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[ 本格 ]
オシリスの眼
ソーンダイク博士
R・オースティン・フリーマン 出版月: 1951年04月 平均: 5.75点 書評数: 4件

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早川書房
1951年04月

筑摩書房
2016年11月

No.4 6点 弾十六 2021/05/26 05:11
1911年出版。ちくま文庫(2016)で読了。
渕上さまの行き届いた解説で元々は1910年ごろ、米出版者マクルーアと雑誌連載の話を進めていた、という。初稿と最終版には結構な異動があり、詳細は渕上解説をご覧ください。こーゆー解説が全ての翻訳本についてると嬉しいなあ。(現状は何も調べてない個人の妄言ばっかり… おっと批判はそこまでだ) 翻訳は英初版(限定版)によるもので、後年の版には誤植や脱落が目立つらしい。
オシリスの眼、とはWiki「ホルスの目」として項目だてされている「ウアジェト(ウジャト)の目」のこと。文庫カバー絵上部に描かれている有名な象形文字としても有名。
小説自体はゆっくりと時が流れる物語で、やや起伏に乏しいけれど、解決篇の緊迫感はなかなかのもの。
ミステリとしては中レベル。いつもの通り、右に振って左が正解というミスディレクション成分が不足してるのがフリーマン流。ソーンダイク博士も本心を明かさず「君も同じものを見聞きしているのだから、よく考えればわかるよ」とお馴染みのセリフで、怠惰な読者は置いてけぼり。
小説として面白くないか、というとそんなことはなくて、大英博物館所蔵のアルテミドロスのミイラ(1888年獲得、Artemidorus MummyでWeb検索すると非常に楽しめる)のネタなどがとても良い場面に仕上がっていて、楽しい読書だった。最近、とても興味がある検死法廷(the coroner’s court=inquest)の場面もたっぷり描写されていて非常に興味深かったし…
小説の作中年代は1902年と明記。価値換算は英国消費者物価指数基準1902/2021(126.08倍)で£1=17721円。
原文はMysterious Press版によるもの。
トリビアは暇になったら埋めるかも。とりあえず一件。
p97 黒い司祭服に山高帽といういでたちなのに、いきなり振り向くと、実は中年の女性と分かってびっくりさせられる、あの背の低い年配の紳士は?(Or the short, elderly gentleman in the black cassock and bowler hat, who shatters your nerves by turning suddenly and revealing himself as a middle-aged woman?)♦︎渕上さまの翻訳は丁寧な仕上がりで、訳注も適切、本当に文句なしなんですが、この文章だけはハテナ。ここは文の最後に「紳士」を持ってきたのが失敗。黒い司祭服に山高帽だから年配の紳士かと思いきや、振り向くと中年女性だったのでビックリ、という原文ですね。

No.3 6点 makomako 2016/12/16 21:43
 はじめに不可解なエジプト学者の失踪が語られる。いかにもといった感じでここにトリックがあると推理小説ファンならすぐに気づくところですが、これが意外と難敵でした。
 登場人物が少ないので読みやすく犯人の推察もできるのですが、真相を見抜くのは難しいと思います。
 作者が医者であるので、解剖学的なお話は比較的正しく書かれています。確かに普通の人間がバラバラ事件を起こすとしたらこのような切断は絶対しないでしょう。
 私は古代エジプトが好きなので、エジプトに関するお話もすんなりと理解できましたが、この方面の知識がないとちょっとわかりにくいかも。
 実に大胆なトリックというべきですが、現実に可能か否かは何とも言えませんね。
 でもこんなことを考え付いたことに敬意を表します。

No.2 5点 蟷螂の斧 2015/10/01 17:57
エジプト考古学者が不可解な失踪をし、その2年後に白骨が発見される。その白骨は考古学者のものなのか?・・・。ヴァン・ダイン氏が世界ベスト10に挙げたらしい1911年の作品。しかし、現在から見ると、トリックはかなり古い(苦笑)。本作でも、当時としては最先端?のX線写真が登場しているので、そういう意味から科学的推理のソーンダイク博士という謳い文句になったのでしょう。歴史的な意義を感じるかどうかといった作品ですね。

No.1 6点 nukkam 2012/09/18 18:28
(ネタバレなしです) 1911年発表のソーンダイク博士シリーズ第2作です。1910年代の海外ミステリー作品はそれほど多く日本に紹介されていないので比較するのも難しいのですが、当時の水準を上回る本格派推理小説ではないでしょうか。事件性の曖昧な失踪事件を扱い、ようやく死体が登場してもそれが失踪者と同一人物なのか終盤まではっきりしないという展開が少々退屈ではあるものの、ソーンダイクの真相説明は予想以上に論理的で、一つ一つの推理は粗いのですがこれだけ丁寧に積み重ねられるとそれなりの説得力があります。随所でエジプト考古学に関する知識が披露されていますが、これは後のヴァン・ダインの「カブト虫殺人事件」(1930年)に影響を与えたかもしれません。


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