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[ 短編集(分類不能) ]
二人の夫をもつ女
夏樹静子 出版月: 1980年08月 平均: 6.00点 書評数: 2件

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講談社
1980年08月

講談社
2014年11月

No.2 7点 斎藤警部 2017/06/23 00:33
どっかで聞いたようなタイトルの。。 文庫新装版の帯によれば『こんなにも怖い女ーーーもう誰にも書けない』だそうだが、ちょっと違うような。。怖いのはむしろ男のほう、って逆転構造の物語が目立つ気もする。わざとですか、夏樹さん。。

あなたに似た子・波の告発・二人の夫を持つ女・朝靄が死をつつむ・ガラスの中の痴態・朝は女の亡骸(むくろ)・幻の罠・夜明けまでの恐怖

以下、順不同

・某作品
犯人と共犯者はバレバレの様だが、どこかでその直線的疑惑に微妙な翳が混じって読ませること脅迫状の如し。 7点。  

・某作品
ホワイトどんでん返しが光るが、真相暴露その途端にミステリの厚みがシュゥーと凹んだかな。。。 7点。

・某作品
題名から受けるミステリ度合い濃厚なイメージを裏切るあっさり爽やかな作品である事が意外や意外。 まさか、逆・日常の謎??  6点。

・某作品
消える魔球ならぬ消える動機の考察が興味深い。 7点。

・某作品
唐突な違和感のザラつきは思わずページを繰り戻らせた。結末の急な蠕きは。。やはり女が怖い。。と見せて実は。。。 7点。

・某作品
またこの推理クイズネタか。。と油断してたら落とされた二重底! しかしそれも勘付きの範囲内だ。。あっちの方の犯人は別な方かと思ってましたが。。これも結局、怖いのは女より男って構造じゃないのさ。 7点。

・某作品
面白いねえ。。。 数式に還元してしまえばシンプル極まりない中核原理を物語のドラマ性と構築の妙で見事に目眩しさせたあたりは「占星術」にさえ通じるかも? ●としてはそのだめ押し反転がちょっと悔しいが、やはり最高の結末。 8点。

・某作品
これは怖い、ミステリ興味も分厚い、面白い、よく出来た反転心理劇。証言と逆証言(?)の綾に絡め取られ落ちて行くのは誰。。。ラストセンテンスには一瞬あらぬ事をも想像。 9点。

No.1 5点 E-BANKER 2014/10/19 20:37
1980年に発表された短編集。
作者らしい女性心理を細やかに辿ったサスペンスフルな作品が並んでいる、という印象なのだが・・・

①「あなたに似た子」=二組の夫婦が織り成す愛憎劇。子供が相手の夫に似てきたことを契機に広がる疑惑、そして悲劇に向かって進んでいく主人公・・・という展開なのだが、ラストには軽いドンデン返しが待ち受ける。まずまずの面白さ。
②「波の告発」=福岡に単身赴任中の兄が溺死。死に疑惑を持った妹がたどり着いた真相は・・・これまた悲劇なのだが、図太い女性の心理はそうではなかった? プロットは単純。
③「二人の夫を持つ女」=これは当然P.クエンティンの「二人の妻を持つ男」のオマージュなんだろうな。まぁ本家の出来には叶うべくもないということなのだが、これまた図太い女性心理という奴が明らかにされる。
④「朝霧が死をつつむ」=これも①~③と同様、男女の機微や気持ちのすれ違いから生じる悲劇というプロット。登場人物がそもそも少ないのだから、大凡の真相は途中で掴めてしまう。
⑤「ガラスのなかの痴態」=レイプ事件を題材にとった作品。自らもレイプ被害に遭った女性が、疑惑の人物にある罠を仕掛けたのだが・・・そうはうまくいかないのだ、ミステリー的には!
⑥「朝は女の亡骸」=電話を使ったトリック自体は児戯のレベルなのだが、本筋はそんなところにはない。これもまた「怖い女」の話。真相を見抜いた主人公に皮肉な結末が訪れる・・・
⑦「幻の罠」=これもまた⑥同様、主人公の女性に実に皮肉な結末が用意されている。プロットは「疑心暗鬼」ということなのだろうけど、女性の“横並び意識”って奴は本能的なものなのかねぇ?
⑧「夜明けまでの恐怖」=最後の一編でようやく救いのあるストーリーが用意されていた。こんな無茶な計画を実行しようとする主人公(もちろん女性)の動機が全く理解できないのだが、持つべきものは友ということ。

以上8編。
夏樹静子というと「Wの悲劇」「そして誰かいなくなった」など、有名ミステリーのオマージュ作品というイメージがあるのだが、本作もその中のひとつに数えられる作品だろう。
パクリではないのだから、当然本歌取りというか、独自のエッセンスが要求されるのだが、そういう意味では本作は元ネタに叶うべくもないというレベルではある。
ただし、女性心理、特に女性の嫌な部分をさらけ出して書かれる心理描写はさすがだ。
保身や見栄、不安(取り越し苦労的なものだが)などが、思わぬ犯罪の動機に繋がっていく・・・そんな人間の弱さがよく表現されている。後はオチのツイスト感で読ませる作品。

そういう意味ではまとまった作品集という評価もできるかな。
(①⑥⑦辺りがいいかな・・・。後は程々という感じ)


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夏樹静子
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1980年08月
二人の夫をもつ女
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