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[ 本格 ]
緑は危険
コックリル警部シリーズ
クリスチアナ・ブランド 出版月: 1958年06月 平均: 7.28点 書評数: 18件

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早川書房
1958年06月

早川書房
1978年07月

No.18 6点 ことは 2021/08/09 12:51
ブランドの作では色々な仮説が繰り出される。後年の作では、それは「どうやったか」も含めた仮設のため、仮説毎におおきく事件の様相が変わっていた。本作でも後半に色々な仮説が繰り出されるが、動機に関しての仮説の構築が主のため、後年の作ほどのダイナミックさは感じられない。
また、(やはりこれは視点の問題が大きいと思うのだが)キャラクターの立て方がいまひとつに見えるので、愛憎劇の部分はそれほど楽しめなかった。
中盤の手術のシーンや、最終場面のコックリルの行動が引き起こす結果など、面白いシーンもあるが、この後の傑作群へステップアップする前段階の作品と感じた。

No.17 6点 クリスティ再読 2019/11/27 21:47
戦時下の軍用病院でのこと、空襲で被災した救護団員の老人が手術台の上で死んだ。続いて手術室付シスターが他殺体で見つかるなど、この病院に姿なき殺人者が跳梁する。応集された医師たちと篤志看護婦たちに容疑が絞られるが、コックリル警部の推理は?
という話。そういえばクリスティでも戦時色の強い「満潮に乗って」とか自身の篤志看護婦歴が反映した「愛の旋律」とかあるから、まさに「クリスティの後継者」風の作品...かもしれないがね、クリスティだとロマン溢れる「読ませる小説」になる部分が、ブランドだとガチの地味パズラーになるあたり、クリスティっぽいというよりクイーンっぽい。これ実際には推理してアテるのは、飛躍した連想が必要だから、大変な部類だと思うよ。
そうしてみると、クリスティって結構パズルを捨てて「キャラの謎」みたいなあたりに絞ってミステリを組み立ててるようにも思うな。軽いユーモア感(男前なウッズ看護婦がいい)はあっても、ああいキャラ造形は本作ではない。まあそれでも、中盤の手術でのあわや!がなかなかサスペンシフル。凶器はまあ見当つくけど、コックリルが立ち会いながらも危機一髪なんだから、警察官としてはミステーク。でも盛り上がるなら、いいじゃないか。

No.16 6点 レッドキング 2019/03/13 22:27
ボンベの気体の中身入替えトリックよりも、偽悪的な四十がらみ看護師のラストシーンが素晴らしい。「醜い顔」なのにモテる医者やマザコンの看護師娘、マヌケに一本取られる名探偵なんか出てきて、凄いミステリではないが、良い小説だ。

No.15 6点 ALFA 2017/03/17 09:56
陸軍病院という閉じられた空間、限られた登場人物、そして次々に起こる殺人と殺人未遂。
申し分ない本格派ミステリの骨格を持った長編である。にもかかわらず読後の感想は「うーん長い!」であった。
実際には300P(ハヤカワ)だからそれほどの尺ではない。長く感じるのは、最初の殺人が起こるまでと後半の容疑者六人が軟禁される場面。この両方で全体の半分を占める。
特に後半、読者としては六人が軟禁されてお互いが疑心暗鬼になり、じわじわと真相が見えてくるスリルを味わいたいところだが、そうはならない。お互いに遠慮しながらの推理合戦でそこに真相はないことが見えてしまう。そして真相は突然外(警部)からやってくる。直前に荒っぽいミスリーディングを伴って。
四つの事件の関連性、巧みな伏線、複数のミスリーディングなどが精緻に組み立てられているから、フーダニットを最重視する読み手には満足感は大きいだろう。しかし私には高性能のエンジンとシャシーに大きすぎるボディを乗せた車みたいに思えた。前半と終盤をコンパクトにしたら引き締まったいい中編になっただろう。
短編集「招かれざる客たちのビュッフェ」のような毒のある切れ味は感じられなかった。
ミステリを商品としてみた場合の不満もある。人物をその時々で、姓、名、ニックネームで呼び変えるのは不親切である。英語のネイティブはこれでも煩雑ではないのだろうか。もちろん原文がそうなっているのだろうが、ここは訳者の裁量でファーストネームとフルネームくらいに統一できなかったものか。

No.14 9点 青い車 2016/10/05 00:48
 面白い。文章はやはり改行が少なくて読みづらいのが難点です。しかし、舞台と犯行方法のマッチ、動機に関するミスリード、フーダニットの魅力と、考察するほどに冴えたテクニックが満載だとわかる作品になっています。不必要に長くせず引き締まった印象のプロットも最高の部類です。有栖川氏の言うように、もし著作がもっと多かったなら、クイーン、アガサ、カー、クロフツなどと肩を並べられる大家になった作家かもしれません。

No.13 7点 りゅうぐうのつかい 2016/05/24 15:50
登場人物は限られており、冒頭で7人の中に犯人がいることが宣言されている、パズラー小説。
この7人と患者1人との間の恋愛模様を織り交ぜながら、2つの殺人事件と2つの殺人未遂事件が発生する。
犯行の可能性、殺人の方法や動機など、それぞれに工夫が凝らされている。
2つ目の殺人事件で、被害者が二回刺されていた理由、手術着を着せられていた理由の真相が面白いし、3つ目の殺人未遂事件の動機も面白い。
しかしながら、1つ目の殺人事件と4つ目の殺人未遂事件における手術中の殺人トリックだが、このような方法が実現可能かどうかを、読者には判断できない。
この方法がわかって初めて、誰が犯行を行いえたかを考えることができ、2つ目の殺人事件における「二回刺されていた理由」も説明できるので、読者には最後の方まで推理ができない。
また、犯行動機は登場人物の過去に根差しているのだが、そのつながりが直接的には書かれていないので、想像力が必要。
読者がこの真相を推理するのには、相当な推理力が必要ではないだろうか。
コックリルの捜査だが、容疑者を隔離しての焦らし戦術であり、事件に対する議論が不足しているのが不満。

No.12 7点 斎藤警部 2015/12/10 13:59
この人のユーモアセンスは相性が良くて大好きだが、本作はユーモアに比重が掛かり過ぎ。都会の野戦病院における中年男女達のグダグダ恋愛模様がなかなかにうざたぁい。真相解明もロジック偏重でスリルに欠けるな。。でも嫌いじゃありません。特筆すべきはやはりその、極めてリアリスティックに死と隣り合わせの舞台設定(しかも容疑者達は殺人と裏表の医療行為を続ける!)で論理ずくミステリを書き切った事か。

No.11 9点 ロマン 2015/10/20 14:08
手術の最中に死んだ郵便配達夫、その事情を知っていた看護師の殺害──メスによる第一の刺傷で即死であったにもかかわらず、なぜ犯人は被害者に手術着を着せて、もう一度刺したのか…。中盤を過ぎたあたりで巧妙なトリックはコックリル警部によって解明される。が、そこから「限定された容疑者たち」が犯行についてディスカッションをし、様々な仮説が飛び交い、それらが否定され、二転三転するブランドならではの展開に──コックリルは容疑者たちに心理戦を仕掛ける、が、それが「容疑者たちの絆」を生じさせ、思いもよらぬ結末へ。傑作。

No.10 6点 ボナンザ 2014/04/08 21:39
ブランドの最高傑作と名高い名作。
コックリルがいつになく頼りない。

No.9 5点 蟷螂の斧 2013/04/21 19:26
ハヤカワミステリーの裏表紙は、4分の3くらい読み進んだ第3の事件の概要が記載されているので注意が必要ですね。翻訳ものでのわかりにくさ(特に人物名~姓、名、ニックネームで記載)があり、読みにくいです。前半での人間関係もわかりにくい。そんなわけで、メモを取りながらの読書となってしまい、あまり集中できませんでした。正統派のミステリーという感じはしますが、特に唸るようなものはありませんでした。

No.8 8点 ミステリーオタク 2012/09/04 23:14
まとまりがいい

No.7 7点 あびびび 2012/04/14 18:20
最初は読むのをやめようかと思うほど重々しい流れだったが、中盤から輪郭がはっきりしてきて、ゾクゾクする展開になった。

トリックについてはほとんどあれしかないと思っていたが、全体的に良くできたミステリーの見本のような小説だった。後半はクリスティを読んでいるような気がした。

No.6 7点 E-BANKER 2012/04/07 21:23
本格ミステリー黄金世代を継承したC.ブランドの長編代表作。
戦時下の野戦病院を舞台に、コックリル警部が探偵役として登場、真犯人を見事解き明かす。

~ヘロンズ・パーク陸軍病院には、戦火を浴びた負傷者が次々と運び込まれていた。郵便配達人のヒギンズもその1人だった。3人の医師のもと、彼の手術はすぐ終わると思えた。だが、患者は喘ぎだし、まもなく死んでしまう。しかも彼は殺されていたのだ! なぜ、こんな奇妙な場所で、一介の郵便配達人は死を迎えることになったのか。「ケントの恐怖」の異名をとるコックリル警部登場。黄金期の探偵小説の伝統を正統に受け継ぐ傑作本格ミステリー~

さすがに評判どおり、端正なパズラーという印象が残った。
「戦時下の野戦病院」という舞台設定のためか、全体的に重々しく暗い雰囲気が漂い、独特の読み心地を感じた。
医療ミステリーの“はしり”なのかもしれないが、それほどの医療知識は不要であり、純粋に「犯人当て」が楽しめる。
特に、第2の殺人で、「被害者が手術着を着ていた」謎を解き明かすロジックが見事。
ある医療用具を使ったトリックとの連動であり、それが連続殺人の動機にもつながっていて、本作の「肝」と言える。

ただ、トリックを解き明かした後の真犯人の絞り込みについては、何となくモヤモヤ感が残った。
コックリルの説明が今一つのためかもしれないが、故意に「ある人物」を真犯人に誤認させる(ミスディレクション)手口があからさますぎる気が・・・
(まぁ、好みの問題かもしれないが)

でも、完成度としてはやはり秀逸な本格ミステリー。「古き良きミステリー」を堪能できる1冊なのは確かでしょう。
(訳がせいか、ちょっと読みにくさを感じた)

No.5 9点 monya 2011/02/05 14:25
ブランド長編初体験で読みました。
「招かれざる客たちのビュッフェ」の各作品のような毒はそこまで強くは出ておらず、殺人が起こってからはディスカッションが中心です。
伏線、ミスディレクションの張り方が実に鮮やかです。
最後に明かされる犯人当ては、一言だけで犯人に辿り着く簡潔さ!
それなのに、私はミスディレクションに見事にひっかかってしまい、犯人を当てるにはいたりませんでした。
クイーンを継ぐ、正統派本格ミステリですね

No.4 9点 2010/09/10 21:34
初めて読んだブランドであるだけに思い入れのある作品です。
今回再読してみると、改行のない文章がかなり続くこともあり、郵便配達人が手術室で死ぬまでの50ページぐらいはクリスティーに比べると退屈な感じがします。しかし、その最初の部分にも実は伏線が散りばめられています。
事件が起こってからは、殺害方法不明の謎から奇妙なところのある第2の殺人へと、パズラーとしての興味がじわじわ広がっていきます。戦時下の陸軍病院であることを生かしたストーリー展開も巧妙です。
殺害方法が明らかになった後終盤に入ってからは、もう端正さなど蹴散らすようなミスディレクション大盤振る舞いに目を回されっぱなし。犯人指摘で容疑者たちを翻弄したコックリル警部が真相説明後に逆に容疑者たちから食らうカウンター・パンチも強烈。本作には途方もない「はなれわざ」こそありませんが、論理性に裏打ちされた連続技の切れ味は抜群です。

No.3 7点 kanamori 2010/08/05 21:19
戦時下の野戦病院を舞台にした本格ミステリ。
派手なトリックはありませんが、限られた容疑者の中から犯人を当てる端正なフーダニットでした。
代表作の「ジョゼベルの死」などと比べて、アクの強いところがないので、ブランドの入門書に最適だと思います。

No.2 10点 nukkam 2009/01/21 09:18
(ネタバレなしです) 1944年発表のコックリル警部シリーズ第2作で、凄いトリックがあるわけではありませんが本格派推理小説の王道的作品として文句なしの傑作だと思います。戦時下という緊張した時代背景とミステリーとしてのサスペンスを巧みに融合し、そこに個性的な登場人物の織り成す人間模様やしっかりとした謎解きが織り込まれているのですから。デビュー作の「ハイヒールの死」(1941年)、コックリル警部シリーズ第1作の「切られた首」(1941年)では普通の本格派作家という印象だったブランドがいい意味で「大化けした」作品だと思います。

No.1 7点 こう 2008/04/24 00:32
 丹精な犯人あて小説です。大掛かりなトリックはありませんが普通に面白いと思います。かなり古いですが読みにくくはないです。


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