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ミステリの祭典

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monyaさんの登録情報
平均点:7.61点 書評数:28件

プロフィール| 書評

No.28 6点 ノックス・マシン
法月綸太郎
(2013/08/22 19:11登録)
ミステリファンにはSF的論理がよく分からない。
SFファンにはミステリ的ネタがよく分からない。
真価が分かるのはSFとミステリ両方のファンだけというとてつもなく狭いターゲット層の短編集w
SFファンとミステリファンが不可分だった一昔前ならともかく、今の時代は両方のファンが完全に別々になっちゃった感じがするから、キツイんじゃないかなあ、これw
私も、SFは有名どころしか読んでないのでついていけないところが多々ありました。
no Chinaman、引き立て役クラブ、某倉坂氏風バカミスSF、燃えるシャム双子と、一つ一つの話に濃いミステリネタが含まれているのでその辺りで十分に楽しめましたが。
悩める作家だった法月氏も、とうとう後期クイーンをネタにできるようになったかと感慨深い思いで読了しましたw


No.27 7点 密室蒐集家
大山誠一郎
(2013/08/21 15:38登録)
大山氏の作品には幾つかの大きな欠点があり、デビューから現在までそれが一切変わらないことからもはや”そういう作品”として楽しめる者以外お断りというところまで達してきた感がある。
というわけで、新本格のゲーム的すぎるところが嫌いといった様な方には絶対にオススメできない作品。
それこそ、ミス研の学生が書いた犯人当て短編が集まっているだけだから。
だけど、その分、ゲームで良いやリアリティは結構といったパズラー好きには堪えられない濃厚な短編集となっている。
個人的ベストは「理由ありの密室」。ハウの解法よりもホワイ、フーの解放に気合が入っている短編集だけれど、これはそれ顕著に出ていてロジックが素晴らしく綺麗。
次点は「佳也子」かな。豪快なトリックで楽しめた。


No.26 7点 紳士ならざる者の心理学
柄刀一
(2013/08/05 10:08登録)
誰がなんと言おうと、柄刀一氏の本質はトリックではなくロジックだと思ってます。
不可能犯罪をよく扱う為にトリックの人だと思われている様に思いますが、よくよく読んでみるとトリックよりそれを囲むロジックが素晴らしいのだと気づかされるわけです。
いや、勿論、トリックも素晴らしいのばかりですけれど。

そういうわけで、今作にもロジック爆発な短編が一つ入っています。
「見られていた密室」です。
これは、柄刀一氏の短編群でもベスト級と言えるのではないでしょうか?
まず、「犯人が監視カメラで死ぬ直前の被害者の様子を見ていることによって被害者と犯人の心理戦が繰り広げられる」というシチュエーションが非常に秀逸です。
そして、そうした中で被害者が行った行為を名探偵龍之介が紐解いていくわけですが……
この過程が素晴らしい。
ダイイング・メッセージ一つについてありとあらゆるロジックを駆使することにより、ただ一人の犯人が浮かび上がる……まさしく、本格ミステリの興奮そのものです。
この一編だけでも読む価値があるかと。

他の話も及第点は超えているものばかりで、本格ミステリ07にも採用されていた表題作は伏線とトリックの詰め込みが素晴らしい佳作です。
個人的には三作目も好みです。

ロジックとトリックを味わいたい人にはとことんオススメな一冊でしょう。


No.25 10点 密室キングダム
柄刀一
(2013/06/26 18:17登録)
私的にはオールタイムベスト級の作品です。
本格ミステリ、特に『謎と論理』に重点を置く人々にとっては、堪えられない程の傑作でしょう。

『キングダム』の題名通りの、恐ろしい程のページ数。密室で大長編といったら笠井潔の『哲学者の密室』なのでしょうが、あちらが密室殺人は二件のみなのに対し、こちらは五件!
大マジシャンがマジックショウの途中で殺される第一の密室が一番派手で、トリックやロジックも煮詰められていることは誰もがうなずく通りですが、他の密室四件もそれだけで長編にしても良いくらいの趣向が凝らされていて非常に楽しませてくれます。

本作の第一の特徴は、なんといっても『密室に意味がある』ことでしょう。
名探偵、南美希風は密室の作成方法のトリックについてはそれぞれ早い段階で見破ってしまいます。
しかし、犯人はどうしてそんな密室を作ったのか? という謎が立ちふさがり、解決には中々迫れません。
つまり、これは――西澤保彦の『念力密室!』と同様に――ハウダニットよりもホワイダニットに重点が置かれた密室ものなのです。
それを解決するのは鮮やかなアクロバットなロジック!
特に第一の密室と第五の密室の『意味』には唸らされます。

また、密室とは別のところで仕掛けられたトリックも注目に値するでしょう。
ハードカバー発売時の帯に『本格ミステリは時代から逃げない』という言葉があった様に思いますが、まさにその言葉通りで、
『この時代には通用しないんじゃないの?』といったトリックが現代に蘇らせている点は驚愕です。

全体に流れる『昭和の犯罪』というテーマも印象的ですし、自らの体をなげうってまで事件の解決に挑む美希風の姿には胸を打たれます。
そうしたノスタルジイも含め、柄刀一の集大成といった大傑作といえるでしょう。
本格ミステリファンを名乗る者ならば必読です……と言いきっても良いのではないでしょうか。


No.24 8点 アリスの国の殺人
辻真先
(2011/06/10 18:37登録)
日本におけるメタミステリの先駆け、辻の代表作。
天使の殺人、ピーターパンの殺人が後に続く、シリーズの台一作でもある

まさしく、傑作。
凝りに凝った素晴らしさ。泡坂妻夫に匹敵するといってもいい。
溢れ返る言葉遊びにパロディ。なんと手塚治虫のヒゲオヤジまでが登場。

「アリスの国」パートがどうして必要だったのか?「現実世界」パートとどんな関わりがあるのか?
この衝撃をもっと多くの人に味わってもらいたい


No.23 9点 キッド・ピストルズの冒瀆
山口雅也
(2011/02/22 17:41登録)
ミステリ史に残すべき傑作短編集だと思うのだが、どうにも評価が分かれていますねー
ロジックでガンガン推し進めていくタイプのミステリ。
探偵役のキッドはパンク族ですが、物凄いロジカルな思考をしています
特に「曲がった部屋」は伏線、論理思考、キャラクターまで含めて完璧といっていい出来の短編でしょう


No.22 7点 人体模型の夜
中島らも
(2011/02/20 22:35登録)
読み始めたら止めることができない連作短編集
特に、寝る前にプロローグだけ読んどこうかな……とか考えてはいけません
プロローグの後は一つ目、後一つ、さらに一つ……といった具合でまさにやめられない止まらない、です
乱歩並み(ちょっと大げさか?)に物語に引き込んでくれるホラー短編集なのです


No.21 7点 花嫁は二度眠る
泡坂妻夫
(2011/02/18 18:27登録)
どうも皆さんの採点が低いような……
個人的には泡坂作品の中でも好きな話なのですが
こんな火曜サスペンスだったら私は毎週欠かさず見ますよ!
伏線の張り方の巧妙さは泡坂作品でもトップクラスですし
貴詩の行動の理由などは、実に泡坂らしい
全体的に地味で、小粒なものの組み合わせなのが低評価の要因かな?


No.20 9点 緑は危険
クリスチアナ・ブランド
(2011/02/05 14:25登録)
ブランド長編初体験で読みました。
「招かれざる客たちのビュッフェ」の各作品のような毒はそこまで強くは出ておらず、殺人が起こってからはディスカッションが中心です。
伏線、ミスディレクションの張り方が実に鮮やかです。
最後に明かされる犯人当ては、一言だけで犯人に辿り着く簡潔さ!
それなのに、私はミスディレクションに見事にひっかかってしまい、犯人を当てるにはいたりませんでした。
クイーンを継ぐ、正統派本格ミステリですね


No.19 6点 列車消失
阿井渉介
(2011/01/30 00:46登録)
序盤の謎の提出は申し分が無いです。
「列車が消えてしまった!」という不可能趣味。
第一章はひたすら、それについて語られるわけですが、仮説はどれも「無理だろう」と消えていってしまう。そうしているうちに第二章……首と手足の無い胴体のみが列車内を歩き回る……
もう、これだけでたまらない
どうしようもないくらい魅力的な謎ですし、魅力的な演出です

しかし、評価が6点なのは解決が……という感じだからで。
うーん、とちょっと困っちゃうような解決なんですよねえ
この手の不可能犯罪とかは、謎の魅力と、解決の落差が激しいものなんですが、これはちょっと激しすぎる感じ。
島荘の筆力があれば、もっと評価高かったかも


No.18 8点 二銭銅貨
江戸川乱歩
(2010/12/21 20:09登録)
乱歩のデビュー作だから有名とはいえ、そんなに評価が高くはない今作
しかし、私はこれは大傑作だと思っています
何せ、文章と構成が素晴らしい
そして、この時代には日本に浸透していなかった推理小説的な面白さがさらに良い
今読んでもため息をつける戦前の作品なんてそうそうありませんよ


No.17 9点 ユダの窓
カーター・ディクスン
(2010/11/24 20:32登録)
有名なあのトリックだけだと駄作と言われるかもしれない
しかし、この面白さはどうだ!
ストーリーテラーとしてのカーの魅力が炸裂した一作!
トリックも見事に作品に馴染み、小ネタも効いている
そしてHM卿の魅力的なキャラ!
読んでない人は人生を後悔してますよ


No.16 8点 殺人鬼(角川文庫版)
横溝正史
(2010/11/22 18:35登録)
あまり話題にならないものの中々高品質な短編が揃った一冊。
本格ミステリというよりも、通俗スリラー的な要素の強い表題作、当時のデパートを舞台にした金田一もののイメージとは遠いがよく出来た黒蘭姫、等々力警部と金田一のかけあいが楽しい香水心中……となってますが、やはりは白眉は百日紅の下にてでしょう
事件自体は過去のもので、登場人物も金田一と語り手のみ。
ポツリポツリと話し出された事件の様子から真相が現れ、颯爽と去っていく金田一……
この百日紅の下にてだけでも買う価値があります


No.15 8点 二の悲劇
法月綸太郎
(2010/11/02 23:44登録)
二人称ものとしては都筑道夫のやぶにらみの時計、非ミステリ作品だが重松清の疾走、伊坂幸太郎のあるキングくらいしか作例を知らない。その二人称ものの中でもこれはかなり捻られていたと思う
最初は二人称の読みにくさ、やけにちゃらい(前期のクイーンみたいだなあ。意識したんだろうけど)綸太郎で少々つらいものがあったが、真ん中あたりからグイグイと引き込まれる構成になっている。法月氏の一流のプロットがなせる技だろう。トリックが多少アンフェアかと思うところもあるのは確かだが。
法月氏の作品は基本的に後味がかなり悪いのだが、今作は別でかなり良い。(いや、今作が切り替えのタイミングだったのか?)
確かに、どうしようもない悲劇なのだが、余韻に浸れる上手いラストだと思う
カバーのコメントで壊れ気味だった法月氏
彼が「生首~」を書きあげるまでに辿った十年間を思うと何やらこみあげてくるものがある


No.14 8点 怪盗グリフィン、絶体絶命
法月綸太郎
(2010/11/02 18:59登録)
子供に読ませたくない本や子供を意識しすぎて駄作になってしまった本が多いミステリーランドにおいて、ちゃんと子供に視点を置いてそれに加えて大人も楽しめるように書かれた傑作。
倉知、有栖などはちゃんとそういうの書いてくれそうだなと予想はしていたのだが、法月はホント意外
子供に戻って、何度でも読み返したい作品


No.13 8点 摩天楼の怪人
島田荘司
(2010/10/24 19:28登録)
まず、これぞ島田荘司!と言わんばかりのこのボリューム!
意味のあるのか無いのか分からない挿話!
事件を謎解く御手洗潔!

それだけでもうお腹いっぱいです
本格ミステリとしては読者がほぼ推理不可能なのでレベルが低いのかもしれません
しかし、これ程までに読者をめくるめく謎で楽しませてくれたら良いでしょう
島田荘司はまだまだ現役ということを示してくれた貴重な作品


No.12 6点 死を開く扉
高木彬光
(2010/10/23 23:59登録)
トリックは面白い
今は心理的なトリックを主題にされているが、このような物理的で成程とさせてくれるトリックは実に良いと思う
ただ、トリックを抜いたら後は高速で事件の糸口を掴んでしまう天才神津恭介くらいしか見どころが無いのも確か
著者一流の文章でスラスラと読ませてくれるのでありがたいが


No.11 6点 犯罪カレンダー (7月~12月)
エラリイ・クイーン
(2010/10/11 23:18登録)
1月~6月よりこちらの方がミステリとして良いかも。
どっちにしても私は大好きだ。
裏組織から怪盗まで、短い話の中でクイーンが走り回る
時々往年の推理の冴えをのぞかせるのも良し
クイーンが好きなら買って損は無いでしょう


No.10 5点 犯罪カレンダー (1月~6月)
エラリイ・クイーン
(2010/10/11 23:16登録)
私的には大好きな短編集である。
アホみたいな言葉遊びが溢れているのは何処か微笑ましく、楽しく読める。
クイーンもまだまだ若い時期で、デューセンバーグを乗りこなし何処までも、といった具合だ。
個人的に好きなのは4月。
4月にしかできないネタで、茶目っけに溢れている
点数はまあ、本格ミステリとしての評価なら……という感じ


No.9 9点 中途の家
エラリイ・クイーン
(2010/10/11 23:12登録)
私的には国名シリーズにも劣らない素晴らしい出来の作品だと思う(というより、日本樫鳥を国名にいれるならこちらの方を国名に入れるべきだろう)
論理は流石クイーン!と叫びたくなるくらい冴えわたっている

どうでもいいが私はマッチのロジックについて「あっ!」と言わされてしまった
自分の注意力と思考力の弱さにあきれたものである。

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