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犯罪の中のレディたち 女性の名探偵と大犯罪者
エラリー・クイーン/編
アンソロジー(海外編集者) 出版月: 1979年06月 平均: 6.50点 書評数: 2件

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東京創元社
1979年06月

No.2 6点 弾十六 2021/11/16 05:19
1943年出版、1947年英国版、内容に英米版で異動あり、日本版は贅沢に全部収録。さらにEQが都合で省いた「マッケンジー事件」を収録した「完全版」となっている。さすが厚木大旦那。
短篇が上下で24篇と多く、一気に読むのは大変なので、後で徐々に埋めていきます。私の持ってる版は創元文庫1979年6月(上巻)、8月(下巻)で、真鍋博のヘンテコな表紙画。
以下、EQは多くの場合収録されている短篇集しか挙げていないので、初出はFictionMags Index調べ。
(以上2021-11-16記載)
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上巻(1) Spider by Mignon G. Eberhart (初出The Delineator 1934-5)「スパイダー」 ミニヨン・G・エバーハート: 評価6点
スーザン・デアもの。The Delineator 1934-4 “Introducing Miss Susan Dare”が初登場らしい。初出誌は寄稿者も女性が多そうな感じの女性誌、小説は毎号4,5篇、挿絵付き。
とても恐ろしい雰囲気と合理的な解決。探偵小説の見本ですね。
p20 小さいジョニーは妹を吊るした…♣️不気味な歌?調べつかず。原文をあげておきます。Little Johnny hung his sister. / She was dead before they missed her. / Johnny’s always up to tricks, / Ain’t he cute, and only six—
p24 耳が聞こえません(deaf)♣️続く場面では、大声なら聞こえるという描写。「耳が遠いのです」または「耳がよく聞こえません」が正解だろう。
(2021-11-29追記)
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上巻(5) Murder in the Movies by Karl Detzer (初出The American Legion Monthly 1937-5 挿絵J. W. Schlaikjer)「撮影所の殺人」カール・デッツァー: 評価6点
多分シリーズものではなさそう。初出誌はWebで無料公開されている。
映画の撮影場面が生き生きと描かれていて面白い。ドキュメンタリー・タッチ。所々に映画関係者の実名を挟んでいる。(グローヴァー・ジョーンズ、クラーク・ゲーブルなど) 原文ではもっと豊富かも。(全体は未確認だが、翻訳では省略されているJoseph B. Mankiewitzを見つけた)
(2021-11-30追記)
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上巻(6) Squeakie's First Case by Margaret Manners (初出EQMM 1943-5)「スクウィーキー最初の事件」マーガレット・マナーズ: 評価5点
スクウィーキー・メドウ(Squeakie Meadows)もの。Squeakyってネズミのチューチューとか靴のキュッキュッという音らしいのだが、そういう感じの声ってこと?
独特の語り口でスムーズにいかない感じ。ちょっとどうかなあ、というストーリー。
p219 ジン・ラミー(Gin rummy)◆二人用のカード・ゲーム。Culbertson's Card Games Complete(1952)によると”The principal fad game, in the years 1941-46, of the United States, Gin Rummy (then called simply Gin)… adopted by the motion-picture colony and the radio world”、ジン・ラミーと言うと『アパートの鍵貸します』(1960)を思い出すなあ。
p220 女性の化粧品◆リストあり。知識がないのでパス。
p220 政府は、つぼはとっておいて詰めなおせと◆戦時中の節約スローガン、との訳注あり。WWIIの1943年ポスターで”Save Your Cans”(缶詰が弾丸になってる絵)と言うのがあった。”Can All You Can”(1943)と言うのもあり、こちらは食料を瓶でなるべく保存せよ、という備え。ガラス瓶の節約ポスターは見つからなかった。
p235 灯火管制用の豆懐中電灯◆光源部に覆いがあり灯りがなるべく漏れないようにしたものだろう。
(2021-12-1追記)
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上巻(7) The King of the Gigolos by Hulbert Footner (初出不明, 短篇集1936年”The Kidnapping of Madame Storey and Other Stories”, as “Madam Storey’s Gigolo”)「ジゴロの王」ハルバート・フットナー: 評価5点
マダム・ロージカ・ストーリー(Madame Rosika Storey)もの。上記短篇集の収録作品でFMIで初出が判明しているのは全て1934年Argosy誌なので、本作も同時期のものか。初登場は“Madame Storey’s Way” (初出Argosy Allstory Weekly 1922-3-11) 多分、短篇集“Madame Storey”(1926)冒頭の”The Ashcomb Poor Case”と同じもの。冒頭でマダムと女秘書ベラ(語り手)の出会いが語られている。
本作でも豪胆なマダム・ストーリー。退廃した年寄り連中の描写が興味深いがモンテ・カルロ味はあまりなく、スリリングな展開だが探偵味は薄い。作中年代は明示されていないが、デビュー1922年のマダムの若さは保たれてるし、なんとなく20年代のように感じる。
p246 オテル・ド・パリ♣️Hôtel de Paris Monte-Carloで英Wikiに項目あり。1863年オープン。
p248 強奪♣️rob
p250 若い男の正体♣️なるほど。ジャニーズ所属の青年たちの顔を思い浮かべてしまいました。
p251 アメリカでは手が早いっていう(we call a fast worker in America)♣️小学館ランダムハウス英和に1921年との表示がありました。
p265 略式夜会服(ディナー・ジャケット) In America I am told that men wear dinner jackets when there are ladies present ♣️野蛮な風習だそうです。第一次大戦後は黒タイのディナー・ジャケットがセミ・フォーマルとして通用していたようだ。英Wiki “Black tie”より。
p273 ラ・チュルビー(La Turbie)♣️モンテカルロ国境の北西のフランスの町(commune)。1904年までは行政地域としてボーソレイユ(Beausoleil)も含んでいた。「ラ・テュルビー」表記が定訳か?
p279 五十フラン札♣️当時の50フラン札はBillet de 50 francs Luc Olivier Merson(1927-1934)、サイズ170x123mm。仏国消費者物価指数基準1934/2021(487.6倍)で1フラン=0.74€=98円。
p280 絵入り雑誌(リリュストラシヨン)♣️一般名詞ではなく固有名詞。L'Illustration、挿絵入り週刊新聞(1843-1944)。ガストン・ルルー『黄色い部屋』を連載(1907-9-7〜11-30)したことで有名。
p281 五フランの英仏小辞典(a common little five-franc English-French dictionary)
p290 モンテ・カルロ発の最初の電車… 七時十五分前に発車(the first train out of Monte Carlo. It leaves at quarter to seven)
p292 メディチ・グリル(Medici grill)♣️リュクサンブール公園沿いのRue de Médicis付近のレストランなのだろう。
p294 青列車(ブルー・トレイン)♣️英語では1923年からのニックネームのようだ。1892年の時刻表でパリ=モンテカルロ間は約20時間。
p295 パリ・ヘラルド紙(Paris Herald)♣️創刊1887年。フランス在住の英米人向け英字新聞(パリで編集発行)。1918-1924はArgosy誌のFrank Munseyがオーナーだったので一種の楽屋落ちか。
p296 色の浅黒い邪悪な顔つきの青年(a dark, wicked-looking young man)♣️昔の翻訳者は浅黒党が多いなあ。「黒髪の」
p313 グラン・コルニシュ道路(Grand Corniche road)♣️Google MapではRoute Grande Cornicheとなっている。
p317 千フランの札たば(bundle of thousand-franc notes)♣️当時の1000フラン札はBillet de 1000 francs Cérès et Mercure(1927-1940)、サイズ233x129mm。
p329 シェルブール(Cherbourg)♣️ここに出てくる意味がちょっと不明だったが、1934年ポスターで、RMS Majestic(White Star Line)がSouthampton-Cherbourg-New York航路というのを見つけた。帰国前に送った、ということなのだろう。
(2021-12-4追記)
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上巻(8) Diamond Cut Diamond by Frederic Arnold Kummer (初出Liberty 1924-12-13)「ダイヤを切るにはダイヤで」フレデリック・アーノルド・クンマー: 評価6点
主人公はエリナー・ヴァンス(Elinor Vance)、シリーズものなんだろうか。
ヒヤヒヤする手口だが、映像化したら楽しそう、と思った。お金をふんだんに使える設定っていうところに大不況前のイケイケドンドンな米国を感じる。なお物語に出てくる発明は1879年が最初で、1970年代になってやっと価値ある程度の大きさになった、という。
p331 東京からキャラマズーまで(from Tokio to Kalamazoo)♠️世界中を旅してる、と言っているのだが、まあ東京はわかるけど、なぜカラマズー(ミシガン州、1920年の人口48千人)なんだろうか。ポピュラーソングで有名なのは“(I've Got a Gal In) Kalamazoo”(1942)が最初のようだ。色々調べていたら、永井荷風が米国留学時にカラマズーに下宿していた(1904)と知ってちょっとビックリ。
p332 三万四千ドル♠️米国消費者物価指数基準1924/2021(16.17倍)で$1=1844円。
p357 善良な小悪魔(a good little devil)
(2021-12-1追記)
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上巻(9) Murder at the Opera by Vincent Starrett (初出Real Detective 1934-10〜11, as "The Bloody Crescendo")「オペラ座の殺人」ヴィンセント・スターレット: 評価5点
主人公はサリー・カーディフ(Sally Cardiff)、単発作品のようだ。
残念ながら取り立てて目立つ要素は無い作品。女性の手袋について収穫あり。
p363 泥棒猫(The Robber Kitten)◆ディズニーのアニメで同タイトルがあるが1935年の封切。多分偶然。
p366 一八六九年以来最悪の吹雪(the worst blizzard the city had experienced since ’69)◆調べつかず。
p378 長い手袋(long glove)… ガセット(gusset)◆昔の上流夫人がしていた肘くらいまである長い手袋についての説明。vintage gloves history 1900 1910 1920 1930で見つかるWebページにgussetらしきものが見えるのがあった。
p387 それ行け!(レッツゴー)… パイロットがよく使う文句らしい(‘Let’s go!’ which is a common phrase, it seems, among fliers)
p394 百ドル◆米国消費者物価指数基準1934/2021(20.74倍)で$1=2365円。
(2021-12-19記載)
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下巻(2) Coffin Corner by H. H. Holmes (初出は本アンソロジー1943)「フットボール試合」H・H・ホームズ(バウチャー): 評価5点
シスター・アーシュラ(Sister Ursula)もの。クリベッジというマイナーなトランプ・ゲームを取り扱った唯一の短篇、とEQが言っている。設定にかなり無理あり。殺人事件よりフットボール試合が大事って… こういう人工性、遊戯性がパズラーの悪いところ(まあ嫌いじゃないが)。ウルスラ尼(伝統的な訳語が好きです…)のキャラ付けも成功してるとは言い難い。
スポーツ用語って、厄介だと思う。知らない人には全然ピンと来ないけど、知ってれば少しの言葉でイメージがパッと浮かんでくる。普通の単語に見えても組み合わせで専門用語になってるのもあるし… (dead ballとかthree and outとか) 厚木大旦那の翻訳は非常に健闘してるけど(多分アメフトに詳しくない感じ)、間違いとニュアンスズレが若干ありました。
p53 あなたは五十ヤードのパントをやってのけ、それがゴールまで1ヤードのところでサイドラインを割った。ところでウォゼックがキックしたボールがブロックされ、それがあなた側のセイフティにつながり、ベラミンが十五対十四で勝ったのです(And you produced a fifty-yard punt that went out of bounds within the one-yard line and set the stage for Wozzeck’s blocked kick and the safety that gave Bellarmine the game 15-14)♠️第四クォーター、残り時間1分を切った状況。こちらは13-14で負けている。パントでゴール1ヤード地点でフィールド外に出すって、超絶ファインプレー。その次「キック」がいきなり出てくるけど、本文には書いていないが、相手はその前に攻撃を三回やって(守備の踏ん張りなどもあって)全部失敗してるはず(スリーアンドアウトという状況)。残り時間が一分を切っている、という前提からここまでが読み取れる。そして残り時間十数秒以下で(アメフトの時計はタイムなどで止めることが可能)相手は4thダウンとなり、攻撃権をこちらに移すパントをすることになるのだが、ゴール地点ギリギリでのパントって難しい(最低自陣5ヤードは欲しい、との意見あり)。そんなこともあってか(ウォゼックに)ブロックされ、ボールが転がってベラミン(こちら側のチーム名)がエンドゾーン(ゴールエリア)で確保しセイフティ(2点)になった、という状況。(修正2021-11-17: 自信満々で間違うのは恥ずかしいすね。これだとベラミンのタッチダウン(6点)になっちゃうので、転がったボールが単純にエンドゾーンを超えた、というのが一番あり得る状況。蹴ったパンターが何とか転がったボールを確保したがベラミンにすぐ潰された、というプレーでもセイフティになる。参考YouTube“NSU Punt Block Leads to Safety”) 翻訳ではパントに注がついている。間違いではないが、意を尽くしておらずここでは場違い。翻訳上の間違いは、ウォゼックは蹴った側ではなく、ブロックした殊勲者のほう(まあこれはどっちでも良いレベル)。「あなた側のセイフティ」も気になる。原文にはない補い訳だが、セイフティは自殺点なので「相手側の」もの。以上のようにアメフトのルールを良く知らなければ、原文の主旨はほぼ伝わらないので翻訳は難しいが、一応試訳: (前略) サイドラインを割った。それがウォゼックのパントブロックとセイフティという結果に繋がり、ベラミンが(後略)
p67 コフィン・コーナーにボールを蹴りこんだ。相手側の蹴ったボールがブロックされ、そのボールがシロヴィッチの腕にとび込んで、タッチダウンに(he dropped one in coffin corner that resulted in a touchdown when a blocked kick sailed into Cyrovich’s arms)♠️「コフィン・コーナー」は相手側ゴールまで数ヤード以内のエリア。ここでは、ボールを蹴るのが続いて出てくるが、この間に上記と同様、相手の攻撃失敗が少なくとも三回ある。アメフトでボールを蹴る機会は、(1)キックオフ(試合開始や得点後の試合再開)、(2)4thダウン時のパント(相手に攻撃権を渡すが相手を自陣ゴールから遠くに押し込む)かフィールドゴール(相手陣ゴールが近い場合得点を狙う)、(3)自軍のタッチダウンの後の追加得点狙い、に限られる。自陣ゴール直近でのプレーはセイフティやインターセプト・タッチダウンのプレッシャーがあり、距離も十分に取りにくいので、相手側が有利になる。一応試訳: 彼は一度コフィン・コーナーにボールを落とし、それがその後の、パントブロックしたボールがシロヴィッチの腕にとび込みタッチダウンというプレーに繋がった。(一部修正2021-11-19: この場面ではp53と異なりkickはパントだけではなく、フィールドゴールの可能性(かなり低いが)もあるので「キックをブロック」といったん訳したが、ここの主眼はコフィン・コーナーへのパントが役立った、ということなので相手が攻撃に連続成功しフィールドゴールに漕ぎ着けちゃってたら意味がない。それでパントに限定して訳して良いだろう。なおパントでもフィールドゴールでも、ブロックされたボールがスクリメージラインを越えていなければファンブル扱いでタッチダウン可能)
(2021-11-16記載)
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下巻(3) The Tragedy at St. Tropez by Gilbert Frankau (初出The Strand Magazine 1928-9 挿絵Stanley Lloyd)「サントロペの悲劇」ギルバート・フランカウ: 評価6点
キラ・ソクラテスコ(Kyra Sokratesco)もの。ルーマニア人の可愛らしい娘。『探偵小説の世紀』でシリーズ第一作が読めます(全部で三作しかないみたいですが)。
原文入手できず。
p77 イギリス紳士録◆Whittakerか。
p79 三千ポンド◆英国消費者物価指数基準1928/2021(65.98倍)で£1=10295円。
p79 少年のように魅力的◆若い女性を見た男性の感想。英国のホモ文化を暗示?
p81 グログ・トレイ(Grog tray)◆いろいろな酒類と水や氷を乗せたお盆(客をもてなすためのセット)のことらしい。昔は家にはGrog trayがあった… という用例を見つけた。Grog(ラムの水割り)で「酒」という意味のようだ。
p86 ホモなの?(プール・レ・ファム)◆綴りはpeur les femmes(女が怖い)かな?
p96 百ポンドほどの年金と傷害年金◆第一次大戦の戦傷で年金受給しているのかも。
p101 ヨセフの役◆創世記39:7〜10のエピソードだろうか。
p101 年に1000ドル◆ここはポンドの誤りでは?米国消費者物価指数基準1928/2021(16.17倍)で$1=1844円。ドルが正しいなら年184万円にしかならない。もしポンドが正しいなら年1029万円で文脈に合う。
p103 この古い(作者は「千年も前の物語」としている)話は実在するのかなあ。調べつかず。
(2021-11-17追記)
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下巻(4) Lot’s Wife by F. Tennyson Jesse (初出The London Magazine 1929-11 挿絵S. Briault): 評価7点
ソランジュ・フォンテーン(Solange Fontaine)もの。短篇集(2015)のダグラスグリーン序文がWebに落ちていた。全13作のようだ。
犯罪研究家ジェスさん(米国旅行でシンシン刑務所の電気椅子に座ってみたらしい)の非常にリアル感ある物語。まあ探偵の活躍はちょっと出来過ぎですが。シリーズ全作読んでみたいなあ。
p106 ロトの妻♣️創世記19章。
p108 額はまた<流行(イン)>になっていた♣️作中当時は、女性が額を出すのが流行だったのだろう。
p118 百ポンド♣️英国消費者物価指数基準1929/2021(66.72倍)で£1=10410円。
p121 二枚の十ポンド札♣️情報提供料。当時の£10札はWhite note(1759-1943)、サイズ211x133mm。
p148 競走用のブガッティ♣️Bugatti Type 35かなあ。
p150 五十フラン札… 千フラン札♣️仏国消費者物価指数基準1929/2021(399.78倍)で1フラン=0.61€=80円。当時の50フラン札はBillet de 50 francs Luc Olivier Merson(1927-1934)、サイズ170x123mm。1000フラン札はBillet de 1000 francs Cérès et Mercure(1927-1940)、サイズ233x129mm。(いずれも仏Wikiに詳細あり)
(2021-11-22追記;2021-11-27お札関係だけ追記)
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下巻(5) The Case of the Hundred Cats by Gladys Mitchell (初出The [London] Evening Standard 1936-8-17)「百匹の猫の事件」グラディス・ミッチェル: 評価4点
ミセス・ブラッドレーもの。初登場は長篇Speedy Death(1929)。
猫が活躍しないし、ちょっとピンと来ない話。話者の「私」(美人秘書)が気になる。
p168 お嬢… 赤ちゃん♠️原文はいずれもchild、なぜ別の訳語にしたのだろう?
p172 アメリカ人ならダッドレー屋敷とでもいいそうな家(what Americans would call the Dudley residence)♠️residenceは米語のイメージなんだ。
(2021-11-23追記)
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下巻(6) The Man Who Scared the Bank by Valentine (1929年作)「銀行をゆすった男」ヴァレンタイン: 評価6点
ダフネ・レイン(Daphne Wrayne)の「調整者」もの。”ヴァレンタイン“はペンネームで、本名Archibald Thomas Pechey(1876-1961)は英Wikiに項目あり。1922年に“The Adjusters”(短篇と思われる)を書いているらしい。The Adjustersシリーズの初長篇はMark Cross名義で”The Shadow of the Four“ (1934)、全46長篇(全部がこのシリーズという訳ではないようだ。短篇は少々?)あり、とのこと。明らかにウォーレスの「正義の四人」(1905)に影響を受けているもので、この系譜はTVシリーズ“The Avengers”(1961-1969;「おしゃれマル秘探偵」これ見たいんだよなあ…)に受け継がれているらしい。色々原文を探したら長篇はいずれも入手困難。一年に2,3作ほど発表されていて、結構な書きなぐりぶり。Otto Penzler編The Big Book of Female Detectives(2018)にシリーズの短篇“The Wizard’s Safe” by Valentine (初出Detective Fiction Weekly 1928-6-16)が収録されていた。
作品自体は面白いけど、まあねえ、という感じ。原文は結局入手出来ず。
p179 デイリー・モニター紙◆️架空。
p184 五万ポンド◆️英国消費者物価指数基準1927/2021(65.98倍)で£1=10295円。
p185 千ポンド札◆️こういう異常な高額紙幣が当時は存在していた。裏が白紙で、文字だけのそっけないデザイン(White Note)、サイズ211x133mm。ホワイト・ノートで当時流通の£10札、£20札、£50札、£100札、£500札、£1000札が1943年発行終了(£200札は1928年終了。ホワイト£5札だけ1957年まで発行されていた)。100ポンド以上の札はその後発行されていない。
p193 十シリング◆️5015円。タクシー代、多分チップだけだろう。普通よりかなり高額な文意。
p203 一九二七年六月十五日◆️事件の日付。
(2021-11-27追記)
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下巻(8) Miss Bracegirdle Does Her Duty by Stacy Aumonier (初出The Strand Magazine 1922-9 挿絵S. Seymour Lucas)「恐怖の一夜」ステーシー・オーモニア: 評価6点
本作掲載のストランド誌はWebで無料公開されている。EQが解説しているように、探偵小説とは言えないけれど、とてもスリリングで面白い話。
p234 「悲鳴をあげなければ!」(I mustn’t scream!)♠️試訳: 悲鳴をあげちゃいけない!
(2021-11-20追記)
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下巻(9) The Man in the Inverness Cape by Baroness Orczy (初出Cassell’s Magazine 1910-2 as “Adventures of Lady Molly of Scotland Yard, Second Series, IV: The Man in the Inverness Cape” 挿絵Cyrus Cueno)「インヴァネス・ケープの男」バロネス・オルツィ: 評価5点
レディ・モリーもの。雑誌では連続12回掲載なんだが、1stシリーズが全5作、2ndシリーズが全7作という区切り。本作は2ndシリーズ第四話なので全体の9話目。冒頭3パラグラフはシリーズ第一作のを再録したもの。紹介のためEQが工夫したのだろう。話自体の企みには、一瞬感心したけど、ちょっと考えたら無茶。流石に対面で長時間は持たないんじゃないか(人の聴覚って意外と鋭いと思うのだが)。論創社で全シリーズ12話の翻訳が出ている。時代的には興味深いが薄味だなあ… (結局、電子版でお試しの第一話(結末まで公開)を読んで気に入ったので買っちゃいました。さっそく、この話を読んでみたが、論創社版の翻訳は創元版よりずっと上質。)
p255 一年前の二月三日
p256 定食用食堂(ターブル・ドート)で(in the table d'hôte room)◆ 英語の辞書にはtable d'hôteは「決まったコース料理; 定食」とあるが、フランス語なら「もてなす主人の食卓」という意味。ここはフランス語の意味か。試訳: ホテルの食堂で
p259 半ペニーの日刊紙(halfpenny journal)
p259 賞金50ポンド◆英国消費者物価指数基準1910/2021(123.71倍)で£1=19302円。
p261 ミス----ええと(Miss--er--)
p262 プリンサパル・ボーイ(principal boy)◆ミュージック・ホールの英国伝統パントマイムで若い女性が扮する男役のこと。ここの「パントマイム」はジェスチャー中心の無言劇では無く、コメディア・デラルテが源流っぽいPantoという歌あり踊りありの茶番劇。主役の少年と少女(principal boy & girl)は女性が演じ、Dame(御婦人)は男が演じる、という服装倒錯で笑いをとる劇のようだ。(参考Web“How British Pantomime Became Such a Holiday Tradition”) (追記2021-11-19: 論創社版では「主役の男役」と流している。割注でミュージックホールの茶番劇パント、などと示すとイメージが湧くのでは?)
p264 二百ポンド
p269 今日(こんにち)では誰でも殺人のことを気軽にしゃべる(Everyone now talked freely of murder)◆最近では殺人はよくあること(freely)、という意味か?(追記2021-11-19: 論創社版では「今や、もっぱら殺されたとの噂だ」こっちが正解ですね)
(2021-11-18追記)
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下巻(11) The Adventure of the Steal Bonds by John Kendrick Bangs (短篇集 “Mrs. Raffles” 1905)「鉄鋼証券のからくり」ジョン・ケンドリク・バングス: 評価4点
A・J・ヴァン・ラッフルズ夫人もの。全12作のうちの第五話。ラッフルズとの別離のあと、バニーは米国に渡り、A・J・ヴァン・ラッフルズ夫人と名乗る女と知り合い、再び悪事に手を染める… というのが発端の連作短篇。
本作は、ちょっとした犯罪のアイディアを思いつきました、という話。
気になったのはp308「アニスの実のバッグ(the aniseseed bag)」の話。NYタイムズ紙1877-10-5、1878-1-3の記事を見つけたが、意味がわからない。狐の代わりにバッグを引きずり回して犬が追いかけたりして狩りの雰囲気を味わった、という事?冗談記事なのかなあ。
p307 百二十八万ドル♠️米国消費者物価指数基準1905/2021(31.43倍)で$1=3583円。約46億円。
(2021-11-18追記)
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下巻(12) The Jorgensen Plates by Frederick Irving Anderson (初出The Saturday Evening Post 1922-11-11 挿絵James M. Preston)「贋札」フレデリック・アーヴィング・アンダースン: 評価6点
ソフィ・ラング(Sophie Lang)もの。意外だが本国でも短篇集(1925)は復刊されてなくて原文は入手困難。何処かで翻訳を出してくれないかなあ。
英国貴族と米国資産家との関係性が面白い。あとは付け足しみたいな話だが、物語の展開はちょっと捻っていて、先読み出来ないと思う。
原タイトルは、1920-30年代のThomas Jorgensen作のマイセンの皿のことだろうか?この話との繋がりがいまいちわからないのだが。
p318 一ポンド◆金貨のようだ。当時の£1金貨はジョージ五世(1911-1932)、8g、直径22mm。英国消費者物価指数基準1922/2021(59.68倍)で£1=9312円。
p325 後家額◆訳注 額の生え際がV字形なのは、夫に早く死に別れる相という。widow's peakは19世紀前半ごろからの記録がある言葉のようだ。(英Wiki) 日本語「富士額」(M字の生え際が富士山に似ている)と形状は似てるが、富士額の方は良いイメージ。なお「後家額」という日本語表現はWeb検索では出てこなかった。
p333 不利な交換率◆1922年の交換レートは£1=$4.42。金基準の換算でも全く同じなので、特に不利ではない。まあ下り坂の英国人からすれば、不利なレートを押し付けられている、という感想なのだろう。
(2021-11-28追記)
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下巻(13) The Stolen Romney by Edgar Wallace (初出The Weekly News 1919-12-27)「盗まれた名画」エドガー・ウォーレス: 評価6点
フォー・スクウェア・ジェーンもの。The Weekly News(1855年創刊の週刊新聞)に1919年12月13日号から1920年2月7日号まで11回連載。本作は第三話。
どういう始まりなのかな?と思ってシリーズ第一話The Theft of the Lewinstein Jewelsも読んでみたのですが、あんまり情報なし。他の人に嫌疑がかからないように自分のマーク(Four Squares & Letter J)のラベルを残す、という設定のようです。本作も第一話もストレートな感じの物語。語り口が上手で読ませます。今探したら論創社『淑女怪盗ジェーンの冒険』で読めるんですね!買っちゃおうかなぁ。
p352 ルーウィンスタイン(Lewinstein)… トルボット(Talbot)♣️最初のは第一話の被害者だが、次のはシリーズに出てこない名詞。
p353 クレーソープ(Claythorpe)♣️第二話の被害者。
p359 長い銀色のピン(a long, white pin)… 銀行で紙幣をとじ合わすのに使うようなピン(the sort of pin that bankers use to fasten notes together)♣️どんなものだろう?割りピン(cotter pin)をfastnerと呼ぶこともあるらしいので、それかも。
p363 地区の配達人(district messenger)♣️当時は自転車で少年がメッセージを配達していた。london district messengerで当時の制服を着た少年の写真が見られる。帽子を傾けるのがファッションだったのか?
(2021-11-21追記)
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下巻(15) The Undiscovered Murderer by E. Phillips Oppenheim (初出The Strand Magazine 1921-12 as “The Sinister Quest of Norman Greyes No. 1. The Undiscovered Murder” 挿絵Charles Crombie)「姿なき殺人者」フィリップス・オッペンハイム: 評価6点
マイクル・セイヤーズ(Michael Sayers、なぜか翻訳での表記は「セイヤー」)シリーズ。本作はストランド誌に11回連続掲載したものの第一作目。スピーディな展開で連続活劇風味。続きが気になるが本格ミステリ味は全くない。
p393 数年前の十一月三日(the third of November, some years ago)◆p403で「木曜」とわかるのだが、該当は1921年(その前は1910年)。EQは単行本MICHAEL’S EVIL DEEDS(1923)から採録したようだが、本シリーズ連載時のストランド誌はWebで無料公開されており、見てみると、雑誌の文章もsome years ago となっている。主人公二人(とジャネット)のイラストも見ることが出来る。マイクルもジャネットもワルそうな顔だ。
p395 近くの郵便局の中の空いている電話ボックス(in an empty telephone booth in the adjacent post-office)◆️当時はまだロンドン名物の赤い電話ボックスK2は無い(1926年から)。公共の建物内に電話ブースを設置していた。電話機自体もダイアル無しで、交換手を呼び出して相手の番号を伝えて繋いでもらう方式。料金の支払いは自己申告制(ただの箱に小銭を投入する仕組み)だったはず。なので下のセリフなのだろうと思う。
p396 カウンターの向こうの若い娘… 「その二つの呼びだしに料金を払いましたか?」(Did you pay for both your calls?)
p399 はなはだ不当な条例(an act of gross injustice)◆️三年前の出来事。警察関係者が腹をたてたものらしいが、何の法令(act)だろう?調べていません… (2022-1-14追記: Police Act 1919は警察官のストライキを禁止した。これのことか?)
p408 一ポンド札(the pound note)◆️1914年発行開始。
(2021-11-17記載; 2022-1-14追記)

No.1 7点 Tetchy 2015/05/16 00:30
題名が示す通り、女性が犯罪にメインで関わる作品を集めたアンソロジー。
女性の名探偵が登場する作品と女犯罪者を扱った作品がそれぞれアメリカ編とイギリス編に分けられ、計4つにカテゴライズされている。

上下巻24編が綴られた本書の中で個人的ベストを挙げるとそれはポール・ギャリコの「単独取材」だ。女性新聞記者が探るニュー・ジャージー州の片田舎で起きた牧場主による子供への銃撃事件を取材すべく、お手伝いとして牧場に潜入したサリー・ホームズ・レインが最後に行き着くおぞましい牧場の秘密は今でも総毛だつほどだ。現代でも十分通じる本当のミステリだ。
そして次点ではヴァイオラ・ブラザーズ・ショアの「マッケンジー事件」とF・テニスン・ジェスの「ロトの妻」、アガサ・クリスティーの「村の殺人」とそして最後のフィリップ・オッペンハイムの「姿なき殺人者」を選ぶ。単なるサプライズに留まらず、読後心に「何か」を残す作品たちだ。
「マッケンジー事件」はパトリシア・ハイスミスを思わせる成り替わり劇がもたらす運命の皮肉を、「ロトの妻」は先日惜しまれつつ亡くなったルース・レンデルが見せる価値観の逆転とそのためにじわじわと巻き起こる登場人物の真意の怖さを、「村の殺人」はのどかな片田舎に潜む悪意を、「姿なき殺人者」は犯罪者の誕生を実に印象的に語っている。

さて登場する女探偵たち、もしくは女犯罪者たちは概ね有閑マダムの暇つぶしのような探偵や犯罪者が大半で、中には退屈な日々を紛らすために警察との知恵比べや障害を乗り越えるため、つまりスリルを味わうために犯罪をしていると堂々と述べるキャラクターもいるほどだが、女探偵の場合はそんな中にも探偵を副業として正規の職業に携わっているのが特徴的だ。作家兼探偵、教師兼探偵、新聞記者兼探偵、映画監督助手兼探偵と、特徴的な職業を持ってるがゆえに事件に関わってしまう者もおり、そこに探偵小説の進化を読み取れたりもする。

女性は家を守るものとされていた時代で女性探偵が職を持っているのは非常に珍しいと思う。逆に時代に先駆けて自立した女性だからこそ探偵業も成せるという裏返しなのかもしれないが。
しかし本書に収められた短編ではまだまだ小説創作の技法が幼く、その特色を物語に活かせていないのが残念だ。


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