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[ 本格/新本格 ] 鵼の碑 百鬼夜行シリーズ |
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京極夏彦 | 出版月: 2023年09月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 2件 |
![]() 講談社 2023年09月 |
![]() 講談社 2023年09月 |
No.2 | 7点 | メルカトル | 2023/09/24 22:11 |
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殺人の記憶を持つ娘に惑わされる作家。
消えた三つの他殺体を追う刑事。 妖光に翻弄される学僧。 失踪者を追い求める探偵。 死者の声を聞くために訪れた女。 そして見え隠れする公安の影。 Amazon内容紹介より。 内容が内容だけに、刊行が延ばされたのは分かりますが、それにしても17年は長かったですよ。まあ2、3年は駄目だったろうなとは思います、しかしせめて5年くらい空けて出して欲しかったですね。 まず本書を手にして確認したのは、次作が告知されているのかどうかでしたが、どやらシリーズは続くものとみて間違いないようで、正直ホッとしました。いつ出るかは作者のみぞ知るところですが、2年に一作位は出してもらいたいです。 さて本作、薄味との意見もあるようですが、十分濃いです。特に京極堂の蘊蓄には相変わらず付いて行けません。ただ、事件が現在進行形ではなく、過去に起こった出来事を追うものなので、スリリングな展開は望めません。この辺りはHORNETさんに全面的に賛同します。そして、個人的に榎木津の出番が少なすぎて物足りなかったりしました。まあその分、緑川という女医がなかなか物言いとか堂々としていて、好感が持てましたが。過去に関口らとどんな出会いがあったのか気になるところです。あと、チョイ役のセツという「悪いけど」が口癖のメイドが面白い存在でしたね、どうでもいいですけど。 物語やプロットは良いんだけど、ミステリとしては弱いよね。 |
No.1 | 7点 | HORNET | 2023/09/18 22:01 |
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古書肆の仕事で栃木県・日光に逗留する中禅寺秋彦に同行してきた作家・関口。宿泊するホテルで懇意になった男性に「部屋付きのメイドが、殺人の記憶を打ち明けてきた」と相談され、困惑する。同じ頃、薔薇十字探偵社の主任探偵・増田は、失踪人探しを依頼され、日光へ赴く。さらに麻布署捜査一係刑事・木場は、20年前に起きた「消えた三つの他殺体」の謎を解いてこい、と上司から私的な密命を受けてやはり日光へ―
全く異なる3つの場で立ち上がった問題が日光の地で融合し、絡み合った糸が京極堂の「憑き物落とし」で解きほぐされる― 長編はなんと17年ぶりの刊行。前長編「邪魅の雫」の巻末にはこの「鵼の碑」というタイトルは既に示されており、「今昔百鬼拾遺 月」の帯に「近日刊行予定」となっていたけど…。いやー京極先生の時間の感覚は我々一般人の理解は及びませんね 笑 今回は、日光に逗留している京極堂、関口、+榎木津チーム、失踪した薬剤師の創作依頼を受けて日光に向かった益田チーム、20年前の不審な「死体消失」の謎解明を命じられた木場、の三者がそれぞれの謎を追っていく様子が代わる代わる描かれ、次第に一つになっていくという構成。 相変わらず雑学、哲学論、蘊蓄が多い。始まって250ページぐらいはほとんどそれだと言っていい。今回は江戸末期の神道、理化学研究所による放射能研究あたり。まぁおそらく本作を読む読者はシリーズ読者だと思われるので、「ならではの味」として楽しめるだろう。刑事・木場のパートが一番そうしたこととは無縁で、ミステリらしい展開の部分。 3つのパートの調査が進展していくにつれ、少しずつ読者にも重なりが見えてくるとともに、20年前の事件の真相も読めてくる(感じがしてくる)。もちろん真相はそんな単純なものではなく、よく織り込まれたストーリーではあった。 ただ本作は結果として、過去にあった出来事の真相解明の物語で、作中現在(昭和29年)では何も起きていない。リアルタイムで事件が進行していき、不可思議性がどんどん高まっていく過去作に比べると、興奮度はそれほどという感触だった。 蛇足だが、またもや帯に「次作予定」が…(「幽谷響の家」)。さすがに「近日」とは書いていなかったが… |