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[ 短編集(分類不能) ]
#真相をお話しします
結城真一郎 出版月: 2022年06月 平均: 6.87点 書評数: 15件

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新潮社
2022年06月

新潮社
2024年06月

No.15 7点 猫サーカス 2025/03/29 18:29
家庭教師派遣サービスの営業担当の大学生が、ある家の母子と噛み合わない会話を交わす「惨者面談」。娘がパパ活をしているのではないかと心配しているのに、父自身はマッチングアプリでことに及んでいる「ヤリモク」。不妊に悩んでいた夫婦が子供を授かった後、夫は精子提供を始める。それにより生まれたと称する娘が現れる「パンドラ」。学生時代からの友人三人がリモート飲み会を催している最中、一人がもう一人を殺しに行くと言い出す「三角奸計」。ある時から移住組の子供たちが島の人々からよそよそしくされる「#拡散希望」。いずれの作品も語り手が、自らの置かれた状況に違和感を覚え、真実を知ろうとする展開が共通する。また、どの話も限定的な人間関係がモチーフとなっている。日常に生じたちょっとした違和感をきっかけに、隠された真相を開示していく過程が面白い。

No.14 6点 Rina 2025/02/10 12:42
YouTubeやマッチングアプリ、リモート飲み等の現代ならではの要素がテーマとなっている短編集です。
以下、各編の簡単な書評です。
※若干のネタバレを含みます。

・『惨者面談』(5点):テーマは「中学受験」。伏線の回収は丁寧ですし、ラストも捻りが効いています。が、驚きに欠ける気が……。
・『ヤリモク』(4点):テーマは「マッチングアプリ」。こちらも伏線の張り方/回収の仕方、共にお手本のように綺麗です。ラストも捻っています。しかし、「驚き」というよりも「納得」の方が強いです。決して面白くないわけではありません。なんとなく一昔前に流行った「意味が分かると怖い話」に読後感が似ています。
・『パンドラ』(6点):テーマは「精子提供」。このテーマでこんな話が読めるとは!いや、逆にこのテーマだからこその物語とも言えましょうか、発想に感服です。辿り着く真相も中々に良いですね。
・『三角奸計』(6点):テーマは「リモート飲み」。サスペンス色が強く、読み進めるごとに緊迫感が増していくストーリー運びが素晴らしいです。ラストで急にアクセル全開になるのも爽快でした。読後タイトルを見返すと邪悪な笑みが……。
・『#拡散希望』(9点):テーマは「YouTube」。お見事!読者の想像の斜め上を行く大技を繰り出すことによって、物語の世界観を根底から覆す程の衝撃を読者に与えることに成功しています。日本推理作家協会賞受賞にも納得の傑作です。

どの話も、短編ミステリとして丁寧な出来です。「謎があり、伏線が張られ、それらが全て回収されると同時に真相が明らかになっていく」というミステリの基本がしっかりと抑えられたお手本のような短編ミステリが多いです。
その為、若干驚きに欠ける作品もあります。
しかし、本書の面白い点は、各編でそれぞれ現代的なテーマを扱うことで、そういったミステリの基本型に則りながらも真新しい読み心地の作品を生みだしている点でしょう。
本書は今後、令和の時代を代表するミステリとなるのではないかと思います。

No.13 7点 ミステリーオタク 2025/02/06 20:34
 開成中学・高校を経て東京大学法学部を卒業した作者(だから何?)の初の短編集。

 《惨者面談》
 非常に現代的で読みやすいスタイルで、途中で湧いてくる「簡単すぎる真相か?」との杞憂も一応回避してくれて(その手の小6男子なら・・・という違和感は残るが)散りばめられた伏線も一つ一つキチンと回収してくるが、種明かしは少しぎこちなさも感じる。東大生のレポートみたいな作品。

 《ヤリモク》
 へぇー、今はこんなに至れり尽くせりのマッチンクアプリがあるんだ、これなら俺も一度利用してみ・・・・なーんてね。
 本作も途中で大体の方向性は見えたが、最後までは読み切れなかった。ウ~ン、そう来たか。結果的には計画を遥かに凌駕する形で・・・

 《パンドラ》
 主人公の娘が何となく自分の娘とダブること、またメインエピソードも自分に全くの無関係ではないことなどから多少思い入れがないこともない話であると言えなくもないし、ミステリとしてもよくできているとは思うが、もう一捻りあってもよかったかなとも思う。
 蛇足だけど「前十字」は「ぜんじゅうじ」と読みます。

 《三角奸計》
 これも大凡のところまでは読めたが、終盤の捻りとテクニカルな「明かし」までは流石に無理だった。
 やはりキチンキチンとした「説明」が東大っぽく感じられてしまうのは自分の勝手な偏見によるものだろうが、エンディングはあまり「らしくなかった」。

 《♯︎拡散希望》
(未読の方は読まない方がいいかも)
 過疎化した孤島が舞台のミステリだが、時代に即したツールを介して壮大な背景に繋げる巧妙な構成になっている。細かい伏線の仕込みも悪くない。
 関連性は薄いがふと数年前のテレビドラマ「3年A組」を思い出した。


 いずれの作も総タイトルに恥じない内容だと思うし、久々にハズレのない短編集を読んだという気分にもなれた。この作者は短編集をもう一冊出しているのかな?  そちらも読んでみたいとは思うが溜まっている未読本を見ると一体いつになることやら全くの不透明。

No.12 6点 E-BANKER 2024/12/31 13:31
「小説新潮」誌に断続的に掲載された作品をまとめた作者の処女短編集。
日本推理作家協会賞受賞はいうまでもなく、作者の名前を世に高めることとなった作品。
2022年の発表。

①「惨者面談」=昨今の中学受験戦争(?)は凄まじい。で、子供の成績を何としても上げようと親が雇うのが「家庭教師」。ということで、とある家庭を訪問した家庭教師派遣会社の営業マンが巻き込まれた事件。その家の母親の態度はどうみても「おかしい」のだが・・・。真相は二番底にある。
②「ヤリモク」=昨今、マッチングアプリを悪用した詐欺事件が急増しているというニュースを、たまたま昨日の地上波で見た。で、本作は「詐欺」ではなく「コロシ」である。問題は「コロシ」の理由なのだが、目的を達したはずの真犯人に待ち受けるのは思いがけぬ事実・・・だった。
③「パンドラ」=いつの世も「子供が欲しいのにできない」夫婦は存在する。そこで闇ルートに存在するのが「精子バンク」(闇ではないかもしれんが)。ここに登場する男性は、敢えて提供者であることを隠さずに提供し、成長した我が子(?)を前にして・・・。そこには予想外の不穏な結論も。
④「三角奸計」=コロナ禍で流行った「リモート飲み会」がテーマ。大学時代からの仲良し三人組が久し振りに飲み会を開催することに。リモートで。飲み会が進行するなか、徐々に妙な方向に話は進んで、ついに・・・どうなった! 「そこまでやるかな?」というのが正直な感想だが。
⑤「#拡散希望」=長崎市沖の島で成長している四人組の小学生。ある日唐突にそれはやってきた! その名もiphon7(7か・・・)。それを境に、四人組を取り巻く島の環境は変化していき、ついには殺人までも。真相は「いかにも今の時代!」的なもの。

以上5編。
またもや日本の最高学府出身のミステリ作家登場である。いったいどうしちゃったんだ! 最近の出版界、いやミステリー界は? 東大閥なのか?(一時は京大閥かということもあったけど)
それはさておき、いやいや、実にスキのない短編集である。
AIがミステリーを書くと、こんなふうになるのではないかと一瞬勘ぐってしまう。それほど高水準だということ。
きっちりと前フリが効いていて、短編らしいラストのツイストもあるし、流行りのテーマも取り入れている・・・
うーん。否定的な感想を書けない。
でもまあ、昭和を知る者としては、「スキのないのが弱み」とでも強弁しておこう。あまりに優等生すぎるのもどうなの?って、単なる「妬み」です。

No.11 7点 虫暮部 2024/12/13 12:34
 「惨者面談」。読み方を確認しなかったことが、結果的には手掛かりとなった――のだから、最後の一行、如何にも “ウィットの効いた終わり方” みたいな風だけど、実は狙いを外してない?
 「ヤリモク」。厳密を期すなら、あのファースト・ネームだけでは特定するに不充分。工夫の余地アリ。
 「三角奸計」。リモート飲み会を題材にした短編は以前読んだ記憶がある(作者は忘れた)。本作とどちらが先か判らないが、案の定、同じ機能をトリックに利用している。こういうのは早い者勝ちだね。
 うーむ、まぁ、どの短編もアイデアはしっかりしているし、良い意味で判り易いし達者、だけど癖が無くて今時としては普通じゃない?

 と思っていたら最後「#拡散希望」で驚心動魄。凄いな、大胆にも程がある。あ、考えてみたらコレも、いずれ誰かが書く、早い者勝ちの大ネタかも。

No.10 7点 zuso 2024/06/04 21:59
第74回日本推理作家協会賞を受賞した「#拡散希望」を筆頭に、現代日本の闇を反映させた短編集。
捻りをきかせた構成、張り巡らされた巧みな罠と最後まで目が離せない。どんでん返しを堪能できる作品集で満足。

No.9 7点 パメル 2024/02/03 19:28
不気味な雰囲気と違和感で何かがおかしい、というところから事態が進んでいき驚愕の真実が明らかになる、現代ならではの事象を織り込んだ5編からなる短編集。
「惨者面談」家庭教師・片桐が、新たな顧客宅を訪問した時、最初は普通の主婦とその息子に見えたのだが。その後、会話が嚙み合わなくなり違和感を覚える。いくつもの不自然さを読み解いた果てに現れる真相に驚かされた。
「ヤリモク」マッチングアプリがもたらす危険な出会いを描く。何だか上手くいきすぎている気が。ミステリとして今ひとつ。
「パンドラ」娘の真夏から、連続幼女誘拐事件の犯人の顔に似ていると言われる。ある日、自分が精子提供した女性が生んだ我が子から衝撃のメールが。不妊治療の結果から、ある真実が明かされる。知らない方が幸せなこともあるという、タイトル通り開けてはいけないパンドラの箱そのもの。
「三角奸計」東京に住む「僕」桐山と関西在住の茂木と宇治原は、久しぶりにリモート飲み会を開くが。二時間後には、友人の殺意を聞かされ意外な結末に至る。ある人物が行った作戦が見事で、背筋がゾッとする。まんまと騙された。
「#拡散希望」現代文明から遠ざかった離島で、4人の小学生がYou Tubeに目覚めるが。現代らしい事物を題材にしつつ、土台にあるのはあくまでも人と人との関係。やがて浮上する隠されていた関係。動画共有サービスが普及する前には存在しなかった動機で、現実的に十分ありそうな残酷なクライマックスに衝撃。社会批判を織り込んだ意欲作。
いずれも限定的な人間関係がモチーフとなっており、語り手が自分の置かれた状況に違和感を覚え、真実を知ろうとする。その真相を開示していく過程が読ませる。

No.8 6点 蟷螂の斧 2023/03/28 12:40
①惨者面談 5点 家庭教師の営業で母親と子供に会う約束であったが、二人の様子が不自然・・・ネズミ算の答え110
②ヤリモク 5点 娘がマッチングアプリでパパ活をしているのではないか?そういう父親はマッチングアプリで女性と会うことをやめられない・・・動機
③パンドラ 7点 昔、精子提供した。その子供が真の父親を捜しに訪ねてきた・・・血液型
④三角奸計 5点 大学時代の友人3人(A、B、C)が5年ぶりにリモートで飲み会を開く。Aの恋人がBと浮気をしている。Aは、これからBを殺しに行くという・・・偽名
⑤#拡散希望 8点 離島にやって来たモヒカン男が殺された。ユーチューブに関連しているようだ・・・人気ユーチューバー

No.7 7点 みりん 2023/03/22 04:13
惨者面談 8点
殺リモク 7点
パンドラ 6点
三角奸計 7点
拡散希望 7点

いかにも現代という感じの短編集でハズレがない。ただ、5作品とも何か読み味(読後感?)が似ているので読み進めるたびに少しずつ驚きは薄れるかもしれません。そのせいか惨者面談が1番面白く感じた。タイトルは三角奸計が1番好きで次点で殺リモク。

No.6 8点 人並由真 2023/03/11 10:55
(ネタバレなし)
 あの食えない長編『救国ゲーム』の作者で、しかもその下馬評の高さから、どんだけ破格のものを読まされるかと思っていたが、各編とも普通の(?)短編ミステリであった。ちょっと安心。

 中~高レベルの作品がそろい踏みで、評点は7点の上かなと思いきや、最後の「#拡散希望」が真相の強烈さ、細部の詰め方のうまさ、そしてクロージングの締め方で頭ひとつ抜けている。
 収録作のどれかが、日本推理作家協会の短編賞なんだよなとは、うっすら覚えていたが、一冊読了後に、やっぱこれ(「#拡散希望」)か、と確認して納得。

 二年に一冊ぐらいの割合で、このレベルの短編集を読ませてもらえたら幸福である。

No.5 7点 まさむね 2022/11/26 21:58
 マイベストは、日本推理作家協会賞短編部門を受賞した「#拡散希望」。読後、とある米映画を思い出しましたね。世相を表してもいます。
 次点が「パンドラ」。5つの収録短編中、展開的には最も落ち着いている(地味?)と言えますが、深く考えさせられる作品でした。
 他の3作品「惨者面談」、「ヤリモク」、「三角奸計」は、水準級といったところ。結末が想定しやすい面もあったかな。

No.4 6点 HORNET 2022/09/11 18:08
 アルバイトで家庭教師の派遣サービスに従事する大学生が営業先で感じた家族の異変(「惨者面談」)。精子提供がもたらした15年後の真実に驚愕(「パンドラ」)。学生時代の親友とのリモート飲み会中、その一人が「今からあいつを殺しに行く」と席を立つ(「三角奸計」)。子供が4人しかいない離島で、スマートフォンに初めて触れた子どもたち(「#拡散希望」)。

 「惨者面談」「ヤリモク」「三角奸計」は、おおよその仕掛けが読めるし、予想通り。読む分には面白い、普通作。
 着想が面白く、秀逸だったのは「パンドラ」。その動機には唸らされたし、ラストの締め方も絶妙。
 「#拡散希望」は既読だったが、本作品集の中ではやはり光る。

No.3 7点 sophia 2022/09/01 00:38
ネタバレあり

●惨者面談 7点
●ヤリモク 6点
●パンドラ 6点
●三角奸計 7点
●#拡散希望 7点

現代の世相を取り入れたダークな短編集。決して面白くないわけではないのですが、何となく展開が読めてしまう作品が多いです。「三角奸計」は一見傑作のように思えたのですが、知っているかどうかの確認ならば名前を出したり写真を送ったりしない方がよかったのではないかと思い減点。「#拡散希望」は映画「トゥルーマン・ショー」を思い出しましたね。この短編集の中では一番意外性があったのですが、アリバイトリックの粗さで減点。全体的なことを言うと、マッチングアプリやSNSやリモート飲み会やYouTubeなどインターネットに関するものが多い点、さらに5作品全てが現在と過去を織り交ぜる構成なので、もっとバリエーションが欲しかったところです。

No.2 8点 メルカトル 2022/07/28 22:33
家庭教師の派遣サービス業に従事する大学生が、とある家族の異変に気がついて……(「惨者面談」)。不妊に悩む夫婦がようやく授かった我が子。しかしそこへ「あなたの精子提供によって生まれた子供です」と名乗る別の〈娘〉が現れたことから予想外の真実が明らかになる(「パンドラ」)。子供が4人しかいない島で、僕らはiPhoneを手に入れ「ゆーちゅーばー」になることにした。でも、ある事件を境に島のひとびとがやけによそよそしくなっていって……(「#拡散希望」)など、昨年「#拡散希望」が第74回日本推理作家協会賞を受賞。そして今年、第22回本格ミステリ大賞にノミネートされるなど、いま話題沸騰中の著者による、現代日本の〈いま〉とミステリの技巧が見事に融合した珠玉の5篇を収録。
Amazon内容紹介より。

Amazonで品切れと入荷を繰り返しながらも、ここのところミステリ小説部門でベストセラー1位を続けている本作。なかなか古書でも定価で入手するのが困難な状況の中、隙を突きどさくさに紛れて定価でゲットした新品。読むなら今しかないでしょと早速読んでみる。
面白い、面白過ぎる。
普通の本格ミステリ、イヤミス、サスペンスと思って読むとどこか違和感を覚えます。何かが違う、これまでにない新しい小説のような気もしてきます。

ストーリー自体は違和感を覚えるものの比較的真っ当に思えますが、真相が明らかになるまで読まされていたものは実は事件の裏から見たものだったみたいな感覚です。それが引っ繰り返り、表の姿を現すと云う物語がほとんどです。それを俗に言うどんでん返しであるとするならば、本作品集はその見本の様なものと言えます。『パンドラ』だけはやや読後がモヤモヤするものの、他は見事にやられました。意外過ぎる動機であったり、世界が反転する瞬間を目の当たりにするのが快感に変わります。テクニカルな傑作だと思います。

No.1 7点 文生 2022/07/21 21:20
前半で伏線を張り巡らせて後半でどんでん返し及び仕掛けの解説をしていくスタイルの短編集。
まず最初の「惨者面談」は比較的真相を予想しやすいものの、シチュエーションの異様さにぞっとさせられます。その後もテンポの良いサスペンス展開や二段構えのどんでん返しなどで楽しませてくれますが、なかでも白眉なのは最後の「#拡散希望」です。離島で暮らす4人の小学生の物語が根底から覆される壮大などんでん返しに驚かされました。

ただ、どの作品も真相自体にリアリティはあまりないのでどちらかといえば、一種の寓話だと思って楽しむのがベターです。


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