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探偵小説の世紀(上)
G・K・チェスタトン編
アンソロジー(海外編集者) 出版月: 1983年12月 平均: 4.00点 書評数: 2件

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東京創元社
1983年12月

No.2 5点 弾十六 2018/12/22 19:45
1935年出版。チェスタトンの序文目当てで購入。上巻の収録作品は
⑴ジグソー・パズル(レナード R. グリブル)、⑵大強盗団(オッペンハイム)、⑶アズテカ族の髑髏(ギャビン・ホルト)、⑷鉄のパイナップル(フィルポッツ)、⑸真珠のロープ(H. ド・ヴィア・スタクプール)、⑹読心術合戦(ウォーレス)、⑺8:45列車内の死(フランク・キング)、⑻根気づよい家捜し人(ベックホファー・ロバーツ)、⑼くずかご(アラン・メルヴィル)、⑽死の舞踏(ジョージ・グッドチャイルド)、(11)犯罪学講義(コール夫妻)、(12)無抵抗だった大佐(ベントリー)、(13)剣によって(セルウィン・ジェプスン)、(14)無用の殺人(ミルウォード・ケネディ)、(15)ハムプステッド街殺人事件(クリストファー・ブッシュ)、(16)エルキュールの功績(べロック・ローンズ)、(17)みずうみ(W.F. ハーヴェイ)、(18)極秘捜査(G.R. マーロック)、(19)真紅の糸(J.J. ベル)、(20)金色の小鬼(トマス・バーク)
他の創元文庫に収録されてるビッグネーム(上巻だとポー、コリンズ、バークリー、チェスタトン)は再収録せず、という潔さも手伝って、全く売れそうに無いメンツになっています。初出年等の基礎データは記載されていません。
まだ全編を読了していませんが、チェスタトンの序文は読みました。毒にも薬にもならない文章です。まあデテクションクラブ会長(1930-36)としての名誉編集者(名義貸し)なのでしょう。
ぼつぼつ内容を読みつつ、レヴューしていこうと思います。とりあえず5点としていますが、あくまで暫定点です。

ところで、私にとっての問題は表紙に描かれているライフルなんですよ。(デザインは、アトリエ絵夢 志村敏子)
一見して、なんだか面倒くさそうな機関部だな〜、こんなのあったっけ?と思いました。だいたいボルトレバーがサブマシンガン風なのに、サイト周りが長距離射撃用な感じが変テコです。大事な引き金部分にも変な金具がついていて邪魔くさい。
多分ベース(木製ストック)はスプリングフィールドM1903で、それにM1ガーランドの機関部、M1トンプソンのボルトレバー部分、別のライフルのタンジェントサイトなどを組み合わせて創作したものじゃないか、という一応の結論を出しました。
よく使う道具の重要な条件はメンテのしやすさですが、このデザインだとかなり手間がかかりそう。なので多分このライフルは実在しないと思います。女性だから銃器には興味ないんでしょうね。
ところが… (下巻の評に続く)ここまで2018-12-14記載

⑴The Jigsaw by Leonard R. Gribble (初出不明 1935年?) 永井 淳 訳: 評価5点
スコットランドヤードのトレンチ(警部?)が活躍する話。語り手の「わたし」はその同僚らしい。やや変則的な手法により真相が明らかになります。
p18 ジグソー パズル: 発祥は1760年。1880年ごろjigsawという名称が定着。大不況時に暇つぶしとして流行したそうです。
p24 半年ごとに五百ポンド: 消費者物価指数基準1935/2019で70.61倍、現在価値496万円。
p25 軍用型の拳銃: 1916年当時の英国陸軍の軍用拳銃はWebley Mk VI Revolver(犯行に使われたのはMk IVかMk Vの可能性もあり)
(2019-1-20記載)
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⑵ The Great West Raid by E. Phillips Oppenheim (Saturday Evening Post 1928-1-7) 遠山 峻征 訳: 評価5点
いきなり冒頭が「何日かあとのある日の早朝…」なので調べると、全体はThe Human Chase (Hodder & Stoughton, London, 1929)として出版された連作短編集。(WEB上のRoy Glashan's Libraryに公開、イラスト付き!) 第1部(べンスキン刑事の初期の活躍)はコスモポリタン誌に毎月連載(1927-11〜1928-4)され、第2部(マシューとの追っかけっこ)はポスト誌に隔週掲載(1927-12-24〜1928-3-3)された。このThe Great West Raidは第2部の2話目。本作はストランド誌1928-7にも掲載されたが、この時は何故か主人公の名前がPeter Brettとなっている。
意外とキビキビした文章。なかなか面白いんですが、続き物なので中途半端に終わります。損害見積もり30万(ポンド)の現在価値は消費者物価指数基準(1927/2018)で61倍、約26億円。言及されてるエラコット事件、ハウスン事件は、第2部1話目に起こった事件です。
(2018-12-16記載)
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⑶ The Aztec Skull by Gavin Holt (Flynn’s [Issued Weekly] 1925-6-13, as by Charles Rodda) 後藤 安彦 訳: 評価3点
舞台はメキシコ。現地人をなめた文章。時代ですね… 物語も全然ワクワクしません。ネタもつまらない。旅ものとしても読むところなし。
p99 ブローニングの銃口: 多分おなじみFN1910。
(2019-2-25記載)
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⑷ The Iron Pineapple by Eden Phillpotts (Red Magazine 1910-3-15) 宇野 利泰 訳: 評価6点
不思議なタイトルにふさわしい不思議な話。くどい文体が図らずも内容にマッチしています。
p117 郵便支局の副業… 月に1ポンド 1シリングの給与: =1ギニー=1.005ポンド 消費者物価指数基準(1910/2018)で現在価値114.4ポンド、16337円。国家事業なのにため息が出るほど少額、と愚痴っています。
(2018-12-16記載)
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⑸The Rope of Pearls by H. de Vere Stacpoole (Strand Magazine 1934-11) 大村 美根子訳: 評価5点
異郷もの。舞台はオランダ領東インド ジャワ サンダバール。意外な物が謎解きのヒントになりますが、かなり強引です。中国人に対する評価が興味深い。
p147 ハルマ将棋: Halma Wikiに項目あり。将棋ではなくチェッカーっぽい感じ。
p147 五グルデン: 1934年の交換レートは1グルデン(ギルダー)=0.1339ポンド。英消費者物価指数基準1934/2019で70.98倍。5グルデンの現在価値は6869円。
p149 ルーガー ピストル: Luger P08のことですね。正式名称はParabellum-Pistole。
(2019-3-3記載)
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⑹The Mind-Readers by Edgar Wallace (Pall Mall Magazine 1927-10) 池 央耿 訳: 評価6点
Oratorことオリヴァー レイター警部もの。(シリーズ第3作。単行本1928では2番目に収録) 内容は軽いのですが、面白い筋立て。実に素晴らしく、読後感も良い。一流の三文小説です。ただし最後の犯行はもうひと工夫欲しいところ。暖炉に電気の炎がついているシーン(on the white hearth an electric fire glowed redly.)があり、結構電化は進んでいたのですね。
(2018-12-29記載)
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⑺Death on the 8:45 by Frank King (Detective Fiction Weekly 1929-4-14) 真野 明裕 訳: 評価4点
英国作家で英国が舞台ですが初出は米国雑誌。列車の郵便車両という舞台と英国人の喫茶への情熱が興味深いだけの話。探偵はポール グレンドン。
(2019-5-26記載)
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⑻The Persistent House-Hunters by C.E. Bechhofer Roberts (The Passing Show 1934-11-24) 深町 眞理子 訳: 評価4点
A.B.C. ホークスもの。科学万能主義の探偵のようです。話が回りくどくて、探偵が傲慢で不愉快な感じ。解決もパッとしません。勝手なキャンパーが田舎生活の問題になっているなど、当時の英国日常生活がうかがえるのは興味深い。
p222 テレビジョン: wikiによると1932年8月 - 英国で世界初の定期試験放送(機械式、週4日)開始、とのこと。
p235 罰金2ポンド: 鑑札なしで犬を飼っていたことに対するもの。英国消費者物価指数基準(1934/2019)で70.98倍、現在価値19116円。
p251 整骨療法家: かなりのディスりっぷり。
(2019-7-25記載)
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⑼The Waste-Paper Basket by Alan Melville (初出不明 1935?) 山田 順子 訳: 評価4点
ホームパーティの情景が興味深い。皮肉っぽい作風ですが、ネタは残念な感じ。
p255『重要人物ゲーム』: どんなものかよくわかりません。
p257 五百ポンド: 事件は1932年以降ということなので英国消費者物価指数基準(1932/2019)で69.22倍、現在価値460万円。
p277 銃[リヴォルヴァー]はサイレンサー付きだ: この頃、サイレンサーが流行ってたのかな。残念ですがリヴォルヴァーだと効果は低いです。
(2019-8-6記載)
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(10)Death in the Dance by George Goodchild (初出不明 1935?) 佐々木 雅子 訳: 評価5点
英国の(退屈な)社交生活が語られる。探偵役の行動はいかにも理系な感じ。五十万ポンドは英国消費者物価指数基準(1935/2019)で70.53倍、現在価値45億円。
(2019-8-10記載)
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(11)A Lesson in Crime by G.D.H. Cole & Margaret Cole (初出不明 単行本A Lesson in Crime, 1933) 野口 玲子 訳: 評価5点
ウィルスン警部もの。急行の一等コンパートメント… そーゆー舞台だけでワクワクするのは何故か? 単純な話ですが皮肉な眼差しが心地よい。コール夫妻の長篇も読んでみたくなりました。登場する、ベストセラーの推理ものや暴力小説(ショッカー)を書いてて代作ありの多作家… と言えば当時ならエドガー・ウォーレスあたり?
p311 謎の中国人、痕跡を残さない未知の毒物… 国際的なユダヤ人秘密結社: 三文小説の典型例
p313 心理学をふりまわす探偵ども…ヴァン・ダイン氏の作品: 当時はそーゆーイメージか。
p317 五万ポンド: 英国消費者物価指数基準1933/2020で72.04倍、現在価値5億円。
p319 <ポインツ>欄: タイムズ紙の投書欄には種々のグレードがあり、真ん中ページが最高で、要旨だけを載せるpoints欄があったようだ。
(2020-1-17記載)
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(12)The Inoffensive Captain by E.C. Bentley (Strand Magazine 1914-3) 宇野 利泰 訳: 評価4点
トレントもの。警部をからかう軽薄な口調がファイロ ヴァンスを思わせます。中途半端に終了。続きはあったのかな?アイリーン アドラー風味がある暗号解読もの。ストランド誌のこの号は内容の全て(イラスト含む)をWebで見ることが出来ます。
(2018-12-22記載)
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(13)By the Sword by Selwyn Jepson (Cassell’s Magazine 1930-12, 挿絵Illingworth) 浅羽 莢子 訳: 評価7点
サスペンスたっぷりの物語。一応クリスマス・ストーリー。
p361 二千ポンド: 英国消費者物価指数基準1930/2020(65.79倍)、£1=9334円で、£2000=1867万円。
p362 家紋: 短剣を握る手の紋章は数種ある。
p363 トルケマーダのクロスワード・パズル: Torquemadaは英国の翻訳家、詩人のEdward Powys Mathers(1892-1939)がObserver紙の凝ったクロスワード・パズル作者(1926-1939)として使っていた名前。Mathersは同紙で探偵小説の書評も行なっていた。
p378 七時十五分前には夕食前の着替えの時刻を知らせる銅鑼が鳴り: 家族の集まりだけど、ちゃんと着替えるんだよねえ。
p379 二十七シリングの儲け: 12601円。ブリッジの5 rubber(三回戦×5)終了時に一人勝ちで得た金額。
p381『時間との実験』: 当時An Experiment with Time(J. W. Dunne著1927)はよく読まれてたのですね。JDC、ノックス、クリスティに続いて最近の読書中、4回目の登場。
(2020-2-29記載)
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(14)Superfluous Murder by Milward Kennedy (本書が初出?) 真野 明裕 訳: 評価5点
殺人計画を実行する男。あまり良い計画ではないような気がするが…
p395 一シリング: 英国消費者物価指数基準1935/2020(71.59倍)で508円。駄賃。当時の1シリング貨幣はジョージ五世の肖像、.500 Silver、直径23mm、重さ5.65g。
p402 切符入れのポケット: ticket pocket、チケットポケット(名刺入れ) 背広裏側の左胸元に縦に入ってる切れ目みたいなやつ。別名「テケ」長いこと背広を着ていますが今まで全く知りませんでした… (裏側の腰のあたりの小さなポッケはタバコ・ポケットというらしい) (2021-10-31訂正: 以上は日本の背広の話で、英国背広だと右ポケットの上の小さめのポケットのこと)
p402 ラジオ: 英国の放送開始は1922年5月。
(2020-3-1記載)
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(15)The Hampstead Murder by Christopher Bush (本書が初出?) 水野谷 とおる 訳: 評価5点
語り口の妙で成立している作品。ハムステッドは高級住宅地。
p420 二、三百ポンド: p395の換算で£300=305万円。指輪の値段。
p421 千五百ポンド: 1524万円。年収。
p432 十三ポンド十四シリング: 約14万円。調査費用。
(2020-3-4記載)
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(16)A Labour of Hercules by Mrs. Belloc Lowndes (The Windsor Magazine 1929-1 挿絵Henry Coller) 吉野 美恵子 訳: 評価5点
エルキュール・ポポー(Popeau)もの。ポアロとの関連性が一部で言われているけど、名前以外に類似があるかなあ。
p442 元日♣️事件発生日。何年かは不明。
p448 紳士録(ボタン)… 灰色の装丁♣️Bottin紳士録は1903年から。
p451 私の大きな頭♣️賢い人間なら頭が大きいはず、ということか?
p461 二十一歳未満♣️英国なら保護者の同意が必要。英国人向けのセリフだが、当時のフランスではどうだったか。
(2021-10-17記載)
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(17)The Lake by W. F. Harvey (初出不明1920年代後半以降?)「みずうみ」宇野 利泰 訳: 評価6点
クロスワード・パズルが出てくるので1924年以降は確実。ウィルキー看護婦シリーズの第一話?作者は医大出らしいが、職業知識が生かされている作品。淡々としているのが実話っぽくて良い。
p481『阿房宮の犯罪』その他、ある作家の小説が数冊、これはみんな探偵小説… 伯母はスリラー物に目がなくて(“Crime at the Folly”, and any other books by the same writer(…) I know the old lady has a weakness for thrillers)♠️エドガー・ウォーレスのイメージかなあ。
(2021-10-17記載)
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(18) In Confidence by G. R. Malloch (Cassell’s Magazine 1931-4) 「極秘捜査」大井 良純 訳: 評価7点
イーゴウ(Ego)警部シリーズ第4話。警部と副総監のやり取りが楽しい。ちょっとひねくれた話。
p515 六万♣️ポンドなら英国消費者物価指数基準1931/2021(69.88倍)で£1=10986円。
p516 ニューヨークの株式市況が好転したら♣️時代です。
p527 お巡り(ビジイ)♣️busyまたはbizzy=英俗detectiveのこと。Oxford Dictionary of Slangには1904とあった。
(2021-10-18記載)
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(19) A Thread of Scarlet by J. J. Bell (The Strand Magazine 1927-3 挿絵E. G. Oakdale)「真紅の糸」栗山 康子 訳: 評価5点
宿の飲み屋、終業時間近く。三人の常連客がねばっている。いろいろ判然としないところはあるが、まあいいでしょう。作中年は20年前の2月(p537)。
p541 黒い旗♠️刑務所で死刑執行が完了した、と知らせる合図。1902年にこの慣習をやめた、というから作中年はそれ以前。
p551 四百ポンド♠️英国消費者物価指数基準1901/2021(126.08倍)で£1=19672円。400ポンド=789万円。
p552 十時♠️飲める時間の終わり。破ると営業許可に響く。
(2021-10-31記載)
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(20) The Yellow Imps by Thomas Burke (初出不明, 短篇集“Pleasantries of Old Quong”1931)
クオン老人(Old Quong)もの。

No.1 3点 Tetchy 2010/05/08 23:38
う~、苦しい読書だ。古めかしさが否めないアンソロジー。
ほとんど古典の勉強のような感じで読んでいる。
印象に残ったのはフィルポッツの「鉄のパイナップル」ぐらいか。
下巻に期待するか。


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