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[ 本格/新本格 ]
双頭の悪魔
学生アリス&江神シリーズ
有栖川有栖 出版月: 1992年02月 平均: 7.96点 書評数: 111件

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東京創元社
1992年02月

東京創元社
1999年04月

No.91 10点 ロマン 2015/10/20 23:02
学生アリス第三弾。大傑作。今回は二つの村に分断されたマリアとアリスが語り手となり、それぞれが出会う事件が綴られる。途中の時点で贅沢なほどロジカルな推理が披露されるが、やはり特筆すべきは後半。二つの語り手が見届けてきたはずの事件が突然出会う展開、そして放たれる江神の論理の一撃は計り知れない衝撃。江神二郎VS犯人の論理対決には思わず震えた。そこに至るまでに築き上げられた丹念な推理と議論は、あらゆるフーダニットの技巧と工夫が込められ、ミステリの上限を押し上げたとさえ感じる。エピローグも印象的。

No.90 8点 ∠渉 2015/07/07 23:29
良かった。とにかく良かった。
「動機が弱い」票が多いけど「動機が弱い」という概念がよくわからん。ここにきてミステリィが一個増えました。

No.89 8点 CHABI 2015/06/05 22:54
秀逸。
まさに評価が高いのも納得です。

No.88 9点 アイス・コーヒー 2013/10/08 19:19
四国の山奥にある芸術家たちの村・木更村は隣の夏森村と川を隔てて橋一本でつながっているだけで、外部との交流はほとんどない。家出して木更村に行ったマリアを追うため夏森村まで来たアリス達は木更村に侵入を試み、江神がマリアとの接触に成功する。しかし、アリスたちが戻ってきた夏森村と、江神とマリア達がいる木更村で時を同じくして殺人事件が起こる。学生アリスシリーズ三作目。
ある有名なトリックをうまい具合に消化して考えられた作品で、相変わらずロジック中心。手がかりや背景はクイーンの初期作品を思わせ、中でも三回の「読者への挑戦」は有栖川氏の自信を感じる。解決に至るまでの数々の推理とトリックは、粒ぞろいでそれなりに楽しめた。もう少し非合理的な結末も予想していたため、納得のいく結末で安心した。動機が少し弱い気もするが…「双頭の悪魔」とはよく考えられている。
家出したマリアが、芸術家たちの異色の「ディズニーランド」を目の当たりにし、最終的に現実に戻ってくるところは物語として面白かった。けど結局、人がいっぱい死んでるから自分だったら耐えられないな…

No.87 7点 mohicant 2013/08/05 01:38
 意外性もあり、大胆で衝撃度も高いトリックだった。やっぱりミステリーはこうでなくてはと思います。

No.86 4点 バックスクリーン三連発 2013/04/08 10:15
ネタばれあります

そもそも交換殺人は動機としてどうしてもなじめない
理解が出来ない。
憎悪は対象に直接ぶつけることによって解消される
のであってそれを他人に実施してもらい
変わりに他人の憎悪を排除することに
何を心に満たされることが出来るのか
理解に苦しむ なので採点もイマイチ4点

No.85 8点 メルカトル 2013/02/24 22:33
再読です。
川の氾濫により橋が崩壊し、陸の孤島と化した芸術家が集う小さな村で起きた奇妙な殺人事件。
そしてその川を隔てた隣村で起こる殺人、果たして二つの事件には関連性があるのか。更に起こる第三の殺人、しかもいずれの事件にも一々「読者への挑戦状」が挿入されているという徹底ぶり。
これは作家有栖川有栖畢生の大作であり、間違いなく代表作に挙げられる作品であろう。
トリックよりロジックに重きを置いた、クイーンの継承者としての肩書を背負って臨む、江神シリーズ第三弾の本格的な推理小説である。
こうした論理的に推理していけば、確実に犯人にたどり着けるという、フーダニット物を愛するミステリファンにとっては堪らないだろうと容易に想像できる。
しかし、私はどちらかというと派手なトリックやどんでん返しが好きなほうなので、この手の作品はあまり好みではない。
が、やはり高得点は付けざるを得ないであろう。
ただし、一点だけ第一の殺人で説明されていない部分があったように思われるのが、やや残念ではある。

No.84 8点 mozart 2012/08/01 13:56
孤島パズルに続き、ン十年ぶりに文庫本を買い直して再読。年のせいか、内容をすっかり忘れていたこともあって、大変楽しめた(ボケて記憶力が低下していくのも悪くないかも・・・)。とにかく、正統的(伝統的)本格ミステリに徹する作者の真摯な姿勢には、ただただ敬服するのみです。最後の方で、真犯人が江神部長による詰めに対して反論を続けるのは、それまでの真犯人のキャラクターとしてやや違和感があるものの、私のような(凡庸な)読者の疑問を代弁してくれていると思えば、それほど問題はないかと。

No.83 9点 ミステリ初心者 2012/06/20 11:36
ネタバレあります


 孤島パズルに続いて、時間をかけて考えて、犯人を絞る作業をするに値する作品です。

 3つの事件がそれぞれに挑戦状がついており、それぞれ犯人を当てることができる。職人魂を感じます。
 個人的には、3つ目が一番好きです。

 この人の作品は、どんでん返しや意外な犯人はないが、完全なフェアで絶対に犯人を一人に断定できると認識してますが、この作品にはどんでん返しがあります。

 叙述ミステリがないと駄目、犯人は誰でもできたが意外だからこいつが犯人…という作品が多い気がしますが、それは少し本格から外れていると思います。その点この作品は本格のど真ん中をいっていると思います。

 悪い点を書くならば、マリアのキャラが自分には合わないこと。アリスも微妙でした。

No.82 9点 スパイラルライフ 2012/02/06 14:11
氏の真骨頂。物理的に遮断された二ヶ所それぞれに張り巡らされた伏線が一つの結論、解決に収束する様に大変満足させられました。
氏の作品では一番好きです。

感情移入するとさらに楽しめるので、
過去二作、孤島と月光を読んでから手にすることを推奨します。

No.81 8点 いいちこ 2012/01/12 20:13
毎度のことながらトリックの意外性・衝撃度はない。
しかしフェアに散りばめられた多数の小さな伏線から組み上げられたロジックの精巧さ、緻密さには美しささえ覚える。
両岸で同時発生する事件を並行して叙述するスタイルと、試行錯誤を重ねながら展開される推理でストーリーに引き込んでいく。
瑕疵を指摘するとしたら、第三の殺人で犯人が犯した致命的なミステイクと強引過ぎる江神の推理だが、裏を返せばそれだけか。
本格ミステリの王道を行く傑作と評価

No.80 8点 蟷螂の斧 2011/09/26 20:19
大変楽しめました。古典的正統派作品というのでしょうか?「月光ゲーム」「孤島パズル」より数段良かったと思います。採点基準が数年経っても内容(大胆なトリック等)を覚えているかどうかで判断していますので、残念ながらこの評価となりました。

No.79 9点 Q-1 2011/07/14 19:26
このシリーズは段々面白さが増しています。
交通手段を断たれた別々の村で起こる2件の殺人事件、、、
その因果関係、犯人の動機、交錯する人間模様、どれも無理なく進んで素晴らしい出来だと感じました。
本格好きの方なら一読の価値アリです。

No.78 9点 好兵衛 2011/04/23 22:12
有栖川氏は本当に親切ですね!
ロジックに対する愛を感じます。

探偵と同等に読者にも挑戦するフェアさは
なかなか他の小説にはみられません。
この作者、本格で勝負してるなと思いますね。

フェアの中では満点。純粋な推理小説という感じです。
地味に見えますが、そこがロジックのよさでもあります。
トリックもおもしろく 双頭の悪魔は評価が高いです。

ゆっくり論理の穴を探しながら
読める本格は実は少ないです。
特に感謝!は挑戦状の数ですね。
こういう形の小説でどれだけペテンがあるか。
見習って欲しいです。

しかし、タイトルが双頭デーモンじゃなくて本当によかったです

No.77 9点 smile66 2011/02/27 23:34
3回提示される読者への挑戦状に裏付けされるように、まさに特盛といった出来栄えです。素敵です。
両サイドでの活躍がうれしい作品です。

No.76 9点 シレン 2011/02/18 23:12
評判通りの緻密でいて大胆な作品でした。
この作者ならではの理詰めな展開なので、ちょこちょこ読むより、一気に通して読みきったほうが楽しめると思います。

No.75 6点 ムラ 2011/02/09 05:54
(微弱だがネタバレあり)
パズルのように進む物語。読者からの挑戦は結局わからずしまいだったけれど、紐が解けていく様を見るのは楽しかった。
二つの孤立した世界が錯綜した瞬間がとても面白い、けれどそれ以上に面白かったのは泥んこ試合だったかもしれない。
トリックや道筋にはなんら不満はないけど、Xの動機だけがイマイチ弱すぎる気がするなぁ。(まぁ、一番動機の強くて相互に殺害理由が明確な●●が犯人だ! って予想が見事に外れた負け惜しみかもしれんが)
あともう少しすっきり書けたのでは無いかということだけ。キャラが個性的なので冗長には感じなかったけど。

No.74 6点 2011/01/16 22:28
トリックと論理的推理はよいのですが、犯人の殺人動機が弱いのではと思いました。

No.73 10点 HORNET 2011/01/08 20:11
 近年の国内ミステリの中で最も好きです。三度の「読者への挑戦状」があり,その都度これまでのページをめくり直して考えてしまいます。読者に与えられる情報も,すべて明確で文句なし。結末も感心&納得。
 この作品で,完全な「有栖川ファン」&「学生アリスシリーズファン」になりました。

No.72 8点 りゅう 2011/01/02 09:03
 前2作を凌ぐ、スケールの大きな力作です。
 この作品の核とも言うべき、1番目の事件と2番目の事件を結ぶ真相について、ネット上で偶然ネタバレを見てしまっていたので、なかなか手が出せなかったのですが、今回読んでみました。読者挑戦3回戦はそれでも十分に楽しめました。いずれも、ページをめくり直して、真剣に考えてみました。結果は、核となる真相を知っていたにもかかわらず、1勝2敗でした。でも、言い分けと言うか、不満と言うか、反論があります。

(ネタバレをしています。注意!)
・ 読者への第一の挑戦
 別の犯人を想定していました。香水の使い方は、私の考えていた方法よりもうまいやり方で、さすがだと思いました。ただ、香水の香りがどれくらいの範囲まで及ぶのか、読者にはわかりにくいのが難点ではないでしょうか。それがわかりにくいため、犯人特定に至ったロジックを読んでも、別の人物でも可能ではと思ってしまいました。
・ 読者への第二の挑戦
 犯人、手法ともほぼ完全正解でした。
 「右の尻ポケットの論理」はいらないと思います。
・ 読者への第三の挑戦
 犯人を特定するロジックが見つからず、動機面だけから別の人物を犯人と想定していました。江神の披露した犯人特定のロジックには不満があります。このロジックは、マリアが音楽室からのピアノの音を一切聞いていないことが前提となりますが、作品中では、「足音はいくつか聞きました。でも、注意を払っていたわけではありませんから、....」と言うマリアの曖昧な証言しかありません。マリアが音楽室からのピアノの音を聞いていないことを明示すべきだったのではないでしょうか。さらに、このロジックはある可能性を見逃しています。それは、「八木沢が音楽室に入った後、犯人は八木沢が演奏していない時に入室し、演奏を聴かせてもらうよう依頼して、八木沢が演奏に夢中になった時に背後からナイフで刺す・・・・・・」といった単純なものです。犯人の言い分じゃないですが、江神の推理は言掛かり、こじつけと言われても仕方ないと思います。

 「読者への第三の挑戦」のロジックには不満ですが、全体としては非常に良く出来ていると思いますので、この点数で。


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