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[ クライム/倒叙 ]
ポッターマック氏の失策
ソーンダイク博士
R・オースティン・フリーマン 出版月: 2008年05月 平均: 7.75点 書評数: 4件

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論創社
2008年05月

No.4 6点 nukkam 2017/03/25 06:50
(ネタバレなしです) 犯人の正体をあらかじめオープンにする倒叙本格派推理小説の創設者として有名なフリーマンですがその種の作品は案外と多くなく、長編2作と短編7作しかありません。1930年発表のソーンダイク博士シリーズ第12作の本書はその希少な長編の1つです。これが倒叙本格派の原典であり、後発のF・W・クロフツやヘンリー・ウエイドがどのような新趣向の倒叙本格派を書いたのかを比較してみるのも面白いかもしれません。長編なので事件が発生するまでをじっくり書くのかと予想していたら意外と早く事件が起き、犯行に至る経緯については中盤での回想シーンで後から語られるという構成を採用しています。事件後のポッターマック氏の犯行隠蔽工作が実に細かく描かれるところはフリーマンならではです。人物描写はどちらかといえば苦手な作者ですが本書では主役であるポッターマック氏の境遇描写に結構力を入れており、読者がどこまで共感できるか(或いは反感を抱くか)によって作品評価が分かれそうです。ソーンダイクのまるで物語を聞かせるかのような終盤の推理説明が不思議なサスペンスを生み出して印象的です。

No.3 9点 蟷螂の斧 2014/05/13 12:07
裏表紙より『英国の田舎に住む紳士ポッターマック氏。彼の生活は執拗なゆすりに耐える日々だった。意を決した彼は、綿密な計画のもとに犯人を殺害する。完璧とも思える隠蔽工作だったが、その捜査に乗り出したのは科学者探偵ソーンダイク博士だった。ソーンダイクはいかにして見破るのか…。』           1930年の作品。倒叙ものの隠れた?名作ではないかと思います。主な登場人物は4人と少ないのですが、その構築・関係性は魅力的でした。検視方法などは時代を感じさせますが、当時としては妥当なのでしょう。科学者探偵ソーンダイクと犯人とのやり取りは緊迫感がありましたね。ラストも好みです。

No.2 9点 HORNET 2014/05/06 13:46
 アントニイ・ヴァウチャーが、クイーンの「(なんとかかんとか)重要な10の作品」に物申した際に、自分が10作品に入れるならと本作品を推した論評を目にして、興味がわいて手に取った。
 いや、これはすごくいいですよ!!どうやらフリーマンは倒叙型の作品を確立した功績が大きいとされているようだが、本作はその代表作。犯人が犯行を犯す様が先に描かれ、その後捜査の手が次第に及んでくるのを回避しようとする様子がリアルに描かれている、典型的な形ではあるが、展開がシンプルであるがゆえに無駄がなく、非常に読みやすい。かといって底が浅いわけはなく、主人公ポッターマック氏にかかわる伏線的な謎がうまく組み込まれ、それが物語の魅力をさらに高めている。
 フーダニットの海外古典は、フーダニットであるがゆえに容疑者を少なくすることができず、覚えにくい登場人物名にアレルギー反応を示してしまう人もいると思うが、このような倒叙型の小説はそもそも犯人がはじめから明らかになっているのだからその心配はなく、そういう点でも読みやすいと感じるだろう。
 なんといっても、人情的な最後のソーンダイク博士の采配には多くの読者が「ほっと」するのではないだろうか。それほど犯人であるポッターマック氏に、読者は感情移入してしまう。捜査を間違った方向へ導くために、周囲の目を気にしながら危険な画策をする物語途中のくだりは、こちらも氏と一緒になってドキドキハラハラしてしまう。うまくやりおおせた時には一緒になって「ほっ」とする。
 今読んでもまったく色褪せない、文字通り「不朽」の名作ではないか。はずかしながらフリーマンは初読なので、まずはソーンダイク博士の事件簿から読んでいきたい。

No.1 7点 mini 2011/09/28 09:58
発売中の早川ミステリマガジン11月号の特集は”刑事コロンボに別れの挨拶を”
俳優ピーター・フォーク追悼企画だろうね
刑事コロンボに興味は無いがコロンボと言えば倒叙、便乗企画として私的に倒叙祭り週間続けるぜ!

倒叙という形式の創始者オースティン・フリーマンはホームズのライヴァルの1人ソーンダイク博士の生みの親である事から短篇作家とのイメージの人も居るかも知れないが、実は20作以上の長編を書いており、ドイルと異なり長編作家の面が強い
ただ倒叙形式の発明者にしては長編での倒叙作品は少なくて全部で2作程度しか無く、倒叙長編の数ではクロフツの方が多い
「ポッターマック氏」は数少ないフリーマンの倒叙長編だが、これはソーンダイク博士ものの名作の1つではないだろうか
よく長編第1作「赤い拇指紋」だけしか読んでなくて、そのイメージだけで判断する人も多いみたいだが、「証拠は眠る」も悪くなかったし中期以降の作は見直す必要が有りそうだ
さて倒叙の観点で見ると、森英俊氏は3大倒叙の中で「クロイドン」が倒叙の形式に一番近いと言っていたが、「ポッターマック氏」は「クロイドン」よりも更に倒叙の定義に忠実だ
倒叙形式は端からフーダニットの興味を捨て去りハウダニットな興味が中心となるが、フリーマンという作家は元々フーダニット構築が下手で逆に稀代のトリックメイカーだから、やはり倒叙には向いていたのだ
殺害方法は平凡だが、それを誤魔化す為のトリックがいかにも科学者作家フリーマンらしい
笑ってしまうのは後半には現代では絶対有り得ないトンデモトリックが炸裂するが、まぁこれは御愛嬌
少なくとも後半の展開がありきたりだった「クロイドン」などよりこちらの方が面白いと賛同してくださる読者はきっと居るに違いない
論創社からこの作品が刊行されたのは割と最近だが、これがずっと昔に翻訳されていたら、”3大”ではなく”4大倒叙”と称されていたんじゃないだろうか

こうなると”5大倒叙”の5番目になる可能性を秘めた未訳作、フィルポッツ”Portrait of a Scoundrel(極悪人の肖像)”を、どの出版社が目を付けるかだな


R・オースティン・フリーマン
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