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[ クライム/倒叙 ]
悪の教典
貴志祐介 出版月: 2010年07月 平均: 6.67点 書評数: 21件

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文藝春秋
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No.21 8点 人並由真 2023/06/03 17:25
(ネタバレなし)
 ブックオフの100円コーナーに、新刊本みたいにきれいな帯付きの文庫本・上下2冊(2012年版の初版)があった。話題作としてタイトルくらいは知ってる作品なので、嗜みとして読んでみようと購入した。そこまでが、だいたい半年くらい前? の話。

 で、今回読んだが、さすがに読了までは2日かかった。
 とはいえ初日で約600ページ(下巻の半ばまで)読み進められて目の疲れを感じなければ最後までいっきに読了していたかもしれんかった。なるほど、リーダビリティは確かに申し分ない。

 後半~山場にかけて、ハスミンのキャラクターは確かに転調した気配はあるが、もともと、そして最後でまた、己の足場を器用にずらすタイプのニンゲンなので、さほど気にならなかった。
 山場の行為もなりゆき・プラス・試みてみたい己の関心の結果であろう。

 文庫版のあとがきで三池監督が騒ぐほど、究極の自由を追ったキャラクターだともダークヒーローだとも思わないし、デスノートのニア風に言えば、ただの知能の高めのイカれた人間でしかない。そしてその上での何らかの接点は、たしかにどこかに覚えないでもないのだが。
 お話は強烈な一方でまとまりがよく、最後のクライマックス、決着がどこでどうなるかについて、ミスディレクションを張りまくる作者のサービス精神には感嘆(感心でも感銘でもなく、感嘆)。
 作風は相応に違うが、キングの一級作品に通じる量感はたしかにあり、それがそのまま読み手の快感になった。8点は妥当だとは思う。

No.20 8点 雪の日 2022/05/03 17:30
超有名作品ということで読み始めました。
貴志祐介らしい怖さは特にありませんでしたが、話が面白くとても楽しめました。
サイコパスのキャラはとても魅力的でしたが、話が進むにつれて魅力が薄れていくのが残念なポイントです。

No.19 6点 じきる 2020/08/23 22:03
ハスミンのキャラクターは好きだし、スリルも抜群。
それだけに後半が尻窄みになってしまったのが残念でならない。

No.18 8点 びーじぇー 2019/08/06 16:32
教師となり高校で教鞭を執るサイコパスの日常を綴った小説。作者は、サイコパスが天才的な頭脳を持ち世渡り上手だったら現代社会においてどんな生活を送っているか。そして、その生活が破綻しそうになった時、周囲の人間相手にどんな行動に出るかという問いを設定し、徹底したシミュレートの末、なんともありえそうな物語を描きあげている。サイコパスを主人公にした小説は少なくないが、これほど奥行きを感じさせる作品はなかなかない。まさしく剛腕の産物。
上巻と下巻の強烈な転調も本書の大きな魅力。上巻の日常から一転、保身に走るサイコパスの行動がおぞましさに満ちた光景を生み出す。上下2巻のボリュームとそれに見合う熱量を備えた、国産ホラーの金字塔と呼ぶにふさわしい大作であり、先の展開の予想がことごとく覆されるサスペンスとしても一級品といえる。

No.17 6点 文生 2017/10/31 09:59
生徒たちから慕われ、理想的な教師だと思われたハスミンが実は冷酷なサイコパスだと判明する前半部はスリリングで読みごたえ十分。しかし、多くの指摘がある通り、後半に入ると天才犯罪者であるはずの彼の行動が一気に雑になり、十把一絡げの殺人鬼に堕していくのが残念。もっと彼の悪のカリスマぶりを堪能したかった。

No.16 4点 邪魅 2017/02/23 12:12
サイコパスを扱った小説なのでしょうが、今一つ何をしたいのかがちょっと分からずあまり物語に入り込めなかったです
ただ人が殺されていくだけでミステリ的な仕掛けがあった訳でもないですし

No.15 7点 いいちこ 2015/12/01 19:11
作品を通じて抜群のリーダビリティとサスペンスを維持しており、筆力の高さは疑い得ない。
一方、「天才サイコキラーが学校内で大量連続殺人に及ぶ」というプロットありきの作品であるが、緻密な取材と伏線の妙に苦心の跡が伺われるにもかかわらず、プロットに明らかに無理が感じられるのが残念なところ。
「アメリカ名門大学卒業後に金融界で活躍したエリート」という経歴は、天才サイコキラーの人物造形には不可欠であるが、そうした人物が日本の高校教師の地位に留まり、しかもその地位を保全・補強するためだけに、ここまでの犯罪を犯すのか。
犯行露見の危険性が明らかに増すことを知りながら、自分が担任するクラスの女子生徒と関係を持ち、さらには校内で密会する等といった軽率な行動を取るだろうか。
また、多くの方がご指摘のとおり、作品後半では大味な犯行と軽率な判断が散見。
皆殺しを達成するまでは何を置いても銃弾をセーブしなければならず、また生徒に犯行の進捗が露見することを防いで警戒心を殺ぎ、周辺家屋からの通報の可能性を低減させる意味でも、可能な限り銃声の発生を避けるべき局面で、体力面で勝る女子高生相手に1対1の接近戦で発砲するだろうか。
とりわけ大量殺人に追い込まれる引き金となった校内2人目の殺人は、天才には考えられないボーンヘッド。
また、その時点でも皆殺し以外のよりスマートな解決手段が模索できたであろうし、あの隠蔽工作で警察の捜査から完全に逃れられると考えていたのか。
ある殺人を隠蔽するために、次の殺人を犯さざるを得ないというプロットは「青の炎」と同様。
スケールやサスペンスでは本作が勝っても、犯行の緻密さと合理性、読後感等の点から総合評価では「青の炎」に軍配

No.14 8点 itokin 2015/07/16 09:19
貴志さんのサイコ、ホラーは絶品ですね。構成と文章力によるものと思うが最後まで一気読みさせられた。後半の攻防戦も無理のないアイディアー満載で楽しめた。後味が少しというところもあるがこの作品の趣旨からやむを得ないと感じた。

No.13 8点 sophia 2015/03/17 21:32
エンタメに特化したサイコ・ホラー作品。このミス1位の名に恥じぬ面白さでした。本のあらすじから想像していたのは後半の怒涛の展開だったので前半のスローペースに意表を突かれましたが、読み終わってみると意外と前半の方が面白かったのかもしれないと思いました。性的描写の多さはちょっと気になりますかね。ノベルズ版・文庫版の最後に付いている短編「秘密」がいい味を出してます。

No.12 6点 バックスクリーン三連発 2013/03/29 11:31
上巻のように一人、一人丁寧に殺していってくれたらハンニバル・レクターのような私の中で新しいダークヒーロー誕生だったのでしょうが、下巻からの全部殺しちまったらいいというのはスマートでないので好きになれない。

No.11 5点 虫暮部 2012/10/10 15:53
 蓮実の“天才”の人格に比べて、その欲求が妙に俗物的というか即物的なのがいまいちしっくり来なかった。
 雑誌連載中のコミカライズ作品を途中まで読んだ状態で、小説のほうを読んだ。これが失敗。もともと良くも悪くも漫画的な小説だと思うのだが、完全に漫画のイメージに囚われてしまった。

No.10 6点 メルカトル 2012/09/11 21:35
前半はなかなか緻密で丁寧に書かれているが、後半がなあー。
別に倫理的にどうこう言うつもりは毛頭ないが、どうにも荒削りな印象が否めない。
蓮実くらいの切れ者なら、別にクラスの生徒全員皆殺しにする必然性は全くなく、自らの手を汚さずとも他に方法はいくらでもあるのではないかと思うのだが。
それとひとつ気になったのが、ある生徒の不可解な行動である。冷静に考えれば、それはないだろうと。
ある意味後半はあの『バトル・ロワイアル』に類似しているが、残念ながら遥かに及ばないと言わざるを得ないね。
それでも全体的には、読みやすく好感は持てる。
しかし、後味がスッキリしないのはマイナス要因であろう。

No.9 7点 Q-1 2012/08/27 13:48
上巻は蓮実の緻密で狡猾な犯行手口が読みどころで、
下巻は殺戮マシーンと化した蓮実の魔の手から生徒たちがいかにして逃れるかが読みどころだと思います。

個人的には何でも禁止したがる潔癖な人たちに
これはフィクションだからな?
それが理解できない奴らは読むなよという皮肉めいた作品に感じました。
これが現代の空気の中で映画化されるのも少しそういった挑発的なものを感じます。
人に依ってはただただ胸糞悪い作品かもしれません。

No.8 7点 いけお 2012/05/27 00:17
精密な前半と後半からラストの完成度の落差は大きいが、リーダビリティは圧倒的だった。

No.7 6点 touko 2012/01/12 22:45
(ネタバレ部分あり)






おバカスプラッタホラー?

上巻は同作者の「青の炎」を思い出しましたが、下巻はまるで「13日の金曜日」。

一方的すぎるゲーム感覚の殺戮なので、何の罪もない学生たちが殺されていくという残酷さはなく、爽快感すらあるかも?

まあ楽しめないことはなかったのですが、天才設定のわりに、要所要所で都合よくおバカになる犯人がなんだかカッコ悪くて。。

連載作品だからか、書き飛ばしている感ありあり。
この作者には、やはりじっくり書き下ろし作品を出して欲しいです。

No.6 6点 haruka 2012/01/01 10:13
有能な教師の黒い内面が徐々に明らかになる前半が面白かった。

No.5 7点 モグ風 2011/11/08 18:05
ネタばれあり


前半の蓮見先生の冷静沈着なサイコキラーぶりにはこんな教師がいたら恐ろしいと思ったが、殺人対象の設定をクラスの生徒全員にしてしたのはもったいない。
その部分に無理があるのではとおもった。(生徒を一人ひとり殺すとなると銃声で周囲の住民がきづかないわけないし、途中で警察がきて計画破綻するだろうと思う。)
そのせいで最後のほうは冷静沈着な感じのではなくなって、ただのバトロワ風の大量殺人鬼に成り下がってしまったのが残念。

No.4 9点 yojunsui 2011/10/15 04:12
読みながら次が気になり、一気に読破してしまいました。
殺戮のところは若干雑な点もありましたが、それよりも全体としてハスミンの本性が次第に見えてくる様や人間の恐ろしさがとても怖くて面白かったです。

No.3 5点 yoshi 2011/03/20 14:20
上巻9点、下巻1点。足して二で割って5点。

上巻はハスミンの行動が精緻で、次第にその不気味さが増していくところが上手く描かれていた。

下巻はひたすら退屈。リーダビリティは高いので、すらすら読めるが、ただ生徒を殺していくだけなのでサスペンスがない。『バトルロワイヤル』の劣化版を読んでいるようだった。
何よりもいただけないのは、いきなりハスミンの行動が大雑把になるところ。どうせ美術教師に罪をなすりつけるつもりならば、二人殺しただけでやめておけばいい。その方が罪もなすりつけやすい。
それなのに全員殺したのは、ただ作者がジェノサイドを描きたかったというだけの理由であって、登場人物的に必然性がない。

結論 最近の「このミス一位」は信用できない。

No.2 6点 HORNET 2011/01/11 03:13
<少々ネタバレ気味>
 ミステリというより学園ホラーでしょう。2人が魔の手を逃れたからくりもその場面で即座に分かりましたし(道義的にはヒドイことをしてますが,生き延びることが最優先だから仕方がないでしょう)。
 物語としてはむしろ,ハスミンの模範的教師としての仮面が剥がれていく過程のほうが面白いのでは。そういう意味では,「このミス」で予備知識がなかったほうが楽しめたのかも,と思います。ただ,後半に行くにつれ,ハスミンの手口としても「雑」になり,大味になっていく感じはしました。(そもそも,真実を知った者は消すという連鎖で,やりおおせると思っている時点で,本当にハスミンは頭がいいのか?)
 なんだかんだ書きましたが,ノンストップで読んでしまう筆力がありました。このサイトで字が大きくなっている著者の作品は読んでみたいと思います。


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