皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格/新本格 ] 名もなき星の哀歌 |
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結城真一郎 | 出版月: 2019年01月 | 平均: 5.33点 | 書評数: 3件 |
![]() 新潮社 2019年01月 |
![]() 新潮社 2021年09月 |
No.3 | 4点 | 虫暮部 | 2025/06/06 15:03 |
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そもそもの基本設定が妙な雰囲気。あんな香水シュッ、みたいなので記憶の売買云々と言われて真に受けるか? 単なる催眠術だとか疑わない? 真に受けるなら受けるで、記憶を好き勝手にいじられない保証が無い。ヤクなら非合法なりに継続的な取引の為の信頼関係は成立し得るけど、本作は客が圧倒的に不利。
いや、不自然な状況でも作品世界として説得力があれば良いのだが、非常にぎこちなく感じた。幻想風味は皆無であって、本格ミステリの硬いロジックの世界観に、あの店だけが異物として唐突に投げ込まれている感じ。プロットに合わせてルールを都合良く継ぎ接ぎしていてズルい。 更に、主人公二人の行動原理、延いては物語の展開が好きになれない。後半で反転するかと期待したがそれ程でもない。私には合わなかったと言うことで。 |
No.2 | 6点 | びーじぇー | 2024/09/22 21:27 |
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記憶の取引というファンタジー設定を軸に意外性に富んだ物語が楽しめる。銀行員の良平と漫画家を目指す健太は、あるきっかけから記憶の売買を商売とする「店」の従業員として働くことになる。お客から記憶を買い取り、別の客に転売することで「店」は利益を得る仕組みとなっている。
三年以内に一千万円の報酬を手にすることをノルマとして課せられ裏稼業に奔走する日々の中で、健太が良平に店に内緒で探偵業をすることを持ち掛けることから物語が動き出す。彼らは手始めに神出鬼没の女性ストリートシンガー星名の代表曲に登場する探し人「ナイト」を実在の人物であると察し、それを見つけることを目指す。良平と健太は店にある記憶のデータから彼女の過去を探り、続いて星名と接触をすることに成功し、少しずつ「ナイト」に迫っていくのだが、良平のもとに警告文が届く。 まさに謎が謎を呼ぶ物語。オーソドックスな人捜しが記憶の操作という不安定な条件の投下によって複雑化し、サスペンスと謎の度合いが増していく。記憶の断片の数々が繋がり、さらに作者が用意した一捻りによって、あらゆる真実が明らかになる最終局面の美しさが強い余韻となって心に残る。 |
No.1 | 6点 | いいちこ | 2023/05/15 13:58 |
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人間のアイデンティティは記憶にこそ存在するという着眼点は鋭い。
ただ、記憶を保管・分離・削除・共有・移植することが可能という設定では、どれほど荒唐無稽な話でも成立してしまうから、却ってサプライズを演出しようがない。 いや、それ以前に、そもそも本作の各描写が現実に発生している出来事なのか、誰かの記憶なのかさえ、区別が付かないという強烈な副作用を生じてしまっている。 ファンタジー・ライトノベルとしては水準を超える作品であり、6点の最下層と評価する。 ただ、本作はミステリとしては評価できないし、そもそもミステリとはいえないのではないか |