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ミステリの祭典

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青い車さんの登録情報
平均点:6.93点 書評数:483件

プロフィール| 書評

No.383 8点 猫丸先輩の推測
倉知淳
(2018/12/04 18:02登録)
 表題通り猫丸先輩が行うのは確たる証拠はないので推理というより推測に近いもの。しかし、予想の斜め上を行くロジックの転がせ方はどれも面白く、それでいて妙に納得させてしまうあたり日常系ミステリとしてはかなりの水準にあります。特に『夜届く』は粗がないわけではないですが、視点の変換による解決が鮮やかで隠れた名編です。ほんわかした挿絵も良し。


No.382 5点 玩具店の英雄 座間味くんの推理
石持浅海
(2018/12/04 17:50登録)
 前作『心臓と左手』より明らかに落ちるのは他の方の書評と概ね同じ意見です。個人の見解ですが、石持作品の文章は普通以上に上手いと思うのに何故か引き込まれるものがありません。連作の形式が「マンネリ」という悪い方向に作用してるのも、この文章の問題が大きいのではないでしょうか。


No.381 7点 皇帝と拳銃と
倉知淳
(2018/11/29 21:39登録)
 まさか倉知淳氏による倒叙ものが読めるとは。いちばん好みなのは最初の『運命の銀輪』で、犯人にとって落とし穴になる証拠は完全に盲点でした。犯人の設定「相棒の実力で地位を得ているが、その相棒が独立をしたがり、自分の作家としての無能さの露見を恐れて殺害する。性格は傲慢で虚栄心が強い」を書き出すとまんまコロンボの『構想の死角』で、そこも含めて面白いです。逆に『恋人たちの汀』は細かい科学捜査で解明されるトリックなのが完成度は別として嗜好に合いませんでした。


No.380 6点 幻獣遁走曲 猫丸先輩のアルバイト探偵ノート
倉知淳
(2018/11/29 21:19登録)
 他の猫丸先輩短編集と比べるともう一つなのは否めないものの、嫌みのない文体とユーモア、そして魅力的なキャラで十分読ませる本になっています。『たたかえ、よりきり仮面』をはじめ、ほのぼのしたオチが多めで好き。


No.379 8点 九人と死で十人だ
カーター・ディクスン
(2018/11/27 21:12登録)
 シャープに仕上がった小品という感じ。不可解な殺人事件が犯人の仕掛けた単純なトリックを軸に展開されており、そのトリックが暴かれることで全てが無理なく収束されます。肝心の○○の偽造が上手くいくかは意見が分かれるようですが、そこに目を瞑れば完成度はかなり高いです。


No.378 5点 白い僧院の殺人
カーター・ディクスン
(2018/11/27 20:51登録)
 人物の行動が理に適っていて良くできてはいるのですが、個人的には強引にでも驚かせるような作品を書くカーの方が好きです。また、注釈が付いている伏線があまりにも細かすぎて読者にはまず気付けません。厳しめの5点。


No.377 6点 数奇にして模型
森博嗣
(2018/11/27 20:27登録)
 シリーズ9作目ともなると癖のあるキャラクターに慣れが出てきて、犀川創平の思考や発言にも抵抗なく付き合えるようになってきました。今回も(これまでの作品同様に)内容に対して分量が多すぎる気もしますが、裏の裏をかいたような真相や狂気的な犯人像は十分なインパクトをもたらします。冷静に考えればけっこうショッキングな事件なのに冷たい論理パズルのような要領で解決される様は森ミステリらしい所です。


No.376 7点 アリア系銀河鉄道
柄刀一
(2018/11/27 20:12登録)
 ボーナス・トラックを除く4編について一言ずつ。
①『言語と密室のコンポジション』 本来ならオマケになるはずの言葉遊びを密室トリックそのものに持ち込んだのが秀逸。
②『ノアの隣』 スケールのでかい発想が光る佳作。
③『探偵の匣』 もっともオーソドックスな一編かと思わせてラストに一捻りあって面白い。
④『アリア系銀河鉄道』 宇宙を話に上手く絡めていて表題作にして連作の締めにふさわしい内容。

 他の方もおっしゃるとおり柄刀一は文章が読みづらい作家ですが、頑なに我が道を行く一途さには好感が持てるのでもっと評価されて欲しいです。


No.375 6点 探偵さえいなければ
東川篤哉
(2018/11/27 02:32登録)
 『ゆるキャラはなぜ殺される』が快作です。ユーモア・ミステリならではの状況設定、鵜飼と剣崎マイカによる手を抜かない謎解き、意外なオチと東川短編屈指の出来ではないでしょうか。その他の話も気軽に肩をこらさず読める作者らしいものが揃っています。


No.374 9点 悪魔の手毬唄
横溝正史
(2018/11/27 02:22登録)
 横溝正史の真骨頂が出た傑作。見立て殺人、消えた男の謎、犯人側のドラマなど読者を引きつけるポイントが多いです。そして、まさに映像化向きの名シーンが数多いのも特徴と言えると思います。登場人物が多すぎて整理が大変なきらいがあるのだけが欠点。


No.373 2点 ミステリー・アリーナ
深水黎一郎
(2018/11/27 02:08登録)
 本ミス1位獲得など世間では好評を博した作品ですが、全くツボに嵌らず……。これまで小説の面白さなんて好み次第だし、どれにも何かしら良さがあると考え最低ラインを4点としていましたが、これはダメです。
 無味乾燥な作中作に捨てトリックの在庫一掃というのが第一の感想で、トリックの酷さも読み進めるごとにエスカレートしてただの意地悪クイズと化しています。ギャグがことごとく上滑りしているのも読んでて苦痛でした。


No.372 7点 インド倶楽部の謎
有栖川有栖
(2018/11/23 18:53登録)
 「前世」をキーワードに毛色の違う展開を見せる異色作かと思いきや、相変わらず論理への執着も忘れない安定の火村シリーズです。今回は登場人物の意外な過去を掘り出すと同時に、動機と機会に焦点を当てた推理が冴えます。思えば犯人の最大の条件は最初から書かれていた訳で、さりげなく伏線も周到な力作となっています。


No.371 9点 遠きに目ありて
天藤真
(2018/11/23 18:43登録)
 『大誘拐』に次ぐ、天藤真のもう一つの代表作。単純に完成度のみで見るならば第一話がナンバーワンですが、それ以上に最終話の幕引きの美しさが特筆ものでは?どんでん返し的な大オチではなく、こういう良い余韻を残す短編集が最近少ない気がします。


No.370 8点 キッド・ピストルズの冒瀆
山口雅也
(2018/11/22 18:46登録)
 パラレル英国で活躍するパンク族の探偵という異色設定でありながら、展開する推理は意外にも硬質です。中でも『カバは忘れない』『曲がった犯罪』では、ラストに放り込まれるキッドの鋭い台詞が強い印象を残します。馬鹿げた事件に若干のシリアスさを織り交ぜる手腕が味わえる名短編集と評価。


No.369 4点 Rのつく月には気をつけよう
石持浅海
(2018/11/22 18:34登録)
 恋愛にまつわる謎に酒と美味しいおつまみを無理なく絡めた点は面白いものの、解決の納得度(そしてそれ以上に魅力度)が低いのは大きな難点です。石持短編の悪い癖である似たような読み味ばかりで飽きが来る所、最後のサプライズが多くの読者に空振りに終わってしまったであろう所も評価しがたく、ぎりぎり5点に届かない4点とします。


No.368 6点 墓場貸します
カーター・ディクスン
(2018/11/20 18:47登録)
 人間消失ものという作者好みなテーマの一作で、奇術系な犯行が巧妙で完成度は高いです。この手の作品のパターンを抜け出せてない(どうしても○○犯じゃないとこの謎は成立しないのはわかるけど)のだけが不満。


No.367 6点 ノッキンオン・ロックドドア
青崎有吾
(2018/11/19 21:35登録)
 なんといっても表題になっている第一話に尽きます。一見バカミス的密室トリックのようでいて、その弱さを動機の妙で補強してバランスを保っているのが絶妙。このレベルの短編がもう一つ二つあれば凄かったのですが、二話目以降尻すぼみになっているのがなんとも惜しいです。シリーズを続けるとしたら、もうちょっとネタを煮詰めて欲しい所。


No.366 8点 煙の殺意
泡坂妻夫
(2018/11/19 21:19登録)
 久々の投稿です。
 いろんな味が楽しめる贅沢な短編集。作者お得意の奇妙な動機や逆説が見事に嵌った『紳士の園』『煙の殺意』『開橋式次第』を推します。特に、表題作はアイデアとしては類例があるそうですが、その扱い方の大胆さで頭ひとつ抜けてる印象。


No.365 6点 象は忘れない
アガサ・クリスティー
(2017/03/09 13:17登録)
 同じ回想の殺人をめぐる『五匹の子豚』より話題にならない本作ですが、解決編の反転の見事さはそれに劣らない質を維持しています。夫婦の心中事件と若い男女のロマンスを、雑多な感じは全くなくまとめ上げているプロットが実に巧みです。現在進行中の事件がない、しかも過去の事件は一応解決済み、という派手さのない題材を好んで使用するあたりがアガサ・クリスティーならではと言えるでしょう。また、ポアロの結びの一言が爽快で、そこも作者らしさが滲み出ています。


No.364 7点 死者のあやまち
アガサ・クリスティー
(2017/03/09 12:56登録)
 ミステリーでよく使われるふたつのトリックの合わせ技や、周到な伏線の配置とその回収によって読み手の意表を突く、アガサ・クリスティーの面目躍如の秀作です。かなり後期に書かれた作品で、新鮮味はあまりありません。しかし「彼女らしさ」は衰えを知らず、ミステリーの女王の風格を示しています。
(以下、ネタバレあり)

 この小説に対する唯一にして最大の不満は犯行動機です。クリスティーではよく出てきますが、「口封じの殺人」は怨恨、報復、狂気といった動機に比べ話が盛り上がりにくく、事件の性質上仕方ないとはいえ物足りなく感じます。

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