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[ 短編集(分類不能) ]
#真相をお話しします
結城真一郎 出版月: 2022年06月 平均: 7.00点 書評数: 9件

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新潮社
2022年06月

No.9 7点 パメル 2024/02/03 19:28
不気味な雰囲気と違和感で何かがおかしい、というところから事態が進んでいき驚愕の真実が明らかになる、現代ならではの事象を織り込んだ5編からなる短編集。
「惨者面談」家庭教師・片桐が、新たな顧客宅を訪問した時、最初は普通の主婦とその息子に見えたのだが。その後、会話が嚙み合わなくなり違和感を覚える。いくつもの不自然さを読み解いた果てに現れる真相に驚かされた。
「ヤリモク」マッチングアプリがもたらす危険な出会いを描く。何だか上手くいきすぎている気が。ミステリとして今ひとつ。
「パンドラ」娘の真夏から、連続幼女誘拐事件の犯人の顔に似ていると言われる。ある日、自分が精子提供した女性が生んだ我が子から衝撃のメールが。不妊治療の結果から、ある真実が明かされる。知らない方が幸せなこともあるという、タイトル通り開けてはいけないパンドラの箱そのもの。
「三角奸計」東京に住む「僕」桐山と関西在住の茂木と宇治原は、久しぶりにリモート飲み会を開くが。二時間後には、友人の殺意を聞かされ意外な結末に至る。ある人物が行った作戦が見事で、背筋がゾッとする。まんまと騙された。
「#拡散希望」現代文明から遠ざかった離島で、4人の小学生がYou Tubeに目覚めるが。現代らしい事物を題材にしつつ、土台にあるのはあくまでも人と人との関係。やがて浮上する隠されていた関係。動画共有サービスが普及する前には存在しなかった動機で、現実的に十分ありそうな残酷なクライマックスに衝撃。社会批判を織り込んだ意欲作。
いずれも限定的な人間関係がモチーフとなっており、語り手が自分の置かれた状況に違和感を覚え、真実を知ろうとする。その真相を開示していく過程が読ませる。

No.8 6点 蟷螂の斧 2023/03/28 12:40
①惨者面談 5点 家庭教師の営業で母親と子供に会う約束であったが、二人の様子が不自然・・・ネズミ算の答え110
②ヤリモク 5点 娘がマッチングアプリでパパ活をしているのではないか?そういう父親はマッチングアプリで女性と会うことをやめられない・・・動機
③パンドラ 7点 昔、精子提供した。その子供が真の父親を捜しに訪ねてきた・・・血液型
④三角奸計 5点 大学時代の友人3人(A、B、C)が5年ぶりにリモートで飲み会を開く。Aの恋人がBと浮気をしている。Aは、これからBを殺しに行くという・・・偽名
⑤#拡散希望 8点 離島にやって来たモヒカン男が殺された。ユーチューブに関連しているようだ・・・人気ユーチューバー

No.7 7点 みりん 2023/03/22 04:13
惨者面談 8点
殺リモク 7点
パンドラ 6点
三角奸計 7点
拡散希望 7点

いかにも現代という感じの短編集でハズレがない。ただ、5作品とも何か読み味(読後感?)が似ているので読み進めるたびに少しずつ驚きは薄れるかもしれません。そのせいか惨者面談が1番面白く感じた。タイトルは三角奸計が1番好きで次点で殺リモク。

No.6 8点 人並由真 2023/03/11 10:55
(ネタバレなし)
 あの食えない長編『救国ゲーム』の作者で、しかもその下馬評の高さから、どんだけ破格のものを読まされるかと思っていたが、各編とも普通の(?)短編ミステリであった。ちょっと安心。

 中~高レベルの作品がそろい踏みで、評点は7点の上かなと思いきや、最後の「#拡散希望」が真相の強烈さ、細部の詰め方のうまさ、そしてクロージングの締め方で頭ひとつ抜けている。
 収録作のどれかが、日本推理作家協会の短編賞なんだよなとは、うっすら覚えていたが、一冊読了後に、やっぱこれ(「#拡散希望」)か、と確認して納得。

 二年に一冊ぐらいの割合で、このレベルの短編集を読ませてもらえたら幸福である。

No.5 7点 まさむね 2022/11/26 21:58
 マイベストは、日本推理作家協会賞短編部門を受賞した「#拡散希望」。読後、とある米映画を思い出しましたね。世相を表してもいます。
 次点が「パンドラ」。5つの収録短編中、展開的には最も落ち着いている(地味?)と言えますが、深く考えさせられる作品でした。
 他の3作品「惨者面談」、「ヤリモク」、「三角奸計」は、水準級といったところ。結末が想定しやすい面もあったかな。

No.4 6点 HORNET 2022/09/11 18:08
 アルバイトで家庭教師の派遣サービスに従事する大学生が営業先で感じた家族の異変(「惨者面談」)。精子提供がもたらした15年後の真実に驚愕(「パンドラ」)。学生時代の親友とのリモート飲み会中、その一人が「今からあいつを殺しに行く」と席を立つ(「三角奸計」)。子供が4人しかいない離島で、スマートフォンに初めて触れた子どもたち(「#拡散希望」)。

 「惨者面談」「ヤリモク」「三角奸計」は、おおよその仕掛けが読めるし、予想通り。読む分には面白い、普通作。
 着想が面白く、秀逸だったのは「パンドラ」。その動機には唸らされたし、ラストの締め方も絶妙。
 「#拡散希望」は既読だったが、本作品集の中ではやはり光る。

No.3 7点 sophia 2022/09/01 00:38
ネタバレあり

●惨者面談 7点
●ヤリモク 6点
●パンドラ 6点
●三角奸計 7点
●#拡散希望 7点

現代の世相を取り入れたダークな短編集。決して面白くないわけではないのですが、何となく展開が読めてしまう作品が多いです。「三角奸計」は一見傑作のように思えたのですが、知っているかどうかの確認ならば名前を出したり写真を送ったりしない方がよかったのではないかと思い減点。「#拡散希望」は映画「トゥルーマン・ショー」を思い出しましたね。この短編集の中では一番意外性があったのですが、アリバイトリックの粗さで減点。全体的なことを言うと、マッチングアプリやSNSやリモート飲み会やYouTubeなどインターネットに関するものが多い点、さらに5作品全てが現在と過去を織り交ぜる構成なので、もっとバリエーションが欲しかったところです。

No.2 8点 メルカトル 2022/07/28 22:33
家庭教師の派遣サービス業に従事する大学生が、とある家族の異変に気がついて……(「惨者面談」)。不妊に悩む夫婦がようやく授かった我が子。しかしそこへ「あなたの精子提供によって生まれた子供です」と名乗る別の〈娘〉が現れたことから予想外の真実が明らかになる(「パンドラ」)。子供が4人しかいない島で、僕らはiPhoneを手に入れ「ゆーちゅーばー」になることにした。でも、ある事件を境に島のひとびとがやけによそよそしくなっていって……(「#拡散希望」)など、昨年「#拡散希望」が第74回日本推理作家協会賞を受賞。そして今年、第22回本格ミステリ大賞にノミネートされるなど、いま話題沸騰中の著者による、現代日本の〈いま〉とミステリの技巧が見事に融合した珠玉の5篇を収録。
Amazon内容紹介より。

Amazonで品切れと入荷を繰り返しながらも、ここのところミステリ小説部門でベストセラー1位を続けている本作。なかなか古書でも定価で入手するのが困難な状況の中、隙を突きどさくさに紛れて定価でゲットした新品。読むなら今しかないでしょと早速読んでみる。
面白い、面白過ぎる。
普通の本格ミステリ、イヤミス、サスペンスと思って読むとどこか違和感を覚えます。何かが違う、これまでにない新しい小説のような気もしてきます。

ストーリー自体は違和感を覚えるものの比較的真っ当に思えますが、真相が明らかになるまで読まされていたものは実は事件の裏から見たものだったみたいな感覚です。それが引っ繰り返り、表の姿を現すと云う物語がほとんどです。それを俗に言うどんでん返しであるとするならば、本作品集はその見本の様なものと言えます。『パンドラ』だけはやや読後がモヤモヤするものの、他は見事にやられました。意外過ぎる動機であったり、世界が反転する瞬間を目の当たりにするのが快感に変わります。テクニカルな傑作だと思います。

No.1 7点 文生 2022/07/21 21:20
前半で伏線を張り巡らせて後半でどんでん返し及び仕掛けの解説をしていくスタイルの短編集。
まず最初の「惨者面談」は比較的真相を予想しやすいものの、シチュエーションの異様さにぞっとさせられます。その後もテンポの良いサスペンス展開や二段構えのどんでん返しなどで楽しませてくれますが、なかでも白眉なのは最後の「#拡散希望」です。離島で暮らす4人の小学生の物語が根底から覆される壮大などんでん返しに驚かされました。

ただ、どの作品も真相自体にリアリティはあまりないのでどちらかといえば、一種の寓話だと思って楽しむのがベターです。


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