皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格/新本格 ] プロジェクト・インソムニア |
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結城真一郎 | 出版月: 2020年07月 | 平均: 6.67点 | 書評数: 3件 |
新潮社 2020年07月 |
新潮社 2023年01月 |
No.3 | 7点 | sophia | 2024/04/17 21:11 |
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ネタバレあり
特殊な状況下のフーダニット、ハウダニットとしては出来がよかったと思いますし、真相はなかなかに強烈なインパクトがあります。ドリーマーたちが肌で感じる違和感、疑念が口の軽い蜂谷君(笑)の補強によって確信へと変わっていくサスペンス構図も上手いです。ただし、ある人物の「××が欲しい」がやはり不自然で受け入れ難い。それを手に入れてどうするのよ、という。クライマックスに主人公が陥る「夢なのか、現実なのか」の板挟みを作り出すためだけの布石に思えます。それから全編を通して文章がやや読みにくい。世界観の難しさを差し引いても情景描写があまり上手くないと感じました。 |
No.2 | 7点 | メルカトル | 2023/02/04 22:52 |
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睡眠障害(ナルコレプシー)のせいで失業した蝶野は、極秘人体実験「プロジェクト・インソムニア」の被験者となる。極小チップを脳内に埋め込み、”夢の世界(ユメトピア)”を90日間共有するという実験だ。願望を自在に具現化できる理想郷は、ある悪意の出現によって恐怖と猜疑に満ちた悪夢へと一変する。口径の合わない銃弾の謎。次々と消えてゆく被験者たち・・・・・・はたして連続殺人鬼の正体はーー。大胆な伏線が鮮やかに回収され、超絶どんでん返しの末に現れる驚愕の真相に、涙が落ちる。一気読み必至! 最注目の新鋭作家による、大満足の長編ミステリー。
Amazon内容紹介より。 夢の中で殺されると現実でも死ぬという都市伝説を、丸ごと取り込んだ特殊設定の本格ミステリ。またまた新手の設定が出ましたよ。あまり期待してませんでしたが、読み進めるほどに面白くなります。中盤までは夢の中ならではの妙な話が続き、殺人等全く無関係な雰囲気で進んでいきます。最初の事件が起きてから、それが連続する事がほのめかされ、俄然生き生きして来ます。 ユメトピアで過ごす事に関しては様々なルールがあり、それが解決編で活かされます。解決編とは言っても概ねエピローグに集約されており、最後の最後まで目が離せません。その直前に意外過ぎる事実が明かされ、衝撃が冷めやらぬうちに更に追い打ちを掛ける様に読者を翻弄します。ちょっとややこしい感もなくはないですが、読み終われば充実、そして納得の一冊でした。 |
No.1 | 6点 | パメル | 2023/01/16 08:24 |
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もしも同じ夢を他人と共有できたのならば。そんな「もし」が実現する異世界を舞台に、緻密に築き上げたフーダニットと独創的なホワイダニットで魅せられる。
主人公の蝶野恭平は、突発的に睡魔に襲われ眠ってしまうナルコレプシーと呼ばれる疾患を持っている青年。蝶野は、夢に関する研究開発を行うソムニウム社に勤める友人の蜂谷から、「プロジェクト・インソムニア」という実験に参加してほしいと頼まれる。実験とは、夢の中で複数の人々と共同生活を送り、起床時に夢で起こったことを報告するというもの。被験者の頭部にチップを埋め込み、同期した脳波データを演算し信号を送ることで、夢の世界を共有できるというのだ。 人々を幸せにするはずの夢の空間で事件が起こり、次々と追い詰められていく参加者たち。その謎を解くためには「プロジェクト・インソムニア」に仕組まれた様々なルールを知り、ひとつひとつパズルのピースを当てはめるように整理しなくてはならない。中にはルールを知ることで、却って謎が深まるといった展開もある。夢の中での推理は、そう一筋縄ではいかないものになっているのだ。 本書の最大の読みどころは、フーダニットとホワイダニットの二段構えの謎が解き明かされる解決編でしょう。まず、はたと膝を打つのは犯人を特定に至るまでの流麗なロジック。(ユメトピア)内に設定されたルールは先ほども記した通り非常に細かく、かつ複雑なため真相に到達するまでの道のりは一見すると困難に思われる。しかし事件解決への突破口は、散りばめられた手掛かりの量に比して、実にシンプルなものなのだ。こんがらがった糸が容易くほどけるような、明快な謎解き場面が美点の一つである。 更に驚嘆するのは、フーダニットを超えた先にあるホワイダニットの解明。ここで明かされる動機を読めば、まずは誰もが「狂っている」という感想を抱くだろう。しかし、小説内における設定を前提に考えれば、実に理路整然とした、しかも切実な思いに裏打ちされた動機であることが分かるはず。まさに「夢を他人と共有できる」という特殊設定があるからこそ描ける、前代未聞のホワイダニットがこの作品の核をなすと言っていいでしょう。 |