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[ 本格/新本格 ]
天使が消えていく
夏樹静子 出版月: 1975年06月 平均: 7.38点 書評数: 8件

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講談社
1975年06月

光文社
1999年04月

No.8 7点 バード 2020/05/03 06:58
夏樹さんといえば日本を代表する女性ミステリ作家の一人(といって平気ですよね?)だが、そんな夏樹さんの作品を読むのは実はまだ二度目。それも一度目はアンソロジーで読んだので、単行本は本作が初。
大物ということでおおいに期待していたが、無事ハードルを越えてきた。今後も積極的に夏樹作品に挑戦していきたい。

本作についてだが、要所要所で新たな謎が発生するので終始緊張感があり、中だるみせずに読めた。
また、
・犯人のミスリード要因(男女一人ずつ)が機能している
・最後に驚きの真相あり
と、良サスペンスの基本をしっかり押さえておりgoodでした。
本作で最もミステリ色の強いギミックである志保殺しの密室であるが、
亜紀子提唱の推理(被害者が逃げ込み自ら鍵をかける)が真相でも十分良作だったと思う。(トリック自体は弱いかもだが、使いどころは良いので。)
その上で、最終的にこの推理は捨てられるのが本作の良く出来ている所だろう。

最後に本書のテーマである母性愛について触れるが、まぁ概ね共感できたかな。といっても私は原理的に母親にはなれないので、「共感」とは言えないかもですが(笑)。

No.7 7点 パメル 2019/07/17 10:43
第15回江戸川乱歩賞、森村誠一氏の代表作「高層の死角」と最後まで争った作者のデビュー作。デビュー作とは思えない完成度で、個人的にはこちらの方が好み。
2つの視点から交互に描かれ、関係の無さそうな一連の事件が、少しずつ一つに繋がっていくところが読みどころ。家庭問題や女性が抱える社会問題を事件の背景とし、女性ならではの視点での、心理トリックも巧妙。真相には、なかなか辿り着けないストーリー展開で飽きさせないし、最後にはどんでん返しも用意されている。驚きの中に感動も与えてくれる作品。

No.6 7点 あびびび 2016/08/14 02:05
それぞれの人物がミスデレクション。しかし、それほど謎は深くない。

本当の母親の愛情、これは素晴らしかった。女性しか書けない物語、それにつきる。

No.5 6点 take5 2016/06/19 08:14
300ページに足らずの量で、この反転は素晴らしいですね。
しかし最後の独白は、内容は素晴らしいですが文章的に響かなかったので他の方より低い評価です。
主観ですみません。
救いのある話としては好きです。

No.4 9点 斎藤警部 2015/05/14 12:08
これは素晴らしい、心理的大トリック+感動的な結末、こういうミステリーを自分でも書いてみたい、と時々思ったりするその理想形の一つ。
タイトルの持つ色合いが 読前・読中・読後 でそれぞれ違って来るのがまた泣けます。 


基本的に二つの物語が並行して進む形式で

a: 先天性心臓疾患のある赤ん坊が寄付金を得て手術に成功し、生き残る。 しかし売春婦であるその母親は赤ん坊を邪魔者扱いし、隙を見て殺そうと考えている節が。 一連の関係者である女性記者(第一の探偵役)は危惧のあまり親子の住む貧民アパートを頻繁に訪れては世話を焼くが 。。   ある日母親は自殺と思われる状況で死んでいるのを発見される。 しかし女性記者(第一の探偵役)はある事情によりそれが自殺に偽装された他殺であるとの疑いを持つ 。。  暗いムードで進行するストーリーa

b: ホテルの客、そしてそのホテルオーナーが相次いで殺される。 オーナーの方はどうも身内の犯行が怪しまれるのだが、客の方はオーナーの殺害と果たして無関係なのか 。。  目撃者達の証言により正体不明の参考人が何人も現れる中、刑事(第二の探偵役)を中心に捜査が進められる.。  サスペンスフルに、しかし淡々と進行するストーリーb

二つのストーリーは微妙に接点らしきものをちらつかせながら徐々に近付き、終結近くで一つになり、事件はひとまず解決を見ます。

ところが ・・・


「ひとまずの解決」で終わっていたら昔流行った「社会派ミステリーもどきのチャラぃやつ」みたぃかと思うんだけど、
更に進んだ結末を用意した事で社会派ストーリーとしてもより深く人間の○○○な所を抉る事になり、同時に純粋にミステリーとしてもより深い謎とその深い解決、何より強い驚きを読者の目の前に提示してくれる結果となりました。


尚、私はこの物語のラストをどちらかと言えばハッピーエンドに感じましたが、もしかしたらそれは少数派かも。
少なくとも、物語の大半を占めるムードとはうって変って、最後の最後でとても爽やかな読後感を残して終わった、と感じる人が私以外にもいらっしゃったら嬉しいです。

No.3 7点 蟷螂の斧 2013/07/31 09:32
記者の亜紀子は、ゆみ子(心臓疾患の赤ん坊で手術代がない.)を知り心を痛めるが、篤志家が現れ手術は成功。しかし、母親はゆみ子を粗末に扱う。一方、ホテルでの殺人事件(客)とそのホテルの経営者の毒殺事件が発生。その二つの物語がやがて一つに結びついてゆく過程は、十分楽しめました。そして、ラストでの反転(トリック自体は既読感ありなのですが)は、女性心理を見事に描いていますし、その過程、仕掛けは非常にうまいと思いました。

No.2 8点 2010/12/08 10:14
女性だからこそ書けるミステリーです。トリック、ストーリーともに申し分なしに素晴らしい。そして伏線も文句なし。この種の作品は、真相で驚かされる喜びはもちろんありますが、伏線がいかにうまく散りばめてあるかが評価を左右します。
欠点をあげれば、サスペンスがもっと盛り込んであればさらに楽しめたのにということぐらいでしょうか。なおトリックの実現可能性は低めですが、その点は意に介しません。
とにかく、さすが日本のクリスティといったところですね。
1969年の乱歩賞は、ライヴァルが正統派本格ミステリーである「高層の死角」であったため分が悪かったのか受賞を逃しましたが、本書のほうがまちがいなく万人受けすると思います(「高層」ももちろん素敵ですが)。

No.1 8点 こう 2008/07/05 01:42
 夏樹静子第一長編です。ある犯人によるトリック(?)のバリエーションとしては最高だと思います。(クリスティや国内作家の古典などで読んだ方にはすくわかるかと思います)
 殺人事件自体、あるいは犯人自体も主眼ではなく伏線の張られた犯人によるトリックが主眼でしょう。(伏線も作品の最後で提示されますが初読時は気付きませんでした)
 タイトルも秀逸でこれ以外ありえないと思います。


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夏樹静子
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