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新エドガー賞全集 アメリカ探偵作家クラブ傑作選(14)、マーティン・H・グリーンバーグ編 |
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アンソロジー(海外編集者) | 出版月: 1992年06月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1992年06月 |
No.1 | 5点 | mini | 2011/07/07 10:08 |
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最近マーティン・H・グリーンバーグが亡くなった、と言ってもこの名前にすぐピンとくる人はそこそこのアンソロジー通だ
グリーンバーグはアンソロジーの専門家で、広い分野でアンソロジーを編纂した 全体としてはSF分野に強いようで、残念ながらミステリー分野のアンソロジーで私の目に留まったのはこれぐらいだった MWA短編賞は初期には例えばクイーンのEQMM編纂の功績に与えられたりとやや方針が定まらなかったが、途中から単独の短編に与えられるように方針が変わり、その年度の最優秀短編賞の意味合いを持つ 方針が変わってからの受賞短編を並べたアンソロジーが『エドガー賞全集』で、早川文庫からビル・プロンジーニ編で上・下2巻も刊行されている プロンジーニ編(下)卷収録作が1980年度までで終わっているので、この『新エドガー賞全集』ではその後、1981年度から1988年度までの8編が収録されいる 収録作の選択・配列は変えようが無いのだから、こういうのを編纂と呼べるのか?という疑問は当然あるが、まぁ突っ込まないでおいてやろう 前半4作の作家は、リッチー、フォーサイス、レンデル、L・ブロックとメジャーな顔触れが並ぶ ジャック・リッチーもこのミス1位を獲ったりした今ではメジャーな部類でしょ、ただ収録作「エミリーがいない」はリッチーの中では特別上位にくる作ではないけどね 後半4作は作家の知名度的には微妙な顔触れが並ぶ、作品の質が決して劣るわけでは無いのだが ジョン・ラッツは一応長編も翻訳されているハードボイルド作家で、胃弱私立探偵というキーワードからするとネオハードボイルド系なのかとも思うがデビューは1980年代、ネオハードボイルドが衰退した後にその後継を目指したタイプなのかも 収録作もネオハーボボイルドっぽいし ロバート・サンプスンは初めて名前聞いた、どうも研究書などが主で作家としては明らかにマイナーだと思う 収録作も一般のミステリー読者には受けない話だろうけど、ノワールの一種としてみたら結構良作なのでは ハーラン・エリスンはこれは一転して本来は知名度が微妙と言ったら失礼にあたるメジャー作家 ただし主流はSF作家なので知名度が微妙でも仕方ないとは思う けれど幅広い分野で短編を書き、当然ミステリー分野でも活躍しMWA短編賞を2度獲っていて収録作は2度目の受賞作だ この「ソフトモンキー」はグルーヴィーなテンポの良さで、おそらくこのアンソロジー収録作8編中最も一般受けしそうな話だ グルーヴ感に目を奪われがちだが社会派的ペーソスも見逃せない 最後のビル・クレンショウも短篇作家なので知名度は微妙だが、ヒチコックマガジンの常連作家だったのでマイナーとまでは言えないと思う まぁ全体としては受賞作を並べたクォリティは確保されてるんじゃないかな |