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[ 短編集(分類不能) ]
私の大好きな探偵―仁木兄妹の事件簿
仁木兄妹の事件簿
仁木悦子 出版月: 2009年11月 平均: 5.67点 書評数: 3件

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ポプラ社
2009年11月

No.3 6点 人並由真 2026/02/17 17:02
(ネタバレなし)
 仁木作品は『冷えきった街』を頂点に『枯葉色の街で』などの長編も好き。さらにそこそこの数の長編や短編をつまみ食いで読んではいるが、考えてみると看板役の探偵? である仁木兄妹のシリーズは、これまで大系的に楽しんでいるわけではなかった(……)。

 というわけで例によってブックオフの100~200円棚で、本書の美本が目についたので買ってきて、現状の評者がの2025年度のSRのベスト投票用の新刊を精読する合間に、就寝前などに読んでいた。
 しかし仁木兄妹といえば、昭和の国産ミステリ史上ではそれなり以上に高名な方の名探偵キャラクターだと思うが、その主役編の書籍未収録短編(『みどりの香炉』)が、本書刊行の2009年まで発掘されずに残っていた、というのはかなりのロマンである。
 昭和のあの探偵とか、かの名探偵も、まだどっかに知られざる短編とかが眠っていたらいいなあ、と心から思う。

 収録順で後の方に成るほど小説的・ミステリ的完成度が増すというtider-tigerさんのご意見は、まったく同感。ただし巻頭の『みどりの香炉』がダメというわけではなく、E-BANKERさんのおっしゃるような作者の持ち味(私的に言うならどこか良い意味で湿った詩情)はこの作品からも感じられて、悪くはない。

 地方ロケーションの舞台設定の妙味とミステリ的なトリッキィさの融和では『赤い痕』が良い。ただしお話の完成度では、やはり巻末の『ただ一つの物語り』がベスト。

 tider-tigerさんのおっしゃる、あえてミステリマニアに勧めるまでもない、という主旨のご意見には苦笑しつつ、まあそうですね、と思うものの、一方でタマにはこんなのもいかがですか? とあまたのミステリファンの袖をちょっとだけ引っ張ってみたい気もする、そんな短編集。
 7点はあげられないが、その手前の6点の上限ということで。巻末の戸川センセの解説はちょっとネタバレがあるのはなんだが、愛情がこもった筆致でステキ。

 ちなみにこの短編集、同じ一冊の本ながら作品単位で後の方の文字の級数が小さくなり、字組も密度感が増している。巻頭の『みどりの香炉』はジュブナイルだし、さらに作者の創作者としての成熟の深化を表すため、あえてそういう演出で行なった編集・製版だとしたら、ちょっと洒落ている。まあ実際のところはどうか知りませんが(笑)。

No.2 6点 tider-tiger 2015/12/19 10:20
この短篇集は、後にいくほど(小説としては)作品の質が良くなっている印象です。
最初の『みどりの香炉』を読んだ時はちょっとこれはハズレを掴んだかと思いましたが、中学生一年生向けの雑誌に掲載された作品とのことで、まあそれならば。
『黄色い花』も兄の植物趣味を推理に活かした点は良いとしても、他は特筆すべき点はないかなあ。
三番手の『灰色の手袋』あたりから面白くなっていく。ミステリとしてもっとも楽しめるのはこれですね。ただ、少ない枚数の中に仕掛けを詰め込み過ぎかな。ちょっと余裕がない。
『赤い痕』これは雄太郎がいきなり調べ物を始めるのが唐突過ぎてポカーンとなりましたが、田舎の雰囲気がなかなかよく出ていて、読み物としてはこちらの方が面白かった。
『ただ一つの物語』これが一番遊びがあって好きですね。著者が童話作家として活動していたこともうまく活かされている。
厳しいことを言わせて貰うと、ミステリファンがわざわざ選んで読むほどの作品集ではないと思う。故に厳しく6点。私はけっこう好きなんですが。

No.1 5点 E-BANKER 2012/07/08 20:42
雄太郎&悦子の仁木兄妹シリーズの作品集。
最近ポプラ社のピュアフル文庫で出版されたものを読了。

①「みどりの香炉」=ジュブナイル向けに出された作品ということで、相応にデフォルメされてるのが特徴。作者特有の「弱者へのいたわり」の気持ちがよく出ている。トリックは実に何てことないが・・・
②「黄色い花」=巻末解説によると、本作は「猫は知っていた」に先んじて発表されたシリーズ初作品とのこと。雄太郎の植物に対する造詣の深さが事件の解決にストレートに結びついているのが特徴。アリバイは何だかよく分からなかったが・・・
③「灰色の手袋」=これが一番ミステリーとしては正統派な作品という感じ。ある人物の「企み」に別の「企み」が乗っかってしまい、一見すると事件が複雑化する、というプロット。何とはなしにこの時代の「のんびりした」感じがよく出てるのが好ましい。
④「赤い痕」=事件の舞台が東京ではなく奥秩父というのが珍しい。雄太郎の推理というか直観が冴えるのだが、これは読者が推理できるというものではない。まぁ因果応報ってことを言いたいのかな。
⑤「ただ一つの物語り」=結婚し二人の子供までもうけた悦子が登場(最初分からなかった・・・)。悦子と体の弱いある女性との交流がある事件を引き起こすことに・・・。よくあるプロットだとは思うが、雰囲気のいい作品ではある。

以上5編。
正直、ミステリーとしては喰い足りない作品ばかりという印象は拭えない。
ただ、何となくノスタルジックで心温まる気持ちにさせてくれるのは確か。好きな人は好きなんだろうね。
そういう雰囲気を味わう作品なのだろう。
(③がベストか。あとは②)


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