別のことをやっているが)で、夜中に読んでいてすっかり目が醒めてしまった(笑)。まあ人によっては……かもしれない。 ちなみに題名の意味は、物語の舞台となる山際の田舎町に響くコヨーテの遠吠えと、事件を洗い直すうちにウィーヴァの心象に聞こえてくるような、殺害される際のジェニーの絶叫、その双方を掛けたもの。邦題だとちょっとそのニュアンスがすぐに伝わらないのは惜しいね。 |