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[ 本格 ]
死にいたる火星人の扉
エド・ハンター&アンクル・アム
フレドリック・ブラウン 出版月: 1960年01月 平均: 5.80点 書評数: 5件

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東京創元社
1960年01月

東京創元社
1960年01月

No.5 5点 クリスティ再読 2024/03/29 15:03
原題がさほど面白いわけではない「DEATH HAS MANY DOORS」なのを、これほどキャッチーな訳題にした、というだけでもとにかく目立つ作品だからねえ。ついつい手を出したくなるよ。いや、火星人....ブラウンと言えば「ゴーホーム」の方の火星人もいるわけだが、青春ハードボイルドのエド&アンクル・アムシリーズなんだから、「火星人に殺される...」とエドに護衛を依頼した女がたとえ不審な死を遂げたとしても、SFにはならないし、また悪趣味なアメリカンジョークの世界に突入するわけでもない。
一応ハウダニットものではあるんだよ。そうすれば「火星人が殺した!」はミスディレクション?かもしれないが、サリー殺しの方は物理トリックに気が付くんじゃない?(場違いに詳細な描写でピンとくる...)キャラはそれぞれごく普通にうまく書けていて、エドくんのホロ苦青春と酢いも甘いも噛み分けたアンクル・アムのコンビ感の良さは、スレてないウルフ&アーチ―といった味わいもある。ボクシングのエピソードとかセイシュンしてるよ(モニカくんレギュラー化したらいいのに)
けどね、どうもプロット展開が悠長なんだよなあ。そしてハッタリに納得の真相があったなら、ミステリ史に残る不可能犯罪の名作なんだろうけど、正直ハッタリがハッタリで終わった残念感が強い。(第二の殺人のハウダニットは評者はアホか!)
なんかいろいろ惜しい、残念という印象の作品だけど、これは訳題でハードルを上げまくった結果みたいな気もするよ。

No.4 5点 斎藤警部 2021/08/17 20:50
登場人物表の”出落ち”でこんなに笑わせるのも珍しい! 本職のSF領域にちょっぴり触れた展開だけに(?)面白さもそこそこ保証されてるよな微妙な期待感でスタート。やがておそろしく魅力的な変人が登場、一瞬めちゃ上がったが、そのあとちょっと退屈に。。だが予想外の激しい展開も覆い被さり、ユーモアは常に携行しつつ、ヴィヴィッドな女の子達も出入りしつつ、まず愉しく進行。依頼人捜し趣向の興味深さ、それが事件解決ないし紛糾にどう絡んで行くのかへの期待。しかし事件の背景こそ予想外に壮大で驚いたが、それがミステリとしての大きさにさっぱり寄与していないという何とも残念な、カスった感。。何なんでしょうか、この微妙極まりない、収まりの悪さは。エンディングも、気を利かせたようでなんか外してるような。。イカした邦題負けしてるとしか思えませんが、色々愉しいシーンもあってそう悪いもんではないです。特に勘違いボクシングで結果オーライの場面は最高にハイボール日和です。 だがなあ、おそろしく魅力的な変人、レイのカラフルなオーラがもっと、物語を席巻してくれてたらなあ..!!

No.3 4点 レッドキング 2019/06/29 17:13
これ日本語タイトルの勝利だね。原タイトルだったら読まなかったし。最初のトリック、探偵と同様に「闇からの声」の変形を予想していた。
※こんな殺人トリックを考案した。壁に掛かってる普通の風景画の上下をひっくり返すと恐ろしい幽霊の絵に見えるっていう騙し絵の仕掛けを作り、それを心臓病持ちのターゲットに遠隔操作で見せてショック死させ、その後、絵の上下を元に戻しておくという・・・

No.2 6点 蟷螂の斧 2018/12/10 09:42
登場人物表に「火星人・ヤッダン」とありますが、SFではありません(笑)。ただ、二つの殺人事件(密室、溺死)のうち、片方のハウダニットについては、私的には信じていないので、どちらかと言えばSF的発想と言えるのかもしれません。主人公の青年エドのキャラクターは捨てがたいい、いい味が出ていると思います。

No.1 9点 人並由真 2018/10/11 02:53
(ネタバレなし)
 猛暑の8月。シカゴで叔父(アンクル・)アムとともに零細私立探偵業を営む青年エド・ハンターは、赤毛の若い娘サリー・ドーアの訪問を受ける。彼女の相談内容は、自分が火星人に命を狙われているので護衛してほしいというものだった。精神科か警察に行くようサリーに勧めたエドだが、相手は相手にされないことをなかば覚悟していたような感じで退去。その仕草が気になったエドは、結局、とりあえず一晩だけの約束で彼女のアパートの隣室で護衛役を引き受ける。だがその夜、サリーは外傷のない突然死を遂げた。彼女の死を看過する形になって悔恨の念を抱くエドは、アムの協力を得ながらサリーの後見人の親戚一家に接触、そしてサリーの妹のドロシーとも対面する。それと前後して、火星人と名乗る者が電話でエドとアムに連絡。火星人は、サリーを殺したのは我々ではない、事件を調べてほしいと告げ、いつのまにか事務所に千ドル紙幣をひそかに置いていった。

 1951年のアメリカ作品。私立探偵エド&(アンクル・)アムものの第五長編。シリーズ第一作『シカゴ・ブルース』で初心だったエドは十分にセックスも楽しむ青年探偵に成長している(劇中に情事のシーンなどは全くないが、登場するヒロインに向けて、エドがそっちの関心があることをワイズクラックで匂わせたりしている)。
 本書は評者にとって何十年ぶりかの再読のはずだが、初読当時、実に面白かったこと以外さっぱり内容は失念。しかしながら本書は自分が出合ってきたオールタイムのミステリ中でも最高クラスに魅惑的なタイトルの響きであり、その意味も踏まえていつか読み返したいと思っていた。
(だってステキではないか。地球に来訪するなら円盤かワープ、テレポーテーション技術の方が似合いそうな火星人の用いる通路がフツーの「扉」で、しかもそれが謎めいた「死にいたる扉」という妖しげで幻想めいたものなんて~笑~) 
 でもって一昨日、ようやく本が自宅の蔵書の中から見つかったのでいそいそと読み出したが……あああ、期待以上に、最強にオモシロい! 
 エドとアムがなじみの警察官フランク・バセット警部の協力を得ながら関係者を尋ねてまわり、第二ヒロインである妹ドロシーやさらに登場の美女モニか・ライト(エドたちの事務所に短期の秘書仕事の応援にやってくる)たちと関わり合うなかで、ついに第二の不可能興味っぽい犯罪が発生。エドの疑念のポイントは改めて、いかに姉サリーが殺されたかのハウダニットに絞り込まれつつ、物語はハイテンポに進んでいく。特にエドがある仮説を思いつき、サリーのアパートで実地検証を重ねるあたりのゾクゾク感はたまらない。
 キャラクター描写も味があり、なかでも後半、自分の至らなさから犠牲者を出したと自責の念を覚えるエドがサリーの元カレの青年ウイリアム・ハイパーマンに接触。エドが自分のストレスを彼とのボクシングの試合でさらけ出したのち、そのウイリアム当人や彼の家族と奇妙な心の絆を感じあうあたりなんか本当にいい。なんかとても丁寧に演出された、50年代アメリカのヒューマンテレビドラマみたいだ。
 青春ハードボイルドとしては大沢在昌の佐久間公(もちろん若い頃の)チック、不可能犯罪の興味としては、どっかJ・D・カーのB級作品風であり「これだ、俺はこーゆー作品を読みたかったのだ!」という感じで、夕方から読み始めて夜中の午前3時、眼が痛くなるのも押していっきに最後まで読了してしまった(笑)。
 最終的な謎解きミステリとしては一部チョンボかという部分もあるかもしれんし、ヒトによっては解決の一部、さらには手がかりや伏線の甘さ、トリックの現実性の無さに呆れるかもしれんが、個人的には本を読みすすめ、残りページが少なくなってくる中でまだ事件の真相、火星人の正体、いくつもの謎が残されている間のテンションが正に快感であった。出来不出来いかんを越えて、評者としては題名・設定もふくめて、こういう作品が大スキということでこの評点(笑)。


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