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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
水晶の栓
怪盗ルパン
モーリス・ルブラン 出版月: 1959年01月 平均: 5.20点 書評数: 5件

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早川書房
1959年01月

東京創元社
1959年01月

東都書房
1963年01月

東京創元社
1965年10月

日本文芸社
1968年01月

講談社
1973年01月

偕成社
1982年06月

早川書房
2007年02月

No.5 6点 クリスティ再読 2022/12/13 09:20
子供の頃ポプラ社で読んでいるのは当然だが、中学生くらいの頃に大人向けで再読した記憶もある。「超ドライ」とか覚えてる。今は「エクストラ・ドライ」は馴染みのある言葉になったから、ハヤカワ文庫の訳はそっち。

何でそういう思い出話をするか、というと、今読んでみると結構この作品、ノワールの味が強いんだよね。今回のルパンは趣味的な美術品専門怪盗というよりも、政界の爆弾書類を巡る争奪戦に、逮捕された部下の処刑を食い止めるための取引材料としてその爆弾書類を横取りする、リアルで切実な動機で介入する。しかも、警察が正義じゃない。警察局長ブラヴィルはこの秘密の当事者でもあって、自分の思惑で「正義」から逸脱した策動も平気でする。そして秘密を握って隠然たる勢力をもつ怪人代議士。対抗勢力もまた別途あって、途中の波乱を引き起こす...

怪人代議士ドーブレックとルパンの対決だけがクローズアップされがちだけど、この話は複数勢力がそれぞれの立場で政争を絡めつつ抗争しあう話であり、ルパンは「自分の目的」のために争奪戦に介入する、と読むと別な味わいが出てくる。要するに「血の収穫」に近い、プレ・ハードボイルドだと思って評者は読んでいた。だから本作のルパンの数々の敗北は、正義のスーパーマンではない、「暗黒街の住人」としての「リアル」を強めるための狙いなのかもしれない。

確かにアメリカのハードボイルドの影響を受けて、フランスでも戦後セリ・ノワールが流行するのだけども、フランスの暗黒街(ミリュー)というのは以前からずっと存在し(メグレ物にも登場)、そういう息吹が結構感じられる小説だと思うんだ。

「エクストラ・ドライ」というのは、きっとフランス版の「ハードボイルド」という意味なんだろうね。メルヴィル監督、ルパン=ギャバン、ベルナール=ドロンあたりで翻案映画化したら意外にハマったんじゃないかな。
(ちなみに殺人嫌いのはずのルパンでも、裏切った部下を制裁するし、代議士を「マジ殺す!」拷問をする....ノワールな別人っぽい印象もある)

No.4 4点 ボナンザ 2020/10/08 22:37
一般的なリュパンのイメージからは程遠い、失敗ばかりの展開。流石にくどいところもあるが、確かに水晶栓の場所はオマージュとはいえ結構以外。

No.3 5点 斎藤警部 2016/03/31 23:56
大袈裟に煽るばかりで手に汗は握らないが、敵役どぶろっく、いやドーブレック氏独特の不気味な存在感に引っ張られるサスペンス小説。
例の隠し場所は。。。。 如何にも時代小説がかった(?)場所で別段驚きゃしないんだけど。。 これ実際に目の前で「そこ」から出されたら驚くだろうなあ。

No.2 5点 E-BANKER 2012/06/05 15:51
1910年に発表されたアルセーヌ・ルパン登場の有名作の1つ。
大昔にジュブナイル版で読んだ記憶はあるのだが、内容は全く思い出せない・・・。今回、創元版で読了。

~大規模な運河汚職事件の唯一の証拠を握り、それによってフランス政界を思うままに牛耳っている実力者ドーブレック代議士に対して、英雄A・ルパンは敢然と立ち上がった。しかし相手はルパンを上回る怪物で、部下に裏切られたルパンは不運と失策と敗北を続け、再三窮地に陥る。ドーブレックの手から汚職の証拠品さえ取り上げれば、さしもの悪徳代議士もその神通力を失うのだが、誰の目にも晒されている、最もありふれた隠し場所が却って盲点になりルパンにさえ分からない。それは一体?~

まずまず楽しめた、っていうような読後感。
本作の読みどころは、①ルパンがいつもの快刀乱麻ではなく失敗を繰り返す、というプロットと②汚職の証拠品の隠し場所の謎、この2点だろう。
まず①だが、
今回は、ルパンとは思えない迷いや手際の悪さが重なり、特に前半~中盤にかけては「らしくない」ルパンの姿が描かれることになる。
まぁ、これを人間味あって新鮮と取るか、らしくなくて嫌だと取るかは人それぞれかと思うが、個人的にはこういう展開も十分「あり」だとは感じた。
美人に弱いというのは毎度毎度のことだが、今回は特にそれが目に付くのが若干気にはなったが・・・
(そんなにクラリッスって魅力的には思えなかったが・・・)

で、②の方だが、
この趣向は、ポーの「盗まれた手紙」以来、多くの作家たちが繰り返し巻き返してきたもので、今回もその1つとは言える。
途中でダミーの隠し場所が何種類か登場してきて若干うるさいが、ラストにルパンが辿り着いた「真の隠し場所」は確かに意外といえば意外。まぁ、紹介文のとおりで「盲点」そのものではあるだろう。(結構、伏線は張られてたんだよなぁ)
タイトルの「水晶の栓」が最終的にはあまり関係なくなってくるのが、若干物足りない気にはさせられた。

①②以外の部分はそれほど特筆するところはなし。
全体的にはやっぱり、他の有名作よりは1枚落ちるかなという印象。

No.1 6点 Tetchy 2009/06/26 23:13
本作ではそれまでの快刀乱麻の華麗な怪盗振りを見せ、読者を魅了したルパンの姿ではなく、泥棒なのに逆に泥棒され、常に敵に出し抜かれるルパンの姿が描かれ、世に蔓延るルパンのイメージを抱いたまま読むと、かなりイメージダウンは免れない。
でも敵に何度もやられながら立ち向かう姿は泥臭いながらも、ルパンも万能な天才ではなかった事を知らされ、人間くさい面が出てて興味深い。

個人的には最後の水晶栓の隠し場所のトリックがよかったので、かろうじて6点とした。
あと宮崎駿監督の名作『カリオストロの城』で登場するヒロインのクラリスはこの作品から採られている事が解ったのも、ちょっとした収穫だった。


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