キッド・ピストルズの冒瀆 キッド・ピストルズシリーズ |
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作家 | 山口雅也 |
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出版日 | 1991年12月 |
平均点 | 6.64点 |
書評数 | 11人 |
No.11 | 7点 | 虫暮部 | |
(2024/11/13 12:37登録) 本格ミステリと言うスタイルのパロディ? 装飾部分を除くと、どの話もミステリ的には割と普通のアイデアだと思う(組み合わせ方は上手い)。 しかし、アイデアと装飾と、どちらがより “本質” かは一概に言えない。総合的に差別化は出来ているのでいいんじゃないの。 バンドを描いた小説には “イヤイヤそういうもんじゃないでしょ” と感じることがとても多いけれど、「パンキー・レゲエ殺人」は結構スンナリ腑に落ちた。 |
No.10 | 7点 | 蟷螂の斧 | |
(2023/06/02 06:31登録) ①「むしゃむしゃ、ごくごく」殺人事件 6点 50年間、一歩も家から出ずに、また人を入れない元女優が毒殺された。容疑者は出入りが許されている2人と元女優と仲たがいしている従妹の3人・・・おみくじクッキー(いつまでも乙女チックなんだなあ) ②カバは忘れない 6点 動物園の園長が部屋で殺され、愛玩のカバも殺されていた。Hのダイイングメッセージが残っていた・・・アフリカの呪術師(D・Mものでは初物) ③曲がった犯罪 9点 実業家が芸術家のアトリエで石膏で固められた死体となって発見された。凶器のオブジェからは曲がった硬貨が失われていた・・・ユニークな芸術論(短篇ではもったいない程の展開) ④パンキー・レゲエ殺人 7点 バンドのリーダーが殺され、その後もう一人も殺された。密室であり、見立て殺人(童謡の歌詞通りの順番)であった・・・麻薬、利腕(女刑事ピンクの弾くギターコードには笑えた) |
No.9 | 6点 | パメル | |
(2020/03/09 19:07登録) パラレルワールドの英国を舞台にした4編からなる短編集。 マザー・グースの童話の歌詞にのっとって次々と発生する奇妙な事件にパンクな刑事のキッドと相棒のピンクが挑む。作者も見た目、パンクっぽいですね。 特殊な状況設定に法則性を構築した上でのストーリー展開。全編を通して、ユニークな芸術論を繰り広げている。 4編の中では、やはり「曲がった犯罪」が良く出来ている。個性的な登場人物、曲がったもの尽くしという奇妙な謎、何気ない場面に組み込まれた伏線、悪魔的なロジック、巧妙なミスディレクションと申し分ない。 クイーンのロジックとチェスタトンの逆説を組み合わせたような作品。ただ4編を通してのトータルの点数としてはこれくらいか。 |
No.8 | 7点 | Tetchy | |
(2019/04/24 23:45登録) 全4編が収録されたキッド・ピストルズシリーズ第1作はそれぞれ毒殺、ダイイング・メッセージ、見立て殺人、密室殺人と本格ミステリの本質的なテーマを扱っている。 そしてそれぞれの短編には古典ミステリをパロディにしたネタが放り込まれており、ミステリに造詣が深ければ深いほど愉しめる内容となっている。 そんなパラレル・ワールドの英国を舞台にしたキッド・ピストルズシリーズ。 警察が堕落し、腐敗したその世界では民間の私立探偵が活躍し、<探偵士>なる称号が設立され警察より優先的に捜査を行使できるその世界は一見破天荒に思えるが実はこのパラレル・ワールドを設定することで山口氏は本格ミステリに付きまとうある不自然さを見事にクリアしているのだ。 本格ミステリにおいて最も不自然なこととはいったい何だろうか? 密室殺人?人智を超えた不可能犯罪?まだるこしいほどに手の込んだアリバイトリック? 確かにそれは不自然さを感じるだろうが、世の中には色んな人がおり、また予想もつかないことが起きるのが世の常であることを考えれば、上に挙げた内容も許容範囲だ。 では最も不自然なものとは何か? それは探偵が捜査に介入することだ。 この本格ミステリでは当たり前に起きている素人探偵や私立探偵が殺人事件を始めとする刑事事件の捜査に介入することは現実世界においてまず、ない。 従って世のミステリ作家たちは自ら創案した探偵たちを捜査に関わらせるために様々な工夫をして不自然を自然に見せることに腐心している。 難航した事件を偶々事件に関係した探偵が解決した。 警察の上層部が父親、もしくは親戚である。 警察の相談役となり、既に捜査に携わることを認められている、などなど。 しかし本書では無効化した警察の代わりに探偵士が捜査を行うという世界を設定することでその不自然さを見事にクリアしているのだ。 しかも事件を解決するのはそれら探偵士でなく、堕落した警官であるキッド・ピストルズであるというパラドックス。 つまり本来事件を解決すべき警察が、探偵が登場する本格ミステリにおいて道化役もしくは物語の進行役になっている不自然さを更に本書では探偵士ではなく道化役であるはずの警察が事件の謎を解くというあるべき姿になっているところに妙味がある。 あり得ない世界を設定したことであるべき捜査の在り方を描く。 パラドックスに満ちながら、実は正統な事件の解き方を描くことになっていることが非常に面白い。 デビュー作では死者が甦る世界における殺人事件の意義を問い、そして本書では探偵が警察よりも権威を持つパラレル英国を舞台に、しかも作者自身のあとがきによれば世界初のマザーグース・ミステリ連作シリーズを著した山口氏。 誰も書いたことのないミステリを、もしくは自分だけが想像する世界におけるミステリを書く、孤高のミステリ作家山口雅也氏は極北のミステリを目指しているが、それが結果的に純粋に本格ミステリにおいて探偵の存在を不自然にならないようになっている。 そして探偵の存在を肯定しながらその実、事件を警察に解決させるこのシリーズは山口氏独特のパラドックスに満ちた作品であると云えよう。 本格ミステリの異端児が放つミステリは異端な世界を描くことで実は至極真っ当な世界を描く、つまり―(マイナス)に―(マイナス)を掛けると+(プラス)になることを証明した作品なのだ。 かつて山口氏は本格ミステリの巨匠島田荘司氏を本格ミステリ界のボブ・ディランと称した。 それに倣って私は山口氏を本格ミステリ界のなんと称しようか。それはもうしばらく氏の作品を読んでから判断することにしよう。 |
No.7 | 8点 | 青い車 | |
(2018/11/22 18:46登録) パラレル英国で活躍するパンク族の探偵という異色設定でありながら、展開する推理は意外にも硬質です。中でも『カバは忘れない』『曲がった犯罪』では、ラストに放り込まれるキッドの鋭い台詞が強い印象を残します。馬鹿げた事件に若干のシリアスさを織り交ぜる手腕が味わえる名短編集と評価。 |
No.6 | 9点 | monya | |
(2011/02/22 17:41登録) ミステリ史に残すべき傑作短編集だと思うのだが、どうにも評価が分かれていますねー ロジックでガンガン推し進めていくタイプのミステリ。 探偵役のキッドはパンク族ですが、物凄いロジカルな思考をしています 特に「曲がった部屋」は伏線、論理思考、キャラクターまで含めて完璧といっていい出来の短編でしょう |
No.5 | 3点 | ぷねうま | |
(2007/09/19 16:09登録) マザーグースに造詣が深かったらもっと楽しめるんだろうか。でも自分が知らないにしても全てこじつけに感じる。探偵士の設定もこの作品に関してはいらない。どの短編もアガサ・クリスティの足元にも及ばない感じ。 |
No.4 | 5点 | Dain | |
(2005/02/13 23:14登録) よく出来た短編集だとは思うんですが、なんとなく引き込まれないんですよねぇ・・・「生ける屍の死」の時もそうでしたけど。 |
No.3 | 4点 | バファックス | |
(2004/07/03 03:39登録) ぱんくだとかいってるけどどこがぱんくなんだ?しゃべくりはまともなじぇんとるまんにしかきこえなかったぞ |
No.2 | 9点 | ギザじゅう | |
(2004/06/13 13:54登録) マザーグース・ミステリというだけで、本格心がくすぐられてしまう。それほど魅力的なテーマなのに、作例があまり多くないのはクリスティ等々の先人達への遠慮だろうか? それはさておき、これが傑作であることは間違いない。 まさにパラレル英国を舞台にした論理と逆説のワンダーランド!中でも「曲がった犯罪」の論理性には瞠目した。 この異様な舞台だけでなく、山口雅也の個性がしっかりと出せている。 |
No.1 | 8点 | フレディ | |
(2002/05/15 15:45登録) 実に山口雅也らしい連作短編集。設定、登場人物、ストーリー全部楽しい。でも好き嫌いは分かれそう。「生ける屍の死」が好きでない人は、やはり楽しめないと思う。 |