皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格/新本格 ] 猫は知っていた 仁木兄妹の事件簿 |
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仁木悦子 | 出版月: 1957年01月 | 平均: 5.68点 | 書評数: 22件 |
ノーブランド品 1957年01月 |
講談社 1959年01月 |
講談社 1972年01月 |
講談社 1975年01月 |
幻影城 1977年10月 |
講談社 1998年09月 |
ポプラ社 2010年03月 |
講談社 2022年10月 |
No.22 | 5点 | みりん | 2024/10/22 22:25 |
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1957年出版とは到底思えません。今年出版されたと言われても、レトロなアイテムが出てくること以外に違和感は抱かないでしょう。ただ、65年以上前であることを考慮しても、鮎川哲也・横溝正史・高木彬光あたりが既に台頭していたわけで(たぶん)、本格ミステリとしてはそこまで傑出した出来だとは思えません。柔らかくて温かみのある筆致と適度にゆる〜くほのぼのした雰囲気で凄惨な連続殺人が起こるというそのギャップが受けたのかなあ?と妄想です。当時は女流の本格推理作家というのも大変珍しかったそうですね。 |
No.21 | 6点 | 虫暮部 | 2022/08/25 13:27 |
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過積載にならずにシンプルにミステリ道を貫けた幸せな時代の賜物?
全編を通じて楽観主義的な雰囲気が好感度高し。若干のぬるさを招いているのは御愛嬌(いや、実際にそういう大雑把さにリアリティがあったのか?)。そのくせ、犯人の告白に同情の余地が無いのには驚いた。 “部屋の位置” は良い伏線だが、それだけで犯人を示してしまうと言う意味では良くない。 “テープ・レコーダー” はカセットテープではなくオープンリールのことだね。 |
No.20 | 6点 | まさむね | 2020/03/15 22:05 |
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昭和31年に書かれたとは信じられないほど読みやすく、その点は驚かされました。その当時の東京の生活様式が表れているのも、ある意味で新鮮。二木兄妹が現存しているとすれば80歳は超えている訳で、その二人が大学生の時の事件…と考えながら読むのも一興か。
ワクワクしながら読ませていただきましたし、幅広い謎が明らかになる過程も楽しい。しかしながら、やはりどうしても、複数の登場人物の行動の不自然さが気になってしょうがなかったですねぇ。60年以上前は不自然じゃなかった?…ってことにはならないですねぇ。名作ではあるが、その辺りは気になったかな。 |
No.19 | 3点 | mediocrity | 2019/07/06 06:08 |
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謎をばら撒くだけばら撒いてワクワクさせてくれたのは良かったが、果たして全てに納得がいく解答がなされたかというとかなり疑問。正直腑に落ちない部分が多い。
まず、他の方も書いておられますが、車の置き場所に関しては完全に反則でしょう。読んでいてびっくりしましたよ。電話のトリックに関しても疑問。音の高さとスピードをいじっただけでそんなに上手くいくのだろうか。防空壕の2回目の殺人のトリックもちょっと強引かな。猫があんなに都合よく動いてくれるだろうか。なんというか本作は、人間は全体的に妙な動きばかりしていて、猫は作者の予定通りに動くというのが、通常と逆なような気がして違和感が残ります。殺人の動機もなんだかなあ。 最大の欠点はこのタイトルなのに、出てくる猫に全く魅力がないことですかね。 |
No.18 | 3点 | ねここねこ男爵 | 2017/11/12 14:42 |
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あえて現代の評価基準での評価です。
確かに今読んでもさほど古さを感じないという点はすごいですが、逆に言うと当時はその斬新さが評価されたのであって、ミステリ本体の出来は果たして…?という感想です。執筆当時ですら出尽くしていたトリックやプロットですから。 ユーモアミステリというほどユーモアを感じません。たくさん人が死んでも異常なほど皆淡々としてますし、探偵役の兄妹は他人の家をズカズカ歩き回るし。兄妹がプレステで推理ゲームをしながら会話してる、というとぴったり。ああ、当時は新しかったんだなと。今で言うとラノベミステリみたいなもんでしょう。さらに、登場人物の誰ひとり好感のもてる人がいません(女の子くらいか?)。 推理もロジックとは程遠く、一応の痕跡から作者視点の天才的探偵が快刀乱麻であり、説明されて納得するしかない系。とても不可解な行動の理由が「そうしてみたかった」で唖然としますが、それをあっさり看破する探偵すごすぎです。 と言うことで厳しめ評価で。 以下ネタバレを含む批判。 ①変装無理ありすぎ。そもそも性別を変える必要なくない?明らかに捜査陣でなく読者への引っ掛け。 ②無意味な設定が多い。例えば英一の恋心や冒頭の表情、いきなり毒草について質問するなどは本筋と全く無関係で、ミスリードにすらなっていない。読者に「何かあるな」と思わせたいだけで中身がない。 ③単にいくつかの事象が同時並行で走っているだけで、一つ一つは大して魅力的でないし不自然。被害者を殺したい人間が一つの病院に『偶然』複数いる。『偶然』みんな殺人を仕掛ける。そして『偶然』同じタイミングで無関係な盗難事件。そして別々の事件の痕跡とあっさり見破る探偵。その根拠を教えてくれよ。 ④「兄にからかわれた!腹いせに抜け道を通れなくしたろ!」??? ⑤車は何処に…?→解決編で突如車を隠すのに都合の良い場所があることを知らされる読者。( ゚д゚)ポカーン ⑥とても金に困っていた盗人が、現金は持ち去るのにはるかに高額な指輪を缶に詰めた挙句通路にすぐ分かるように埋めて後日取りにも来ず理由が「やってみたかった」だと…もう何がなんだか。 ⑦③の一つで、下着を漁られ指輪を盗まれ金を盗まれそれが自分を可愛がってくれたばあちゃんを死なす遠因になってるのに盗人をかばい「あの人は人殺しなんかしません(ポッ)」挙句「誰もあたしを可愛がってくれない!あたしは被害者!」としてばあちゃんそっちのけで保身に走る電波女がひたすら胸糞。 |
No.17 | 4点 | 文生 | 2017/10/29 13:12 |
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トリックは発表年度を差し引いてもすでに使い古されたものであるし、日本のクリスティと言われるほどにプロットにひねりがあるわけでもない。当時としては目新しかったユーモアミステリーとしての味わいが評価されたのだろうけど、今となっては特に見るべき点はないのでこのくらいの点数。 |
No.16 | 6点 | 名探偵ジャパン | 2017/10/28 16:29 |
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時代的なものを考えれば、信じられないくらいの読みやすさでした。知らない人に読ませたら、「現代の作家がこの時代を舞台にして書いた小説」と言っても信じるでしょう。ただ、事件自体も時代相応といいますか、トリックにために人を動かしたり、博打のような仕掛けに頼ったりと、ミステリとしての脇の甘さは目立ちます。でも、2017年から数えて60年前ですからね。しかも本作がデビュー作。十分といえますし、当時リアルタイムで読んだ読者には驚きを与えたのではないでしょうか。本邦ミステリ史に書き留められ、読み継がれていくべき一作です。 |
No.15 | 4点 | 風桜青紫 | 2016/04/17 18:57 |
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読んでいて少々疲れた。「日本のクリスティー」ということで期待して読んだが、クリスティーらしいミスリードはこれといってなく、この時代にありふれてそうな機械トリックに落ち着いてしまったのが残念。クリスティーらしさはプロットよりもテイストのほうにあるのだろうが、主人公とアニキをのぞけば、気になる登場人物がこれといっておらず、読みづらさのほうが印象に残ってしまった。「仁木悦子のテイストがたまらない」という人ももちろんいるんだろうが、私には合わない作風のようだ。
書評ページに「トリックに無理があるが、ロジックはしっかりしてるので無問題」というわけのわからん感想があってなんか笑った。もはやロジックってなんだよ。 |
No.14 | 7点 | ロマン | 2015/10/21 00:21 |
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兄と一緒に郊外の医院の院長の娘幸子にピアノを教える事で別室に間借りする妹の悦子。悦子がチミ(猫)を探す事でおばあさんは事件の目撃者となり殺害される。犯人最有力の入院患者平坂から電話をもらうも失踪。院長と秘密を共有する看護婦の家永。暗い防空壕の壁のくぼみに眠らされたチミが家永を殺す事に。両親に死なれた後に同居している無口の桑田ユリ。演劇部の集金の紛失とそれを守ろうとしたおばあちゃん。院長による誤診の告白。兄妹の探偵が爽やかなので連続殺人事件が起こっているのに暗さを感じない。ラストで見せる兄の推理は緻密に計算されている。 |
No.13 | 7点 | 斎藤警部 | 2015/06/22 16:20 |
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非常に若い頃、佐野洋にはまった勢いでどういうわけか手が当たって読んでみた作品。
構造のしっかりした、そしてやさしい手触りの本格推理です。 「点と線」と並び、昭和30年代推理小説ブームの火付け役と目される人気作(「黒いトランク」は違うのか..)。 物語の詳細はすっかり忘れてしまっただけに、いつかきっと再読したい。 たしか、明るくて、そこはかと無い寂しさのある小説だった。 |
No.12 | 5点 | ボナンザ | 2014/09/27 14:15 |
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懐かしの良作。
とはいえそれほど時代の違いを感じさせないのは仁木の実力か。 |
No.11 | 5点 | 谷山 | 2014/09/05 09:56 |
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ちょっと気になったのが、主人公兄妹は娘にピアノを教えることを条件に病院に下宿させてもらう約束だったのに、早々に事件が起きたせいかピアノを教える描写が全く無く、ただ飯喰らいの立場なのに土足で病院内の人間関係をひたすら踏み荒らしてるように見えてしまうところでした。とにかくあまり好きになれるタイプの探偵役ではなかったです。
ミステリとしてはいかにも古典的本格と言った感じで中々面白かったですが、ただ院長の家族や看護婦達に比べて、患者側の描写が少ない割に人数が多いので、少し混乱しました。 |
No.10 | 7点 | tider-tiger | 2014/05/26 18:29 |
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予想していたのと全然違っていて驚きました。ミステリとしても小説としても面白かった。読みやすく、古臭くもない。
作者と同名の登場人物、この設定は嫌いなんですが、この作品に関しては嫌いなはずのこの設定も非常に微笑ましく感じられました。 |
No.9 | 7点 | makomako | 2013/11/05 20:32 |
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かなり前の作品なので社会情勢が今と異なるところがかえって面白かった。だいたい医院の病室に下宿するなんてことは今では到底考えられないのだが当時はこんなこともあったのでしょうね。
家の中で殺人事件があったのに家族が案外ドライでいるところなど今の無機質なパズル小説に近い感じがしました。 ただトリックはどうかなあ。猫を使って実験したって確実性は乏しいしちょっと無理があるように思うけど。 でも全体としてまずまずきちんとした本格推理小説でした。だからこそ何度も再販されているのでしょう。 |
No.8 | 6点 | E-BANKER | 2011/09/06 22:36 |
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仁木兄弟シリーズの第1作目であり、江戸川乱歩賞受賞作。
ポプラ社からの復刻版で読了。 ~時は昭和、植物学専攻の兄・雄太郎と、音大生の妹・悦子が引っ越した下宿先の医院で起こる連続殺人事件。現場に出没するかわいい黒猫は何を見たのか? ひとクセある住人たちを相手に、推理マニアの凸凹兄弟探偵が事件の真相に迫ることに。鮮やかな謎解きとユーモラスな語り口で一大ブームを巻き起こした作品~ 確かに読み継がれるべき作品。 前半~中盤にかけては、いろいろな伏線を作中に仕掛けていて、本格ミステリー好きにはたまらない展開。 現場の遺留品や登場人物が偶然耳にした会話の切れ端などが、いかにも意味ありげに読者の脳を刺激するのが心地よい。 そして、ストーリーが進むにつれて、明らかに1人の人物を浮き上がらせていくミスリードも憎い。 トータルでみても、女流作家らしくたいへん丁寧なプロット&筆致だと思います。 ただ、逆に言えば、中盤はちょっとゴチャゴチャしすぎたかなという気も少し・・・ 本筋に関係のない伏線も撒かれていたり、窓からの目線の問題もそれほど真相に直結していないのでは? 「動機」はどうなんだろう? 正直、これで連続殺人やるか?という気がしないではない。 など、気になった点もありましたが、トータルではさすがの1冊という評価。 (猫のトリックもどうかなぁー。結構、プロバビリティの犯罪っぽい危うさがある) |
No.7 | 7点 | isurrender | 2011/06/06 18:03 |
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もう50年以上も昔の作品だということが信じられないくらい読みやすい
連続殺人が発生するにも関わらず、ほのぼのとした展開が面白い 幅広い層にお勧め出来る作品だと思う |
No.6 | 6点 | kanamori | 2010/07/31 14:52 |
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仁木雄太郎・悦子シリーズの第1作でデビュー作。
兄妹が下宿している医院の家族・患者内の連続殺人を描いていますが、ワトソン役の悦子の語り口がなかなか読み心地いい。 連続殺人を描いていても、横溝正史のようなおどろおどろしさがなく、(当時はまだ芽生えてなかったが)社会派のようなシリアスな感じもないので、純粋に探偵小説のロジックを楽しめた。 |
No.5 | 6点 | nukkam | 2010/04/07 18:24 |
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(ネタバレなしです) 仁木悦子(1928-1986)の作品は長編はわずか12作(1作はジュニア向けミステリー)に対して短編は100作を超すので短編ミステリー作家といっても差し支えないでしょうけど、1957年発表の長編第1作(仁木兄妹シリーズ第1作)である本書を読む限りでは長編を苦手にしているようには思えません。。「日本のアガサ・クリスティー」と評価されることもある作者ですが軽妙な文章と会話重視のプロット、そして充実した謎解きはなるほどと納得させるものがあります。防空壕の残る庭など時代性を感じさせる部分も散見されますが小説としてしっかりしているので現代読者の鑑賞に堪えられる作品です。トリックは実現性に問題ありかと思いますがなかなかユニークです。 |
No.4 | 7点 | 測量ボ-イ | 2010/01/13 21:01 |
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乱歩賞創設当初の受賞作品。
平易な行文で読みやすく、事件現場の見取り図も丁寧に 書かれているので、理解力に乏しいこの僕でも状況把握が やり易かったです。 そういう訳で、トリックはやや無理がある部分もあります が、それも何だか好意的に見てしまいます。 これも古き良き作品なんでしょうかね・・ 最近の乱歩賞受賞作品は、あらすじ見ただけで狭義の「 本格推理」とは思えないような作品ばかりで、何だか残念 です。 |
No.3 | 6点 | 空 | 2009/06/01 20:45 |
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本作が書かれた当時、作者が女性であることもあり日本のクリスティーと言われたのも納得できるスタイルです。ことさらに怪しげな雰囲気を強調していた当時の本格派とも、またそれに対抗するように同じ年に現れた『点と線』の庶民的リアリズムとも異なる明るく理知的なタッチは、海外作品に似たタイプを求めれば確かにクリスティーです。
犯人の正体やトリックにサプライズは少ないですし、猫の扱いが微妙だとは思いますが、さまざまな細かい工夫を組み合わせて論理的に仕上げている点、好感が持てます。また、最後に明かされる動機がなかなか意外でした。 |