二の悲劇 法月綸太郎シリーズ |
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作家 | 法月綸太郎 |
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出版日 | 1994年07月 |
平均点 | 6.66点 |
書評数 | 29人 |
No.29 | 6点 | 虫暮部 | |
(2019/09/10 16:09登録) 竜胆直巳の作品タイトル『グレーの雨傘』は高橋由佳利の漫画『プラスティック・ドール』(『ふたたび赤い悪夢』の参考文献に挙げられている)に出て来る曲名からの借用。 ならばこっちも偶然ではないだろう→“清原奈津美”なる、少女漫画家の名前をもじったようなネーミング。しかしこんな役回りの登場人物にそういう由来の命名をするか? 物語とは無関係にずっと気になった。と言うことはこの名付けは失敗なのである。 |
No.28 | 4点 | レッドキング | |
(2019/06/20 23:54登録) タイトルの「二」だが、名と実の分離としての「二」、二人称の「二」、それから双子の「二」。 名前のネタは「日常の謎」短編ミステリ位であっさりまとめられてたほうが良かったようにも思える。にしても、葛(カツ)-清(キヨ)-葛(クズ)なんてよく見っけてきたなあ。 一人称の叙述が、叙述トリックもしくはワトスン君的な「不完全な三人称」としての謎提示の表現ならば、ミステリは「完全なる三人称」の描写として解決する。ここでは登場人物の一人を二人称で描写することによって、あるダミー解決の伏線の効果を狙ってるんだろうけれども、結果はいまいちかな。 で、双子ネタだけど・・それはさすがに「なんたらミステリ十戒」レベルのしろもんじゃないの? |
No.27 | 6点 | ボナンザ | |
(2018/10/08 10:40登録) 狙いとしては頼子に近いわけだが、それとは違った味わいに仕立て上げたのは筆力のなせる業か。 |
No.26 | 6点 | ねここねこ男爵 | |
(2017/10/20 22:29登録) 色々な意味で読みにくい。 日記や地の文がミステリの構成要素としての伏線や布石でなく、作者の苦悩や想いをこめることに使われていてとにかく量がある。 それに共感するか冗長な成分として切り捨てるかが評価に影響しそうな。 個人的にすべて妄想の方がよかったかも。タイトルに絡む部分は都合が良すぎると感じてしまいます。せめて事前に匂わせてくれれば… |
No.25 | 4点 | パメル | |
(2017/05/17 01:11登録) ノスタルジックな恋愛小説をミステリ風味に仕立ててみましたというような感じの作品 内向的な乙女の様々な葛藤がもどかしく語られた純愛小説でどうも肌に合わなかった ある真相は意外性があるがトリックやフーダニットで楽しむ事は難しいと思う 二人称叙述という変わった手法を用いており終盤に至るための語りとしては非常に有効的だったという点は評価出来る |
No.24 | 5点 | nukkam | |
(2016/07/09 23:01登録) (ネタバレなしです) 完成に2年もかけた1994年発表の法月綸太郎シリーズ第6作ですが残念ながら出来栄えにはあまり感心できませんでした。「きみ」を登場人物にする二人称形式が随所で挿入されているのが大変珍しいですが、会話も動作も少ないため読者が感情移入しにくくあまり効果を上げていません。それ以外の法月綸太郎の登場場面や後半の日記も盛り上がりに乏しく、悲劇性までもがあまり伝わってこないのはつらいところです。本書発表時期の作者はスランプを自覚していたようですがそれは更に長期化し、次の長編が発表されたのは何と10年後になりました。ちなみに「一の悲劇」(1991年)とは関連性はなく、どちらを先に読んでも支障はありません。 |
No.23 | 6点 | いいちこ | |
(2016/03/04 19:47登録) 明かされた真相と仕掛けられたトリックはシンプルで、男女の恋愛にまつわる悲劇を二人称叙述や日記を駆使して捻った異色のプロット。 ロジカルに真相に到達することが難しく、トリックがややアンフェア、真相に安易さを感じさせる面など、本格ミステリとして高い評価はできないが、プロットがキレイに収斂している点は評価。 執筆当時の作者の懊悩をそのまま反映したような叙述(とりわけ名探偵の存在意義を巡る箇所)、登場人物のきめ細かい心理描写は、あまり他作に見られないもので強く好感。 さまざまな意味で異色作であり、毀誉褒貶が分かれそうな作品だが、好意的に評価したい |
No.22 | 8点 | 青い車 | |
(2016/02/21 21:15登録) 一人称の『一の悲劇』と打って変わって、本作はあまり見られない「二」人称のパートが含まれています。男女の哀しきすれ違いが生み出したせつないラヴ・ストーリーであり、残念ながらあまり本格ミステリーらしい要素はありません。しかし、叙情的な描写にぐいぐい引き込まれ、そこそこの分量をあっという間に読めてしまいました。ハッピー・エンドとは程遠いのに美しい余韻を残すのも素晴らしいです。プロトタイプの中篇『トゥ・オブ・アス』も読みましたが、このストーリーを堪能するなら、やはりこの長さが必要だと思います。 それと、あとがきではかなり自虐的になっている法月さんですが、ファンとしてはもうちょっと自信を持ってくれと言いたくなりました。 |
No.21 | 6点 | yoneppi | |
(2014/05/28 22:49登録) 一も読んだし、評価の高い二も読んでみた。京都好きだし、純愛ものとしては楽しめた。 |
No.20 | 7点 | スパイラルライフ | |
(2012/02/05 21:14登録) ミステリというほど伏線があったとは思えない。が、二人称だからこその風味?がバッチリはまったミステリっぽい純愛小説。 甘めの採点だと自覚しながらも、是非読んでほしい作品。 法月親子は浮いてます。 |
No.19 | 8点 | 蟷螂の斧 | |
(2011/11/17 09:14登録) 私小説・純愛小説をミステリー仕立てにしたような感じで、普通のミステリーとはまた違う、異質の雰囲気を持った作品だと思います。途中「夢オチ」だったらつまらないと思いながら読みましたが、ラストはそれなりに落ち着く所に落ち着いたという感じです。「頼子のために」もそうでしたが、本作品の「手記」部分には感情移入せざるを得ないものがありました。 |
No.18 | 9点 | 卑弥呼 | |
(2011/08/18 23:22登録) 入れ替わりやら情緒不安定やら、法月綸太郎がふんだんに詰め込まれた、良くも悪くも作者らしい作品。 この作者の女子への辛辣さがよく出ているという印象です。 冒頭の鍵の謎から、いきなりページ稼ぎが始まって、謎が進展し出したら探偵が悩み始め、事件が二転三転瞑想するという、いかにもファンしか着いていけそうにない展開を我慢出来れば、どんでん返しは割りと楽しめます。 |
No.17 | 8点 | monya | |
(2010/11/02 23:44登録) 二人称ものとしては都筑道夫のやぶにらみの時計、非ミステリ作品だが重松清の疾走、伊坂幸太郎のあるキングくらいしか作例を知らない。その二人称ものの中でもこれはかなり捻られていたと思う 最初は二人称の読みにくさ、やけにちゃらい(前期のクイーンみたいだなあ。意識したんだろうけど)綸太郎で少々つらいものがあったが、真ん中あたりからグイグイと引き込まれる構成になっている。法月氏の一流のプロットがなせる技だろう。トリックが多少アンフェアかと思うところもあるのは確かだが。 法月氏の作品は基本的に後味がかなり悪いのだが、今作は別でかなり良い。(いや、今作が切り替えのタイミングだったのか?) 確かに、どうしようもない悲劇なのだが、余韻に浸れる上手いラストだと思う カバーのコメントで壊れ気味だった法月氏 彼が「生首~」を書きあげるまでに辿った十年間を思うと何やらこみあげてくるものがある |
No.16 | 8点 | 測量ボ-イ | |
(2010/09/29 18:13登録) 冒頭やや読みづらかったですが、軌道にのったらアッという 間でした。 氏の作品を読んだのは「雪密室」「誰彼」に続き3作めです が、その中では一番良かったです。敢えて難点をいえば提示 された伏線では真相を推理するのが困難なことくらいでしょ うか? 決してハッピ-エンドでなく題名通りむしろ悲劇なのですが、 読後に不快感がある訳ではなく、いい意味での余韻に浸れる 良作です。 |
No.15 | 8点 | simo10 | |
(2010/09/21 22:02登録) -ネタばれ含みます- まさに悲劇的な話でしたが、非常に美しい作品だと思いました。 前半は二人称部分の回りくどさも含め、ややだるい展開でしたが、中盤での百合子の母の語り、奈津美の日記の辺りからぐいぐいと読まされました。 著者の長編にありがちな、自分的には食傷気味だった「複雑な血縁関係」が登場しなかったのも良かったです。 また、真相にも納得がいきました。 論理的に推理するのは難しいかも知れませんが、タイトル、二人称、誤認等のキーワードから考慮すれば、直感的に真相に辿り着くことは可能だと思います。 ちなみに、「頼子~」、「一の悲劇」、「身投げ女~」などのように、探偵法月綸太郎以外の人物が語り手を担っている作品の方が自分的に高評価な結果になっていると思いました。 |
No.14 | 7点 | 文生 | |
(2010/01/20 17:17登録) トリックは難ありですが、物悲しい恋愛ものに本格ミステリーを融合させ切なさと知的興味を同時に味わえる独特な作品に仕上がっている。 |
No.13 | 8点 | E-BANKER | |
(2009/11/28 21:58登録) 「・・・の悲劇」第2弾。 ある意味名作ではないかと思います。 真相が三層構造になっていると言ったらいいのか、ラストで2度ほどひっくり返されます。 何といっても途中の「日記」部分が秀逸です。かなりのページ数を割いているとおり、この「日記」の謎にどれだけ気付けるかという部分で読み手の力量も試されてる気がしました。 ただ、「2人称」に関する仕掛けは反則ギリギリでしょうね。まぁ伏線は確かに張られてますが・・・ ユーミンの「卒業写真」の歌詞もいいスパイスになってます。 |
No.12 | 7点 | makomako | |
(2008/12/29 11:56登録) 法月らしい誠実できちんとした本格推理小説。でもこの2人称表現はあまり好きではない。ことに前半は無駄な描写がだらだらと続き意味なく長い感じ。我慢して呼んでいると途中からスピードがついてきて最後は結構面白い。ただストーリーそのものに違和感がある。私は物書きでないから分からないけど小説家から原稿をもらうのに女性編集者はそこまでやるの?この女性ならそのことを悩んでしまうか、絶対拒否して逃げて帰ってきてやっぱり悩んでしまうのではないかという気がしますがね。 |
No.11 | 4点 | いけお | |
(2008/11/01 03:11登録) 読みにくかった。 プロットやトリックは評価できるが、なかなか難しい作品。 |
No.10 | 6点 | マニア | |
(2008/10/21 00:40登録) 法月氏の書く悲劇は、徹底的に悲劇に徹しているというか、救いがないというか、後味が悪いというか・・・まぁ、それが醍醐味なんだろうけど、この作品は悲しすぎる・・・。さらに、章ごとの幕間に書かれているユーミンの『卒業写真』の歌詞がこの悲劇に味を足している。 プロットは非常に上手い。特に結末で明らかにされる二人称視点の謎はよく練られているなぁと感じた。しかし、その事も含めてトリックには納得できないという人も多いと思う。確かに自分もミステリとしてのアンフェア感は拭えなかった。 しかし、そんなものとは関係なく純粋に「悲劇」として見るなら、この作品は紛れもなく優れた作品だと思う。 本筋とは関係ない、寄り道的な描写が多いのが少し受け入れがたかったかな。(作中でも作家探偵法月が皮肉っているが・・・) それにしても、のりりんの性格が変わってるのは見物! |