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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
怪盗紳士ルパン
怪盗ルパン/別題『強盗紳士』『強盗紳士ルパン』
モーリス・ルブラン 出版月: 1957年01月 平均: 5.73点 書評数: 11件

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東京創元社
1957年01月

早川書房
1958年04月

東京創元社
1959年01月

新潮社
1960年03月

東都書房
1963年01月

偕成社
1981年10月

偕成社
1987年10月

早川書房
2005年09月

No.11 6点 クリスティ再読 2023/12/25 23:10
ルパン初登場の短編集。今回評者は偕成社で読んだので、原書初版仕様で「うろつく死神」がなく「アンベール夫人の金庫」と「黒真珠」を収録。評者老眼が進んでるから、字が大きい方が楽なんだよ(苦笑)
でも「アンベール夫人の金庫」はルパンの珍しい失敗談だし、「黒真珠」はルパン単独で仕事していた初期の事件、と読まずに済ますのはちょっともったいない短編だ。偕成社はおすすめだね。
で、いうまでもなくデビュー作で「逮捕」「獄中」「脱獄」と続く最初3本は連作になっていて、ルパンの「予告犯行」が結構「ワケあってやってる」陽動作戦なのがしっかり描かれている。さらに念を入れて「神秘的な犯行を有言実行」というルパンの性格を読者が刷り込まれることで、これが全体的なミスディレクションとして機能しているのが興味深い。
とはいえ「逮捕」のラストで「ルパン、フラれる」のが、これがイイんだなあ....でこのネリー嬢、この短編集のラストの「おそかりしシャーロック・ホームズ」にも再登場して、再度ルパンをフリ直す! 評者ホームズとの対決よりも、こっちの方が気になって困る(苦笑)
いやホント最初からルパンはキャラにブレが少ない。細かい辻褄は少年時代の「初仕事」を描いた「女王の首飾り」から始まる経歴と、後年の「カリオストロ伯爵夫人」と多少は齟齬するけど、気になる程でもない。ルパンって最初からルパンなんだ。

No.10 5点 虫暮部 2022/01/12 12:31
 長年抱いていたイメージと違って、彼は(変装術に関してはともかく)天才と言うより行動力と度胸の人?
 割と感情的に動くキャラクターで、多くの部下を組織し運営する能力には乏しそうなので、若干違和感が。あれは寧ろ部下達の方が心酔しているのだろうか。
 まぁ1冊読み返しただけで決め付けることはない。内容的にはまだ小手調べって感じだし。「アルセーヌ・ルパンの逮捕」はアンフェアだと叩かれなかったのだろうか。

No.9 5点 斎藤警部 2018/03/01 12:07
シリーズ第一作のタイトルでいきなり「ルパンの逮捕」と来るのはRCサクセションの1stアルバム「初期のRCサクセション」を逆彷彿とさせますが、作者は当初雑誌への単発作を想定していた模様で、ところが編集者の強い薦めで続編を書きまくり、結局長い長いシリーズ物のスタートに題名意外性の花を添えるおまけが付いたのはちょっとした怪我の功名と言えましょうか。

控えめな連作趣向の織込められた短篇集。 個人的には一作だけとても好きな作品があります。それは螺旋と平面の交点集合推移の意味深さを噴霧させつつ素っ気ないエンディングの、まるで心情左翼のように温かな憶測を巡らせる余韻の味わい深さ。。。 女王の首飾り。

No.8 6点 ボナンザ 2014/04/09 15:52
ハートの7と女王の首飾りが印象的。

No.7 4点 mini 2013/05/24 09:51
本日24日に早川文庫からルパンシリーズ幻の最終作「ルパン、最後の恋」が刊行される、訳者は『ズッコケ』の那須正幹
昨年既にポケミスで刊行されていたものに単行本未収録の短篇を追加した文庫化である、ポケミスで買った人はきっと早~と思うのでは
驚いたのは7月以降に多分翻訳者は別だと思うが創元でも「リュパン、最後の恋」の刊行が予定されてるのだ、この作を巡って両出版社が競演するとは思わなかったな

さて、ルパンシリーズの最終作と言えば偕成社からその名も「ルパン最後の事件」が昔に出ていて、従来はこれが最終作と思われていた
そりゃそうだろう、正式に公に原著が刊行されたものと言えば「ルパン最後の事件」が文字通り最後だからだ
ところが幻の未発表原稿が発見され、シリーズ最終作は「ルパン最後の恋」である事が判明したのである
さらにポケミス版ではシリーズ第1作目の短編「アルセーヌ・ルパンの逮捕〈初出版〉」も併録されていた
実は原文は後に単行本収録時に一部が書き直されており、日本でこれまで翻訳出版されたものは全て加筆後の単行本ヴァージョンなのだ
早川では昨年ミスマガに掲載済だが、初稿版である雑誌掲載ヴァージョンの「ルパンの逮捕」が単行本に収録されるのは本邦初なのである
つまりケミス1冊で、本当のルパンの最初と最後の事件が両方読めるわけだ

「ルパン最後の恋」が本当の最後の事件だとすれば、最初の事件「ルパンの逮捕」が収録された短編集が『怪盗紳士ルパン』なのである
昨年末に既に書評済だが一旦削除して再登録
森事典によるとルパンのデビュー短編「ルパンの逮捕」を書いた時点ではルブランはシリーズにするつもりは無かったらしい
好評に応えて書き続けけられる事とになったわけで、最初の3篇が連作になっているのはそれが理由なんだろうな
中期の短編集『告白』や『八点鐘』に比べると初期の短編集である『怪盗紳士ルパン』はコンゲーム色が強い印象だ
例えば収録の「王妃の首飾り」には探偵役的な人物も登場するが、この短編は探偵役が客観的立場から謎を解いたとは言い難いだろう
ところが後の短編集では、ルパンが第三者的立場から事件の謎を解く探偵役そのものみたいになっていく
私は本格に比して他のジャンルを価値の低いものとは見なさない立場だが、怪盗ルパンに関しては謎解きに徹したものの方が魅力的に感じるんだよなぁ
怪盗ルパンって小学生くらいの頃に児童書で読んだという人が一般的にすごく多いのには驚いた
私はホームズですら児童書で読んだ記憶が無いが記憶が飛んでいるだけかも知れない、しかし怪盗ルパンだけは児童書で読んだ事は無いと絶対に断言出来る、大学生以降になって普通の大人向け文庫で初めて接した
だから私にとって怪盗ルパンには何等の思い入れも無いのだ
”クリスティとかは大人向けで読むべきだがホームズやルパンは児童書で読んでおけばいい”的な考え方には私は同意出来ない、結果的にそういう風潮が多いのは認めるが
だいたいホームズやルパンだって元々が大人向けに書かれたものだし、今では例えばクリスティだって児童向けのリライト版が有る位だからねえ
小学生の頃に読みたいんだったらクリスティもヴァン・ダインもクイーンも全部児童書で読めばいいわけだし、”ホームズとルパンだけを児童書で読むべし”、なんて言うのは一種の差別だと思うなぁ
クリスティあたりは文章が平易だから、子供用の翻訳文なら小学生でも充分に理解出来るでしょう
ホームズとルパンは書かれた時代が古いからという反論も有ろうが、だったらさらに古いポーを児童向けにリライトしても意味が有るだろうかと私は再反論したい、ポーなどはいくら児童向けに翻訳しても小学生では訳分からんと思うしね

ところでフランス語の発音では創元文庫版の”リュパン”の方が近いらしいし、怪盗紳士よりも新潮文庫版の”強盗紳士”の方が単語のニュアンスが近いという説を聞いた事がある
しかし「強盗紳士リュパン」だったら日本で人気にならなかっただろうなぁ(笑)

No.6 6点 E-BANKER 2012/09/21 21:59
世界に冠たる大泥棒(怪盗という方がカッコイイかな)アルセーヌ・ルパンを世に生み出した第一作品集。
今回は創元文庫版にて読了。

①「アルセーヌ・リュパンの逮捕」=大西洋を渡る客船に広まるA・ルパン出没の噂・・・。乗客たちはザワつくが、仏警察きっての大立者ガニマール警部にルパンは逮捕されてしまう。確かに初っ端から衝撃の展開。
②「獄中のアルセーヌ・リュパン」=①で独房に入れられたルパンだが、おとなしく囚われているわけないよなぁ・・・。警察の方がキリキリ舞させられることに。
③「アルセーヌ・リュパンの脱走」=これはなかなかの良作。獄中からの脱走&裁判を受けないことを宣言するルパン。そして運命の裁判の日、なんとリュパンの正体が・・・しかしこれもリュパンの罠だった。右往左往させられるガニマールが不憫。
④「奇怪な旅行者」=ラスト、新聞記事で語られるオチが何とも心憎い・・・
⑤「女王の首飾り」=これはある種「準密室からの盗難事件」を扱ったもの。真相は灯台下暗し的なものだが・・・
⑥「ハートの7」=殺人現場に残される穴の開けられた「ハートの7」のトランプ。それがお宝発掘への鍵となるのだが・・・。今回もルパンは神出鬼没だ。
⑦「彷徨する死霊」=本作はホームズものにもありそうな探偵譚という風味の作品。実にシンプル。
⑧「遅かりしシャーロック・ホームズ」=ルイ16世ゆかりのお宝をルパンから守るため請われたシャーロック・ホームズ。くだんの家へ向かう途中に両雄が相見えたのだが・・・最後はやはりルパンに軍配が上がるような結果になる。

以上8編。
①~③は続きもので、ルパンの逮捕から脱獄までが書かれる。④以降はルパンの神出鬼没ぶりがとにかく印象的。
謎解きもの或いはミステリーとしては微妙だが、読者としてはどいつがルパンかちょっとドキドキしながら読み進めるというのが本作の正しい楽しみ方なのだろう。

個人的には短編よりも長編作品の方が面白いという印象を受けたが、これはこれで楽しめるのは間違いない。
ジュブナイル版で読んだ方も多いかもしれないが、未読の方は名作として一度は触れておくのもいいのではないか。
(③が一番面白い。⑤⑥もなかなか。)

No.5 5点 2012/07/20 09:52
わが少年時代、ホームズは読んだが、リュパンとの出会いはなかった。まさに人生初めての経験です。

ホームズにくらべると、ミステリーとしての、連作短編ものとしてのヴァリエーションが豊富なことは好印象です。それに冒険譚らしい物語ばかりなので、子ども心が揺さぶられること必定です。
子ども向けという印象が強いですが、それほど荒唐無稽な話ではなく、大人が読んでも小気味よく感じられることまちがいなしです。最後の「遅かりしシャーロック・ホームズ」は、小粋でしたね。

フル出場ではなく神出鬼没というリュパンの登場スタイルも、うまい物語構成テクニックだと感心しました。この種の小説を読み慣れていないということもありますが。

リュパンものの精神は、ミステリー要素的には今にも引き継がれているものの、怪盗が活躍する物語としては、近年の作品の中では同種のものを見つけるのが大変です。その点は残念ですが、まずはリュパンものを読んでいけばいいでしょう。

No.4 5点 江守森江 2010/07/06 15:51
怪盗ルパン・シリーズは日本では、圧倒的に児童向けで読まれる率が高い(それだけポプラ社は良い仕事をした)
今では、勝手に創作された漫画「ルパン三世」の方が浸透している(その漫画もテレビアニメが一人歩きしている)
正直な話、児童向けと洒落た大人向け漫画(今では貴重本)しか読んでいないが(楽しめたし)それで充分満足してしまった。
ホームズやポアロと共に図書館の蔵書から無くならない安心感(積ん読状態)が、却って読まずに放置する最大要因かもしれない。

No.3 7点 vivi 2010/04/30 19:25
子供のときにジュブナイルを読み、
中学生のときに原作訳を読みましたが、
やっぱり魅力的なキャラクターですね☆

TVなんかでは超人キャラに見えるけど、
その行動はただの勇敢ではなく、
知性に裏打ちされたものであると、この作品を読むとわかります。

No.2 7点 Tetchy 2009/06/24 01:32
大人になってきちんと名作を読もうと思い、まずは有名なルパンシリーズからという事で第1作品であるこの短編集から手を付けたところ、いきなりルパンが逮捕される話だったので驚いた。なんとも憎い演出だ。
これが現代にも残る名キャラクター、ルパンの始まり。そして本作に収められた短編はヴァラエティに富んでいる。
特に最初の3編は「逮捕」→「獄中」→「脱獄」と一連の流れがあり、これによってライバルであるガニマール警部との2人の関係が築かれているのだから、実に素晴らしい。
ただやはりこれは大人になって読むよりも、小学生や中高生の頃に読むのが良かっただろう。もしその頃に読んでいたら、私は迷いなく10点をつけていたように思う。

No.1 7点 2009/02/15 23:49
これは子ども向けのリライト版を読んだ人が多いでしょうが、角川文庫版で再読した時には驚きました。ルパン・シリーズ短編第1作『アルセーヌ・ルパンの逮捕』で使われているアイディアは、あの叙述トリックの古典的名作と同じではありませんか。これほど早い時期(1905年作)に既にあったとは。ただしルパンですから、フェアかどうかなんて問題になりませんが。
ルパンらしい盗みの手口『獄中のアルセーヌ・ルパン』、偽脱獄計画の顛末が笑える『アルセーヌ・ルパンの脱獄』と楽しい作品が続きます。
出版社の版により、後半の収録作が若干異なったりもしますが、最後はやはり『遅かりしシャーロック・ホームズ』で締めているようです。原書ではHerlock Sholmes(エルロック・ショルメス)とスプーナリズム(『クイーン検察局』中の『変わり者の学部長』参照)にしているそうですが。


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モーリス・ルブラン
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