皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ SF/ファンタジー ] 火星人ゴーホーム |
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フレドリック・ブラウン | 出版月: 1958年01月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 2件 |
早川書房 1958年01月 |
早川書房 1976年11月 |
No.2 | 7点 | クリスティ再読 | 2022/06/25 14:01 |
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SF古典、といえば古典なんだけども、笑えないアメリカン・ジョークがそのままSFになったような作品。火星人の悪趣味さってガチにアメリカン・ジョークの世界、じゃない? タイトルからして、「ヤンキー・ゴーホーム」のパロディのわけだから、それをヌケヌケとアメリカ人作家がやってみせるあたりの批評性を、自虐ギャグみたいに面白がるべき作品なんだろう。
それだけだと時代の証言に過ぎないわけだけども、SFとしてのキモはやはり「唯我論」というものなのだろう。要するに火星人ってアル中の妄想の象徴「ピンクの象」みたいなものなんだよ。火星人がもし主人公の作家ルークの想像の産物に過ぎないのなら、それによって悩まされる全地球人もルークの想像の中にしかいない。そして、それを読んでいる「読者」もルークの想像の中....いやいや逆に読者からすれば、読者の読む世界の中のルークも、ルークが想像する火星人も、すべて自分の想像の産物であって、読者が存在を否定すれば火星人も消えるがルークも消えて....こんな往還をブランコのように楽しむのが、やはりSFとしての楽しみ方、というものなのだろう。 |
No.1 | 7点 | 人並由真 | 2021/07/23 04:38 |
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(ネタバレなし)
1964年3月26日。木曜日の夕方。カリフォーニアの砂漠にある丸太小屋で、37歳のSF作家ルーク・デヴァルウは、原稿が書けないことに悩んでいた。そんな彼の前に、「クゥイム」なる空間移動技術で火星から来たという身長2フィート半の火星人が出現。火星人は、ルークが恋焦がれる娘ロザリンド・ホーンが他の男と寝ていることを言い当て、地球上ならほぼ万能の知覚能力があることを示した。驚き慌てるルークだが、全世界はあっという間に10億人の火星人で埋め尽くされる。しかも彼らは物理的な実体を地球人に感じさせずに自由に出没し、あらゆることに関心を抱き、あらゆることをジョークのネタにした。男女の性生活をふくめて、地上からはほぼ全てのプライヴァシーが奪われ、地球の文明は大きく変容を強いられていく。 1955年のアメリカ作品。 フレドリック・ブラウンの3冊目のSF長編で、異星人の侵略もの、ファースト・コンタクト・テーマを独特のコミカルさで描いた名作。 とはいえ評者など、大昔に日本版EQMM(古本屋で集めた)で読んだ都筑の「ぺえぱあ・ないふ」そのほかで以前から、設定や大筋、さらにサワリのギャグなども教えられており、さらにあちこちで「名作」「傑作」と聞かされていたものだがら、21世紀のいま初めて読むと「うんうん、そうだね」と頷く部分もあれば「ナンダ意外にコンナモンカ」という部分を感じないでもない。 言い方を変えれば時代を超えて面白い部分はたしかにあれど、一方でどこかに悪い意味でのクラシックさを感じたりもした。 たとえば、一体何がしたいのかわからないままに地球文明をかき回す10憶の火星人が、人類の価値観や社会様式を破壊していくプロセスのダイナミズムそのものは確かに普遍的に痛快なのだが、かたや作劇の枠組みでいえばよくもわるくも真っ当な王道感を抱かせるもので、これまで見たこともないトンデモナイものに触れた、という種類のショッキングさなどはそうない。 20世紀、それも1970~80年代くらいまでに読んでいたら、この辺はもうちょっとスナオに楽しめたのかも、という思いが生じた。 それでも火星人に対する認識というか距離感が変遷してゆく主人公ルークの後半の叙述とか、モジュラー風にカメラ視点が切り替わる地球各地のバカ騒ぎとか、やがてルークを取り巻くいささかブラックな連中の描写とか、細部にぎっしりとアイデアを盛り込み、読み手を最後まで飽きさせないあたりは、やはり流石。 後半パートでメインヒロインの座に復権する(中略)も、なんかいかにもフレドリック・ブラウンらしいキャラクターでよろしい。 ラストは(中略)感じもあるが、これはもちろん意識的に書かれたものであろう。 もともとジャンルもの作品そのもののパロディ的な趣もあるから、あえてこういう(中略)な作りにしたんだろうし。 名作・傑作の高評が先に来て、あまり期待値が高すぎるままに本を手にするのはオススメしないけれど、まあ確かに楽しめる作品ではあります。 評点は、今の正直な気分でいうと0.5点くらいオマケしてこの点数で。いや実質的には十分この点は取ってるとは思うのだけれど、素直に7点をつけたいと言い切るには、ちょっとだけ二の足を踏む。 |