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年刊SF傑作選5 ジュディス・メリル編 |
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アンソロジー(海外編集者) | 出版月: 不明 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
No.1 | 7点 | クリスティ再読 | 2023/01/05 20:29 |
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SFでアンソロ、というとやや反則かなあ... と思わないわけでもないけども、昔読んだ「オートマチックの虎」が読み直したくてね。それ目的で購入。
このアンソロは1956年から82年まで、メリル個人のセレクトで編まれた年間ベストの1964年度版。だから編者の個性が強く出ている...と言えばその通り。ジュディス・メリル自身がSFの「文学派」のニューウェーヴSFの信奉者だったこともあって、意外にコアなSFマニアの間での評判が悪いらしい。いわゆる「ハードSF」は少なくて(クラークの「きらめく生きもの」くらいか?)、分類不能といった「奇談」が中心、という印象。 だからまさにキット・リードの「オートマチックの虎」がそう。おもちゃ用途のトラのロボットを買った男が、そのトラのロボットに影響を受けて...という相互作用の話。これ泣ける話でねえ。昔読んで大好きだったこともあって、探してたんだ。けども今となっては人工のペットは珍しいわけではないから、もうホントはSFでもない。しかし「話」の生命はしっかりと今も、残っている。シャーリイ・ジャクスンあたりに近い「異端作家」系の作家であることは間違いないようだ。 でたとえば、ジョン・D・マクドナルドの「ジョー・リーの伝説」も収録。いやこの人、SF作家かしら...ってなるんだが、この人の実話系の不良少年ネタだからSFじゃない。本書のセレクトはこんな感じ。ロマン・ギャリーの「退廃」なんて、伝説のギャングの後半生の皮肉な話だから、それこそデイモン・ラニアンかしら? トマス・M・ディッシュの「降りる」は、諸星大二郎の「地下鉄を降りて」の元ネタかな? とはいえSFらしい作品で面白いのはノーマン・ケーガンの「数理飛行士」とロジャー・ゼラズニイの「伝道の書に薔薇を」。「数理飛行士」はいわゆる Math-out(数学用語でケムに巻く)ようなハッチャけた話。冗談サイバーパンク、といえるかもよ。「伝道の書」はこれ結構有名作のようだ。ロマンチックな味わいが深い上品な佳作。 いやいや「SF傑作選」とはいえ、SF成分薄め、でも面白い作品が多い、という変なアンソロ。 |