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[ 本格/新本格 ]
Wの悲劇
夏樹静子 出版月: 1982年02月 平均: 6.00点 書評数: 16件

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光文社
1982年02月

光文社
2007年04月

角川書店(角川グループパブリッシング)
2012年04月

No.16 6点 文生 2023/07/02 14:21
殺人事件が発生してアリバイ工作が瓦解するまでの倒叙ミステリとしての前半と、真犯人の正体を暴く後半からなる2部構成の作品です。すごい仕掛けや手に汗握るサスペンスがあるわけではありませんが、前半のアリバイトリックと後半の××トリックの相乗効果で、そこそこ楽しめたといったところでしょうか。

No.15 4点 ねここねこ男爵 2020/03/08 01:21
クイーン公認とのことだが、レーンのようなロジカルな推理など微塵もなく、犯行そのものは大抵の登場人物が実行可能であるにも関わらず「目に見える動機があるのはコイツだけだからコイツが犯人!」というめちゃくちゃな言いがかりで犯人を指摘する。…まぁこれは勝手にロジックを期待した自分が悪いか。

また、この年代の日本の推理小説の多くと同じで登場人物の描写が乏しく、単なる記号やパーツになっている。いわゆる黄金時代の作品よりも更に。推理小説が批判されるときによく指摘されることであるし、自分は普段そんなことどうでも良いと思っているのだが本作では結構気になった。主人公(?)のロマンスが唐突すぎたり…

ただややこしい推理パートがほぼ皆無だし真相も演出次第で衝撃的に出来るのでTVドラマの原作としてはもってこいだと思う。登場人物たち全員が無個性なのを逆手に取ってドラマオリジナル要素を入れ放題だろうし。

No.14 7点 名探偵ジャパン 2020/02/27 08:47
「タイトルが海外有名シリーズにあやかっているだけで、中身は二時間ドラマ並みの小粒ミステリ」と勝手に偏見を持っておりました。
読んでみると、かなり本格度高めのうえ(過度にエキセントリックでなく、ほどほどリアルなのも一般受けする要因でしょう)、クイーン本人公認(?)だったとは!
現在の目で見るとそれほどでもないでしょうが、発表当時はかなりの驚きを持って迎えられた作品だったのだろうと思います。
ミステリファンなら押さえておきたい一作です。

No.13 6点 いいちこ 2019/09/07 16:57
よく考えられたプロットと、手堅いストーリーテリングは買うのだが、本作の核となる法令が紹介された瞬間に、真犯人が看破できてしまうのが大きな難点

No.12 7点 E-BANKER 2019/04/07 21:31
今さらながら・・・という感じの本作。
どうせなら惜しまれつつ作者が鬼籍に入った直後にでも読めばよかったのだけど・・・
というわけで作者の代表作といっても差し支えないであろう作品。1982年の発表。

~新雪に包まれた山中湖畔にある日本有数の製薬会社、和辻製薬会長の別荘。和辻家の一族が水入らずの正月を過ごしていたこの別荘で、突然悲劇の幕が上がった。和辻家の誰からも愛されている女子大生の摩子が、大叔父に当たる当主の与兵衛を刺殺してしまったのだ。たまたま摩子の卒業論文の手伝いに来ていて事件に巻き込まれた家庭教師の一条春生は、一族の強い希望で事件を外部からの犯行と見せかける偽装工作に協力する。だが、この工作を警察に暴露するよう細工する者が現れた。事件の裏に隠された真相とは? E.クイーンの「Yの悲劇」に挑戦した作者会心の長編推理~

想像していた水準よりかなり上・・・そんな読後感。
本作はまさにプロット勝負の作品。
2019年現在の目線でならそう目新しさはないけど、発表当時ならば、この「二番底」「三番底」の展開はインパクトがあったに違いない。

「Yの悲劇」というと、当然“あ○○り殺人”が問題になるが、本作はその本歌取りを狙っている。
両作品ともに言えるのは、この仕掛けはどうしても“あ○○られる理由・動機”に必然性や納得感があるかどうかが鍵になるということ。
でも、「W」もそこは弱さが拭い去れなかったなぁー
これだとどうしても真犯人側の「賭け」或いはプロバビリティの部分が大きくなるのではないか?
本作は「Y」よりもCC要素が強くなるだけに、なお一層リスクを負っている感が強かったし、そこが弱点に思えた。

まぁでも、さすがに作者だけあって、細部までよく練られてるし、全体的に良くできた作品。
「悲劇」というタイトルが似合う度合いでいえば、「X」「Y」「Z」を凌駕している。
で、巻末解説がまさかのE.クイーン(F.ダネイ)とは・・・恐れ入りました。

地上波や映画で何度も映像化されているのも頷ける。それだけ日本人のメンタリティに訴える作品なんだろう。
(図書館で借りてきた文庫版の表紙は薬師丸ひろ子・・・若いね!)

No.11 8点 蟷螂の斧 2017/09/09 13:08
東西ミステリーベスト100(1986年版)の75位。倒叙でありながら、いとも簡単に偽装工作が警察にバレてしまう。そんなことでは、先行きが不安になりますが・・・・・・。なるほど、裏があったのですね。このプロットには感心。民法第八百九十一条第二項は、素人なので知りませんでした。勉強になりました(笑)。

No.10 6点 nukkam 2016/06/27 10:45
(ネタバレなしです) 作者は1982年発表の本書を「純本格派」を意識して書いたようですが本格派としてはやや変化球気味の作品です。前半の展開は完全にサスペンス小説、それが後半になると謎解き小説に切り替わるプロットはルーファス・キングの「不変の神の事件」(1936年)を連想させます。暗いけど重過ぎない雰囲気と冬の寒さの描写がよくマッチしています(唐突なロマンスは蛇足に感じましたが)。ちなみに映画化もされましたが映画(私は未鑑賞です)と小説ではストーリーが大きく違うそうです。なお私はエラリー・クイーンの名作「Xの悲劇」(1932年)や「Yの悲劇」(1932年)を露骨に真似しているタイトル付けに何となく反感を抱いてずっと敬遠してましたが、実はちゃんとクイーンの了解を得て発表していたことを長らく知りませんでした(不勉強でした)。

No.9 8点 斎藤警部 2015/12/24 12:49
(ネタバレと目くじら立てる程でもない、かな。。)

Watsujiと聞いてWatusiを踊り出す年配のファンキィな方はいらっしゃるかしら。。

これはもしや、倒叙サスペンスの皮を被ったガチガチのハード本格でねえべが、と疑惑を抱かせる微妙な空気が早い段階から芬々。青臭さとも絵空事臭さとも無縁のクローズド・サークル設定が得も言われず素敵だ。過失致死(或いは殺人??)の現場偽装も、これだけ利害の一致する大人数で役割決めてシステマティックにアイディア出し合いながら遂行するとなるとなかなかのものだ、読む方としても興味津々。しかし、その利害一致の筈の集団の中で、単数或いは複数の者が何かを企んでいたり、裏切っていたりする事は無いのかな。。

さてしかし本職の警官がやって来れば瞬殺で違和感察知。(しかし公式見解は。。) 中盤の前半、探偵役と見える警察官が偽装の瑕疵に気付く一連の気配が巧まざるか巧んでか妙にユーモラス。早い段階であっけなくスタートする警察対一族の隠密な真相暴露対決に溢れ出す滋味。チューブが発見された瞬間の疑惑のスリルよ。。中盤より、とある人物、そして一見ダミー風のもう一人別の人物への疑惑が否が応でも高まり行くのだが。。 中盤の半ばあたりで早くも警察側が核心をつつき始める。このタイミングの前のめりは、やはり物語にはもう一段深い企みがあるという報せか。。

まさか! 。。いや、まさかな。 何度も再利用されるあのトリックの逆を張ったなんて事があり得るだろうか?
まさか、全ては某氏に罪をなすりつける為の大きな悪魔的二重底アリバイトリック、って事は無いよな?? 真の主犯格が誰にしろ。。

案の定、警察の真相暴露劇はぺージをふんだんに残したまま始まった。案の定、物語は途中からフーダニット応用編に舵を切り始めた。どうやら、当初から読書に晒されていただけでも二重底、物語全体で三重底という構造具合の様だ、少なくとも。三重底の偽造トリック、そしてアリバイトリックと見て良いのだろうか。ひょっとして、更にまだもう一つくらい。。

読了してみれば、「W」には その意味も込められていたのですか、なるほどねえ。現代の作家だったら更に「(笑)」のニュアンスまで含めやしないかとちょっと心配です。
新本格の代表格である某超人気・高評価作はひょっとして本作のある一部分から一気にパッーーンとインスパイアされてその核心部分が出来上がったのではないかな? な~んてね。

小説Wと映画Wの関係はポンスンとペトロフの関係に少しだけ似ている、かも。複雑化の仕方そのものが複雑化していますが、そのへんも含めて。 そういやあの映画の頃は既に薬師丸ひろ子のファンではなくなっていたなあ。だけどあの主題歌は好きだった。今も素晴らしい楽曲であり歌声だと思う。
Xmasの前日だけに、Wの書評をしてみました。

No.8 7点 ボナンザ 2014/04/08 01:23
もちろん本家の四部作には及ばないが、それでも魅力的な作品だとは思う。

No.7 5点 虫暮部 2013/02/28 20:08
これっていわゆる“後期クイーン問題”ですよね。それに『Wの悲劇』というタイトルをつけるのは、作者の意図はどうあれ、結構な皮肉になっているのでは……。

No.6 5点 kanamori 2010/08/01 20:05
社会性をテーマにした作品が多い印象の作者ですが、本書は倒叙形式からフーダニットに変転するプロットに工夫を凝らした本格ミステリ。しかし、F・ダネイが絶賛するほどの目新しいトリックはなく、ある法律ネタも感心するほどのものではなかった。

No.5 6点 こう 2010/05/31 00:27
 書かれたのが80年代でもこの設定は流石に古めかしいですが個人的には楽しめた覚えがあります。
 元々裏切り者が出なくても古典ならともかく80年代なら大分杜撰な隠蔽工作だと言わざるを得ませんし全員一致で隠蔽工作をする展開も説得力に欠けますし何より真相の構造は興味深いものですが非現実的だなあと思わせられます。法律的な問題もそこまで思い至らない登場人物への突っ込みどころはあります。
 ただ作品としては館で起きる昔懐かしい殺人事件として楽しめた覚えがあります。
 確かに忠実に映像化したら結構楽しめるテレビドラマになりそうな作品だと思います。

No.4 6点 2010/05/20 09:42
倒叙でありながら本格要素を備え、かつサスペンスに満ちた作品です。本格ミステリーとしては陳腐な感はありますが、サスペンスを中心にストーリーは練られており、まずまず楽しめました。著者はプロットを極めたかったのでしょうね。トリックも、プロットもと欲張るよりは、このぐらいのほうが好感が持てます。
薬師丸ひろ子の映画も観ましたが、筋はかなり違っていました。でもどちらもそれなりに良かったですね。

No.3 4点 江守森江 2010/02/13 22:33
倒叙から一転して裏切り者探しになる展開が肝の作品。
しかし、根本的に時刻表アリバイトリック(が鉄オタなら即解決レベルな作品多数)と同様で、法の盲点を突いた作品も法律家には即解決だろうとの思いが付きまとう難点がある。
その程度な作品なので、どんなアレンジで映像化しても安っぽい二時間ドラマの領域を越えられない。
逆に言えば、この程度の作品はドンドン二時間ドラマ化してくれればテレビを観るだけで済ませられて楽チン。
メディアミックス大歓迎だが、どの作品も出来うる限り原作に沿っての映像化を望む。

No.2 7点 いけお 2010/01/06 23:12
リアリティは無いが、単なる倒叙ではなく楽しめる展開だった。

No.1 4点 シュウ 2008/10/13 01:21
古本屋で表紙の薬師丸ひろ子のあまりの可愛さにつられて買ったら解説をエラリー・クイーンが書いてて豪華さにびっくりでした。
最初の3分の2くらいは倒叙形式で書かれていてその後どんでん返しになる訳ですが、クイーン氏が解説で絶賛していたほどには驚けませんでした。
消去法とタイトルで大体真犯人分かるし。映画の原作のわりには2時間ドラマみたいな話でした。


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